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ウルシかぶれについて

日曜日, 1月 6th, 2008

KW:毒性・中毒・ウルシ・漆・かぶれ・過敏症・接触性皮膚炎・マンゴー・ギンナン・銀杏・カシューナッツ

 

Q:『漆皮膚炎を起こした人はマンゴー、銀杏、カシューナッツでも同様の皮膚炎を起こすとされていますが、漆かぶれを起こす人すべてに当てはまるのでしょうか。また、それはどの部分(幹・枝、葉、果実、等)への接触によるもので、どういう状態のもの(自生状態、切断もしくは剥皮等)への接触に起因するものなのでしょうか。

 

A:それぞれの植物について、調査した結果は次の通りである。

和名 分類 成分等
ウルシ(漆)

ウルシ科ウルシ属

学名:Rhus vern-iciflua Satokes

樹液・気化成分で接触性皮膚炎

中国、印度、ヒマラヤ原産。日本には奈良時代に渡来。潤液(ウルシル)、塗汁(ヌルシル)の略号。樹皮からウルシ液を取るため植栽される。

[薬用部分]樹脂(乾漆<カンシツ>:日本では未製造)。

[成分]フェノール性化合物のウルシオール、ハイドロウルシオールの他、マンニトール、ゴム質を含む。

[薬効・薬理]ウルシオールはラッカーゼによって酸素と結合し、黒色樹脂状に変わり、急性皮膚炎を起こさせる成分となる。

*ウルシの樹液には刺激性のurushiol、 hydrourushiolが含まれ、樹液が皮膚に付着すると皮膚発赤が起こり、掻痒を伴う炎症や水疱ができる。その後激痛が起こることがある。
個人差もあるが、気化した有毒成分に反応し、過敏な人は漆の木に近づいたり、燃やした煙に当たったりしただけでもかぶれることがある。

ハゼノキ
(琉球ハゼ)

黄櫨、櫨

ウルシ科ウルシ属

学名:Rhus succe-danea L.

樹液で接触性皮膚炎

沖縄から来たハゼの意。本州関東地方南部以西、四国、九州、沖縄及び韓国の済州島、台湾、中国、マレーシア、印度に分布し、採鑞低園樹等に植栽される落葉高木。

[薬用部分]核果から得られる木鑞、櫨鑞。

[成分]脂肪酸のパルミチン酸、オレイン酸、ヤパニン酸、ペラゴニン酸、ステアリン酸のグリセリドを含む。

ヤマハゼ
(ハニシ)

ウルシ科ウルシ属

学名:Rhus silves-tris Sieb.et Zucc.

樹液で接触性皮膚炎

古名ハニシは埴締の略。本州東海道地方から沖縄、朝鮮、台湾、中国。

[薬用部分]果実、葉、根。果実は絞って木蝋。

[成分]果実には脂肪油としてパルミチン酸グリセリド等。葉にはロイホリン、枝にはフィゼチン、フスチンを含む。

ヤマウルシ
(山漆)

ウルシ科ウルシ属

学名:Rhus trichocarpa Miq.

樹液で接触性皮膚炎

山地生のウルシの意。日本各地の山林中に生える落葉低木。

[薬用部分]根皮、果肉の脂肪質(木蝋)。

[成分]種子にパルミチン酸、オレイン酸、ペラゴリン酸、ステアリン酸、トリパルミチン、トリコカルビン酸等を含む。

心材にはフラボノイドのフスチン、フィゼチンの他、β-シトステロールが含まれる。

カスミノキ
(別名:ハグマノキ、煙の木)

ウルシ科コチヌス属

学名:Cotinus coggygria Scop.

ヒマラヤ・南欧原産。

[英]:Smoke Tree。

チャンチンモドキ ウルシ科チャンチンモドキ属

学名:Poupartia fordii Hemsl.

センダン科の香椿(チャンチン)に類似していることに由来。日本では熊本県、鹿児島県の山中に稀に自生

カシューナッツ

(カシュ樹実)

[英]cashew nuts

ウルシ科カシューノキ属

学名:Anacardium occidentale L.

樹液で接触性皮膚炎

西印度、中米原産で、熱帯各地。

[英] Cashew。

ウルシ科の常緑高木。

カシュ樹実の殻に含まれる油のフェノール成分とホルムアルデヒドを反応させて得られる樹脂がカシュー塗料の原料。

[薬用部分]樹皮・根皮。

[成分]樹皮-タンニン。生種子-アナカルジア酸及びカアルドールを含み、かぶれを起こす。種子は火熱を加えて有毒成分を分解する。

コショウボク
(ピンクペッパー)

ウルシ科サンショウモドキ属

学名:Schinus molle

樹液で接触性皮膚炎

[英]Peruvian peppertree、 California peppertree。

[英]pinkpepperは胡椒木の実。

胡椒木の熟した果実をピンクペッパーとして使用する場合、種子や果肉には苦味とともに胡椒類似の味がするとされているが、辛味成分は一切含まれていないとする報告も見られる。彩りに加えられる。

ピスタチオ

ウルシ科カイノキ属(トリバハゼノキ属)

学名:Anacardiaceae Pistacia。

[英]pistachio nuts。

ウルシ科カイノキ属の樹木の実。原産は地中海沿岸。

農耕文明の初期以来、この地に自生していた原種を食用に栽培してきたもので、現在の生産量はイランが世界一。

ピスタチオの脂質にはオレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれている。また、食物繊維が特に多く、ビタミンB1、カリウム、鉄、銅も多く含まれている。

マンゴー(亡果)但し、『亡』は木偏。

ウルシ科マンゴー属

学名:Mangifera indica L.。

印度北東部から北ビルマのヒマラヤ山麓地域原産。[英]: Man-go。

[薬用部分]果実、葉、樹皮。

[成分]果実にマンギフェロン酸、アンボン酸などのトリテルペン、ガロタニン等のポリフェノール、多種のカロチノイド、ビタミンC等を含む。葉、樹皮にマンギフェリン、タンニンなどを含む。

接触性皮膚炎を惹起する成分であるレゾルシン誘導体のカアルドール(cardol-I・cardol-II)は主に Mangoの果皮の部分に含まれているが果肉にも少量含まれている。

症状は顔面、特に口の周りに発現しやすく、赤く腫れて小水疱ができ、強い掻痒を伴う。

[治療]:ステロイド剤の外用。Mangoで接触性皮膚炎を惹起する者は、ウルシ、ギンナンでも皮膚炎を起こすため注意。

イチョウ
(公孫樹、銀杏)

イチョウ科イチョウ属

学名:Ginkgo biloba L.。

外種皮の外層は粘液に富む肉質で特有の臭気を有し、粘液が皮膚につくと炎症を惹起する。

中国原産。鴨脚(ヤアチャオ)の中国宋代の音読の転訛とされる。

日本全土に広く植栽されている落葉高木。

[薬用部分]種子(銀杏<ギンキョウ>)、白果<ハクカ>

[成分]外種子にはフェノール性化合物のギンゴール酸、ビロボール、微量の青酸配糖体。種子を多食又は生食すると中毒を起こし、ときに死亡することがあるので注意が必要。澱粉、脂肪。
葉にフラボノイドのイソラムネチン、ギンゲチンが含まれる。

 

ウルシ科(Anacardiaceae)は双子葉植物に属する科で、70属980種ほどを含む。木本で温帯から熱帯に分布する。果実は核果。花は単性。樹脂を含み、これを漆などの塗料として利用するが、特にウルシに近縁の種(Rhus及びToxicodendron 属)はurushiolを多く含み、これによってアレルギー性皮膚炎を起こしやすい。また、果実の果肉に高融点の中性脂肪を含むものが多く知られ、しばしばこれを広義の蝋として利用する。種子の中の胚の子葉に蓄えられた貯蔵栄養素も、主として脂肪であるものが多く、ナッツ類として食用になるものがある。

なお、ウルシによるアレルギー性皮膚炎を惹起した者では、他のウルシ科の植物による交叉感作が起こりえる。また銀杏の含有成分は、ウルシ科の含有成分と化学構造が類似しており、銀杏ににかぶれる者はウルシ科の植物にかぶれる可能性がある。

山野でかぶれを起こす植物の代表は、山櫨の木、山漆、蔦漆等の漆の仲間である。これらの植物では有毒成分が気化しており、人によっては近くを通るだけで発赤を伴う皮膚炎を起こすことがある。樹液にはurushiolが含まれており、樹液が皮膚に付着するとアレルギー反応を惹起し皮膚炎を生じる。

樹液にかぶれるだけではなく、イラクサなどでは葉や茎の表面の刺毛が皮膚に刺さり、中に含まれるヒスタミンが体内に入って皮膚炎を起こすこともある。また、山芋の周皮を剥くときや摺り下ろしたとろろを食べたとき、手や口のまわり等かぶれるのは、山芋の芋に含まれる蓚酸カルシウムの針状結晶が皮膚に刺さり、機械的な刺激と中に含まれるヒスタミンなどの成分により、化学的な刺激やアレルギー反応が加わって皮膚炎を起こすからである。

 

植物による接触性皮膚炎の発症機序

 

刺激性接触皮膚炎
 
<機械的刺激>:肉眼的・顕微鏡的に観察できるトゲにより、皮膚に機械的刺激が加わることで起こる。:(例)針状結晶をもつシュウ酸カルシウムが含まれているサトイモ。<化学的刺激>:葉汁、茎汁、果汁に含まれる化学物質が皮膚を刺激して起こる。:(例)蛋白質分解酵素をもつパイナップル。

アレルギー性接触皮膚炎
 
原因植物に感作され、アレルギー反応を起こす。:(例)果肉部に感作を起こす成分がある銀杏。
 
光接触皮膚炎
 
皮膚に接触した物質が光にあたることによって刺激物質に変化し、炎症を起こす。:(例)ライムなどの柑橘系やイチジクなどのクワ科植物。
 
アレルギー性接触性皮膚炎(即時型反応によるもの)
 
感作が成立している人に、再度同一抗原あるいは化学構造上類似した物質が接触することにより即時的に生じるもの:レタス、タマネギ、ニンニク、ソバなど
 
遅延型反応によるもの(反応が遅いもの)
 
ウルシ、ハゼノキ、イチョウ、銀杏、プリムラ・オブコニカ、キク、シソなど

[63.099.URU:2006.5.21.古泉秀夫]


  1. 原色牧野日本植物図鑑 I(コンパクト版);株式会社北隆館,2003
  2. 原色牧野日本植物図鑑 II(コンパクト版);株式会社北隆館,2000
  3. 原色牧野日本植物図鑑 III(コンパクト版);株式会社北隆館,2002
  4. http://www.allergy- i.jp/hifu/faq/iga/index_iga07_05.html,2006.5.21.
  5. http: //www.sankyo.co.jp/healthcare/kahun/allergy/syokubutu.html,2006.5.21.
  6. 薬科学大事典 第2版;廣川書店,1990
  7. ハーブスパイス館;株式会社小学館,2000
  8. http://tokyo.cool.ne.jp/nutsno1/page032.shtml, 2006.5.21.
  9. 三橋 博・監修:原色牧野和漢薬草大圖鑑;北隆館,1988
  10. http://www.kyoto-phu.ac.jp/kpu- news/garden/ityou.html,2006,5.21.
  11. 小川賢一・他監修:危険・有毒生物;株式会社学習研究社,2003