ワクチン接種歴

魍魎亭主人

 

北里大学では来年4月に入学する学生約1,700人に対し、はしか、風疹(ふうしん)の免疫の有無を確認させ、免疫が不十分な場合、自主的なワクチン接種を要請するなど徹底した対策を実施する方針を決めた。大学の一部では、入学後に免疫検査を実施しているところもあるようであるが、入学前に接種を求めるのは異例。はしかが流行する4-5月までにワクチンの効果を高める狙いがある。新入生全員に、

(1)はしか、風疹などワクチン接種証明書を入学時に提出する
(2)はしか、風疹のワクチン接種歴が1回以下の場合、入学前に検査を受け、免疫がない場合

ワクチンを接種するよう通知するというものである。

大半の学生はワクチン接種は1回のみと見られる。入学後の健康診断でも血液検査を行い、場合によっては追加のワクチンも接種する。北里大はこれまで医学部など病棟での実習がある4学部で入学後の免疫検査、ワクチン接種を実施してきたが、今年5月に4学部以外の1年生を含む2人がはしかを発症。全7学部の1年生に休講措置を取ったという[読売新聞,第47332号,2007年12月11日]。

傘下に病院をもち、病院実習をしなければならない大学であれば、当然の配慮ということであるが、予防接種を強制されたことで、事故が発生した場合の対応策等は考えておられるのか。甚だお節介な話だが、今後、病院実習が義務付けられる薬科大学も、病院実習をする前に、予防注射歴を確認し、免疫低下者には予防接種を強制するとすれば、その辺の問題が気になるのである。予防注射による副作用の発現はさておくとして、強制的な予防注射が必要とするのであれば、国の責任で行うべきではないのか。

ところで、突然『貴方は破傷風ワクチンを接種してますか』ときかれて、明確に回答できる方々がどの程度いるのであろうか。

破傷風ワクチンが特殊すぎるというのであれば、『麻疹ワクチン』でもいい。

摂取したことがあるのか無いのか。乳幼児の頃のワクチン接種の記憶など、殆どの方々が記憶中枢の外に脱落させてしまっているのではないか。特に現在中年以上、あるいは団塊の世代といわれる世代の人達にとっては、そのような情報は正確に記憶していないというのが実情ではないかとおもわれる。

最も、突然この様な話を持ち出されても、どの辺に話の意図があるのか分からないということになるのかもしれないが、先日知り合いが怪我をして熱が下がらないということから、破傷風ではないのかという話になり、破傷風ワクチン接種の記憶にまで立ち至ったというわけである。

今後、予防医学を充実させるとすれば、感染症対策として、間違いなくワクチン接種の重要性が増す。それに従って種々のワクチンを接種する機会が増えることは間違いないと思われるが、接種したワクチンの種類と、再接種の時期を当人が明確に認知する手立てが取られていないというのは問題ではないか。電子化した健康保険証のカードの中に、個人の病歴やワクチン接種歴を登録する等ということは出来ないのかどうか。

勿論、盗難対策や紛失時の対策は十分にしなければならないが、二重、三重の検査等医療費の無駄を省くためにも、通院時に電子化した情報を持っていくという事は必要になるのではないか。

                                                                    (2008.1.1.)