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介護福祉士の服薬介助の可否

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:法律・規則・医師法・保助看法・介護福祉士・服薬介助・医療用医薬品

Q:介護福祉士が、服薬介助を行うことが出来るかどうか、服薬介助は医療行為に相当するのか。

A:医師法第22条(処方せんの交付義務)において『医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当たっている者に対して処方せんを交付しなければならない。

ただし、患者又は現にその看護に当たっている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない。』と規定されている。

つまり医師の処方せんに基づいて出される『医療用医薬品』は、あくまで疾病治療の手段として患者に授与されるものであり、用法指示についても、医師自らが処方せんに記載することになっている。

その意味では、服薬介助も医療行為の一環であり、医師の指示に従って患者自身が自らの責任において服用する場合及びその保護者が介助する場合以外、服薬介助についても、一定の資格要件が伴うものと考えられる。

保助看法第37条(特定行為の制限)において『保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があった場合の外、診療機械を使用し、医薬品を授与し、又は医薬品ついて指示をなしその他医師若しくは歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずる虞のある行為をしてはならない。

ただし、臨時応急の手当てをなし、又は助産師がへそのおを切り、かん腸を施し、その他助産師の業務に当然附随する行為をなすことは差し支えない』とする規定が見られる。

つまり医療法上医療人として規定されている看護師等も、医師の指示があって初めて医薬品の取扱いがされるのであって、それ以外の場合には禁止されている。

一方、社会福祉士及び介護福祉士法第2条の2項において、『介護福祉士』とは、第42条第1項の登録をうけ、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき入浴、排せつ、食事その他の介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいうと規定されており、これを見る限り『日常業務』の介護が主であり、治療の一端に含まれる服薬介助は、その業務に含まれていないと考える。従って、

  1. 患者の服用困難を理由とする錠剤の粉砕・脱カプセル化:患者から医師に報告し、医師が処方せん上に粉末化の指示を記載し、薬剤師が調剤時粉末化して調剤する。
  2. 食事摂取に拒絶反応のある者で、食事時間に合わせた服薬が困難な場合:患者自身が医師に相談し、食事摂取拒絶の原因を除外することが先決であり、その後医師が処方変更を含めて検討する。
  3. 摂食、嚥下障害のある場合の剤形の決定方法:処方せんを書く段階で医師が決定する問題であり、経口投与以外の投与方法を検討するか、散剤・水剤・シロップ剤等の剤形変更による対応を検討する。また散剤の場合、薬物の種類によっては、原末の使用により、1回服用量を少なくすることも可能である。
  4. 飲み残し、こぼしてしまった場合の処置:飲み残しの原因究明が先決である。理由が明確であれば医師に申し出て、処方上に反映してもらう。錠剤、カプセル剤であれば、こぼしたとしても拾えないわけではないから問題はないはずである。散剤、水剤、シロップ剤の場合、治療の目的、服用量とこぼした量のどちらが多いかで、対処方法は異なる。服用量が少なくこぼした量が多いのであれば、残薬から1回量分を服用する。服用量が多く、こぼした量が少ないのであれば、特に追加服用の必要はない。

等の対応が求められる。

医薬品は、その治療目的(経口糖尿病治療薬等)により、厳密に投与量を設定しなければならないものもある。

服用量についても定められた量を遵守する必要があるものもある。更に個々の薬物は、それぞれの性状に相違があるため、粉末化して服用することにより接触部位に組織障害を惹起する可能性があるもの、麻酔作用により噛み砕くことで持続する口内の痺れ等を発現するものがある。

従って、患者の状況に合わせて『医師が処方』し、薬剤師が医師の処方に基づき『調剤』することが基本であり、第三者がみだりに手を加えることがあってはならない。

[615.1.CAR:2004.2.2.古泉秀夫]


  1. 平成12年版介護保険六法;新日本法規,1990
  2. 基本医療六法平成14年版;中央法規,2002