Archive for 3月, 2008

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隠すための言い訳で無ければいいんですが

金曜日, 3月 14th, 2008

                                                                      魍魎亭主人   

 

*神奈川県茅ヶ崎市は25日、同市立病院(仙賀裕院長)に心臓病の治療で入院・通院し、検査を受けていた60-70歳代の男性患者5人が、C型肝炎に院内感染した疑いが強いと発表した。患者は2006年12月から今年4月にかけて、循環器内科で心臓のカテーテル検査を受けたことがあった。病院は検査で使われた生理食塩水が汚染されていた可能性があると見て調べている。5人は、肝機能が改善しているという。別の診療科から11月、患者の肝機能が低下していると循環器内科に連絡があった[読売新聞,第47346号,2007.12.25.]。

*神奈川県茅ヶ崎市の市立病院でのC型肝炎院内感染問題で、同病院では心臓のカテーテル検査の際、使い捨ての検査器具を、中に残っていた生理食塩水とともに使い回していた疑いがあることが25日、同市などの調査で分かった。この生理食塩水を介して感染が広がったと見て調べている。

同市によると、患者5人は2006年12月から今年4月にかけて同検査を受け、今年8-11月に発症した。ウイルスの遺伝子型が、同病院で治療や同検査を受けたC型肝炎患者と一致した。5人のうち2人はこの患者の直後に同検査を受けて感染。このうち1人の再検査の際、残る3人が感染したと見られる。使い回していた器具は、同検査の際、血圧を測定するためのもの。同病院は「担当の臨床工学技士が忙しい時に検査器具の交換を怠った可能性がある」としている[読売新聞,第47347号,2007.12.26.]。

本来、使い捨てであるべきディスポーザブルの器具を、廃棄しないで流用していたとすれば、恐るべき想像力の欠如といわなければならない。人はあらゆる感染の原因となりうる可能性を持っており、滅菌すること無しに医療機器あるいは器具類の共用をしてはならないというのは、医療関係者の常識のはずである。

更に病院当局者は『臨床工学技士が忙しい時に検査器具の交換を怠った可能性』などという申し開きをしていたようであるが、果たして本当なのか。最近の病院は経費削減に汲々としている。時にディスポーザブルの医療用具を再滅菌することで使用出来ないかなどという考えられない質問を受けることがあるが、経費節減を最優先事項とする事務系の圧力に抗うことが出来ず、問い合わせしてくるのだろうと思うが、医療機関としては最悪の対応だということを承知しておかなければならない。

                                                                    (2008.2.1.)

血液製剤は軒並み危険だった?

木曜日, 3月 13th, 2008

魍魎亭主人

 

77年製の『人免疫グロブリン(旧ミドリ十字)』製剤2本からC型肝炎ウイルスが検出されたことが、北里大学名誉教授(法科学)・長井辰男氏の研究で分かったという。長井名誉教授は、約30年前に同社から研究目的で入手して冷蔵保管していた『人免疫グロブリン』を薬害肝炎問題が浮上したのを受けて解析した結果、C型肝炎ウイルスの混入を確認し、国内の検査機関でも再確認したとされる。この他、臨床試験用の血液製剤『プラスミン』(76製)1本からもB型肝炎ウイルスが検出されたという。

ところで30年前の『人免疫グロブリン』が、冷蔵保管されていたとはいえ、正常な製剤として認知されるのかどうか。全く開封されていない製品が保存されていたのであれば問題はないが、もし開封されたものであれば、後からの汚染も考えられないわけではない。更に30年前の血液製剤に、全く変質が見られなかったとすれば、将に驚異的といわざるを得ない。新聞報道からは実験方法の詳細は不明であるが、C型肝炎ウイルスが30年間血液製剤の中で生存していたということなのであろうか。それとも汚染されていた痕跡が残っていたということなのかどうか。

『人免疫グロブリン』製剤は、薬害肝炎の原因となったクリスマシンやフィブリノゲンなどと同じく、血液から赤血球等を除いた「血漿成分」にエタノールなどを加えて、遠心分離を繰り返して作る「血漿分画製剤」の一つである。クリスマシンやフィブリノゲンより後で抽出されるため、従来はウイルス混入の危険性は低いとされていた。『人免疫グロブリン(旧ミドリ十字)』は、1957年に製造承認された。同じ血液製剤であるアルブミンに次いで、国内での使用量が多い製剤である。

厚生労働省は現在、過去に製造された血液製剤全てについて、ウイルスの混入歴について製造各社に調査を依頼しているというが、その結果によっては、薬害肝炎の被害者数が拡大する恐れがある[読売新聞,第47349号,2007.12.28.]とされている。

はしかの原因となる麻疹ウイルスに効果のある薬はない。はしかに感染した小児が病院に来ると、麻疹ウイルスの抗体価の高い『人免疫グロブリン』を注射することで、はしかの治療が行われてきた。薬剤部では、製薬企業に連絡し、なるべく抗体価の高い『人免疫グロブリン』を納入して貰い、何時でも対応できるようにしていた時期がある。ということであれば、『人免疫グロブリン』製剤がC型肝炎ウイルスに汚染されていたとすれば、はしかの治療を受けた経験のある者は、B型・C型肝炎ウイルスの検査を受けることが求められるということになるのではないか。

B型肝炎ウイルスが検出されたという血液製剤『プラスミン』は、臨床試験用の製剤であるとされており、未だ市販されていないようであるから、それほど広範囲に影響を及ぼすことは考えられないが、ウイルスに汚染されたまま市販されたのでは、悪影響が広範に及ぶことになる。何れにしろ血液製剤については、細菌あるいはウイルスに汚染されていないものを使用することが必要である。

未だに血液製剤の添付文書には『本剤は、貴重なヒト血液を原料として製剤化したものである。原料となった血液を採取する際には、問診、感染症関連の検査を実施するとともに、製造工程において一定の不活化・除去処理などを実施し、感染症に対する安全対策を講じているが、ヒト血液を原料としていることによる感染症伝播のリスクを完全に排除することはできないため、疾病の治療上の必要性を十分に検討の上、必要最小限の使用にとどめること。』の記載がされており、更に『患者への説明』として『本剤の投与にあたっては、疾病の治療における本剤の必要性とともに、本剤の製造に際し感染症の伝播を防止するための安全対策が講じられているが、ヒト血液を原料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することができないことを患者に対して説明し、理解を得るよう努めること。』の記載がされている。

血液製剤は生ものである。そのため血液製剤の完全な滅菌は難しいのかもしれないが、更に安全性の高い製剤を作ることが求められているのではないか。

                                                                  (2008.1.12.)

『秋田ぶらり旅』

水曜日, 3月 12th, 2008

鬼城竜生

本当のことをいえば、乗り物に乗るのは体質に合わない。
汽車に乗るという段になると無闇に緊張し、何度も後架に行きたくなる。行ったからといって別に出るわけではないが、出そうな気がするのである。つまり汽車に乗って出たくなったら嫌だなという思いが強迫観念になって、何度も後架に入る嵌めに陥るのである。
大体汽車に乗るという体験は、あまりいい思いがない。大学の休みの度に九州に戻っていたが、猛烈な混雑で、東京駅から門司秋田紀行-001 辺りまで立ちっぱなしという経験もある。勿論、新幹線のない時代で、飛行機などは学生が乗るのは贅沢だと考えられていた時代のことである。
それがどうにか汽車に乗ることが億劫でなくなったのは、労働組合の役員になって、全国組合の宿命から、あちらこちらの会議に出かけるようになった結果である。相変わらず出かける前の儀式は変わらないが、それでも昔に比べれば、儀式の回数は極端に減っている。

ところで2006年10月8日(日)・9日(月)の連休に、青森在住の友人に誘われて、秋田の山奥の温泉に出かけることになった。秋田なら旨い酒があるだろうというのと、山の中の温泉だということで、出かけることにしたが、3連休の後半だったので、新幹線の切符の手配が気になった。何せ指定してきた下車駅が田沢湖駅で、東京発8時28分のこまち7号に乗車しろということであったが、何と全席指定という。

指定券の発売は1カ月前だということで、切符の手配ができるまで、落ち着かない日を過ごしたが、現役時代を含めて、こんな面倒な仕事をしたのは始めてである。しかし、考えてみると、何で1カ月前でなければ販売しないのか。コンピュータ処理が可能な現在、何日前であれ、計画ができた段階での購入を認めれば、つまらない心配しながら待たなくても済むと思うが、早めに発売すると何か不都合があるの秋田紀行-002であろうか。

田沢湖駅から車で乳頭温泉郷にある“孫六温泉”を目指した。その前に時間があるということで、秋田県の角館に寄るということになった。

角館は明暦2年(1656)北家の佐竹義隣が「所預り」として角館を支配した。以降、明治の廃藩に至るまで、11代200年余続くことに なったとされる。北家初代・二代目の妻が京都の公家の出身だったため、京文化も色濃く伝えられ、角館は城下町・宿場町として仙北地方の中心地として栄えたといわれる。角館は、城下の町割り、武家屋敷の姿を最もよく残した町だといわれている。将に町中は昔の武家屋敷がそのまま残っているという佇まいであり、その各屋敷内には歴史をそのまま示す巨木が残されており、垂れ桜の木々は、桜の時期はさぞやと思われるものがあり、街を紹介するポスターを見て、思わず凄いねとつぶやいてしまった。

序でにいえば、この旅の前に、高橋 克彦著・写楽殺人事件(講談社文庫)を読み、その中で「秋田蘭画」で有名な小田野直武がもしかしたら写楽だったのではないかという仮説が述べられており、その秋田蘭画の作者である小田野直武が出た小田野家の分家が武家屋敷に今もある小田野家ということを知って、偉く感動させられた。

「孫六温泉」は乳頭温泉郷の一番奥にある一軒宿で、1902年に先達川の川岸で発見され、明治時代からの湯治場であるとされる。まだカヤぶき屋根の建物も残っている。泉質は無色透明の硫黄臭のするラジウム含有泉である。

「孫六温泉」を上から俯瞰する位置から降りていくが、何しろ見た瞬間に驚いたのは、完全に山小屋もどきだったことである。勿論、室内に冷蔵庫や電話はなく、持参した携帯電話も『圏外』という文字が出たままで、何の反応も示さない。しかし、今時こんな温泉は珍しいのかもしれないが、静かであることが貴重な時代、こういう環境は絶であると評価したい。特別注文のイワナ酒を飲んだが、味の方は御想像にお任せする。

次の日、ちょっと浸かるだけ浸かって行こうと寄ってくれたのが「玉川温泉」である。

玉川温泉」は、他の温泉地や観光地と異なり、療養・静養を目的とした湯治場だとされている。1泊2食付きの旅館部と素泊りが秋田紀行-003 基本の自炊部から構成されているというが、なかなか予約が取れないという話である。また、国立公園の中にあるということと、強酸性の温泉という特殊な環境にあるため、様々な規制がされているというが、驚いたことに、館内には、看護師が常駐している玉川温泉研究会付属診療所が設置され、湯治相談や血圧測定等を行うということである。

玉川温泉」の泉質は、酸性含二酸化炭素・鉄(II)・アルミニウム塩化物泉で、pH 1.2と極めて酸性が強く、遊離塩酸を多く含有しているという。泉源から湧出するお湯は、98℃の熱水で、無色透明、硫化水素臭がある。1カ所からの湧出量は9,000L/分と国内最大の湧出量であるといわれる。更に温泉水や湯華、土砂などに微量の放射性物質が含まれているとされており、特別天然記念物「北投石」(ラジウムを放射)を生成、産出しているということのようである。

玉川温泉」の最大の特徴は岩盤浴で、馴れた方々はタタミ1畳分ぐらいの茣蓙を持参しており、硫化水素等の火山性ガスが吹き出す中、地熱で温かくなっている岩盤の上に茣蓙を敷いて横になっている姿が見られることである。お互いに話している話の内容は、種々の病気の治療後の安心のために来ているということのようである。

つまりそれだけの効果はあるということなのだろう。チョイト浸かって風呂で顔を洗った時に口に入った温泉の味は、何のことはない、甘味を抜いた「塩酸リモナーデ」の味であった。

(2006.11.20.)

「ニキビ及び顔の湿疹の場合の化粧水・乳液の使用について」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:薬物療法・ニキビ・座瘡・湿疹・面皰・Propionibacterium acnes・化粧水・乳液

 

Q:ニキビ及び顔の湿疹の治療中に化粧水・乳液の使用の可否について

 

A:現在、皮膚科医に受診中であるなら、これらの判断あるいは指示を求めるのは、主治医に対してであって、薬剤師の対応する範囲を超えている。従って、患者から相談された場合、主治医の指示等を患者に確認する。

現在、患者の治療中であるニキビ・顔の湿疹の原因は、何か?。使用中の化粧水・乳液が原因であれば、その化粧水・乳液を継続して使用する限り、ニキビ・顔の湿疹の治療は困難であり、むしろ悪化させることが考えられる。

従って、ニキビ・顔の湿疹の治療と化粧水・乳液使用の関係については、次の点に注意が必要であると考える。

?湿疹の原因として使用中の化粧水・乳液は関係がないのかどうか。

?湿疹はアレルギー性のものか、感染性のものか。

?湿疹の範囲は部分的なのか広範囲なのか。

顔の湿疹の原因が、現在使用中の化粧水・乳液にあるとすれば、使用は中止することが原則であり、湿疹の治療中は医師の指示に従い、医師に処方された治療用クリーム剤あるいは外用水剤等を塗布する。その際、ぬるま湯で洗顔して塗布することの是非についても、主治医の指示を求めるべきである。湿疹の範囲が広範な場合、同様の対応を考える。原則的に治療を優先する。

ニキビ(座瘡)は思春期の男女の顔面、胸部、背部に好発する面皰(コメド)を初発疹とする、毛孔一致性の慢性炎症性疾患である。男性ホルモンにより皮脂分泌が亢進し、毛漏斗部の角化異常により毛包管が閉塞する。面皰内でPropionibacterium acnesが増殖し、炎症が惹起され、膿疱、硬結、膿腫が出現する。ニキビ発現時の対応策として、次の記載が見られる。

?石鹸による洗顔に努める。

?化粧は油性のものを避け、乳液タイプを使用する。

?十分な睡眠をとり、中性脂肪の少ない食事の摂取に努める。

?便通に注意する。

?ストレスを避ける。

ニキビの状態により塗布剤・経口剤等の治療が実施される。

 

1)中林康青:皮膚外用療法実践マニュアル;文光堂,1991
2)山口 徹・他総編集:今日の治療指針;医学書院,2006

     [035.1.ACN:2007.10.9.古泉秀夫]

「アルツハイマー病治療薬ロシグリタゾンについて」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:薬名検索・アルツハイマー病・ロシグリタゾン・rosiglitazone・インスリン抵抗性改善薬

 

Q:治験中のアルツハイマー病治療薬ロシグリタゾンについて

 

A:ロシグリタゾン[一般名:マレイン酸ロシグリタゾン:rosiglitazone maleate](GSK)はチアゾリジンジオン系インスリン抵抗性改善薬である。特定の遺伝子を持つ患者に投与すると、脳のブドウ糖の取り込みを助けたり、脳に起きる炎症を抑制する作用が報告されている。第II相臨床試験段階。

商品名:アバンディア(avandia)

剤型:錠剤

別名:BRL-49653C(2型糖尿病治療剤。インスリン抵抗改善薬)。

rosiglitazone maleateは、2型糖尿病の原因の一つであるインスリン抵抗性を改善する作用のある経口血糖降下剤である。

ADOPT (A Diabetes Outcome Progression Trial)と名付けられた大規模臨床試験において、同社の糖尿病治療薬である「avandia」(一般名:rosiglitazone maleate)が、治療開始5年の時点における経口糖尿病薬の単独療法無効のリスクを、メトホルミンと比較して32%(p<0.001)、またグリブリド(スルホニル尿素薬:SU薬、日本における一般名:グリベンクラミド)と比較して63%(p<0.001)軽減できたと発表しました。この国際的な大規模臨床試験は、新たに2型糖尿病と診断された4,360人を対象に行われたもので、この試験結果は、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌と国際糖尿病連合(IDF)の第19回世界糖尿病学会で発表されました。

参天製薬では、rosiglitazone maleateを点眼剤として開発中である。点眼剤としては角膜障害改善作用を有し、ドライアイ、角膜潰瘍、角膜炎、結膜炎などの角膜障害治療薬としての有用性が期待されている。

rosiglitazone maleateは、本来、糖尿病薬として使われている薬であり、脳の糖代謝を改善し炎症を防ぐ作用がありアルツハイマー病に有効とされている。

 

1)トライアルドラッグス;エルゼビア・ジャパン,2003-2004
2)研究開発Report;New Current,17(3):49(2006.2.1.)
3)http://www2f.biglobe.ne.jp/~boke/news2.htm,2007.6.18.

    [011.1.ROS:2007.7.10.古泉秀夫]

「ボチについて」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:薬名検索・ボチ・ホウ酸亜鉛華軟膏・B.Z.S.・Borzinksalbe・油性基剤・ホウ酸・毒性・薬効再評価

 

Q:デイサービスの通所者に褥瘡が見られ、持参している軟膏を塗布しているが、軟膏はボチではないかといわれた。これは軟膏の正式名称か

 

A:『ボチ』は軟膏の正式名称ではなく、院内処方せん等で使用されていた略号である。
正式名称は『ホウ酸亜鉛華軟膏』(Boric Acid and Zinc Oxide Ointment)で、『ボチ』は英名の略号である。B.Z.S.(Borzinksalbe)(JP VIII)。

本剤の処方は以下の通りである。

ホウ酸,細末(boric acid,in fine powder)           5g
酸化亜鉛,微末(zinc oxide,in very fine powder)         10g
蜜鑞        (yellow wax)          5g
植物油      (vegetable oil) 全量100g

 

適応:酸化亜鉛は刺激を緩和し、分泌物の吸収作用を増加する。防腐、乾燥、収斂の作用があるので、そのまま湿疹、擦過傷、火傷などに用いられる。亜鉛の吸収は炎症の治癒に向かっての修復力は有効である。皮膚疾患のうち、小水疱、膿疱、糜爛、潰瘍、結痂の各期にそれぞれ適合する薬剤を混じて使用する。亜鉛華軟膏は、我が国において従前より最も安心して使用できる油脂性基剤の製剤として奨用されている。

但し、ホウ酸(H3BO3)及びホウ砂(別名:ホウ酸ナトリウム;Na2B4O7・10H2O)を含有する製剤について、厚生省は1971年に「粘膜、創傷面又は炎症部位に長時間、広範囲に使用しないこと」とする使用上の注意事項を発出した。また日本小児科学会も、日本産婦人科学会の協力を得て使用に関する警告を出した。

更に1985年7月30日に公示された医薬品再評価-医療用その24(薬発第755号)により、ホウ酸、ホウ砂及びそれらを含有する外用剤について以下の通り判定された。

眼科領域の適用である「結膜嚢の洗浄・消毒」のみに有効性が認められ、使用が限定された。使用濃度はホウ酸が2%以下、ホウ砂が1%以下となっている。

またホウ酸又はホウ砂を含有する製剤については『有効であるがその配合意義が認められず、有用性がないと判定された。』従って皮膚外用剤のホウ酸軟膏,ホウ酸亜鉛華軟膏等及び歯科口腔用薬のホウ砂グリセリンは、安全性を重視し代替薬もあることから日本薬局方および薬価基準から削除された。

[毒性]:ホウ酸及びその化合物は細胞毒である。ホウ酸は健康な皮膚からは殆ど吸収されないが、熱傷や潰瘍等の皮膚損傷面、粘膜面や体腔内から速やかに吸収され、長期間・広範囲にわたる大量使用により吸収は増大する。その結果としての経皮毒性について種々の報告がなされている。飽和ホウ酸溶液で広範囲にわたる熱傷を治療したところ中毒死し、その尿及び脳脊髄液からホウ素が検出された。またホウ酸を含有したベビーパウダーが損傷した皮膚から吸収され、乳児の臀部や太股に火ぶくれが生じ、皮がむけて皮下部が露出した症例や死亡症例も報告されている。急性中毒症状は、下痢、嘔吐、皮膚紅斑・落屑、血圧降下、ショック、せん妄、痙攣等で、重症時は血管神経麻痺のもと昏睡に陥り死亡する。

以上の経過から現在『ボチ』に該当する外用剤は市販されていないため、軟膏の持参者が『ボチ』と称しているのであればそれは別物であり、再確認することが求められる。

 

1)高野正彦:今日の皮膚外用剤;南山堂,1981
2)薬発第755号,医療用医薬品再評価結果-その24,1985.7.30.
3)古泉秀夫・代表編:医薬品情報Q&A[5];株式会社ミクス,1988

     [011.1.BOZ:古泉秀夫,2007.6.7.]

「フェノキシエタノール添加の意味」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:語彙解釈・フェノキシエタノール・phenoxyethanol・法定表示成分・表示指定成分・種別認可基準・抗菌保存剤・消毒剤・防腐剤

 

Q:無添加、防腐剤不使用と表示された化粧水にフェノキシエタノールが配合されていましたが、企業側はこれは防腐剤ではなく、ただのアルコールだと主張しています。企業側の言い分は通用するものなのでしょうか?

 

A:フェノキシエタノール(phenoxyethanol)は、防腐・殺菌剤として化粧品等に添加される成分の一つであるが、緑茶などの自然界に天然物として存在する成分であり、パラベンなどと比較すると毒性は弱いとする報告が見られる。略号:PE。

phenoxyethanolは、グリコールエーテルというアルコールの一種である。また緑膿菌に対して殺菌作用をもつが、殺菌作用は万能ではない。phenoxyethanolは分子内にフェノキシ基とヒドロキシエチル基をもち、各種化学品の優れた溶媒となる。その他工業用中間体として各種製品の原料に広く使用されている。また殺菌作用をもつため香粧品分野にも利用されている(化粧品種別許可基準,1994に収載)。

phenoxyethanolの使用制限は、パラベン同様に製品100g中に1g以内である。しかし、phenoxyethanolは、『表示指定成分』にはなっていない。含有量も他の成分に比べ、多くは微量であり、表示していない場合もある。企業の中には情報開示の意味から表示をしている。

用途分類:抗菌保存剤・消毒剤

平成13年4月1日(2001年)以降、化粧品の規制緩和が実施されたが、それ以前は約2,800種の使用可能成分(種別認可基準)が承認されており、そのうち102種類の成分(法定表示成分)について、その名称を記載することが義務付(昭和55年=1980年)られていた。この『表示指定成分』は、アレルギー等の皮膚障害をおこす恐れのある製品の使用を自ら避けることができるよう表示されることが義務付けられていたもので、この表示指定成分が添加されていない化粧品について『無添加化粧品』と呼称していた向きがあるが、実際には『表示指定成分無添加化粧品』ということであった。

但し、2001年4月1日以降、規制緩和の一環として、化粧品の製造・輸入販売に関する許可制度が緩和された。その中で最も大きく変わるのは、化粧品に配合される成分の規制が事実上廃止され、原則的には配合成分、配合量の制限が撤廃されることになった。但し、それに伴い許可業者には化粧品に配合されている成分を全て表示することが義務付けられることになった。

化粧品に関する許可制度新旧対照表

  2001年4月1日以前 2001年4月1日以降
許認可 化粧品への使用が許可されている成分リスト(『種別許可基準』という)内での成分のみからなる化粧品は、事前の届出により製造(輸入)が可能。リストにない基準外の成分を使用する場合には事前に厚生大臣の許認可(承認)が必要。 成分規制は事実上廃止。配合禁止成分リストと配合制限成分リスト(配合上限や使用できる化粧品を制限)を定め、該当しない成分は許可業者の自己責任で自由に使用できる。防腐剤・紫外線吸収剤・タール色素に該当する新規成分は、登録する必要あり。
表示 表示が義務付けられている成分(102成分)を配合する場合のみ表示の義務 原則として全成分表示。非開示成分として承認を受けた成分を除き、配合した全ての成分を配合量が多い順に記載(1%以下の成分と着色料は順不同)。小容器のものについては表示方法の特例が認められる。
届出 製造・輸入する製品について事前に成分・分量表を添付した製品届を提出。 製造・輸入する製品について販売名のみの一覧表を事前に届出。

 

なお、phenoxyethanolの効能の範囲については、防腐成分とされており、配合目的:化粧品の変敗を防ぐに分類されている。

 

1)永井 恒司・監修:医薬品添加物ハンドブック;薬事日報社,2001
2)中山和子:薬事衛生-化粧品の規制緩和について;都薬雑誌,23(3):41-46(2001)
3)化粧品全成分表示へ;読売新聞,2000.3.28.
4)化粧品の成分全て表示へ;朝日新聞, 2000.3.28.

   [615.8.PHE:2007.5.28.古泉秀夫]

 

「酸棗仁湯の副作用について」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:副作用・酸棗仁湯・さんそうにんとう・酸棗仁湯エキス顆粒・偽アルドステロン症・甘草・酸棗仁・茯苓・川キュウ・知母

 

Q:酸棗仁湯エキス顆粒の副作用について教えてください。服み始めたら次の症状が見られるようになったのですが、酸棗仁湯の副作用でしょうか
左腕がしびれ、 頭痛、左目の奥の痛み、目を凝らしてみるとズキズキと脈を打つのと同じように画像が脈打ってます。

 

A:酸棗仁湯(さんそうにんとう)エキス顆粒(医療用)の組成は下記の通りである。

本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス3.25gを含有する。

(日局)酸棗仁 10.0g
(日局)茯 苓 5.0g
(日局)川キュウ 3.0g
(日局)知 母 3.0g
(日局)甘 草 1.0g

添加物:(日局)ステアリン酸マグネシウム、(日局)乳糖

尚、添付文書に記載されている効能・効果、重要な基本的注意等は以下の通りである。

効能・効果:心身がつかれ弱って眠れないもの

用法・用量: 通常、成人1日7.5gを2-3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

重要な基本的注意

1.本剤の使用にあたっては、患者の証(体質・症状)を考慮して投与すること。なお、経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合には、継続投与を避けること。

2.本剤にはカンゾウが含まれているので、血清カリウム値や血圧値等に十分留意し、異常が認められた場合には投与を中止すること。

3.他の漢方製剤等を併用する場合は、含有生薬の重複に注意すること。

副作用(本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため、発現頻度は不明である)。

□重大な副作用

1.偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等)を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。

2.ミオパシー: 低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。

その他の副作用

消化器(頻度不明):食欲不振、胃部不快感、悪心、腹痛、下痢等

で質問の症状に該当する具体的な副作用は記載されていない。

甘草成分中のグリチルリチンの加水分解物であるグリチルレチン酸及びその誘導体カルベノキソロンは腎尿細管細胞の11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(11β-HSD)を阻害する。その結果、細胞内に入ったコルチゾールはコルチゾンへの変換を阻害され、Na貯留、K排泄促進を起こし、アルドステロン症様症状を呈すると考えられる。症状としては高血圧、浮腫を認めることが多く、検査所見では尿中K排泄増加伴う低K血症代謝性アルカローシス、低レニン血症、血中アルドステロン濃度の低下を認める。

初期症状としては『手足の痺れ、筋肉痛、全身のだるさ、疲れやすさ、脱力感(手足に力が入らない感じ)』等が現れる。

甘草大量摂取者に多いとされる偽性アルドステロン症(pseudoaldosteronism)の発現は、グリチルリチンとして120mg程度では問題ないとされているが、グリチルリチンとして75-150mg以下の少量摂取での副作用発現の報告もあり、特に高齢者、腎機能低下患者では注意する必要がある。

副作用の発現時期は、通常3カ月以内とされているが、10日以内や数年を要している場合もある。

薬の副作用を考える場合、

?原疾患の症状との関連はないのか

?既に薬を服用している場合、相互作用は考えられないのか

?追加処方により副作用が発現した場合、追加処方の薬剤に該当する副作用が報告されているのかどうか

等を検討することが必要であり、他に服用している薬剤がないのであれば、その薬剤を中断し経過を見ることで症状が消失すれば、その薬剤の副作用と見ることが可能である。

高血圧:急激な血圧の上昇による頭痛、意識障害等

低カリウム血症:筋力低下、多尿、腎濃縮力低下、糖忍容力低下、心電図上T波の平低化

ミオパシー:筋力低下、筋萎縮症、筋痛、筋の強張り、筋の短縮とこれによる関節可動域制限

その他、不顕性の高血圧があり、Glycyrrhizinateの摂取によって急性に顕在化した可能性も考えられる。従って、直ちに薬の服用を中断するとともに、処方医に検査を依頼することをお奨めする

 

1)ツムラ酸棗仁湯エキス顆粒(医療用)添付文書,2005.6.改訂
2)医薬品情報Q&A甘草による偽アルドステロン症とは?;日本薬剤師会雑誌55(7):815(2003)
3)南山堂医学大辞典 第19版;南山堂,2006

   [065.PSE:2007.4.17.古泉秀夫]             

「アルツハイマー病治療薬AC-3933について」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:薬名検索・治験薬・AC-3933・アルツハイマー病治療薬・認知症治療剤・ベンゾジアゼピン受容体・BZR

 

Q:アルツハイマー病治療薬AC-3933について

 

A:AC-3933(大日本住友)はベンゾジアゼピン受容体(BZR)インバースアゴニスト作用を有する認知症治療剤(経口剤)である。BZRインバースアゴニストはGABAの機能を減弱させ、間接的に中枢神経系を亢進させる。脳内acetylcholine量を増やすことで、記憶障害を改善するacetylcholine esterase阻害剤とは作用機序が全く異なり、acetylcholine遊離促進によりacetylcholine神経系を賦活すると共に、グルタミン酸神経系を賦活する作用を有し、認知症の中核症状である記憶障害の改善が期待される。

開発段階:前期第II相臨床試験終了(欧州)、前期臨床第II相臨床試験(米国)。国内では第I相臨床試験開始。2004年大日本製薬は、aventis社に日本を除く全世界の開発権をライセンスしたが、2005年ライセンスを解消した。国内第II相臨床試験は2007年開始を予定している。

一般名:未定

剤 型:経口剤

 

1)治験薬一覧;New Current,17(28):27(2006.12.20.)
2)治験薬一覧;New Current,18(7):29(2007.3.20.)

   [011.1.AC:2007.4.10.古泉秀夫]

「エストロゲン製剤の副作用-体重増加・vitaminB等の低下」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:副作用・体重増加・estrogen製剤・エストロゲン製剤・エストラジオール・エストロン・黄体ホルモン・経口避妊薬・progesterone製剤・プロゲステロン製剤

 

Q:エストロゲン製剤の服用により体重増加は起こるか。またvitaminB6、葉酸等の低下は報告されているか。

A:エストロゲン製剤として内因性ホルモンであるエストラジオール(E2)とその代謝産物エストロン(E1)の誘導体、及び合成卵胞ホルモン製剤が広く使用されている。estrogenには子宮等の性器への作用のみならず、骨や血管、脂質代謝等の性器外作用も注目されており、estrogen製剤の用途は拡大しつつある。
現在、市販されているエストロゲン製剤は、次記の通りである。

estradiolとその誘導体

一般名・商品名(会社名) 副作用

estradiol

エストラダーム貼付剤・M貼付剤(キッセイ)

エストラーナ貼付剤(久光)

フェミエスト貼付剤(あすか)

[適]1)更年期障害及び卵巣欠落症状に伴う次の症状:血管運動神経症状(Hot flush及び発汗)、泌尿生殖器の萎縮症状。2)閉経後骨粗鬆症

重大:1)アナフィラキシー様症状。2)静脈血塞栓症、血栓性静脈炎。
その他:1)皮膚[一次刺激性の接触性皮膚炎(後半、掻痒等)、かぶれ、水疱、色素沈着等]。2)生殖器[外陰部腫張感、不正出血、消退出血、帯下、外陰部掻痒感、子宮内膜増殖]。3)乳房[乳房痛、乳房緊満感、乳頭痛、乳腺症]。4)精神神経[偏頭痛、頭痛、不眠、眩暈、眠気]。5)循環器[動悸、胸部不快感、血圧上昇、静脈瘤の悪化]。6)消化器[嘔吐、嘔気、腹部膨満感、心窩部痛、下痢、便秘]。7)電解質[浮腫、同種薬剤で特に大量継続投与:Naや体液貯留の報告]。8)過敏症[全身の掻痒感、発疹、蕁麻疹、アレルギー性接触皮膚炎、顔面掻痒、顔面紅斑等]。9)肝臓[AST・ALT・Al-P上昇・LDH上昇等の肝機能障害、胆石症、胆嚢疾患、胆汁欝滞性黄疸]。10)その他[腹痛、下腹部痛、背部痛、腰痛、耳鳴、発熱、倦怠感、下肢痛、ホルフィリン症の悪化、喘息の悪化、耳硬化症、体重増加、体重減少、関節痛、TG上昇、フィブリノーゲン増加]。11)長期連用[同種薬剤長期連用:血栓症]。

estradiol benzoate
オバホルモン水性懸濁注(あすか)
[適]無月経、無排卵周期症、月経周期異常(稀発月経、多発月経)、月経量異常(過少月経、過多月経)、月経困難症、機能性子宮出血、子宮発育不全症、卵巣欠落症状、更年期障害、乳汁分泌抑制。

重大:1)血栓症。
その他:1)過敏症[過敏症状]。2)精神神経[精神障害の既往患者に再発]。3)電解質代謝[特に大量継続投与:高Ca血症、Naや体液の貯留]。4)子宮[消退出血、不正出血、経血量変化等]。5)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。6)投与部位[疼痛、硬結]。7)その他[頭痛]

estradiol dipropionate
オバホルモンデポー注(あすか)
[適]無月経、月経周期異常(稀発月経、多発月経)、月経量異常(過少月経、過多月経)、月経困難症、機能性子宮出血、子宮発育不全症、卵巣欠落症状、更年期障害、不妊症。

重大:血栓症[卵胞ホルモンの長期連用で報告]。
その他:1)過敏症[過敏症状]。2)子宮[消退出血、不正出血、経血量変化等]。3)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。4)電解質代謝[高Ca血症、Naや体液の貯留]。5)消化器[悪心・嘔吐、下痢等]。6)精神・神経[精神障害既往の再発]。7)皮膚[多形性紅斑、出血性発疹、アレルギー性皮疹、痒疹、肝斑等]。8)肝臓[胆汁欝滞性黄疸]。9)投与部位[疼痛、硬結]。10)その他[頭痛、眩暈、抑鬱、倦怠感]。

estradiol valerate
プロギノン・デポー(富士)
ペラニン・デポー(持田)
[適]無月経、月経周期異常(稀発月経、多発月経)、月経量異常(過少月経、過多月経)、月経困難症、機能性子宮出血、子宮発育不全、卵巣欠落症状、更年期障害、不妊症。

重大:1)血栓症。

その他:1)過敏症[過敏症状]。2)精神神経[精神障害の既往患者に再発]。3)電解質代謝[特に大量継続投与:高Ca血症、Naや体液の貯留]。4)子宮[消退出血、不正出血、経血量変化等]。5)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。6)投与部位[疼痛、硬結]。7)その他[頭痛]

ethinylestradiol
プロセキソール錠(あすか)
[適]前立腺癌、閉経後の末期乳癌(男性ホルモン療法に抵抗を示す場合)

重大:1)血栓症[長期連用:血栓症(心筋、脳、四肢等)]。2)心不全、狭心症。
その他:1)過敏症[発疹等]。2)肝臓[肝機能異常、黄疸等]。3)循環器[血圧上昇等]。4)電解質代謝[高Ca血症、Naや体液の貯留]。5)子宮[不正出血、経血量変化、下腹部痛等]。6)乳房[乳房緊満感、乳房痛等]。7)消化器[悪心・嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛、胃痛等]。8)精神神経[精神障害既往の再発]。9)その他[頭痛、眩暈、倦怠感、陰萎]

estriolとそのエステル体

estriol
エストリール錠(持田)
ホーリン注(あすか)
[適] (内)1)更年期障害、膣炎(老人、小児及び非特異性)、子宮頚管炎並びに子宮腟部糜爛。2)老人性骨粗鬆症(0.5・1mg錠)。(注)分娩時の頸管軟化。

重大:血栓症[卵胞ホルモンの長期連用で報告]。
その他:1)過敏症[発疹等]。2)子宮[不正出血、帯下増加等]。3)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。4)投与部位 (注)[腫張、発赤、疼痛、硬結]。5)肝臓(内)[AST・ALT上昇等]。6)消化器(内)[悪心・嘔吐、食欲不振等]。7)その他(内)[眩暈、脱力感、全身熱感、体重増加]

estriol(tri)propionate
エストリール・デポー注(持田)

重大:血栓症[卵胞ホルモンの長期連用で報告]。
その他:1)過敏症[発疹等]。2)子宮[消退出血、不正出血]。3)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。4)投与部位[腫張、発赤、疼痛、硬結]。

estriol acetate benzoate
ホーリンデポー注(あすか)
[適]更年期障害、膣炎(老人、小児及び非特異性)、子宮頚管炎並びに子宮腟部糜爛、分娩時の頸管軟化。

重大:血栓症[卵胞ホルモンの長期連用で報告]。
その他:1)過敏症[発疹等]。2)子宮[消退出血、不正出血]。3)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。4)投与部位[腫張、発赤、疼痛、硬結]。

結合型エストロゲン

estrogens conjugated
プレマリン錠(ワイス)
[適]更年期障害、卵巣欠落症状、卵巣機能不全、膣炎(老人、小児及び非特異性)、分娩時の頸管軟化。

重大:血栓症、血栓塞栓症[四肢、肺、心、脳、網膜等]。
その他:1)過敏症[発疹、蕁麻疹]。2)電解質異常[特に大量継続投与:Naや体液の貯留(浮腫、体重増加等)]。3)生殖器[帯下増加、不正出血、経血量の変化]。4)乳房[乳房痛、乳房緊満感]。5)消化器[腹痛、悪心・嘔吐、食欲不振、膵炎]。6)皮膚[色素沈着、脱毛]。7)精神神経[頭痛、眩暈]。8)肝臓[AST・ALT・Al-P上昇等]。

合成卵胞ホルモン

fosfestrol
ホンバン錠・注(杏林)
[適]前立腺癌

重大:1)血栓症[冠動脈、脳、四肢等]。2)心筋梗塞、心不全。
その他:1)循環器[心電図異常、心悸亢進]。2)肝臓[黄疸、AST・ALT・γ-GTP・Al-P上昇等]。3)電解質異常[高Ca血症、Naや体液の貯留]。4)脂質代謝[脂質代謝異常]。5)精神神経[眩暈、頭痛、知覚異常、精神障害の既往者の再発]。6)消化器[悪心・嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛]。7)過敏症[発疹等]。8)乳房[乳腺・乳房腫脹、乳房痛、乳頭周囲の色素沈着等]。9)その他[肛門・陰部周囲の掻痒感・灼熱感・しびれ感、尿道狭窄、発熱、浮腫、蛋白尿、倦怠感、陰萎、胸部圧迫]。

以上のestrogen製剤の中で、副作用に『体重増加』の記載があるのは、estradiol・estriol・estrogens conjugatedの3種類である。そのうちestradiol・estriolはその他の分類であり、estrogens conjugatedは電解質異常に分類されている。但しestriolの副作用として報告されている体重増加は、調査症例数1,234例中副作用発現症例数60例、副作用発現件数73件中僅かに1例(0.08%)のみである。

但し、黄体ホルモン(progesterone)であるnorethisterone等とestradiolの配合剤である経口避妊薬(oral contraceptive)では次の報告がされている。

estrogenはナトリウム貯留の原因となることがある;一部の服用者は、浮腫を起こし、体重が3-5ポンド(1.36-2.27kg)増える場合もある。progestin(黄体ホルモン)は同化作用を持ち、食欲を増すために体重が増加する女性もいる。従って女性の体重が4.5kg/年以上増加した場合は、progestin作用の弱い経口避妊薬を用いるべきであり、もし女性が減量を試みても成功しない場合は、経口避妊薬を中止しなければならない。

経口避妊薬によって、一部のビタミン、微量ミネラル及び脂質の血清値が変化することがある。pyridoxine(vitaminB6)、葉酸、他の殆どのvitaminB、アスコルビン酸、カルシウム、マンガン、亜鉛値は低下する。vitamin A値は上昇する。しかし、これらの変化について臨床的な重要性は認められていない。従って、経口避妊薬服用中の女性にビタミン剤を補充する必要はないとする報告がされている。

 

1)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2007
2)エストリール錠IF,2000.11.
3)福島雅典・総監修:メルクマニュアル 第17版 日本語版;日経BP社,1999

[065.EST:2007.3.23.古泉秀夫]

「管花党参について」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:薬名検索・漢方薬・党参・管花党参・かんかとうじん・上党人参・黄参・獅頭参・中霊草

 

Q:管花党参とはどの様なものか

 

A:管花党参とは、党参[本草従新]に分類される同属植物である。党参の異名として次の名称が紹介されている。

異名:上党人参、黄参、獅頭参、中霊草。

基原:キキョウ科の植物。和名:ヒカゲツルニンジンの根。

原植物:ヒカゲツルニンジン(Codonopsis pilosula[Franch.]Nannf.)。遼参(リョウジン)、三葉菜(サンヨウサイ)、葉子草(ヨウシソウ)ともいわれる。多年生草本。

党参の薬材は産地により異なり、西党、東党、路頭(路:

「ABX-EGFについて」

火曜日, 3月 4th, 2008

 

KW:薬名検索・ABX-EGF・治験記号・抗癌剤・ヒトモノクローナル抗体・上皮細胞成長因子受容体・EGFR・panitumumab・パニツムマブ・結腸直腸癌

 

Q:治験記号ABX-EGFの薬剤について

 

A:治験記号ABX-EGF(Amgen社-Abgenix社)の薬剤は、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)を標的とした完全ヒトモノクローナル抗体製剤のパニツムマブ(panitumumab)である。我が国における第I相臨床試験において、有望な結果が得られたことが日本癌治療学会において国立がんセンター消化器内科の山田康秀氏によって報告されたとされる。

ABX-EGFは、米・アブジェニックス社(Abgenix社)がトランスジェニックスマウス(XenoMouse)を用いて産生した、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に対する完全ヒト化モノクロナール抗体(IgG2)である。米・アムジェン社(Amgen社)と共同で抗がん剤として開発し、国内でもAmgen社が臨床試験を進めている。

本抗体はEGFRを直接標的にした完全ヒト化モノクロナール抗体(静注)である。米・イムクローン社のキメラ抗体エルビタックス(セツキシマブ:cetuximab)や英・アストラゼネカ社のイレッサと競合する。cetuximabはキメラ型のモノクロナール抗体で、また、前投薬を必要とする週1回の静注剤であるが、ABX-EGFは前投薬を必要とせず、2週間若しくは3週間に1回の静注投与で済む可能性が期待されている。

治験段階で報告されている有害事象のうち発現頻度の高いのは皮膚発疹(90%超)で、その他の事象としては、疲労感、貧血、悪心、食欲不振、便秘、低マグネシウム血症等が見られている。

商品名:Vectibix

米では2006年9月転移性結腸直腸癌の標準的な化学療法後の第3選択療法剤としてFDAにより承認された。

1)http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/news/egfr1.html,2007.3.29.
2)パニツムマブ;New Current,17(27):25-29(2006.12.10.)

  [011.1.PAN:2007.4.9.古泉秀夫]   

「アルツハイマー病治療薬リバスチグミンについて」

火曜日, 3月 4th, 2008

KW:薬名検索・アルツハイマー病・リバスチグミン・rivastigmine・エクセロン・ENA713D

Q:アルツハイマー病治療薬リバスチグミンについて

A:リバスチグミン(rivastigmine)は、アルツハイマー型認知症の治療薬で、経皮吸収型製剤として、ノバルティス-小野薬品の両社で共同開発している薬剤である。

治験記号:ENA713D

剤 型:経皮吸収型貼付剤(パッチ剤)。

投与方法:1日1回貼付する。

本剤は、アルツハイマー型認知症治療薬としては初めての経皮吸収型製剤であり、国内では現在第II相臨床試験が実施されている。今後、両社が積極的に協力して臨床開発に取り組むことにより、早期の製品化が期待される。

アルツハイマー型認知症は、記憶や思考、行動に関して重要な役割を担っているacetylcholine(脳内神経伝達物質)の脳内生成が減少することによって発症するとされている。rivastigmineは、脳内神経伝達系を活性化するcholinesterase inhibitors(コリンエステラーゼ阻害薬)の一種で、acetylcholineの分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼ、ブチリルコリンエステラーゼの双方を阻害する薬剤として期待されている。

アルツハイマー型認知症に、アセチルコリンエステラーゼが深く関与することは知られているが、一方で、病態の進行に伴ってブチリルコリンエステラーゼの関与がより深くなってくることが報告されている。rivastigmineは二つの分解酵素を阻害し、脳内acetylcholineの有効利用を促進することから、アルツハイマー型認知症患者の症状の進行を抑制することが期待されている。

rivastigmineの経口剤であるエクセロン

「金銀花について」

火曜日, 3月 4th, 2008

KW:薬名検索・金銀花・金銀藤・金銀花藤・忍冬藤・忍冬・スイカズラ・土銀花・金銀子・lonicera flower・lonicera leaf and stem

Q:金銀花について

A:金銀花は、?農本草経集注に収載されている『忍冬藤』の花蕾あるいは花の部分である。

異 名:老翁鬚(ロウオウシュ)・金釵股(キンサコ)・水楊藤(スイヨウトウ)・千金藤、鴛鴦草(エンオウソウ)、鷺