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「フェノキシエタノール添加の意味」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:語彙解釈・フェノキシエタノール・phenoxyethanol・法定表示成分・表示指定成分・種別認可基準・抗菌保存剤・消毒剤・防腐剤

 

Q:無添加、防腐剤不使用と表示された化粧水にフェノキシエタノールが配合されていましたが、企業側はこれは防腐剤ではなく、ただのアルコールだと主張しています。企業側の言い分は通用するものなのでしょうか?

 

A:フェノキシエタノール(phenoxyethanol)は、防腐・殺菌剤として化粧品等に添加される成分の一つであるが、緑茶などの自然界に天然物として存在する成分であり、パラベンなどと比較すると毒性は弱いとする報告が見られる。略号:PE。

phenoxyethanolは、グリコールエーテルというアルコールの一種である。また緑膿菌に対して殺菌作用をもつが、殺菌作用は万能ではない。phenoxyethanolは分子内にフェノキシ基とヒドロキシエチル基をもち、各種化学品の優れた溶媒となる。その他工業用中間体として各種製品の原料に広く使用されている。また殺菌作用をもつため香粧品分野にも利用されている(化粧品種別許可基準,1994に収載)。

phenoxyethanolの使用制限は、パラベン同様に製品100g中に1g以内である。しかし、phenoxyethanolは、『表示指定成分』にはなっていない。含有量も他の成分に比べ、多くは微量であり、表示していない場合もある。企業の中には情報開示の意味から表示をしている。

用途分類:抗菌保存剤・消毒剤

平成13年4月1日(2001年)以降、化粧品の規制緩和が実施されたが、それ以前は約2,800種の使用可能成分(種別認可基準)が承認されており、そのうち102種類の成分(法定表示成分)について、その名称を記載することが義務付(昭和55年=1980年)られていた。この『表示指定成分』は、アレルギー等の皮膚障害をおこす恐れのある製品の使用を自ら避けることができるよう表示されることが義務付けられていたもので、この表示指定成分が添加されていない化粧品について『無添加化粧品』と呼称していた向きがあるが、実際には『表示指定成分無添加化粧品』ということであった。

但し、2001年4月1日以降、規制緩和の一環として、化粧品の製造・輸入販売に関する許可制度が緩和された。その中で最も大きく変わるのは、化粧品に配合される成分の規制が事実上廃止され、原則的には配合成分、配合量の制限が撤廃されることになった。但し、それに伴い許可業者には化粧品に配合されている成分を全て表示することが義務付けられることになった。

化粧品に関する許可制度新旧対照表

  2001年4月1日以前 2001年4月1日以降
許認可 化粧品への使用が許可されている成分リスト(『種別許可基準』という)内での成分のみからなる化粧品は、事前の届出により製造(輸入)が可能。リストにない基準外の成分を使用する場合には事前に厚生大臣の許認可(承認)が必要。 成分規制は事実上廃止。配合禁止成分リストと配合制限成分リスト(配合上限や使用できる化粧品を制限)を定め、該当しない成分は許可業者の自己責任で自由に使用できる。防腐剤・紫外線吸収剤・タール色素に該当する新規成分は、登録する必要あり。
表示 表示が義務付けられている成分(102成分)を配合する場合のみ表示の義務 原則として全成分表示。非開示成分として承認を受けた成分を除き、配合した全ての成分を配合量が多い順に記載(1%以下の成分と着色料は順不同)。小容器のものについては表示方法の特例が認められる。
届出 製造・輸入する製品について事前に成分・分量表を添付した製品届を提出。 製造・輸入する製品について販売名のみの一覧表を事前に届出。

 

なお、phenoxyethanolの効能の範囲については、防腐成分とされており、配合目的:化粧品の変敗を防ぐに分類されている。

 

1)永井 恒司・監修:医薬品添加物ハンドブック;薬事日報社,2001
2)中山和子:薬事衛生-化粧品の規制緩和について;都薬雑誌,23(3):41-46(2001)
3)化粧品全成分表示へ;読売新聞,2000.3.28.
4)化粧品の成分全て表示へ;朝日新聞, 2000.3.28.

   [615.8.PHE:2007.5.28.古泉秀夫]

 

「酸棗仁湯の副作用について」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:副作用・酸棗仁湯・さんそうにんとう・酸棗仁湯エキス顆粒・偽アルドステロン症・甘草・酸棗仁・茯苓・川キュウ・知母

 

Q:酸棗仁湯エキス顆粒の副作用について教えてください。服み始めたら次の症状が見られるようになったのですが、酸棗仁湯の副作用でしょうか
左腕がしびれ、 頭痛、左目の奥の痛み、目を凝らしてみるとズキズキと脈を打つのと同じように画像が脈打ってます。

 

A:酸棗仁湯(さんそうにんとう)エキス顆粒(医療用)の組成は下記の通りである。

本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス3.25gを含有する。

(日局)酸棗仁 10.0g
(日局)茯 苓 5.0g
(日局)川キュウ 3.0g
(日局)知 母 3.0g
(日局)甘 草 1.0g

添加物:(日局)ステアリン酸マグネシウム、(日局)乳糖

尚、添付文書に記載されている効能・効果、重要な基本的注意等は以下の通りである。

効能・効果:心身がつかれ弱って眠れないもの

用法・用量: 通常、成人1日7.5gを2-3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

重要な基本的注意

1.本剤の使用にあたっては、患者の証(体質・症状)を考慮して投与すること。なお、経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合には、継続投与を避けること。

2.本剤にはカンゾウが含まれているので、血清カリウム値や血圧値等に十分留意し、異常が認められた場合には投与を中止すること。

3.他の漢方製剤等を併用する場合は、含有生薬の重複に注意すること。

副作用(本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため、発現頻度は不明である)。

□重大な副作用

1.偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等)を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。

2.ミオパシー: 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。

その他の副作用

消化器(頻度不明):食欲不振、胃部不快感、悪心、腹痛、下痢等

で質問の症状に該当する具体的な副作用は記載されていない。

甘草成分中のグリチルリチンの加水分解物であるグリチルレチン酸及びその誘導体カルベノキソロンは腎尿細管細胞の11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(11β-HSD)を阻害する。その結果、細胞内に入ったコルチゾールはコルチゾンへの変換を阻害され、Na貯留、K排泄促進を起こし、アルドステロン症様症状を呈すると考えられる。症状としては高血圧、浮腫を認めることが多く、検査所見では尿中K排泄増加伴う低K血症代謝性アルカローシス、低レニン血症、血中アルドステロン濃度の低下を認める。

初期症状としては『手足の痺れ、筋肉痛、全身のだるさ、疲れやすさ、脱力感(手足に力が入らない感じ)』等が現れる。

甘草大量摂取者に多いとされる偽性アルドステロン症(pseudoaldosteronism)の発現は、グリチルリチンとして120mg程度では問題ないとされているが、グリチルリチンとして75-150mg以下の少量摂取での副作用発現の報告もあり、特に高齢者、腎機能低下患者では注意する必要がある。

副作用の発現時期は、通常3カ月以内とされているが、10日以内や数年を要している場合もある。

薬の副作用を考える場合、

?原疾患の症状との関連はないのか

?既に薬を服用している場合、相互作用は考えられないのか

?追加処方により副作用が発現した場合、追加処方の薬剤に該当する副作用が報告されているのかどうか

等を検討することが必要であり、他に服用している薬剤がないのであれば、その薬剤を中断し経過を見ることで症状が消失すれば、その薬剤の副作用と見ることが可能である。

高血圧:急激な血圧の上昇による頭痛、意識障害等

低カリウム血症:筋力低下、多尿、腎濃縮力低下、糖忍容力低下、心電図上T波の平低化

ミオパシー:筋力低下、筋萎縮症、筋痛、筋の強張り、筋の短縮とこれによる関節可動域制限

その他、不顕性の高血圧があり、Glycyrrhizinateの摂取によって急性に顕在化した可能性も考えられる。従って、直ちに薬の服用を中断するとともに、処方医に検査を依頼することをお奨めする

 

1)ツムラ酸棗仁湯エキス顆粒(医療用)添付文書,2005.6.改訂
2)医薬品情報Q&A甘草による偽アルドステロン症とは?;日本薬剤師会雑誌55(7):815(2003)
3)南山堂医学大辞典 第19版;南山堂,2006

   [065.PSE:2007.4.17.古泉秀夫]             

「アルツハイマー病治療薬AC-3933について」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:薬名検索・治験薬・AC-3933・アルツハイマー病治療薬・認知症治療剤・ベンゾジアゼピン受容体・BZR

 

Q:アルツハイマー病治療薬AC-3933について

 

A:AC-3933(大日本住友)はベンゾジアゼピン受容体(BZR)インバースアゴニスト作用を有する認知症治療剤(経口剤)である。BZRインバースアゴニストはGABAの機能を減弱させ、間接的に中枢神経系を亢進させる。脳内acetylcholine量を増やすことで、記憶障害を改善するacetylcholine esterase阻害剤とは作用機序が全く異なり、acetylcholine遊離促進によりacetylcholine神経系を賦活すると共に、グルタミン酸神経系を賦活する作用を有し、認知症の中核症状である記憶障害の改善が期待される。

開発段階:前期第II相臨床試験終了(欧州)、前期臨床第II相臨床試験(米国)。国内では第I相臨床試験開始。2004年大日本製薬は、aventis社に日本を除く全世界の開発権をライセンスしたが、2005年ライセンスを解消した。国内第II相臨床試験は2007年開始を予定している。

一般名:未定

剤 型:経口剤

 

1)治験薬一覧;New Current,17(28):27(2006.12.20.)
2)治験薬一覧;New Current,18(7):29(2007.3.20.)

   [011.1.AC:2007.4.10.古泉秀夫]

「エストロゲン製剤の副作用-体重増加・vitaminB等の低下」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:副作用・体重増加・estrogen製剤・エストロゲン製剤・エストラジオール・エストロン・黄体ホルモン・経口避妊薬・progesterone製剤・プロゲステロン製剤

 

Q:エストロゲン製剤の服用により体重増加は起こるか。またvitaminB6、葉酸等の低下は報告されているか。

A:エストロゲン製剤として内因性ホルモンであるエストラジオール(E2)とその代謝産物エストロン(E1)の誘導体、及び合成卵胞ホルモン製剤が広く使用されている。estrogenには子宮等の性器への作用のみならず、骨や血管、脂質代謝等の性器外作用も注目されており、estrogen製剤の用途は拡大しつつある。
現在、市販されているエストロゲン製剤は、次記の通りである。

estradiolとその誘導体

一般名・商品名(会社名) 副作用

estradiol

エストラダーム貼付剤・M貼付剤(キッセイ)

エストラーナ貼付剤(久光)

フェミエスト貼付剤(あすか)

[適]1)更年期障害及び卵巣欠落症状に伴う次の症状:血管運動神経症状(Hot flush及び発汗)、泌尿生殖器の萎縮症状。2)閉経後骨粗鬆症

重大:1)アナフィラキシー様症状。2)静脈血塞栓症、血栓性静脈炎。
その他:1)皮膚[一次刺激性の接触性皮膚炎(後半、掻痒等)、かぶれ、水疱、色素沈着等]。2)生殖器[外陰部腫張感、不正出血、消退出血、帯下、外陰部掻痒感、子宮内膜増殖]。3)乳房[乳房痛、乳房緊満感、乳頭痛、乳腺症]。4)精神神経[偏頭痛、頭痛、不眠、眩暈、眠気]。5)循環器[動悸、胸部不快感、血圧上昇、静脈瘤の悪化]。6)消化器[嘔吐、嘔気、腹部膨満感、心窩部痛、下痢、便秘]。7)電解質[浮腫、同種薬剤で特に大量継続投与:Naや体液貯留の報告]。8)過敏症[全身の掻痒感、発疹、蕁麻疹、アレルギー性接触皮膚炎、顔面掻痒、顔面紅斑等]。9)肝臓[AST・ALT・Al-P上昇・LDH上昇等の肝機能障害、胆石症、胆嚢疾患、胆汁欝滞性黄疸]。10)その他[腹痛、下腹部痛、背部痛、腰痛、耳鳴、発熱、倦怠感、下肢痛、ホルフィリン症の悪化、喘息の悪化、耳硬化症、体重増加、体重減少、関節痛、TG上昇、フィブリノーゲン増加]。11)長期連用[同種薬剤長期連用:血栓症]。

estradiol benzoate
オバホルモン水性懸濁注(あすか)
[適]無月経、無排卵周期症、月経周期異常(稀発月経、多発月経)、月経量異常(過少月経、過多月経)、月経困難症、機能性子宮出血、子宮発育不全症、卵巣欠落症状、更年期障害、乳汁分泌抑制。

重大:1)血栓症。
その他:1)過敏症[過敏症状]。2)精神神経[精神障害の既往患者に再発]。3)電解質代謝[特に大量継続投与:高Ca血症、Naや体液の貯留]。4)子宮[消退出血、不正出血、経血量変化等]。5)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。6)投与部位[疼痛、硬結]。7)その他[頭痛]

estradiol dipropionate
オバホルモンデポー注(あすか)
[適]無月経、月経周期異常(稀発月経、多発月経)、月経量異常(過少月経、過多月経)、月経困難症、機能性子宮出血、子宮発育不全症、卵巣欠落症状、更年期障害、不妊症。

重大:血栓症[卵胞ホルモンの長期連用で報告]。
その他:1)過敏症[過敏症状]。2)子宮[消退出血、不正出血、経血量変化等]。3)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。4)電解質代謝[高Ca血症、Naや体液の貯留]。5)消化器[悪心・嘔吐、下痢等]。6)精神・神経[精神障害既往の再発]。7)皮膚[多形性紅斑、出血性発疹、アレルギー性皮疹、痒疹、肝斑等]。8)肝臓[胆汁欝滞性黄疸]。9)投与部位[疼痛、硬結]。10)その他[頭痛、眩暈、抑鬱、倦怠感]。

estradiol valerate
プロギノン・デポー(富士)
ペラニン・デポー(持田)
[適]無月経、月経周期異常(稀発月経、多発月経)、月経量異常(過少月経、過多月経)、月経困難症、機能性子宮出血、子宮発育不全、卵巣欠落症状、更年期障害、不妊症。

重大:1)血栓症。

その他:1)過敏症[過敏症状]。2)精神神経[精神障害の既往患者に再発]。3)電解質代謝[特に大量継続投与:高Ca血症、Naや体液の貯留]。4)子宮[消退出血、不正出血、経血量変化等]。5)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。6)投与部位[疼痛、硬結]。7)その他[頭痛]

ethinylestradiol
プロセキソール錠(あすか)
[適]前立腺癌、閉経後の末期乳癌(男性ホルモン療法に抵抗を示す場合)

重大:1)血栓症[長期連用:血栓症(心筋、脳、四肢等)]。2)心不全、狭心症。
その他:1)過敏症[発疹等]。2)肝臓[肝機能異常、黄疸等]。3)循環器[血圧上昇等]。4)電解質代謝[高Ca血症、Naや体液の貯留]。5)子宮[不正出血、経血量変化、下腹部痛等]。6)乳房[乳房緊満感、乳房痛等]。7)消化器[悪心・嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛、胃痛等]。8)精神神経[精神障害既往の再発]。9)その他[頭痛、眩暈、倦怠感、陰萎]

estriolとそのエステル体

estriol
エストリール錠(持田)
ホーリン注(あすか)
[適] (内)1)更年期障害、膣炎(老人、小児及び非特異性)、子宮頚管炎並びに子宮腟部糜爛。2)老人性骨粗鬆症(0.5・1mg錠)。(注)分娩時の頸管軟化。

重大:血栓症[卵胞ホルモンの長期連用で報告]。
その他:1)過敏症[発疹等]。2)子宮[不正出血、帯下増加等]。3)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。4)投与部位 (注)[腫張、発赤、疼痛、硬結]。5)肝臓(内)[AST・ALT上昇等]。6)消化器(内)[悪心・嘔吐、食欲不振等]。7)その他(内)[眩暈、脱力感、全身熱感、体重増加]

estriol(tri)propionate
エストリール・デポー注(持田)

重大:血栓症[卵胞ホルモンの長期連用で報告]。
その他:1)過敏症[発疹等]。2)子宮[消退出血、不正出血]。3)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。4)投与部位[腫張、発赤、疼痛、硬結]。

estriol acetate benzoate
ホーリンデポー注(あすか)
[適]更年期障害、膣炎(老人、小児及び非特異性)、子宮頚管炎並びに子宮腟部糜爛、分娩時の頸管軟化。

重大:血栓症[卵胞ホルモンの長期連用で報告]。
その他:1)過敏症[発疹等]。2)子宮[消退出血、不正出血]。3)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。4)投与部位[腫張、発赤、疼痛、硬結]。

結合型エストロゲン

estrogens conjugated
プレマリン錠(ワイス)
[適]更年期障害、卵巣欠落症状、卵巣機能不全、膣炎(老人、小児及び非特異性)、分娩時の頸管軟化。

重大:血栓症、血栓塞栓症[四肢、肺、心、脳、網膜等]。
その他:1)過敏症[発疹、蕁麻疹]。2)電解質異常[特に大量継続投与:Naや体液の貯留(浮腫、体重増加等)]。3)生殖器[帯下増加、不正出血、経血量の変化]。4)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。5)消化器[腹痛、悪心・嘔吐、食欲不振、膵炎]。6)皮膚[色素沈着、脱毛]。7)精神神経[頭痛、眩暈]。8)肝臓[AST・ALT・Al-P上昇等]。

合成卵胞ホルモン

fosfestrol
ホンバン錠・注(杏林)
[適]前立腺癌

重大:1)血栓症[冠動脈、脳、四肢等]。2)心筋梗塞、心不全。
その他:1)循環器[心電図異常、心悸亢進]。2)肝臓[黄疸、AST・ALT・γ-GTP・Al-P上昇等]。3)電解質異常[高Ca血症、Naや体液の貯留]。4)脂質代謝[脂質代謝異常]。5)精神神経[眩暈、頭痛、知覚異常、精神障害の既往者の再発]。6)消化器[悪心・嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛]。7)過敏症[発疹等]。8)乳房[乳腺・乳房腫脹、乳房痛、乳頭周囲の色素沈着等]。9)その他[肛門・陰部周囲の掻痒感・灼熱感・しびれ感、尿道狭窄、発熱、浮腫、蛋白尿、倦怠感、陰萎、胸部圧迫]。

以上のestrogen製剤の中で、副作用に『体重増加』の記載があるのは、estradiol・estriol・estrogens conjugatedの3種類である。そのうちestradiol・estriolはその他の分類であり、estrogens conjugatedは電解質異常に分類されている。但しestriolの副作用として報告されている体重増加は、調査症例数1,234例中副作用発現症例数60例、副作用発現件数73件中僅かに1例(0.08%)のみである。

但し、黄体ホルモン(progesterone)であるnorethisterone等とestradiolの配合剤である経口避妊薬(oral contraceptive)では次の報告がされている。

estrogenはナトリウム貯留の原因となることがある;一部の服用者は、浮腫を起こし、体重が3-5ポンド(1.36-2.27kg)増える場合もある。progestin(黄体ホルモン)は同化作用を持ち、食欲を増すために体重が増加する女性もいる。従って女性の体重が4.5kg/年以上増加した場合は、progestin作用の弱い経口避妊薬を用いるべきであり、もし女性が減量を試みても成功しない場合は、経口避妊薬を中止しなければならない。

経口避妊薬によって、一部のビタミン、微量ミネラル及び脂質の血清値が変化することがある。pyridoxine(vitaminB6)、葉酸、他の殆どのvitaminB、アスコルビン酸、カルシウム、マンガン、亜鉛値は低下する。vitamin A値は上昇する。しかし、これらの変化について臨床的な重要性は認められていない。従って、経口避妊薬服用中の女性にビタミン剤を補充する必要はないとする報告がされている。

 

1)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2007
2)エストリール錠IF,2000.11.
3)福島雅典・総監修:メルクマニュアル 第17版 日本語版;日経BP社,1999

[065.EST:2007.3.23.古泉秀夫]

「管花党参について」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:薬名検索・漢方薬・党参・管花党参・かんかとうじん・上党人参・黄参・獅頭参・中霊草

 

Q:管花党参とはどの様なものか

 

A:管花党参とは、党参[本草従新]に分類される同属植物である。党参の異名として次の名称が紹介されている。

異名:上党人参、黄参、獅頭参、中霊草。

基原:キキョウ科の植物。和名:ヒカゲツルニンジンの根。

原植物:ヒカゲツルニンジン(Codonopsis pilosula[Franch.]Nannf.)。遼参(リョウジン)、三葉菜(サンヨウサイ)、葉子草(ヨウシソウ)ともいわれる。多年生草本。

党参の薬材は産地により異なり、西党、東党、路頭(路:

「ABX-EGFについて」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:薬名検索・ABX-EGF・治験記号・抗癌剤・ヒトモノクローナル抗体・上皮細胞成長因子受容体・EGFR・panitumumab・パニツムマブ・結腸直腸癌

 

Q:治験記号ABX-EGFの薬剤について

 

A:治験記号ABX-EGF(Amgen社-Abgenix社)の薬剤は、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)を標的とした完全ヒトモノクローナル抗体製剤のパニツムマブ(panitumumab)である。我が国における第I相臨床試験において、有望な結果が得られたことが日本癌治療学会において国立がんセンター消化器内科の山田康秀氏によって報告されたとされる。

ABX-EGFは、米・アブジェニックス社(Abgenix社)がトランスジェニックスマウス(XenoMouse)を用いて産生した、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に対する完全ヒト化モノクロナール抗体(IgG2)である。米・アムジェン社(Amgen社)と共同で抗がん剤として開発し、国内でもAmgen社が臨床試験を進めている。

本抗体はEGFRを直接標的にした完全ヒト化モノクロナール抗体(静注)である。米・イムクローン社のキメラ抗体エルビタックス(セツキシマブ:cetuximab)や英・アストラゼネカ社のイレッサと競合する。cetuximabはキメラ型のモノクロナール抗体で、また、前投薬を必要とする週1回の静注剤であるが、ABX-EGFは前投薬を必要とせず、2週間若しくは3週間に1回の静注投与で済む可能性が期待されている。

治験段階で報告されている有害事象のうち発現頻度の高いのは皮膚発疹(90%超)で、その他の事象としては、疲労感、貧血、悪心、食欲不振、便秘、低マグネシウム血症等が見られている。

商品名:Vectibix

米では2006年9月転移性結腸直腸癌の標準的な化学療法後の第3選択療法剤としてFDAにより承認された。

1)http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/news/egfr1.html,2007.3.29.
2)パニツムマブ;New Current,17(27):25-29(2006.12.10.)

  [011.1.PAN:2007.4.9.古泉秀夫]   

「アルツハイマー病治療薬リバスチグミンについて」

火曜日, 3月 4th, 2008

KW:薬名検索・アルツハイマー病・リバスチグミン・rivastigmine・エクセロン・ENA713D

Q:アルツハイマー病治療薬リバスチグミンについて

A:リバスチグミン(rivastigmine)は、アルツハイマー型認知症の治療薬で、経皮吸収型製剤として、ノバルティス-小野薬品の両社で共同開発している薬剤である。

治験記号:ENA713D

剤 型:経皮吸収型貼付剤(パッチ剤)。

投与方法:1日1回貼付する。

本剤は、アルツハイマー型認知症治療薬としては初めての経皮吸収型製剤であり、国内では現在第II相臨床試験が実施されている。今後、両社が積極的に協力して臨床開発に取り組むことにより、早期の製品化が期待される。

アルツハイマー型認知症は、記憶や思考、行動に関して重要な役割を担っているacetylcholine(脳内神経伝達物質)の脳内生成が減少することによって発症するとされている。rivastigmineは、脳内神経伝達系を活性化するcholinesterase inhibitors(コリンエステラーゼ阻害薬)の一種で、acetylcholineの分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼ、ブチリルコリンエステラーゼの双方を阻害する薬剤として期待されている。

アルツハイマー型認知症に、アセチルコリンエステラーゼが深く関与することは知られているが、一方で、病態の進行に伴ってブチリルコリンエステラーゼの関与がより深くなってくることが報告されている。rivastigmineは二つの分解酵素を阻害し、脳内acetylcholineの有効利用を促進することから、アルツハイマー型認知症患者の症状の進行を抑制することが期待されている。

rivastigmineの経口剤であるエクセロン

「金銀花について」

火曜日, 3月 4th, 2008

KW:薬名検索・金銀花・金銀藤・金銀花藤・忍冬藤・忍冬・スイカズラ・土銀花・金銀子・lonicera flower・lonicera leaf and stem

Q:金銀花について

A:金銀花は、?農本草経集注に収載されている『忍冬藤』の花蕾あるいは花の部分である。

異 名:老翁鬚(ロウオウシュ)・金釵股(キンサコ)・水楊藤(スイヨウトウ)・千金藤、鴛鴦草(エンオウソウ)、鷺

『I先生からの手紙』

金曜日, 2月 22nd, 2008

                                                                        鬼城竜生

 

I先生から絵葉書を頂戴した。左の背後に電飾された東京タワーが聳え立ち、緑青色にライトアップされたプリンスホテルが俯瞰的に写し出されている絵葉書である。絵葉書の画面を眺めているうちに、先ず最初に胸に来たのは、この写真は何処から写したのか ということである。高い位置から撮らなければこのような写真を撮ることは出来ないが、他の建物に邪魔されずにこのような写真が東京タワー-001 撮れるところが、あの立て込んだ地域の何処にあるのだろうかという疑問である。

次に唐突に思いが至ったのは、そういえば東京タワーは遠くから眺めたことはあるが、側に行ったこともなければ登ったこともないということである。

まあ、一度位は行っておくかというので、1月16日(水曜日)にカメラ片手に出かけた。

大江戸線大門駅で降り、日比谷通りを横切って増上寺(三縁山広度院増上寺)の庭に入り、増上寺の建物を取り込んだ東京タワーの写真を何枚か撮した。

その後、時間としては、昼を過ぎていたので、東京タワーに登る前に、眼に付いた増上寺の境内にあったお休み処(芝縁)で、覗いてみたら偉く閑散としていたので、昼飯を食うことにして入ってみた。入ったは良いが、注文した鰊蕎麦に口を付けるまでは、失敗したかなと若干心配していたが、妙なところにある店の割には、真っ当な蕎麦が出てきたので安心して食うことが出来た。

店を出ると千躰子育て地蔵を左手に見て、一般道が通っており、それを通り抜けると東京タワーに出る。東京タワーでは大展望台東京タワー-002 (150m)と特別展望台(250m)の展望券を販売していた。どうせ番度登りに来るところではないということで、両方まとめて面倒を見ることにしたが、人の建て込んでいる日では上に揚がるのは相当手間暇かかるだろうと思われたが、流石に平日のこともあり、足 止めをされることなくエレベータに乗ることが出来た。大展望台で下りて一回り周りを見学し、次に特別展望台行きのエレベータに乗り換えて、250mの位置にある特別展望台に揚がった。残念なが ら快晴とはいかず、パンフレットに書かれている富士山を見るほど遠方の風景を見ることは出来なかったが、それでも海の見える風景は、大きな広がりを見せて眼に迫ってくるため、納得をするものであったが、写真が撮れたかどうかは別の話である。何せガラス越しに撮る写真である、完成度が低くても仕方がない。

早々に下りてきて東京タワー水族館に入ってみたが、世界初の観賞魚専門の水族館として1978年に開館したということであるが、館内に生臭系の臭いが充満しているのには些か参った。他の人は平気な顔をして見学していたようであるが、あれはそういうもんだと思って見学していたのではないかと思うが、とてものことに長居は出来なかった。もう少し換気の工夫はした方がいいのではないか。

帰り際に再度増上寺の境内に入り『徳川将軍家墓所』を拝見させていただき、大殿の中を見学させていただいた。その時、外国の子供東京タワー-003達が大勢、先生に連れられて見学して歩いていたが、何か特別の謂われがあるのかどうか。境内にグラント杉なるものが植えられており、明治12年(1879年)、アメリカ合衆国第18・19代大統領グラント将軍が訪日の際、参拝記念に植樹されたものの説明がされており、この関係で外国人学校の小学校の子供達が、見学に来るのかもしれない。
帰りは芝公園の中に足を踏み入れたが、紅葉滝なる滝が流れ落ちていた。都会のど真ん中に、小なりとはいえ滝を維持するのは  大変なことと思うが、関係者の努力に拍手を送る次第。

大江戸線大門駅に戻る途中、居酒屋“秋田屋”によって燗酒1本(2合徳利)とお一人様1本限りの『タタキ』と『タン塩』で一杯やったが、本日の歩数は11,272歩ということである。

ところでI先生の絵葉書に『八十路に酒のみ遊ぶ友が好し』、『年老いて真実話せるガキ大将』の二句が書かれていたが、I先生は川柳作家である。何時もお手紙を頂く度に、幾つかの句が書かれているが、現在の世相を洒落のめすという句風より、先生御自身の心象風景を切り取って見せてくれるとい句風であると拝察させていただいている。

最も故地虎は川柳は全く駄目で、へぼ句を捻る程度であるから、正確な評価は出来ないが、I先生の作品を読ませていただいているうちに、その辺の見当が付くようになったということである。

                                                                  (2008.1.31.)

適応外使用『フィブリン糊』

金曜日, 2月 22nd, 2008

                                                                  医薬品情報21
                                                                        古泉秀夫 

薬害C型肝炎問題で、手術時の縫合用接着剤として使用された『フィブリン糊』で感染したとみられる患者2人が、国などに対する損害賠償請求訴訟に加わったことが、7日終わった。血液製剤フィブリノゲンによる感染で提訴した原告は170人以上いるが、この製剤に別の薬品を加えて作るフィブリン糊の使用による提訴は初めて。『糊』は心臓外科などで、フィブリノゲン使用者の3分の1以上に当たる7万9000人に使われたと推定されているが、被害調査も遅れている。患者は「潜在的な感染者が多数いるはず、早急な調査と救済を」と訴えている[読売新聞,第47328号,2007.12.7.]。

フィブリン糊:フィブリノゲンに他の複数の製剤を配合して使う。1981年頃から1987年頃まで外科、心臓外科、脳外科、整形外科などで縫合時の止血用として使われた。旧ミドリ十字は19人の感染例を把握していた1989年に「『糊』による感染者はゼロ」と厚生省(当時)に虚偽報告。1988年以降他社がキットとして発売したが、これによる感染報告はない。

東京都内の私立病院で心臓手術時に縫合用接着剤『フィブリン糊』を930人に使い、このうちの少なくとも57人がC型肝炎ウイルスに感染していることが12日分かった。薬害C型肝炎集団訴訟の被害者救済法では『糊』も血液製剤「フィブリノゲン」と同様に救済の対象になるが、原告207人のうち『糊』を使用した人は2人に止まっている。『糊』による感染症は厚生労働省の調査でも50人弱しか判明しておらず、実態把握が大幅に遅れていることが改めて浮き彫りになった。

主に産科の出血時に使われたフィブリノゲンとは異なり『糊』は薬事法で承認された使用方法ではなかった。しかし、発売元の旧ミドリ十字は、小冊子を作るなどの広く使用法を紹介し、心臓外科、整形外科、脳外科などで止血用や手術時の縫合用(縫合時の縫い目の封鎖用)として幅広く使われた。厚生労働省は『糊』の使用者を7万9000人と推計している[読売新聞,第47364号,2008.1.13.]。

手術時の縫合用接着剤として使用された『フィブリン糊』が、火傷や鼻血の治療、美容外科手術など幅広い分野で使用されていた実態が、医師の証言などから判ってきた。2008年1月11日に成立した薬害C型肝炎被害者救済法の救済対象に含まれるが、自分の治療に使用されたこと自体を患者側が知らないことから、被害実態の調査が遅れているとされる[読売新聞,第47365号,2008.1.14.]。

しかし、『フィブリン糊』の使用は適応外使用であり、使用の実態は、医師以外の誰にも判らない。従って、医師が使用した患者を記憶していなければ、患者側は全く判らないということになる。感染の恐れがあるのは1981年から1987年頃までで、旧ミドリ十字が製造販売したフィブリノゲンを原料にして調製した『糊』ということである。その間に使用した記憶がある医師は、可能な限り患者の掘り起こしに努力すべきであり、この時期に観血的処置を受けた記憶のある人は、検査を受けてみた方がいいのではないかと思われる。

更に旧ウェルファイド社が調べた『フィブリン糊』の使用された疾患名と用途が次の通り報告されている。

脳腫瘍、脳出血、角膜移植、鼻血、中耳炎、歯肉出血、気胸、大動脈瘤、心臓手術、ペースメーカー埋め込み、悪性腫瘍、胃潰瘍、子宮筋腫、骨折、アキレス腱接合、胆石症、火傷、皮膚移植、神経縫合、椎間板ヘルニア等』

これらの疾患名で治療を受けた記憶のある人は、治療を受けた医療機関に積極的に相談すべきではないか。また医療機関も、患者からの相談があれば、丁寧な対応を取るべきである。

ただ、実際には、更に広い範囲で使用されていたのではないかと思うが、果たしてどうなんだろうか。病院によっては、医師の依頼を受け、『院内特殊製剤』として薬剤部の製剤室で調製していた可能性もある。ただし、1981年頃ということであれば、既に26年が過ぎている。あるいはその当時製剤に携わっていた薬剤師は、既に退職している可能性もあり、製剤伝票も保存はされていないと思われる。退職者にも声を掛け、兎に角使用していた事実を確認することが先ず最初にすることで、そこから手繰り寄せなければ、全体的な様相を把握することは出来ないのかもしれない。

兎に角、適応外使用で使用されたということである。使用実態を正確に把握するためには、医療機関の努力無しには調査は完結しない。

                                                                    (2008.1.23.)

ワクチン接種歴

金曜日, 2月 22nd, 2008

魍魎亭主人

 

北里大学では来年4月に入学する学生約1,700人に対し、はしか、風疹(ふうしん)の免疫の有無を確認させ、免疫が不十分な場合、自主的なワクチン接種を要請するなど徹底した対策を実施する方針を決めた。大学の一部では、入学後に免疫検査を実施しているところもあるようであるが、入学前に接種を求めるのは異例。はしかが流行する4-5月までにワクチンの効果を高める狙いがある。新入生全員に、

(1)はしか、風疹などワクチン接種証明書を入学時に提出する
(2)はしか、風疹のワクチン接種歴が1回以下の場合、入学前に検査を受け、免疫がない場合

ワクチンを接種するよう通知するというものである。

大半の学生はワクチン接種は1回のみと見られる。入学後の健康診断でも血液検査を行い、場合によっては追加のワクチンも接種する。北里大はこれまで医学部など病棟での実習がある4学部で入学後の免疫検査、ワクチン接種を実施してきたが、今年5月に4学部以外の1年生を含む2人がはしかを発症。全7学部の1年生に休講措置を取ったという[読売新聞,第47332号,2007年12月11日]。

傘下に病院をもち、病院実習をしなければならない大学であれば、当然の配慮ということであるが、予防接種を強制されたことで、事故が発生した場合の対応策等は考えておられるのか。甚だお節介な話だが、今後、病院実習が義務付けられる薬科大学も、病院実習をする前に、予防注射歴を確認し、免疫低下者には予防接種を強制するとすれば、その辺の問題が気になるのである。予防注射による副作用の発現はさておくとして、強制的な予防注射が必要とするのであれば、国の責任で行うべきではないのか。

ところで、突然『貴方は破傷風ワクチンを接種してますか』ときかれて、明確に回答できる方々がどの程度いるのであろうか。

破傷風ワクチンが特殊すぎるというのであれば、『麻疹ワクチン』でもいい。

摂取したことがあるのか無いのか。乳幼児の頃のワクチン接種の記憶など、殆どの方々が記憶中枢の外に脱落させてしまっているのではないか。特に現在中年以上、あるいは団塊の世代といわれる世代の人達にとっては、そのような情報は正確に記憶していないというのが実情ではないかとおもわれる。

最も、突然この様な話を持ち出されても、どの辺に話の意図があるのか分からないということになるのかもしれないが、先日知り合いが怪我をして熱が下がらないということから、破傷風ではないのかという話になり、破傷風ワクチン接種の記憶にまで立ち至ったというわけである。

今後、予防医学を充実させるとすれば、感染症対策として、間違いなくワクチン接種の重要性が増す。それに従って種々のワクチンを接種する機会が増えることは間違いないと思われるが、接種したワクチンの種類と、再接種の時期を当人が明確に認知する手立てが取られていないというのは問題ではないか。電子化した健康保険証のカードの中に、個人の病歴やワクチン接種歴を登録する等ということは出来ないのかどうか。

勿論、盗難対策や紛失時の対策は十分にしなければならないが、二重、三重の検査等医療費の無駄を省くためにも、通院時に電子化した情報を持っていくという事は必要になるのではないか。

                                                                    (2008.1.1.)

『アルツハイマー病ワクチン』

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:薬名検索・ワクチン・アルツハイマー病・AβN-20・amyloid-β・アミロイド-β・点鼻用ワクチン・AN-1792

 

Q:アルツハイマー病のワクチンが開発中と聞いたが、それはどの様なものか

A:アルツハイマー病ワクチンについて、次の報告が見られる。

アルツハイマー病ワクチン経口剤AβN-20(化血研-ジェノラックBL)は、アルツハイマー病(Alzheimer disease)の原因となる老人斑構成成分であるamyloid-βを乳酸菌を担体として組込んだAlzheimer diseaseの治療・予防薬である。
アルツハイマー病の病態について、amyloid-βの凝集・沈着による老人斑の形成が原因であるとするアミロイドカスケード仮説が有力であるが、この仮説をもとにアルツハイマー病の新しい治療法としてのワクチン療法が注目されている。ワクチン療法の目的はamyloid-βをワクチンとして投与し、それに対する抗体を体内で産生させ、抗体が老人斑を除去し、更に分泌されたamyloid-βの凝集・沈着を抑制することにより神経細胞の脱落を防止しようとするものである。
amyloid-βの液性免疫惹起部位を含む断片をコードするDNAをもとに、微生物を形質転換させ、AβN-20を発現する発現ベクター構築した。その微生物として乳酸菌を使用した。AβN-20の懸濁液各投与量をマウスに週7日間に6回経口投与し、4週間継続投与した。血液中の抗体産生を確認するため、実験開始前、投与開始から3週間後、5週間後、6週間後、7週間後の計5回採血した。その結果、AβN-20投与マウス群では、amyloid-βを発現しないベクターのみを投与したコントロール群に比較して血清中の有意な抗体上昇が認められた。

アルツハイマー病点鼻ワクチン(ディナベック-長寿医療センター)は、センダイウイルスベクターを利用したアルツハイマー病治療用点鼻ワクチンである。センダイウイルスベクターにアルツハイマー病の原因となる蛋白質amyloid-βの一部を作るRNA(リボ核酸)を組込む。これを鼻から吸入すると細胞に入り込み、amyloid-βに似た物質を作り始める。その結果、人体の免疫機能が働いてamyloid-βの固まりを除去する抗体を生み出し、症状を改善する仕組み。マウスへの1回経鼻投与で、脳の前頭葉や頭頂葉等でアルツハイマー病特有の老人斑が大幅に減少することが確認された。髄膜脳炎等の副作用は認められなかった。開発機関2009年を目途に臨床開始を目指している。センダイウイルスベクターは細胞質で働くため、外来の遺伝子が挿入される事により起きる副作用は回避されると報告されている。

Aβ42ワクチン(Novartis Pharma-東京都神経科学総合研究所):松本陽・分子神経病理学部門長らはアルツハイマー病の予防や治療につながる安全性の高いワクチンを開発した。DNA(デオキシリボ核酸)を運び役に使い、病気の原因と疑われる物質の増加を抑える遺伝子を患者の体内に導入する。スイスの製薬大手ノバルティスと共同で動物実験に成功、早期の臨床試験開始を目指す。アルツハイマー病は脳に「amyloid-β」と呼ぶたんぱく質の小片が蓄積して老人斑と呼ぶ染みができ、神経細胞が死んで起きるとされる。最近の研究で、amyloid-βを体内に入れると免疫反応が起こり、脳内に蓄積したamyloid-βの量が減ることが分かっている。都神経研の松本部門長と大倉良夫研究員らはこの仕組みに着目。amyloid-βを作る遺伝子を患者の体内に入れる遺伝子治療技術を応用し、穏やかな免疫反応を起こすワクチン療法を考案した[2004年9月14日/日経産業新聞]。Aβ42ワクチンはAβペプチドワクチンに替えて、プラスミドと呼ぶ環状DNAにamyloid-βの遺伝子を組込んだワクチン(非ウイルス性AβDNAワクチン)を開発したもの。遺伝子治療で一般的なウイルスベクターを使う方法よりも遺伝子導入率が弱く、繰返し注射が必要だが、ウイルス異常増殖や白血病などの副作用の危険が少なく、安全性が高いと報告されている。

AN-1792(Elan社-Wyeth社):2001年9月から欧米の計5カ国で行われていたアルツハイマー病ワクチンAN-1792のフェーズIIの臨床試験が中止されたことが分かった。3月1日に、臨床試験を共同で実施していたアイルランドのElan社と米国のWyeth社が、プラセボ群を含む360例のうち15例の患者に、重篤な脳炎症状の副作用が出現したため、治験を中止すると正式に発表した[日経メディカル 2002年4月号]。

 

1)研究開発Report;New Current,18(3):51(2007.2.1.)
2)治験薬一覧表;New Current,17(28):27(2006.12.20.)

                                               [011.1.ALZ:2007.3.23.古泉秀夫]

「オレンジベンジンについて」

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:院内製剤・特殊製剤・オレンジベンジン・石油ベンジン・etroleum Benzin・オレンジ油・Orange Oil・sweet orange oil・bitter orange oil

 

Q:『オレンジベンジン』なるものが、絆創膏痕の清拭用に用いられていると聞くが、これはどの様なものか

A:院内製剤として調製し、使用しているものと思われるが、処方内容については公表された資料の入手ができないため、調査不能である。
ただし、使用原材料はいずれも局方品として市販されているので、各使用薬物の内容について以下に紹介する。

[日局]石油ベンジン(Petroleum Benzin): 本品は石油から得た低沸点の炭化水素類の混合物である。

本品は無色澄明の揮発性の液で、蛍光がなく、特異な臭いがある。本品はエタノール(99.5)又はジエチルエーテルと混和する。本品は水に殆ど溶けない。本品は極めて引火し易い。

[貯 法]火気を避け、30℃以下で保存する。気密容器。

[薬効薬理]局所刺激作用が強く、深部の疼痛に対するcounter-irritantとして皮膚に塗布することがある。ジギタリス、バッカク、ホミカ等の生薬の脱脂の他、甲状腺やその他の臓器の脱脂に利用される。軟膏を塗布した皮膚の清拭にも使用される。脂肪、樹脂などの溶剤として用いられる。

[副 作 用]大量の誤飲又は吸入により15分から1時間くらいの間に、急性胃腸炎、嘔吐、眩暈、錯乱、メトヘモグロビン形成によるチアノーゼ、肺水腫などの症状が現れる。汚染環境に長時間曝露されるときには慢性中毒に陥り、眩暈、頭痛、四肢麻痺、神経痛、全身の衰弱、貧血、記憶力の減退などの他、肝、腎や真菌の脂肪変性、肺炎などの病変が認められる。

[製 剤]複方チアントール・サリチル酸液

[日局]オレンジ油(Orange Oil):本品はCitrus属諸種植物(Rutaceae)の食用に供する種類の果皮を圧搾して得た精油である。集油率は0.3-0.5%である。本品は黄色-黄褐色の液で、特異な芳香があり、味は僅かに苦い。本品は等容量のエタノール(95)に濁って混和する。

[貯 法]遮光して保存する(主成分のlimoneneは不安定で、光や空気によって酸化、重合し易く、特有の香味が変化し易い)。気密容器。

[名 称]オレンジ油には2種類有り、Citrus sinensis(L.)Osbeckより得られる精油をsweet orange oilといい、Citrus aurantium L.subsp.amara L.より得られる精油をbitter orange oilという。生産量はsweet orange oilの方が多い。
[成 分]主成分はd-limonene約90%であり、その他テルペン類、少量のdecylaldehyde、d-linalool、citral等を含む。果皮を圧縮して得たオレンジ油は、果皮から移行した不揮発性成分(フロクマリン類など)を含んでおり、冷蔵中に結晶として析出することがある。水蒸気蒸留して得たオレンジ油は、それらの成分を含まない変わりに、風味が劣る。

[適 用]賦香料

[製 剤]加香ヒマシ油

[製 法]加香ヒマシ油

ヒマシ油 990mL
オレンジ油            5mL
ハッカ油              5mL
全量               1000mL
以上を秤取し混和して製する。

加香ヒマシ油の処方に配合されているオレンジ油の配合率は0.5%である。なお、オレンジ油の投与経路別最大使用量は、経口投与0.3mL、一般外用剤10mg/gとする報告も見られる。

その他、市販されている洗剤中のオレンジ油の含有量を0.03%とする資料がみられる。これは100mL中にオレンジ油0.03mLが加えられていることを意味する。

従って、石油ベンジン100mL中にオレンジ油0.03mLを加え、着香状態、絆創膏痕の除去状態を検証しながらオレンジ油量を調整することをお勧めする。

但し、石油ベンジンの使用は、皮膚過敏症を惹起するの報告がされているため、使用に際し注意が必要である。

[貯 法]遮光して保存する。気密容器。

 

1)第十五改正日本薬局方解説書;廣川書店,2006
2)日本医薬品添加物事典;株式会社薬事日報社,2005 

  [014.16.ORA:2007.3.12.古泉秀夫]

『トリクロサンについて』

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:滅菌・消毒・トリクロサン・triclosan・イルガサンDP-300・固形石鹸・液体石鹸・デオドラントスプレー等体臭防止剤・CAS-3380-34-5

 

Q:殺菌消毒薬トリクロサンについて

A:トリクロサン (triclosan) は、白色の粉末で僅かに特異臭がある。mp:55-58℃。本品は水に溶け難く、アルカリに溶ける。酸、アルカリに安定で、200℃で安定。triclosanは次亜塩素酸やジクロルイソシアヌール酸などに対しては不安定である。またtriclosanは紫外線や高温下に長く放置すると変色するが、分解は殆ど無いとされる。化学名:2,4,4′-trichloro-2′-hydroxy diphenyl ether、IUPAC:5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール(5-chloro-2-[2,4-dichlorophenoxyl]phenol)。分子式:C12H7Cl3O2=289.5。CAS-3380-34-5。

triclosan(イルガサンDP-300)は、 ビスフェノール構造をもった抗菌・抗真菌作用を示す物質で、 熱に安定な性質のため、 手指消毒用の石鹸やローションから歯磨き粉等のヘルスケア用品をはじめ、 子供用玩具、 台所用品や手術用ドレープなどのプラスチックや布地などに、 幅広く使用されている。triclosanは他の消毒剤と同様に、 細菌側の多種類のターゲットに作用して効果を発揮すると考えられてきたが、 近年、 その作用機序はenoyl-acyl carrior protein reductase(FabI)をターゲットとする脂肪酸合成阻害にあることが示された。細菌による薬剤耐性獲得機序は、 FabIの変異や過剰発現によるもの、 triclosanを含む多剤排出ポンプによるもの、 triclosanを分解することによるものがあるが、 triclosan耐性が他の薬剤と交差耐性もつ可能性も指摘されている。

ネオグリンス(丸石製薬)は医薬部外品原料規格に収載されている殺菌剤triclosan(イルガサンDP-300)を0.3w/v%含有しており、皮膚の殺菌・消毒及び洗浄に適している薬用石ケン液である。

 
ネオグリンスの適応は

 
○ 医局・薬局・病室等で直接医療に従事する者の手指の殺菌・消毒
○ 手洗所等における手指の殺菌・消毒
○ 入浴・シャワー時の全身洗浄
○ 体臭や汗臭の予防

等とされている。

適用範囲:殺菌消毒剤:固形石鹸・液体石鹸(一般用:デオドラント石鹸、薬用石鹸、工業用:病院用・食品工場用・公衆衛生用の石鹸)、デオドラントスプレー等体臭防止剤、衣料品の衛生加工、医療用の洗剤、衛生仕上げ剤、業務用繊維製品の殺菌。

抗菌性:グラム陽性菌、グラム陰性菌に有効であるが、グラム陰性菌の中には効果の低いものがある。

作用機序:低濃度で細菌に吸着し、栄養物等の摂取を妨げる。高濃度では細菌の原形質膜を破壊する。

使用濃度:薬用石鹸・デオドラント石鹸・洗顔剤:0.3-0.5%・ デオドラントスプレー等体臭防止剤:0.15%

抗菌性(MIC)

細菌名 濃度
Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌) 0.1ppm以下
Escherichia coli(大腸菌) 0.3ppm以下

 

安全性:[経口(LD50)]マウス:4500mg/kg、イヌ:5000mg/kg、ウサギ:9300mg/kg。光毒性、発癌性、再生試験に対する毒性は認められていない。

取扱い上の注意:特にないが、皮膚や眼に触れた場合は、流水でよく洗い流すこと。
廃棄処理の方法:廃水中のtriclosanは汚泥に吸着し除去される。廃水中のphenolの規制を受ける。30ppm(phenol 5ppmに相当量)

triclosan自体は常温ではダイオキシン(dioxin)に化学変化することはないと考えられているが、dioxinの発生が懸念されるされるような低温焼却炉では、triclosanがdioxin類に転化する可能性が示唆されている。

 

1)日本防菌防黴学会事典編集委員会・編:防菌防黴事典;日本防菌防黴学会,1986
2)Y’sSquare:http://www.yoshida-pharm.com/text/05/5_4_3.html2007.3.2.
3)THE Merck Index,14th.,2006
4)ネオグリンス®添付文書,2006

 

[615.28.TRI:2007.3.5.古泉秀夫]

「アルツハイマー病治療薬tesofensineについて」

日曜日, 2月 3rd, 2008

KW:薬名検索・テソフェンシン・tesofensine・NS2330・アルツハイマー病・パーキンソン病

 

Q:アルツハイマー病治療薬tesofensineについて

A:テソフェンシン(tesofensine)はデンマークのニューロサーチ社(NeuroSearch社)が開発したNA(noradrenaline)再取り込み阻害剤に分類されている。tesofensineは脳神経内ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリンの3種の再取込阻害作用を有するアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病治療薬である。acetylcholine esterase阻害作用を有する既存薬とは作用の異なる薬剤で、軽度アルツハイマー病患者32例でのプラセボ対照第II相臨床試験では、アルツハイマー病評価スケールの認知項目であるADAS-Cogは用量依存的に改善され、投与終了後2週間目でも効果が維持されていた。また忍容性も良好であったと報告されている。

早期又は進行期パーキンソン病患者515例での第II相臨床試験では14週間投与した結果、早期患者への単独投与では、14週目のエンドポイントは数値的にも改善が認められたが、統計学的にはプラセボとの有意差に達しなかった。

治験記号:NS2330(デンマーク・NeuroSearch社)

2002年独・Boehringer Ingelheim社は、tesofensineの共同開発でNeuroSearch社と合意したが、2005年8月10日、アルツハイマー病患者とパーキンソン病患者を対象とした第II相臨床試験で、予め設定した基準をクリアできなかったことから、共同開発者であるBoehringer Ingelheim社は、アルツハイマー病患者を対象にしたNS2330の開発を中止すること決断した。但し、2006年1月25日、NeuroSearch社は、NS2330の開発を続行すると発表した。NS2330の共同開発者であるBoehringer Ingelheim社は、NS2330の権利を返還した。

 

1)治験薬一覧表:New Current,17(28):25(2006.12.20.)
2)Bio Today;http://www.biotoday.com/view.=11292,2007.2.14.

 

[011.1.TES:2007.3.5.古泉秀夫]