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院内製剤とPL法

水曜日, 8月 8th, 2007

KW:法律規則・院内製剤・一般用製剤・特殊製剤・PL法・坐薬・プラセボ

Q:院内製剤はPL法の規制を受けるか。また坐薬のプラセボは入手できるか

A:病院における院内製剤は、調剤予備行為としての一般製剤と特定の患者を対象として市販されていない製剤を調製する院内特殊製剤とに区分される。

調剤予備行為としての一般製剤は、調剤業務・診療業務の効率化、合理化(予製剤・消毒剤の希釈)を目的として調製するものであり、調剤過誤防止・病棟での消毒薬の誤用等を回避する目的も含めて、比較的大量に調製するもので、医師の処方に基づく調剤の範疇であり、PL法の規制は受けないと考えられている。

院内特殊製剤は、市販製剤として入手不可能であり、特定な患者の治療に限定して調製される製剤である。医師が特殊疾患、難治性疾患の患者を診療する場合、あるいは新しい治療法を開発する場合、市販にない処方、剤形の製剤を必要とすることが多い。これらの必要性に対応ずべく、調製するのが特殊製剤である。

特殊製剤申し込みの実際としては、医師は『特殊製剤依頼書』を薬剤部に提出する。この時その製剤に関する文献等を一緒に添付してもらう。

製剤室では製剤にあたっての調製設備、試験設備、原料の入手法等を検討し、製剤可能か否かを決定する。その後、薬剤部長決裁を求め、院内倫理委員会において製剤化の可否判断を求める。その際、使用に際して使用する患者説明文書、同意取得文書の原案を提出し、最終的な製剤化の適否について審議する。

倫理委員会の審議に際しては、申請医師及び製剤室責任者は十分に話し合いを行い、文献等の資料を提出し、判定を仰ぐ必要がある。更に調製後も有効性、安全性、製剤の安定性等の資料を収集し、倫理委員会に報告することを忘れてはならない。

以上の手順を踏んで同意文書を得た上で実施する場合、PL法上の問題はないものと考えているが、調製した製剤に不備があった場合、『業務上の過失(注意義務違反)』は当然追求される。

なお、病院の薬剤部設置の根拠法は、医療法(調剤所)であり、薬剤師法上の薬局ではないため、院内製剤を院内に限定して使用している限り薬事法上の違反に問われることはないと考えられている。

『坐薬』に限らず、院内で使用するプラセボを院外から入手することは困難である。

製薬企業に製剤を依頼することを考えたとしても、製薬企業が製造する場合、薬事法上の承認が必要であるとされており、承認なしに調製した場合、無許可での販売に該当するため、企業に依頼することは不可能である。

最終的には医師の処方に基づき『院内調製』することになるが、製剤室等の設備がない場合、調製は困難であると考えられる。

また、プラセボという以上、現在使用している坐薬と全く同一の剤形とすることが必要であり、対象薬剤によっては調製困難な場合も考えられる。

[615.1.PLA:2004.12.14.古泉秀夫]


  1. 全国国立病院療養所薬剤部科長協議会・監修:病院薬局管理学;薬業時報社,1994