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ウブレチド錠服用患者の嚥下障害

水曜日, 8月 8th, 2007

KW:副作用・嚥下障害・ウブレチド錠・臭化ジスチグミン・distigmine bromide・副交感神経興奮薬・ChE阻害作用・cholinestrase

Q:ウブレチド錠を長期に服用していた患者が、胃の手術を受けたところ嚥下障害が起きるようになったと訴えている。発現理由は薬の副作用か、あるいは胃の手術によるのか

A:ウブレチド錠(鳥居)は、1錠中に臭化ジスチグミン(distigmine bromide)5mgを含有する副交感神経興奮薬である。本剤の適応は『1)重症筋無力症、2)手術後及び神経因性膀胱などの低緊張性膀胱による排尿困難』である。

本剤の作用として、ChE(cholinestrase)阻害作用、アセチルコリン作用の増強、抗クラーレ作用、胃運動亢進作用、縮瞳作用があるとされている。

本剤の添付文書に記載されている副作用のうち消化器系に係るものは下痢(54件:5.2%)、腹痛(34件:3.3%)、悪心・不快感、嘔気・嘔吐、腹鳴、胃腸症状、便失禁、心窩部不快感、流唾、テネスムス(しぶり腹)、口渇である。重大な副作用としてコリン作動性クリーゼが記載されているが、重症筋無力症患者で嚥下障害(クリーゼ)の記載が見られる。その他、重症筋無力症では、抗ChE服用中にコリン性クリーゼ(急に生じる呼吸困難、嚥下困難、気管分泌亢進)を誘発するので、患者にはクリーゼに対する注意を喚起するの報告も見られる。

薬の副作用としては上記の通りであるが、患者側の状況の変化として胃の手術がある。この質問からでは、胃の手術の程度は不明であるが、胃の一部摘出等の手術が行われているとすれば、嚥下障害の原因として手術の影響も考えられる。急性炎症、瘢痕性狭窄、筋力衰弱等が嚥下困難の理由となるの報告もされているため、手術の状況等を含めて主治医と相談するよう患者に指示されたい。

なお、薬の副作用による嚥下困難であれば、対応に緊急性を要すると考えられるため、直ちに主治医に相談する。

[065.DIS:2004.10.5.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  2. ウブレチド錠添付文書,2003.8.改訂
  3. 医学大辞典;南山堂,1992
  4. 日本病院薬剤師会・編:重大な副作用回避のための服薬指導情報集[2];じほう,1998