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オコゼに刺された場合の処置法

水曜日, 8月 8th, 2007

KW:毒性・中毒・オコゼ゙・オニオコゼ゙・虎魚・ヒメオコゼ゙・ダルマオコゼ゙・過マンガン酸カリ・処置・解毒法・治療法

Q:魚のオコゼに刺されたという患者が来院中である。処置法について

A:オコゼと呼称される魚は、オニオコゼ科に属するオニオコゼ(鬼オコゼ・虎魚)・ヒメオコゼ・ダルマオコゼ等が有り近縁種としてハオコゼ科のハオコゼが知られている。

  • オニオコゼ:全長20~30cm、背鰭の棘に猛毒が存在する。刺されると猛烈な痛みがある。棘の付け根にある毒腺から毒が注入される。食用とする。刺されたときは、アンモニアの塗布が痛みを和らげるとする報告が見られる。
  • ヒメオコゼ:全長10~15cm、背鰭の棘に毒腺が有り、鰓蓋には鋭利な棘がある。食用にならない。
  • ダルマオコゼ(Erosaerosa):全長15cm。食用にしない。痛みが手足全体に広がり、酷い呼吸困難から発汗、昏睡が起こり、2~3時間で死亡することも有る。毒は熱に弱いので、60℃以上の湯で傷口を2分以上洗い、医師の手当てを受ける。過マンガン酸カリ等の注射が有効であるとする報告がされているが、本邦では過マンガン酸カリの注射剤は入手できない。また、漁場、釣り場等で直ちに60℃以上の温湯の入手は困難であり、熱傷の可能性はないのか等検討が必要である。
  • その他、フサカサゴ科に分類されるニセフサスサゴもオコゼと呼ぶ地方が有る。全長30~40cm。毒は同様に背鰭に毒腺が存在する。

通常、オニオコゼ以外食用とならないため、釣り人あるいは職業漁師以外刺さ れることはあまりないが、「満潮に刺されると干潮になるまで痛む」とされており、「オコゼに刺されたら黒砂糖を溶かして湿布する」、「酢か海水を沸かして患部を温めるといい」等の民間療法も伝承されている。

刺されたときの応急処置としては、蛋白性の毒なので、熱湯に患部を浸けると毒が内部で固まり、全身への拡散が防げる。いずれにしろ刺されたら医師の手当てを受けた方が無難である。

<<オコゼ誤刺時の処置>>

  • <局所症状>:激しい頭痛、時にしびれ感、発赤腫脹・蒼白膨張
  • <全身症状>:嘔気、嘔吐、下痢、腹痛、呼吸困難、痙攣、リンパ管炎、ショック(顔面蒼白、冷汗、血圧低下、脈拍異常)
  • <毒物の除去>:棘が残っている場合は棘の除去。傷口の洗滌、消毒(食酢又は消毒用アルコール)
  • <対症療法>:温湯による鎮痛(45℃以下、30~90分、疼痛の取れるまで)、リバノール湿布、無効のときは局麻。
    *局麻入りステロイド軟膏の塗布。
    *破傷風、感染の予防。
    *ショックには輸液療法。
    *必要に応じてステロイド軟膏、強心剤。
  • <維持管理>:重症の場合、呼吸・循環管理。

実際に釣り人でオニオコゼに刺された事例を何例か承知しているが、通常の場合、棘に刺された部位を口で吸うことにより特に処置することなく丸1日程度で痛み及びしびれは取れているようであるが、重篤な場合、上記の対症療法を実施する。その他、渋柿のシブ等を塗布することで処置できるとする報告、あるいはタンニン酸軟膏の塗布により処置可能とする報告も見られる。

[1997.4.30.古泉 秀夫]


  1. 豊田 直之・他:釣り魚カラー図鑑;東西社,1995
  2. 西 勝英・監修:薬・毒物中毒マニュアル 改訂5版;医薬ジャーナル,1994
  3. 塚原 博:魚のおもしろ生態学-その生活と行動-;講談社,1991
  4. 阿部 宗明:原色魚類検索図鑑;北隆館,1982
  5. 田中 秀男:魚偏に遊ぶ-日本海遊博物誌;PMC出版,1987
  6. 内藤 裕史・編著:中毒110番;東京図書,1986