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コエンザイムQ10の副作用

日曜日, 12月 30th, 2007

KW:副作用・健康食品・コエンザイムQ10・coenzyme Q10・CoQ10・vitamin Q・ビタミンQ・ユビキノン・ubiquinone・ユビデカレノン・ubidecarenone

 

Q:健康食品として市販されているコエンザイムQ10の副作用について

A:コエンザイムQ10(coenzyme Q10:CoQ10)はvitamin Qとも呼ばれ、脂溶性のビタミン様物質で、ヒトのミトコンドリアに最も多く存在しており、エネルギー産生に深く関わっているとされる。またユビキノン(ubiquinone)という名称で、糖尿病や虚血性心疾患、脳出血の治療薬としても知られている。細胞膜の酸化を防止する抗酸化物質であり、また精子や白血球、免疫細胞を活性化する。

coenzyme Q10は肝臓でも生成されるが、多くは食品から摂取しなければならない。食品のうち肝臓・モツ・牛肉・豚肉・鰹・鮪等に多く含まれている。

2001年4月、食薬区分の緩和政策によりcoenzyme Q10は医薬品成分から食品成分となり、健康食品としての販売が可能になった。

ユビキノン(ubiquinone):生物界に普遍的に(ubiquitous)分布していることからubiquinoneと命名されたが、ミトコンドリアでの電子伝達に必須であったことから補酵素Q(coenzyme Q)ともいう。ベンゾキノン誘導体で、イソプレン単位がn=1-12のものが天然に存在し、パン酵母ではQ6、大腸菌ではQ8、高等動物ではQ10が用いられている。

健康食品としてのcoenzyme Q10に関する副作用は、検索できなかったが、医薬品としてのubidecarenone [ノイキノン錠(エーザイ)]で、消化器(胃部不快感、食欲減退、吐気、下痢等)、皮膚(発疹等)の報告がされている。

coenzyme Q10は、本来生体内で生成される物質であり、重篤な副作用が発現するとは考えられないが、大量に経口摂取した場合、消化器症状の発現は考えられる。また、発疹等は、服用者の体質によって当然起こることが予測される。

因みにubidecarenone(coenzyme Q10)について、1957年にウシの心筋から結晶として分離されたもので、その後ヒトの心臓からも見いだされた補酵素である。ヒトの心疾患では、心筋の ubidecarenone活性が低下しているの報告がされている。

[065.COE:2004.10.26.古泉秀夫] 


  1. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典-2004-2005改訂新版;東洋医学舎,2004
  2. 中村丁次・監修:最新版からだに効く-栄養成分バイブル;主婦と生活社,2001
  3. 生化学辞典 第3版;東京化学同人,2002
  4. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  5. 安藤鶴太郎・他:優秀処方とその解説 第37版;南山堂,1996

キシリトール入りガムによる呼吸困難

日曜日, 12月 30th, 2007

KW:食物アレルギー・過敏症・キシリトール・ガム・キシリッシュ・クリスタルミント

 

Q:キシリトール入りガムのうち『クリスタルミント』を噛むと心臓がバクバクするとか息苦しくなる等の症状が出ることがあるが、これはアレルギーと考えていいのか

A:キシリトール入り『シュガーレスガム『キシリッシュXYLISHクリスタルミントCRYSTAL MINT(明治製菓)』の表示成分は次の通りである。

  • 名称:チューインガム
  • 原材料名:マルチトール、食塩、甘味料(キシリトール、アセスルファムカリウム、スクラロース)、ガムベース、香料、炭酸カルシウム、増粘剤(アラビアゴム)、リン酸カルシウム、光沢剤、軟化剤、香辛料抽出物、乳化剤、ポリフェノールオキシダーゼ、デキストラナーゼ(風味)
  • 内容量:12粒入り
  • 息・キレイ:ラッカーゼ+ローズマリー配合+デキストラナーゼ(風味)
  • 美しい歯、もっと大切に:キシリトール+ハイドロキシアパタイト
エネルギー 蛋白質 脂質 炭水化物 ナトリウム キシリトール 糖類
33kcal 0g 0g 12.9g 3mg 7.2g 0g

 

各種配合成分の特徴は、次の通り報告されている。

  • ハイドロキシアパタイト(hydroxiapatite): 歯や骨を構成する成分であり、リン酸カルシウムからなる無機鉱物の一種。hydroxiapatiteの成分は、人間を含む動物の骨や歯などと同じ成分である。
  • デキストラナーゼ(dextranase):カビを培養して得られる酵素。汚れを分解する酵素。
  • ミント(mint):スペアミント。シソ科ハッカ属・多年草。学名:Mentha spicata。別名:ミドリハッカ、オランダハッカ。
    原産地:ユーラシア大陸・アフリカ。
    その他の品種:林檎の香りのアップルミント(学名:Mentha suaveolens Ehrh.)、ミントの元祖とも言われるウォーターミント(学名:Mentha aquatica L.)、冷たい香りのクールミント(学名:Mentha arvensis var.agrestis)、刺激的な香りのペパーミント(学名:Mentha piperita)、オレンジミントとも呼ばれるオーデコロンミント(学名:Mentha xpiperita ‘Citrata’)。
  • ラッカーゼ(laccase):o-ジフェノール又はp-ジフェノール(ヒドロキノン)を分子状酸素を使って、o-キノン又はp-キノンに酸化する酵素。
    各種の微生物、茸、ウルシなどに存在する銅酵素。また、ウルシなどの植物や動物に広く存在する酵素で、酸素の存在下でフェノール類、アニリン類を酸化する等の報告が見られる。
  • ローズマリー(rosemary):ローズマリー油(rosemary oil)。南ヨーロッパに産するシソ科植物マンネンロウ(Rosmarinus officinalis)の花及び水蒸気蒸留して得られる無色又は黄緑色の香油。
    成分はショウノウ、シネオール、ボルネオール、ピネン、カンフェンなどである。用途:安価な石鹸、化粧品香料などの原料。
  • アセスルファムカリウム(acesulfame potassium):アセスルファムカリウムは、飲料、菓子、ジャム類等100品目以上の食品に、甘味料として使用される。動物における抗原性試験の結果、炎症反応は観察されなかったとされている。

以上の調査の結果、アレルギーの可能性が推測されるのは、dextranase、laccaseの酵素類であるが、これらの酵素に対する過敏症試験をした後でなければ、確定出来ない。

該当者が皮膚科において貼布試験を受けるのも一つの考え方であるが、ガムは『生命維持基本食品』ではないため、他のガムに変更したとしても何等問題にはならない。摂食するガムの変更をお奨めする。

[065.XYL:2004.9.3.古泉秀夫]


  1. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  2. 静岡県静岡工業技術センターhttp://www.s-iri.pref.shizuoka.jp/,2004.9.2.
  3. 森田慶子:
    http://www.morita-dewrite.co.jp/d_and_g/garden/g_h_data/g_mint.html,2004.9.3.
  4. 生物化学辞典 第3版;東京化学同人,2002
  5. 財団法人 日本食品化学研究振興財団;http://www.ffcr.or.jp/,2004.9.3.

クロレラ製品中に含まれるクロレラの含有量

日曜日, 12月 30th, 2007

KW:健康食品・クロレラ・組成・含有量・サンクロレラA・グロスミン・光合成能力

 

Q:現在、服薬指導を担当している患者が、クロレラを摂食している。クロレラ製品中のクロレラ含有量あるいはそれらに含まれる成分としてどのようなものが含まれているのか。

A:市販されているクロレラ製品のうち、資料の入手ができたものについて、以下に紹介する。

クロレラ(chlorella)は、淡水産の緑藻類の一種で、直径1000分の3mm?8mmの球形の単細胞生物である。ギリシャ語のクロロス (緑)とラテン語のエラ(小さいもの)を組合せ「クロレラ」と命名されている。超微生物ではあるがその生命力はすばらしく、他の植物の数十倍以上の光合成能力で20時間毎に4分裂を繰り返して増え続ける。

クロレラの蛋白質合成量は驚くべき数値で、年間推定量として大豆の38倍、稲の55倍に相当する。アミノ酸組成も8 種類の必須アミノ酸をはじめ、3種の準必須アミノ酸もバランスよく豊富に含んでおり、極めて良質である。各種ビタミン・ミネラルなどが天然のままの状態で含まれている等の資料が示されている。

製品名(会社名) サン・クロレラA
[(株)サン・クロレラ]
グロスミン
[クロレラ工業(株)]
一般組成(g)
水分 4.6 4.0
蛋白質 58.4 63.5
脂質 9.3 11.5
炭水化物 23.2 15.0(糖質)
繊維質 0.3 2.3(粗線維)
灰分 4.2 6.2
クロレラエキス   26
食物繊維   20
エネルギー 411kcal 408kcal
ビタミン類(mg)
ビタミンA効力 51,300IU  
β-カロテン 92.4 41.4
ビタミンB1 1.7 1.85
ビタミンB2 4.3 5.70
ビタミンB6 1.4 0.912
ビタミンB12   0.077
ビタミンC 10.4 58
エルゴステロール   86
ビタミンE 1.5以下 12
ビタミンK1   1.0
ナイアシン 23.8 22.3
パントテン酸 1.1 2.85
ビオチン 0.18 0.209
イノシトール 132 221
葉酸 0.088 0.049
クロロフィル 1,663 2,000
コリン   380
コエンザイムQ9   17
ミネラル類(mg)
カルシウム 271 98.5
マグネシウム 315 221
カリウム   962
130 160
亜鉛 71  
リン 895  
ヨウ素 0.4  
アミノ酸類(g)
リジン 3.11  
ロイシン 4.69  
イソロイシン 2.32  
スレオニン 2.37  
バリン 3.23  
メチオニン 1.31  
フェニルアラニン 2.77  
トリプトファン 0.50  
ヒスチジン 1.12  
アルギニン 3.31  
セリン 2.00  
プロリン 2.49  
グリシン 3.06  
アラニン 4.29  
グルタミン酸 5.75  
アスパラギン酸 4.66  
その他 11.42  
脂肪酸
飽和脂肪酸 18.5%  
不飽和脂肪酸 81.5%  
リノール酸   1.8g
リノレン酸   2.0g

 

健康補助食品或いは健康食品の場合、その含有成分について厳密に測定すべき項目は定められていないようであり、その意味では表中の空欄部分は、その成分が存在しないことを意味しない。いずれにしろ、原料は天然の産出物であり、含有成分にバラツキはあるものの、それぞれ各成分が含まれていることは推定できる。

上表の含有成分中、医薬品との相互作用が懸念されているのは、葉緑素中に含まれるビタミンKで有り、warfarinの添付文書中に「クロレラとの併用は避ける」の記載がされている。

[015.9.CHL:1997.9.4.古泉秀夫]


  1. (株)サン・クロレラ東京支店・私信,1995.2.24.〒103東京都中央区東日本橋2-23-5サン・クロレラ第2ビルTEL.03-3864-1903
  2. クロレラ工業(株)・私信,1995.2.24.

クコ茶について

日曜日, 12月 30th, 2007

KW:漢方薬・枸杞・枸杞茶・クコ茶・枸杞子・地骨皮・ジコッピ・枸杞葉・血行改善・消化管分泌促進・消化管運動促進

Q:クコ茶について

A:枸杞は古くから漢方薬の上薬として珍重されてきた。

枸杞:ナス科、Lychium chinense Miller(Chinese Matrimony-Vine)。果実(枸杞子)と根の皮(地骨皮:ジコッピ)、枸杞葉(盛夏に採取)等が使用される。枸杞茶の場合は若葉を日干しにして作る。

疲労回復に枸杞酒がよい。枸杞子200gにグラニュー糖200gを加え、ホワイトリカー1.8Lに約2カ月漬けてから毎日ワイングラス1杯ほど飲用する。高血圧症に乾燥した枸杞葉5?10gを煎じて服用する。

使用部分 成分 効力
枸杞子 ベタイン、ゼアキサンチン

フィリイエン等のアルカロイドが含まれているほか、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等の必須アミノ酸5種が含まれている。

血行改善。ベタインは消化器系の分泌、運動を促し、神経の伝達が円滑になり、胃腸病に対して間接的効果を発揮、ひいては便秘の解消。

アルカロイドは神経に働きかけ疲労した神経を興奮させる。アミノ酸も多く、蛋白質はほうれん草の2倍含有しているが、アルカロイドによる強壮作用。

枸杞葉

ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2。蛋白質
(ほうれん草の2倍)。メチオニン。ルチン(ビタミンP)。硝酸カリ等。

葉緑素 、枸杞タンニン。

毛細血管等の血管壁強化、動脈硬化予防。ルチンは体内の活性酸素消去作用と相俟って、毛細血管強化作用があり、高血圧症や低血圧症に有効とされる。これは血管が強化されることにより血行が順調になるからで、高血圧症の症状として発現する肩こり、頭痛、手足のシビレが改善され、動脈硬化の予防に役立つ。逆に低血圧ではルチンの作用とビタミンCの貧血に対する作用が効果的である。

更に葉の葉緑素に肝臓の解毒作用を助ける働きがあるため、肝臓病の予防・治療に効果があるとされる。

葉緑素に共通の性質で、体内に取り込まれるとアルカリ性に働き、体内の酸毒症状を改善するので、疲労回復、ストレスの防止、肝臓の強化あるいは利尿作用の促進等に効く。

葉中に含まれる枸杞タンニンは、酸化還元作用を持ち、老化を防ぐとともにガンの予防にも効果が期待されている。

地骨皮 ベタイン、リノール酸

ベタインによる作用とリノール酸によるコレステロールの沈着防止がいわれている。

 

[015.4LYC:2000.6.23.古泉秀夫]


  1. 伊澤一男:薬草カラー大事典;主婦の友社,1998
  2. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001

黒酢について

日曜日, 12月 30th, 2007

KW:健康食品・黒酢・クロズ・食効・伝承医療

 

Q:黒酢の成分等について

A:黒酢は原料となる米の品質のみならず醗酵並びに熟成に年単位の時間をかけるところに健康効果を生む鍵があるとされている。

一般の米酢は蒸し米に麹菌を混ぜ、アルコール発酵を進めてから酢酸菌を加えて酢酸発酵を促し、そのモロミを搾って製品化するが、、それから更に1年、 2年と適正環境下で熟成を進めると麹菌や乳酸菌の作用で次第に琥珀色に色づく。

その色から「黒」の文字が冠せられているが、色だけでなく、有機酸、水溶性ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの有効成分も大幅に加わる。

戸外に並べた「アマン壺」という薩摩焼きの壺でこの醗酵・熟成の全行程を行うのが鹿児島伝統の「つぼ酢」である。その黒酢を薄めて日常的に飲むことで顕著な高脂血症の改善、HDLコレステロールの増加作用、血糖値の降下、血圧降下、抗アレルギー作用が見られるとの報告がされている。

その他、黒酢は南九州で伝統的に作られてきた酢で、米酢の熟成期間を長くして色を濃くした独特の香味のある酢である。必須アミノ酸とクエン酸、リンゴ酸、アスパラギン酸などの有機酸、鉄、亜鉛、銅等のミネラル分を多く含んでいる。これらの成分の協合的な働きにより、腸運動の改善により便秘を解消する。疲労物質である乳酸を減少させ、疲労を回復させる。過酸化脂質、コレステロールを減少させるため、動脈硬化や高血圧を防ぐ。

黒酢の成分分析資料は入手できなかったが、参照までに通常使用されている米酢の成分について、以下に紹介する。

米酢の成分(可食部:100g、エネルギー:32kcal)

水分 蛋白質 炭水化物-糖質 灰分 Ca P Fe Na K
98.6g 0.2g 5.0g 0.7g 2mg 4mg 0.1mg 290mg 6mg

 

Mg Zn Cu ビタミンB1 ビタミンB2 ナイアシン 食塩相当量 酢酸
5mg 190mg 3mg 0.01mg 0.01mg 0.1mg 0.7g 4.5%

 

[015.9BUR:2000.5.1.古泉秀夫 ]


  1. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典2000-2001;東洋医学舎,2000
  2. 黒酢の効能:www.nava21.ne.jp/,2000.4.8.現在
  3. 香川芳子・監修:四訂 食品成分表;女子栄養大学出版部,1999

グリコサミノグリカンについて

日曜日, 12月 30th, 2007

KW:薬 名検索・グリコサミノグリカン・glycosaminoglycan・酸性ムコ多糖・アミノ糖・ヒアルロン酸・hyaluronic acid・ケラタン硫酸・keratan sulfate・へパラン硫酸・heparan sulfate・ヘパリン・heparin・コンドロイチン・chondroitin・コンドロイチン硫酸・chondroitine sulfate・デルマタン硫酸・dermatan sulfate

 

Q:グリコサミノグリカンとはどの様なものか

A:グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)とは、アミノ糖を含む一群の酸性多糖である。あるいは酸性ムコ多糖ともいう。遊離状態又は蛋白質と結合して、結合組織に存在する。構造上はアミノ糖(グルコサミン、ガラクトサミン)とウロン酸(グルクロン酸など)あるいはガラクトースからなる二糖類の繰返し長鎖構造をもち、硫酸化されている場合もある。ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸などがよく知られている。

 

glycosaminoglycan 分布 概要
ヒアルロ ン酸(hyaluronic acid)

*硝子 体、関節液、臍帯*皮膚、健、筋肉、軟骨、血管、脳など広範に分布。

*1935年眼の硝子体成分として発見された glycosaminoglycanの一種で、D-N-アセチルグルコサミンとD-グルクロン酸が交互に結合して出来た直鎖状の高分子多糖体。

ケラタン硫酸
(keratan sulfate)
*軟骨、椎間板、角膜、髄核 *ケラト硫酸ともいう。等モルのN-アセチルグルコサミン6-硫酸とガラク トースから成る多糖で、ウロン酸を含まない点で他のgly-cosaminoglycanと異なる。

へパラン 硫酸(heparan sulfate)

*細胞表 面、基底膜*哺乳類の肺、肝、腎、脾、脳、大動脈から分離

*へパリチン硫酸。古くはヘパリンモノ硫酸ともいわれた。D-グルコサミン、D-グルクロン酸、L-イズロン酸を構成糖とする多糖のN-アセチル、N-硫酸及びO -硫酸置換体。*哺乳類の肺、肝、腎、脾、脳、大動脈から分離されたが、蛋白質と結合したプロテオグリカンの形で細胞膜の普遍的成分として広く分布する。

ヘパリン(heparin) *小腸、 筋肉、肺、脾、腱、肝、肥満細胞

D-グルコサミン、D-グルクロン酸、L-イズロン酸から成る多糖のN-硫 酸、N-アセチル及びO-硫酸置換体。ムコ多糖のうちでは硫酸基を最も多く含み、二糖当たり3分子の硫酸基を持つものがある。

コンドロイチン(chondroitin) *角膜 *牛の眼 の角膜、スルメイカの皮から単離されているほか、cho-ndroitine sulfatを脱硫酸すると得られるglycosaminoglycanでN-アセチルコンドロシンのポリマーである。
コンドロイチン硫酸(chondroitine sulfate)

*皮膚、血管壁、軟骨、靱帯、関節、眼球、角膜、粘液、各臓器。*血管壁、腱など広く結合組織に含有。

代表的な硫酸化ムコ多糖類(glycosaminoglycan)。 chondroitine sulfateにはA、B、Cの3種類があり、軟骨中にはAとCが、皮膚にはBがある。AとCは多糖鎖の骨格構造がchondroitinと同様で、通常は二糖単位当たりO-硫酸を1mol含む。硫酸基がN-アセチル-D-ガラクトサミンの4位に結合しているのがchondroitine sulfate A、6位に結合しているのがchondroitine sulfate C。
デルマタ ン硫酸(dermatan sulfate) *皮膚、 心臓弁、動脈壁、腱、鞏膜の他、肺、脳、胃粘膜、尿にも見いだされる。 chondroitine sulfate B、β-ヘパリン。N-アセチル-D-ガラクトサミン4-硫酸とL-イズロン酸から成る二糖の繰返し構造が主であるが、少量のD-グルクロン酸も含まれる。

glycosaminoglycan のうち機能性素材として注目されているのは、以下のものである。

  • ヒアルロン酸(hyaluronic acid):ヒトを始め脊椎動物の組織中に広く存在しているが、特に皮膚、関節、眼に多い。皮膚では肌の乾燥を防ぐ役割を、関節では関節液中で関節の円滑な動作を、眼では硝子体の緩衝作用や組織形状を維持する役割を果たしている。中国やフランスでは肌をみずみずしくする料理として鶏の鶏冠のスープが好んで食べられている。hyaluronic acidには1g当たり6000mLの水を保持する性質があり、生体の水分を保つ上で重要な役割を果たしているが、加齢と共に減少する。 hyaluronic acidはこれまで化粧品等に配合されてきたが、最近、飲むhyaluronic acidとしてsupplementが市販されている。
  • コンドロイチン硫酸(chondroitine sulfate):骨の形成、傷の治癒、感染防止(免疫体の産生)などの生理作用をもつ。加齢による欠乏により皮膚の保水性、潤滑性が失われ、老人に特徴的な老人性肌の原因となる。更にchondroitine sulfateは動脈硬化、解毒、代謝異常、腎疾患、難聴、炎症などへの薬理効果が明らかにされ、腎炎、ネフローゼ、リューマチ、神経痛、腰痛、五十肩、肩凝り、夜尿症、眼疾患、脱毛症を適応症とする医薬品に用いられている。その他鮫の軟骨を利用した健康食品が市販されている。

[011.1.GLY:2005.4.26.古泉秀夫]


  1. 今堀 和友・他監修:生化学辞典第3版;東京化学同人,1998
  2. 薬科 学大辞典 第2版;広川書店,1990
  3. 奥田 拓道・監修:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2004-2005

クロレラ摂取とARB・ACE阻害薬・K保持性利尿薬への影響

日曜日, 12月 30th, 2007

KW:相互作用・ARB・ACE阻害薬・K保持性利尿薬・クロレラ・青汁・高カリウム食品・薬理作用

 

Q:ARB・ACE阻害薬・K 保持性利尿薬等のカリウムを体内に止めようとする高血圧治療薬を服用中の患者では、カリウムを豊富に含むクロレラあるいは青汁を摂取する場合、医師に相談するとの記事が新聞に出たが、どの程度影響するのか

A:ARB[Angiotensin II Type 1 Receptor(AT1)Blocker]・ACE阻害薬[angiotensin converting enzyme]・K保持性利尿薬の薬理作用について、次の報告がされている。

区分 薬理作用
ARB

AT1-受容体遮断薬による降圧作用は、主に血管平滑筋のAT1-受容体において生理的昇圧物質である Angiotensin IIと特異的に拮抗し、その強力な血管収縮作用を抑制することによって生ずる末梢血管抵抗の低下による。更にAT1-受容体を介した副腎でのaldosterone遊離に対する抑制作用も、降圧作用に一部関与していると考えられる。

aldosterone 遊離抑制作用によるaldosterone減少の結果、K排泄は低下する。またブラジキニン分解酵素であるACE(キナーゼII)に対して直接影響を及ぼさない。

ACE阻害薬

Angiotensin II は強力な循環血管収縮物質で、高血圧患者での本物質の合成阻害は、末梢抵抗の低下と血圧低下を起こす。ACE阻害薬は心血管反射を損なわず、利尿薬、β- 遮断薬の有害反応の多くを示さない。本薬に共通の不具合はブラジキニン増加によって起こる空咳である(ACEはブラジキニンも代謝する)。ACE阻害薬の稀ではあるが重篤な有害反応には血管性水腫、蛋白尿、好中球減少がある。例えば利尿薬使用患者で(Naが枯渇しているので)、初回量で血圧の急激な低下を起こす。

ACE阻害薬は両側腎動脈狭窄患者に腎不全を起こす。

両側腎動脈狭窄患者ではAngiotensin II は明らかに糸球体後細動脈を収縮し、適当な糸球体濾過を維持するのに必要とされるからである。

Angiotensin II 生成阻害はアルドステロン分泌を減少するが、著しく障害せず、過度のK貯留はカリウム補給薬、カリウム保持性利尿薬服用患者にのみ起こる(aldosteroneはNa 再吸収とK排泄を増加する)。

K保持性利尿薬 本薬はK定常性維持(homeostasis)を調節する遠位ネフロンのaldosterone反応区域に作用する。aldosteroneはNa再吸収を刺激し、管腔に負電位を形成し、管腔へのK、H分泌(両者の排泄)を刺激する。本薬はaldosteroneに拮抗する(spironolactone)か、Naチャンネル遮断によって(triamterene)、Na再吸収を減少する。これが尿細管上皮の横断電位を低下させ、K分泌の駆動力を低下させる。K保持性利尿薬は、特に腎障害患者で高カリウム血症を起こす。また、K保持性利尿薬はaldosterone分泌(K排出)を減少するので、患者がACE阻害薬を併用しておれば、高カリウム血症が起こるようである。

次にクロレラ及び青汁中のカリウム含有量(可食部100g)について、次の報告が見られる。

クロレラ・ブルガリス種中から選別-筑後産クロレラ962mg、新百年青汁2,960mg。新百年青汁の原料として使用されているモロヘイヤ920mg、ケール450mg等である。

その他、比較的カリウム含有量の高い食品(可食部100g中含有量:mg)として、次の食品が報告されている。

小麦胚芽 1100 利尻昆布(素干し) 5300
米糠 1800 刻み昆布 8200
蒟蒻(精粉) 3000 削り昆布 4000
薩摩芋(芋粉) 1200 塩昆布 1800
乾燥マッシュポテト 1200 天草(素干し) 3100
ポテトチップス 1200 干しひじき 4400
黒砂糖 1100 干し松藻 3800
栃の実(蒸し) 1900 若布(素干し) 5200
蓮の実(成熟乾) 1300 玉露(茶葉) 2800
小豆全粒(乾) 1500 抹茶 2700
隠元豆全粒(乾) 1500 煎茶(茶葉) 2200
ささげ全粒(乾) 1400 紅茶(茶葉) 2000
空豆全粒(乾) 1100 ピュアココア 2800
大豆国産全粒(乾) 1500 インスタント珈琲 3600
大豆米国産全粒(乾) 1800 オールスパイス(粉) 1300
大豆中国産全粒(乾) 1800 オニオンパウダー 1300
きな粉(全粒大豆) 1900 カレー(粉) 1700
寺納豆 1000 クローブ 1400
雛豆全粒(乾) 1200 胡椒(黒) 1300
ライ豆全粒-乾 (1900) 粉山葵(芥子粉入り) 1200
緑豆全粒(乾) 1300 山椒(粉) 1700
片口鰯煮干し 1200 生姜(粉) 1400
片口鰯田作り 1300 セージ 1600
干し鱈 1600 唐辛子 2700
するめ 1100 パプリカ 2700
素干し桜海老 1200 チリパウダー 3000
鶏卵卵白(乾燥卵白) 1300 パン酵母(乾燥) 1600
全粉乳 1800 干瓢(乾) 1800
脱脂粉乳 1800 菊のり[乾燥食用菊] 2500
干しずいき(乾) 10000 干しゼンマイ(乾) 2200
切り干し大根 3200 唐辛子果実(乾) 2800
トマト果実缶詰(ペースト) 1100 パセリ葉(生) 1000
ふだんそう葉(生) 1200 紅花隠元全粒(乾) 1700
干し蕨(乾) 3200 杏子乾果 1300
バナナ乾果 1300 竜眼(乾果) 1000
白キクラゲ(乾) 1400 キクラゲ(乾) 1000
干し椎茸(乾) 2100 あおさ(素干し) 3200
甘海苔(干海苔) 3100 甘海苔(焼海苔) 2400
甘海苔(味付け海苔) 2700 あらめ(蒸し素干し) 3200
干岩海苔 4500 恵古海苔(素干し) 2300
がごめ昆布(素干し) 5700 長昆布(素干し) 5200
細目昆布(素干し) 4000 真昆布(素干し) 6100

 

但し、カリウムは水溶性であり多くの食品では煮る・茹でる等の調理により煮汁・茹で汁中に浸出する。更に香辛料等は1回摂取量が100gということはないため、カリウムとしての摂取量は極く少量である。

なお、腎機能正常者では、カリウムの排泄は正常に行われるため、上記薬剤の服用により高カリウム血症を来すことはないと考えられる。従って、これらの薬物療法を行っている患者では、患者の腎機能の管理が重要であるといえる。

[015.2.ARB:2005.10.18.古泉秀夫]


  1. 医療ルネッサンスNo.3709 -健康へのデザイン-サプリメント“検査や治療にも影響”;読売新聞,2005.10.7.
  2. 麻生芳郎・訳:一目で分かる薬理学-薬物療法の基礎知識-第3版;メディカルサイエンスインターナショナル,1997
  3. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2005
  4. ミカルディス錠IF改訂第4版,2005.4.
  5. 古泉秀夫・編著:わかるサプリメント健康食品Q&A;じほう,2003
  6. 香川芳子・監修:5訂食品成分表;女子栄養大学出版部,2005

米糠について

日曜日, 12月 30th, 2007

KW:健康食品・コメヌカ・米糠・栄養成分・食効・トリアシルグリセロール

 

Q:健康食品として米糠は商品化されているのか

A:米糠可食部100g中の栄養成分について、次の数値が報告されている。

米糠中の栄養成分(可食部100g当たり)

エネルギー 水分 蛋白質 脂質 炭水化物-糖質 炭水化物-繊維 灰分 Ca P Na
296kal 13.5g 3.2g 18.3g 38.3g 7.8g 8.9g 46mg 1.5g 6.0mg 5mg

 

K ビタミンB2 Mg 亜鉛 カロテン A効力 E効力 ビタミンD
1,800mg 0.50mg 1,000mg 6,200μg 620μg 6μg 0IU ?mg ?IU

 

ビタミンB1 ビタミンB2 ナイアシン ビタミンC
2.50mg 0.50mg 25.0mg 0mg

玄米の組成は外側から果皮、種皮、糊粉層、胚乳及び粒基部にある胚芽からなっている。精白によって生じる米糠には、果皮、種皮、糊粉層及び胚芽部分が含まれ、通常、精白米を作る場合、玄米重量のほぼ8?10%が糠として分離される。

米糠は現在、食用油の原料、糠漬け、飼料、茸の培養基等として利用されている。新鮮な米糠を煎って摂食すると香ばしく、甘みがあるが、脂質の含量が多く、多量に摂食することはできない。甘みは糖質として蔗糖が含まれているためであるが、脂質の分解が起こるため、精白後の糠の品質劣化は速やかであるとする報告が見られる。

米糠を貯蔵すると脂質の主成分であるトリアシルグリセロールが酵素リパーゼによって分解され、遊離脂肪酸が生成する。

米糠中のトリアシルグリセロールの構成脂肪酸

構成脂肪酸 含有比 (%)
ミリスチン酸 14:0 0.3
パルミチン酸 16:0 15.4
パルミトオレイン酸 16:1 0.3
ステアリン酸 18:0 1.2
オレイン酸 18:1 41.4
リノール酸 18:2 38.2
リノレン酸 18:3 2.1
ベヘン酸 22:0 0.5
リグノセリン酸 24:0 0.6

 

米糠はオレイン酸やリノール酸など不飽和脂肪酸に富んでいるため、栄養学的には優れているが、一方、不飽和脂肪酸は酸化され、過酸化物を生成しやすい。過酸化物の摂取は動物にとって有害であり、また、これは不快臭を持つアルデヒドやケトンなどの揮発性カルボニル化合物や種々の有毒物質に変化する。

米糠を煎ると殆どの酵素は失活するが、空気中の酵素による脂質の自動酸化は進行し、連鎖反応的に過酸化物が生成するおそれがある。自動酸化は光、熱、金属(特に鉄イオン)などによって促進されるので冷暗所貯蔵が必要である。

また、米糠はリンの含有量が非常に高いがこのリンの9割近くがフィチン態(フィチン酸又はフィチン酸のカルシウム、マグネシウム塩)である。このような有機態リンを動物は利用できない。そればかりでなく食品中の種々のミネラル-カルシウム、鉄、亜鉛等人の健康にとって必要な金属と結合し、難溶性の塩を作って吸収を妨げ、生体利用率を低下させる。フィチンを多く含む食品は殆どの場合かなりの量の繊維を含み、繊維も又ミネラルの生物学的利用能を低下させるといわれる。いずれにしろ糠の多量摂取はミネラルの吸収にとっては悪影響を及ぼすようである。

米糠療法は、米糠中に含まれるフィチンのカルシウム結合作用によって腸管でのカルシウム吸収を抑制し、これによって高カルシウム尿を改善させようとするものである。米糠療法の実施根拠は、尿路結石の発生には多くの因子が関与しているが、中でも高カルシウム尿は特発性の尿路結石症例で高頻度に認められる最も重要な危険因子であるということである。

しかし、最近になって、高カルシウム尿は、軽度の高蓚酸尿に比較して、尿中蓚酸カルシウムの過剰飽和状態に対して遙かに小さい影響しか与えていないことが解ってきた。尿中の蓚酸量が正常範囲より僅かに上昇するだけで(例えば45mg/L)、尿中の蓚酸カルシウムの結晶量が急激に増加する。

米糠療法の副作用として、蓚酸排泄量の増加が知られている。これは米糠に含まれるフィチンが腸管内でカルシウムと結合するために、蓚酸と結合するカルシウムが減少し、吸収可能な遊離の蓚酸が増加するためと説明される。蓚酸の少量の増加は、結石形成に対して大きな影響を与えるので、米糠がかえって結石形成促進的に働く可能性がある。シスチン結石、尿酸結石等、結石形成のメカニズムが異なるため、米糠療法の適応はカルシウム含有結石のみであり、高カルシウム尿を示す症例のみに適応すべきである。その他、米糠アラビノキシラン[arabinoxylene;ヘミセルロース(MGN-3)]について、強力な免疫賦活作用があるとする報告がされている。

米糠ヘミセルロースBは、高度に分枝した複雑な糖組成を有し、その主な構成糖はアラビノースとキシロースであるが、その他ラムノース、ガラクトース、マンノース、ウロン酸等が含まれている。アラビノース、キシロース以外の構成糖を酵素を用いて加水分解することにより、より純粋なアラビノキシランが得られる。

アラビノキシランは自然界に広く分布し、イネ、小麦、玉蜀黍等のイネ科植物に多く含まれる成分である。生理活性物質といわれるアラビノキシランは、植物の「骨」の働きをしている。植物の細胞壁を作る材料の一つにヘミセルロースという高分子糖質が存在するが、栄養学的には食物繊維と呼ばれるものの一つで、イネ科植物のヘミセルロースの主成分がアラビノキシランである。

現在、アラビノキシランについては、その免疫活性の強さに注目し、抗癌剤としての検討がされている。

なお、健康食品として加工された米糠が市販されている。

[015.9ARA:2000.4.5.古泉秀夫]


  1. 香川芳子・監修:四訂食品成分表;女子栄養大学出版部,1999
  2. 山上雅子:米糠の食べ方;日本医事新報,No.3433,1990.2.10.
  3. 伊藤晴夫:尿路結石に対する米糠療法;日本医事新報,No.3732,1995.11.4.
  4. plaza16.mbn.or.jp/,2000.4.5.