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イミグラン錠の適応外使用について

水曜日, 8月 8th, 2007

KW:特殊用例・適応外使用・イミグラン錠・コハク酸スマトリプタン・sumatriptan succinate・片頭痛・群発頭痛

Q:イミグラン錠1回30錠とする処方せんがでるが、適応外使用で何か特殊な使用法がされているのか。

A:イミグラン錠(GSK)は、1錠中にコハク酸スマトリプタン(sumatriptan succinate)50mgを含有する『片頭痛』治療薬である。

本剤の作用として5-HT1B、5-HT1Dに作用して頭痛発作時に過度に拡張した頭蓋内外の血管を収縮 させることにより片頭痛を改善すると考えられている。 本剤の用法として『1回50mgを片頭痛の頭痛発現時に経口』

  1. 効果不十分な場合には、追加投与可能→前回の投与から2時間以上あけること。
  2. 50mgで効果が不十分であった場合には、次回片頭痛発現時から100mgを経口可。
  3. 1日の総投与量は200mg以内とされている。

sumatriptanは5-HT1B/1D 受容体の選択的作動薬で、欧米において既に数年以上の使用経験があり、有効性が確立している片頭痛、群発頭痛の治療薬である。酒石酸エルゴタミンより有効率が高く、悪心・嘔吐などの片頭痛の随伴症状にも効果があることが特徴である。 本剤注射薬の適応は、片頭痛、群発頭痛の両者であるが、経口薬の適応は片頭痛のみである。

  1. 通常、1回50mgを発作時に内服する。効果発現までに30分程度を要し、2時間後の頭痛改善率は約60%、消失率は約30%で、注射薬との比較では効果発現までの時間が長く、また有効率も低い。
    効果が十分でない場合、また頭痛が再発する場合(24時間以内の再発率約30%)は、2時間の間隔を開ければ、 24時間以内に2回まで服用してよい。また次回の発作時には、はじめから100mgを投与することも可能である。
  2. 本剤はあくまでも頭痛の発作治療薬であるので、発作の予防を目的に投与してはならない。また経口薬の適応は片頭痛だけであり、群発頭痛には適応しない。
  3. 一つのトリプタン製剤が無効であっても、他のトリプタン製剤を試してみる価値はある。
    その他、非家族性の片麻痺性片頭痛、脳底型片頭痛で神経脱落症状・意識障害が高度でなく、これまでも数回の発作があって完全に回復している例では、専門医が慎重に経過を観察しながらトリプタンを使用することは容認されてもよいと思われる。
    この様な使用経験を蓄積した上で、臨床的な有用性や標準的な使用法のコンセンサスが得られれば、将来的に適応が承認されるべきである。
    ただし、現時点でこれらの病態への使用を広く一般に勧めることには慎重であるべきと考えるとする報告が見られる。
    以上の調査の結果では、sumatriptan succinateを片頭痛以外の特殊な適応に適応外使用する事例は検索できなかった。質問の内容からは、処方せんの記載がどの様になっているのか不明であるが、

    イミグラン錠1錠/回
    発作2時間の間隔を開け最大2回まで×30

    とする処方内容であれば、通常、特に問題があるとは考えられないが、片頭痛発作時に1回『服用』するという本剤の適用から見て、1回の処方量は 10錠程度といわれており、1回の処方量が30錠というのは、減額査定の対象となるのではないかとする意見も見られる。

[035.4.SUM:2005.1.24.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  2. 竹島多賀夫・他:トリブタン治療最前線? 特殊な片頭痛におけるトリブタン使用の是非?片麻痺性片頭痛、脳底型片頭痛など;医学のあゆみ, 204(7):483-487(2003.2.)
  3. 山口徹・他総編:今日の治療指針;医学書院,2005
  4. GSK学術課・私信,2005.1.