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アルツハイマー治療薬『塩酸メマンチン』について

火曜日, 8月 7th, 2007

KW:薬名検索・アルツハイマー治療薬・塩酸メマンチン・memantine hydrochloride・ナメンダ・SUN-Y7017・D-145・DMAA

Q:米国で承認されたというアルツハイマー治療薬『塩酸メマンチン』について

A:『米国食品医薬品局(FDA)は、2003年10月17日重症のアルツハイマー病治療薬を初めて認可した。本品は米国のフォレスト・ラボラトリーズのナメンダ(一般名:塩酸メマンチン)で、深刻なアルツハイマー病の患者を対象とした治験で、食事のような日常的な動作の衰えを抑える効果があったという。米国では来年1月から発売される予定。』とする新聞報道がされた。

本剤に関する詳細は、次の通り報告されている。

  • 一般名:memantine hydrochloride(塩酸メマンチン)。
  • 同義語:SUN-Y7017、D-145、DMAA、MRZ-2/145。Ebixa(Merz社)、Akatinol(Merz社)。
  • 薬理:NMDA(N-methyl-D-aspartate)antagonist。
  • 国内:第II相臨床試験(サントリー-第一製薬)。orphan drug指定。

memantine hydrochlorideは、経口タイプのamantadine誘導体で、NMDA受容体拮抗作用を有する。神経細胞保護作用並びにパーキンソン病の症状改善効果を示す。本剤はNMDA受容体によるCa2+チャンネルを調節し、Ca2+ 透過性を減弱させるが、正常なシグナル伝達は阻害しないことから、幻覚、精神障害、昏睡などの副作用が見られない。海外では抗パーキンソン薬として数カ国(独逸・韓国等)で上市されている。独逸では1989年抗痴呆薬として上市され、ヨーロッパでは中等度から重度のアルツハイマー病を適応として申請、2002年5月に承認されている。

米国では2002年7月、中等度から重度のアルツハイマー病の適応で申請されたが、同年9月に修正と第III相臨床試験の新たなデータを含めて再申請するため申請が取り下げられ、その後2002年12月に再申請されていた。脳血管性痴呆、AIDS関連痴呆、AIDS関連神経障害性疼痛を適応とする開発も行われている。また緑内障治療薬としての開発も行われている。 国内でも軽・中等度のアルツハイマー病を対象とした開発が進行中である。

[011.1.MEM:2003.10.20.古泉秀夫]


  1. 重症アルツハイマー初の治療薬 米当局認可;読売新聞,第45821号,2003.10.18.
  2. 麻生 芳郎・訳:一目で分かる薬理学 第3版;MEDSi,1997
  3. 明日の新薬CD-ROM版,2003.10.20.