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山王清心丸・万病感応丸の副作用

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:副作用・漢方薬・山王清心丸・ 牛黄清心丸・万病感応丸・神経症状

Q:当院内科受診中の患者で、中国からの輸入薬を買って内服したところ神経症状(感覚障害、脊髄性神経障害、錐体外路系神経症状(ハビスキー反射、スモン様症状、VB12欠乏様症状)等が発現したと訴えている。両剤の処方内容・製造会社等は不明であるが、この様な副作用の発現は報告されているか

A:山王清心丸(山王漢方研究所-北京同仁堂-日水製薬)は、中国からの輸入薬ではあるが、国内でOTC薬市販されている中国名「牛黄清心丸」である。

本品1丸中に

 

  • 牛黄248.7mg
  • 桂皮248.6mg
  • 当帰185.7mg
  • 防風185.7mg
  • 蜂蜜618.9mg
  • 甘草309.6mg
  • 芍薬309.6mg
  • 人参309.6mg
  • 羚羊角278.8mg
  • 阿膠216.6mg
  • 金箔2.5mg

を含有する滋養強壮剤であり、虚弱体質、肉体疲労、病中・病後、胃腸虚弱、食欲不振が適応とされている。本剤の添付文書に記載されている副作用として「発疹・発赤、悪心、嘔吐等の症状」が見られるのみであり、精神神経系に属する副作用の記載はされていない。

万病感応丸については、調査の範囲においてOTC薬として7製品が市販されているが、各薬剤の配合薬間に若干の差が見られている。

その内の一つである日本製薬の製品では、2錠中に

 

  • 麝香1mg
  • 牛黄7.5mg
  • サフラン40.0mg
  • 人参末200.0mg
  • 沈香末100.0mg
  • 牛胆40.0mg
  • 阿仙薬末115.0mg
  • d-ボルネオール40.0mg

を含有する製剤で、動悸・息切れ・気付け・消化不良・胃腸虚弱が適応である。尚、同製品の添付文書中に副作用に関する記載はされていない。

以上の資料の範囲から両剤の副作用として重篤な精神神経系の副作用が発現することは考え難い。

尚、牛黄清心丸については、次ぎの報道がされているので紹介する。

海外旅行の土産等で個人的に持ち帰った漢方薬の一種「牛黄清心丸」から、高濃度の水銀と砒素が見つかったという国民生活センターのテスト結果が公表された。今回テストした四種類の「牛黄清心丸」はいずれも中国製。香港・台湾などから土産として持込まれた。

テストの結果全ての薬剤から水銀12,000?32,000ppm、砒素3,000?12,000ppmが検出された。成人が1回服用すると 36?96mgの水銀と9?36mgの砒素を摂取することになる。我国では医師の処方なしに購入できる一般薬として水銀や砒素を含む薬剤の販売を認めていない。「牛黄清心丸」は中国では極一般的な漢方薬で、水銀も漢方薬の成分として普通に使用されているが、水銀の効用や安全性は確認されていない。

以上の報道は、個人的に中国等から入手した「牛黄清心丸」が対象であり、厚生省の輸入申請許可を得て導入している薬剤の場合、国内での使用が承認されていない成分を含有する薬剤の輸入許可はされないため、「山王清心丸」の製造は中国であるが、水銀、砒素等の配合はされていないはずであり、事実、添付文書中の組成欄にも水銀、砒素の記載はされていない。

次ぎに配合生薬のうち幾つかの生薬成分について、調査した結果は次の通りである。

牛黄→
牛科の黄牛あるいは水牛の胆嚢、胆管又は胆管中の結石。成分としてコール酸5.57?10.66%、デオキシコール酸1.96?2.29%、コレステロール0.56?1.66%等含有。
当帰→
セリ科植物。根は精油を含み、水溶部分からフェルラ酸、コハク酸、ニコチン酸、ウラシルが分離され、石油エーテル部分からブチリデン-フタリド、リグスチリド、アデニン、コリン及び13種のよく見られるアミノ酸が分離されている。この他、多量の庶糖、ビタミンB12(0.25?40μg/100g)、ビタミンA類似物質ビタミンA換算0.0675%)等を含有。
防風→
セリ科植物。精油、マンニトール、苦味配糖体等を含む。
芍薬→
キンポウゲ科の植物。根にペオニフロリンを含む。ベニバナヤマシャクヤクの根は精油、澱粉、粘液、蛋白質等を含む他、安息香酸を0.92%含有。
阿膠→
馬科、ロバの皮を毛を取除いてからよく煮て膠の塊にする。大部分はコラーゲン及び部分的水解物からなり、窒素を16.43?16.54%を含むが、基本的には蛋白質である。
沈香末→
ジンチョウゲ科の植物。沈香のアセトン抽出物(40?50%)を鹸化してから蒸留し、得た13%の精油は、ベンジルアセトン、p-メトキシベンジルアセトン等を含み、残留液にはヒドロ桂皮、p-メトキシ桂皮等が含まれている。
阿仙薬末→
まめ科植物、児茶の枝幹の煎汁を濃縮乾燥したもの。阿仙薬タンニン酸20?50%、l-及びdl-カテキン2?20%、l-及びdl-エピカテキン、フロバタニン及びフィセチン、クェルセチン、クェルセタゲチン等のフラボノールを含む。
d-ボルネオール→
竜脳樹から得られる精油でカンフル・アルコール。カンフルと同様に皮膚刺激の目的で使用される。

以上、配合成分についての調査結果等から判断して、正規のルートで購入された両剤を服用した結果として、精神神経系の副作用が発現する可能性を予測する情報は入手できなかった。

[510.FD18.065GOO][1991.8.6.・1999.4.2.一部修正.古泉秀夫]


  1. 日本医薬情報センター・編:一般用医薬品集1990?91;薬業時報社,1989
  2. 山王清心丸添付文書,1987
  3. 万病感応丸添付文書
  4. 生活情報AtoZ-水銀含む牛黄清心丸;読売新聞,1991.3.27.
  5. 中国製漢方薬に水銀と砒素;読売新聞,1991.3.15.
  6. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第一巻;小学館,1985
  7. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第二巻;小学館,1985
  8. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第四巻;小学館,1985
  9. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第三巻;小学館,1985
  10. 横山復次:世界の医薬品データバンク[1];広川書店,1987
  11. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.142,1991.8.12.より転載