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小児用バファリンかぜシロップの過量投与について

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:毒性・中毒・小児用バファリンかぜシロップ・過量投与・アセトアミノ フェン・マレイン酸クロルフェニラミン

Q:3歳の幼児に『小児用バファリンかぜ シロップ』を1回に15mL服用させてしまった。通常1回量は5mLであるが、大丈夫かの問い合わせがあった。対処法は。なお、幼児の体重及び服用してか らの時間経過については報告を受けていない。

A:『小児用バファリンかぜシロップ』(日新製薬・滋-ライオン株式会社) の組成・含有量、年齢別の投与量は以下の通りである。

配合薬 30mL中 15mL(過投与量)
アセトアミノフェン 300mg 150mg
マレイン酸クロルフェニラミン 2.5mg 1.25mg
リン酸ジヒドロコデイン 8mg 4mg
dl-塩酸メチルエフェドリン 20mg 10mg
グアイフェネシン 80mg 40mg
無水カフェイン 25mg 12.5mg

添加物:安息香酸ナトリウム、ブチルパラベン、プロピレングリコール、香料

年齢 1回量 1日量
(1日 3回食後及び必要時就寝前)
1日最大6回
(服用間隔4時間以上)
6-3歳 5mL 15mL(20mL) 30mL
2-1歳 3.75mL 11.25mL(15mL) 22.5mL
11-6カ月 3mL 9mL(12mL) 18mL
5-3カ月 2.5mL 7.5mL(10mL) 15mL

本剤の6-3歳児に対する1日量は15mL、1日最大量は20mL又は 30mLである。今回の事例では、1日量を1回で服用したことになるが、配合剤としての全量での毒性は報告されていない。

従って、各薬剤の個別毒性を検討し、その上で全体の毒性を検討・予測せざる を得ない。

薬品名 acetaminopen chlorpheniramine dihydrocodeine
誤用量 150mg 1.25mg 4mg
小児最大用量 1回10mg/kg dl体:1-3歳(2.4mg)・3-5歳(3.0mg) /日

d体:1-3歳(1.2mg)・3-5歳(1.5mg) /日

?
最小中毒量 成人:5-15g

ヒト中毒量:150mg/kg

抗ヒスタミン剤の量が1日最大用量の3倍以内であれば家庭で経 過を見る。 ?
毒性 人経口致死量 13-25g(成人) 成人推定致死量10mg/kg。

痙攣を起こして死に至る。

幼小児:中枢神経の興奮、次に抑制状態(成人:中枢神経抑制)

マウス(経口)LD50:210mg/kg。

dl 体-マウス(経口)LD50:121mg/kg・ラット(経口)LD50:118mg/kg。

小児推定致死量:5-15mg/kg。

推定成人致死量:500mg

マウス(経口)LD50:411mg/kg。

人最小致死量 2.4g(成人)。

人致死量0.2-1g/kg

ラット(経口)LD50:
3.7g/kg 。

4時間後血中濃度 ? 120μg/mL以下で肝障害無・300μg/mL以上で重篤な肝障害 ? ?
最高血中濃度到達時間 ? 1時間(治療量)・約4時間(過量) 約2時間 ?
半減期 1-2時間(治療量)

12時間以上(過量)

12-15時間 3.3-4.5時間
吸収

排泄

胃腸より直ちに吸収され、0.5-1時間で最高血中濃度に到達する。

肝で代謝され、グルクロン酸 又は硫酸抱合され、尿に排泄される。

過用量後、一部水酸化代謝物が肝に蓄積され、壊死を起こす。

生物学的半減期は長くなる。

消化管と注射部位より急速に吸収される。

経口投与時は15-30分以 内に作用する。

代謝不明。

消化管と注射部位から吸収される。

鎮痛作用は、注射後4時間持続する。

おそらく脱メチル化され、 多数の代謝産物が尿中に排泄される。

毒作用 過用量は蒼白、悪心、嘔吐、食思不振、腹部不快感を起こす。

2日以内に血清酵素異常が肝機能障害 を示す。

重症中毒は代謝性アシドーシスと血糖の不規則を起こす。

昏睡は著しい過用量により起こる。

中毒の結果に対し好都合な早い指標はプロトロンビン 時間である。

これが過剰投与後24時間で著しく延長しているときはおそらく肝障害である。

軽い鎮痛と眠気。

一時的にヒリヒリするか灼熱感。

口渇、悪心、不安、発汗、蒼白、弱い脈拍と血圧 低下。

稀に過敏症があり、皮膚炎を起こす。

中等度の用量は不安、興奮、眩暈及び散瞳を起こすことがあ る。

100-500mg用量は、脈拍を遅くし、顔面を紅潮させ、疲労、耳鳴り、振戦、興奮を生じるであろう。

多量投与は遷延する縮瞳、筋肉衰弱及び眩暈を 起こす。

譫妄、振戦、頻脈、痙攣及び呼吸麻痺、薬物耽溺の危険は僅かであるが存在する。

標準的な3歳児の平均体重は、男児:13.8kg、女児:13.1kgとさ れており、acetaminopenの投与量を計算すると138mg(男児)・131mg(女児)であり、誤用量の150mgは極端に多い量とはいえな い。また、小児では肝薬物代謝酵素の活性等が成人とは異なるため、肝障害の発現率は低いとする報告も見られる。

薬品名 methylephedrine guaifenesin caffeine
誤用量 10mg 40mg 12.5mg
小児最大用量 ? ? ?
最小中毒量 ? ? ?
毒性 人経口致死量 推定致死量200mg(子供)・2g(成人)

中毒量:マウス(経口)LD50:758mg

/kg。

? 人推定致死量:約10gと報告されているが30gからの回復の報告例もある・183- 250mg/kg。

ラット(経口)LD50:200mg/kg。

成人中毒症状発現量:0.5-1g・小児重篤症状発現量:80-100mg/kg

人最小致死量
最高血中濃度到達時間 ? ? 1時間(イヌ) 約1時間
半減期 ? ? 65-102.9時間(早産児)、82時間(新生児)、14.4時間(-4.5カ月乳児)、 2.6時間(5-6カ月乳児)、3.0-7.5時間(成人)
吸収

排泄

直腸を含む胃腸管と注射部位より容易に吸収される。

変化せず腎より排泄される。75%までは12 時間までに排泄され、24時間までに全て排泄される。

鼻からの粘膜吸収によっても作用する。

? 容易に胃腸管より吸収される。多量に脱メチル化される。

キサンチン、一部メチル化したキサンチ ン、及び尿素として腎より排泄される。

毒作用 臨床的投与量は、神経症と不眠症、振戦、眩暈と頭痛を起こすことがある。

頻脈、心悸亢進、発汗と 体の熱い感じ、悪心、嘔吐と食欲不振、心臓不整脈、長く使用した後は不快状態、鼻粘膜に長く使用すると鼻充血を起こすことがある。

過量投与は悪心、嘔吐、 悪寒、チアノーゼ、過剰被刺激性と発熱を起こす。

頻脈、散大瞳孔と不鮮明視覚、後弓反張、痙縮、痙攣、呼吸困難、昏睡と呼吸障害。血圧は最初上がり後に下 がる。

? 多用量は嘔吐と痙攣を起こす。

感受性の強い人は、神経過敏、不眠症、不安、頭痛、振戦、悪心と嘔 吐を少量投与で生じる。

体温上昇、稀に譫妄、通常は治療を要しないで回復する。

疲労と呼吸障害が、時に死亡を生じることがある。

服用した幼児の体重等でも異なるが、『小児用バファリンかぜシロップ』の1 日量を1回に服用したとしても、直ちに重篤な中毒症状が発現することはないと考えられる。

ただし、抗ヒスタミン剤については、症状発現時間は摂取後30分 -2時間以内、死亡は18時間以内とする報告も見られるため、一定期間の経過の観察は必要である。なお、抗ヒスタミン薬誤用患者について、家庭で経過を観 察する場合少なくとも6時間は経過を見ると報告されているため観察期間の参照とされたい。

[63.099.ACE: 2003.10.14.古泉秀夫]


  1. (財)日本医薬品情報センター・編:一般薬日本医薬品集;じほう, 2002-2003
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
  3. 白川 充・他共訳:薬物中毒必携 4th.;医歯薬出版株式会社,1989
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,26 (4):342-348(1999)5)鵜飼 卓・監修:第三版 急性中毒処置の手引き;薬業時報社,1999
  5. 吉村正一郎・他編:急性中毒情報ファイル 第3版;廣川書店,1996
  6. フストジル末・錠添付文書,1998.12
  7. 西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル;医薬ジャーナル, 1999