Archive for 8月 15th, 2007

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添付文書の位置付け

水曜日, 8月 15th, 2007

人髄液より高比重に調製された脊椎麻酔用局所麻酔薬『ペルカミンS注(帝国化学)』が市販されていた。承認された適応は『脊椎麻酔(腰椎麻酔)』である。

麻酔対象部位は『上腹部・中下腹部・下腹部、下肢、肛門周囲、仙骨節』で、麻酔時の注意事項の一つとして『脊椎麻酔の際は血圧が降下しやすいので以下の測定基準により血圧管理を行い処置:a)薬液を注入してから1分後に血圧を測定。b)それ以降14分間は2分に1回血圧を測定。必要であれば(例えば血圧が急速に下降傾向を示す場合)連続的に血圧測定。c)薬液注入後15分以上経過後は2.5-5分に1回血圧測定。必要があれば連続測定。』の記載がされている。

『ペルカミンS注腰椎麻酔に係る最高裁判決,1996.1.23』

  1. 事実の概要:麻酔剤ペルカミンSの添付文書に、注入後10-15分間は2分ごとに血圧測定をすべきであると記載されていたにも係わらず、当時の医療慣行として一般的に行われていた、5分間隔の測定をした結果、患者に重篤な後遺障害を与えたことが、医療側の過失になるかどうかが問われた裁判である。
  2. 最高裁判決の内容:「医療水準は、医師の注意義務の基準(規範)となるものであるから、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものでなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない。」

「医師が医薬品を使用するに当たって、文書(医薬品添付文書)に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことに特段の合理的理由がない限り当該医師の過失が推定されるというべきものである。」

つまり上記の最高裁判決は、医師の『添付文書の遵守義務』について、明確な判断を示したものであるといえる。

『添付文書の記載事項は、当該医薬品の危険性につき最も高度な情報を有している製薬業者が、患者の安全性を確保するために、医師等に対して必要な情報提供の目的で記載するもの』であり、医薬品の使用に際しては、添付文書に記載されている用法・用量、各種注意事項等を遵守しなければならないとしているのである。

ところで添付文書の記載内容について、薬を使用する際に遵守すべき事項が書かれているというのであれば、記載内容の問題点は極力改善する努力をしていただかなければならない。残念ながら現在の添付文書は、薬を使用する際の第一次の資料であることは間違いないが、第一級の資料というにはいささか物足りない感がするのである。

このことは結果的に、最終使用者である患者にも、正確な情報が伝達されないことを意味することになる訳で、薬を使用する患者にとっての不幸であるといえる。

(2006.8.25.)

添付文書の問題点-催奇形性

水曜日, 8月 15th, 2007

薬を使用する場合、医薬品の添付文書は臨床上最も重要な資料と成り得るものでなければならない。

医薬品の添付文書は、規制当局の監督の下に、医薬品の安全性確保を目的に、その医薬品に関する情報について、質・量ともに最も優位性を持つ製薬企業が作成する公的文書である。従来、添付文書は、薬物療法の標準的な参考資料として認識されてきた。しかし、医薬品の相互作用によって患者が死亡するという薬害ソリブジン事件(1993年)等が発生したことにより、医薬品の安全性が社会的な問題となるとともに、幾つかの薬の使用に関連した医療訴訟の判決の中で、医薬品の添付文書は、過失の推定基準として採用される状況となり、添付文書に記載される情報の法的な重要性が増してきている。

従って、医薬品の添付文書は、従来の参考資料から薬物療法の判断基準としての守備位置を得ようとしているといえる。ただし、現在の添付文書中に記載されている情報の中で、『妊婦への投与』と『授乳婦への投与』については、ある意味で、甚だ使いにくい情報が記載されているといわなければならない。

勿論、『妊婦への投与』についていえば、ヒトによる臨床治験は不可能であり、妊婦に薬を服用させ、催奇形性の資料を製薬企業が手に入れたなどということになれば、世間的に指弾されることは間違いない。従って『妊婦への投与』に関する限り動物実験の結果が記載されているというのは仕方がない。

一例を示すと次のような記載がされている。

『妊婦、産婦、授乳婦等への投与』

  1. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。動物実験(ラット、ウサギ)で胎盤通過性が報告されている。]
  2. 授乳婦に投与する場合には授乳を避けさせること。[授乳婦に対する安全性は確立していない。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。]

かって我々の社会は、サリドマイドによるアザラシ症の発症という、重篤な催奇形性の洗礼を受けた。サリドマイドは、妊婦へ投与しても安全な薬だとして、妊婦にも使用された経緯がある。サリドマイドは、副作用が少なく目覚めも良かったので、優れた薬として用いられた。しかし、妊娠した動物での安全性試験が実施されていなかったということで、その強力な催奇性が見のがされる結果となったといわれている。

その意味では、動物実験の結果が、その薬の催奇形性を考える上で、一定の役割は果たすことは考えられるが、動物実験の結果が、直ちにヒトに外挿されるとは限らない。動物の場合、どちらかといえば自然分娩における奇形仔発生の確率は高いとされており、動物で奇形仔が発生したとしても、それが服ませた薬によるものとは直ちに断定できない。更に上記の例では『胎盤通過性』が報告されているとはいえ、薬が胎盤を通過した結果、胎仔にどの様な影響が出たのかは記載されていない。

『授乳婦への投与』についても、同様である。動物実験で乳汁中に移行すると記載されているが、その結果、乳仔にどの様な影響が出たのかは記載されていない。にもかかわらず『安全性未確立』ということで、投与する場合には『授乳回避』と簡単に結論づけられてしまっている。

1日か2日の授乳回避なら母乳が止まることはないのかも知れないが、長く服用する薬では、人工栄養に強制的に変更しろということを意味している。

ところで『治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合』と記載されているが、『有益性』と『危険性』を天秤にかけ、何れに判断の根拠を置くのかの結論を出すのは難しい。

結局は処方を書く医師が、その責任の大部分を押し付けられており、もし薬の服用によって奇形児が発生した場合、厚生労働省や製薬企業は、添付文書に『治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合』との記載がされており、投与の判断を下したのは医師であって、我々は注意は喚起してあるので、責任は医師にあるということになるのだろうか。

何れにしろ添付文書が薬物使用時の重要な情報源であり、その記載内容については、原則として遵守すべきであるとする最高裁判例もあるということからいえば、『妊婦への投与』、『授乳婦への投与』に関する部分もより判断の下しやすい情報提供をすべく、努力すべきである。

(2006.8.9.)

テレビは何でもありなのか?

水曜日, 8月 15th, 2007

鬼城竜生

テレビという媒体の提供する情報は奇妙だ。

今も『ホリエモン』報道にある意味で狂奔しているが、方向性は全く逆だ。つい先日までは、時代の寵児といわんばかりに持ち上げていたが、今は行き過ぎた規制緩和の鬼っ子として取り扱っている。大体、時代の寵児というが、TVの諸氏は一体彼をどんな時代の寵児だと認識していたのか。あきれたことにクイズ番組やその他の芸能番組にまで出演させていたが、それは時代の何と関係があって出演させていたのか。

第一、フジテレビとの対立問題では、明らかに慣行を無視した株の入手に対して、より詳細な調査をするでもなく、あたかも旧世代の牙城をぶち壊すためには、やむを得ない手段だといわんばかりにお祭り騒ぎをしていた。

更には白馬の騎士だの毒薬だのと、新知識をひけらかしていたが、あの当時、彼の手法を詳細に検証し、その手法の是非を徹底的に検証しておけば、今日の話はなかったのではないか。更に株の異様な分割について、規制する規則がないから違法ではないという、何でもありの手段を無批判に鵜呑みにした放送は、報道機関のとるべき手法ではなかったのではないか。

更に報道番組が追いかけ回わしたいというのであれば、別に文句もいわないが、当てもの番組や娯楽番組までが追いかけ回すとなると常軌を逸しているといわざるを得ない。ましてや秘書までが出演するとなると、いかにTVが芸人の素人化を招いたとはいえ異様である。最も最近では、弁護士や女医までが、娯楽番組に引っ張り出されており、それだけ役者が不足しているということなのかもしれないが、彼ら彼女らは本業を恙なくおやりになっているのかと心配になってくる。

如何に美容整形外科医とはいえ、人の体に刃を入れる仕事である。技術を磨く努力こそ必要だと思われるのに、チャラチャラしていていいのかと思ってしまうが、TVに出た結果、門を叩く患者が増えるということなのかもしれない。同様にTVで有名になれば、弁護料も高く取れるという思惑があるのかもしれないが、あくまでそれは弁護の腕ではなく、有名弁護士であるという虚像にしか過ぎないのではないか。

ホリエモンの話が些か脱線気味になったが、TVというのは、じっくり一つの課題を追う取材記者というのはいるのだろうか。ライブドアの会社としての危うさ、虚業の上に積み上げられた蜃気楼であることを暴き出すだけの取材はできなかったのか。第一衆議院議員に自民党から立候補した当たりから、何がやりたいのか解らん男に成り下がっていたにも係わらず、彼の思惑に絡め取られて、虚業のライブドアを、あたかも実体のある会社だといわんばかりに情報を垂れ流したのは将に見事としかいいようがない。

(2006.2.1.)

天然色素-アカネ色素

水曜日, 8月 15th, 2007

鬼城竜生

食品添加物として使用されてきた『アカネ色素』について、動物実験の結果、“遺伝毒性と腎臓の発癌性”が認められたということで、既存食品添加物名簿から削除するとする文書が厚生労働省から出された。

『アカネ色素』:[英]madder pigment。西洋茜(Rubia tinctorum L.)の根から抽出して得られる赤-褐色の色素。アカネ色素の主成分は、アリザリン(Alizarin)、ルベリトリン酸(Ruberythoric acid)などのアントラキノン骨格を持った化合物で、その他ルビアジン、プルプリンの他にも4種類のアントラキノン誘導体が確認されている。熱、光に対して非常に安定。水やアルコールに溶け易く、酸性で黄色、中性で赤色を呈する。天然着色料としてハム類のケーシング(casing)に使用される。生産地はスペイン、ポルトガル、イタリアとする報告が見られる。

この『アカネ色素』については、ファーブル昆虫記8-伝記虫の詩人の生涯(奥本大三郎・訳/解説;株式会社集英社,1991)に面白い話が載っている。それはFabre J.H.が

  • 1856年にアカネから効率よく染料を抽出する研究を開始。
  • 1858年大学教授の身分を手に入れるためには財産がなければ駄目だと知らされ、アカネからの染料抽出のための研究に没頭する。
  • 1866年アカネの色素を直接取り出すことに成功。
  • 1867年アヴィニョン市が功績を認めてガニエ賞を贈る。賞金9000フラン。
  • 1868年文部大臣デュリュイによりレジオン・ドヌール勲章を授与され、ナポレオン三世に拝謁。Fabre方式によるアカネ染色の工業化に成功。工場が動き始めてまもなく、独逸でアリザリンの化学合成の技術が完成。アカネ染色工業化の夢が頓挫。
  • 現在、使用されている『アカネ色素』がFabreの成果に依拠しているのか、全く新しい技術によるものか知らないが、有名な昆虫記の筆者であるFabreの夢砕かれた研究が西洋アカネから『アカネ色素』を抽出するものだった

というお話である。

Fabreの『アカネ色素』の研究は、繊維の染料としての研究であり、食品に添加する目的ではなかったようであるが、『アカネ色素』を食品添加物として使用するようになったのは何時頃のことなのか。

わが国では、1995年の食品衛生法改正までは、天然の添加物に対する規制は特にされておらず、食品衛生法の改正以降、天然の添加物に対しても各種の安全性に関する資料を提出し審議・指定を受けなければならないという、合成添加物と同様な指定制度が導入された。しかし、それまでに既に流通してきた天然の添加物については、「安全性上特に問題がない」とする厚生労働省の判断から、「既存添加物」と名付け、最終的に489品目が「既存添加物名簿」に登載された。

2003年に行われた食品衛生法の改正において、既存添加物名簿にその名称が登載されている添加物であっても、「人の健康を損なうおそれがあると認められたもの」、「流通実態が無いことが確認されたもの」については、所定の審議、手続きを経て、名簿から名称を削除することになった。この「名簿から消す」ことを「消除」といっている。

天然添加物の安全性評価の方法として、従来の「食経験」の有無、使用年数等を一つの指針としての疫学調査の結果を評価の目安にすることも可能である。その意味で西洋アカネは、昔から漢方として利用されてきた東洋アカネとは異なり、染料としての利用はみられたが食経験は無かったとする報告がされている。

従って今回、動物実験の結果を受けて、「既存添加物名簿」から消除されることになった。本来であれば、動物実験の結果を直ちにヒトに外挿することは出来ないため、一定の猶予期間をおいて更に検討されるところであるが、『アカネ色素』の使用範囲が一部の国に限定されていること、対象食品の範囲が限定されていること等を較量して、使用中止の判断がされたものと考えられる。

天然物は安全であるとする神話がある。天然の草木から直接湯煎する等の操作を加えて抽出した微量の成分を用いる場合と異なり、化学的な操作によって大量の成分を抽出して用いた場合、それは最早天然の安全な物質とはいえないのではないか。合成された化学物質と同様な影響を、生体に与えるのではないかと思われるのである。

(2005.3.5.)


  1. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  2. http://www.co-op.or.jp/jccu/news/syoku/syo_040708_01.htm,2005.3.5.

参照として厚生労働省が発出した文書を以下に添付しておく。

平成16年7月5日

厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課

食品添加物「アカネ色素」を既存添加物名簿から消除することについて

食品添加物「アカネ色素」について食品安全委員会への食品健康影響評価を依頼し たところ、7月2日夕刻、「腎臓以外の臓器の所見等について、今後とも情報収集が必要であるが、提出された資料からは、遺伝毒性及び腎臓への発がん性が認められており、アカネ色素についてADI(一日摂取許容量)を設定できない。」と回答された。

これを受け、本日、薬事・食品衛生審議会を開催し、意見を聴いたところ、「食品添加物「アカネ色素」を既存添加物名簿から消除することについては適当である。」とされるとともに、「その施行については、食品衛生法上の危害の発生を防止するため緊急を要するものと考えられることから、早急に行うべきである。」とされました。

このため、食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律(平成15年)附則第2 条の2第1項に基づき、今週末を目途に、既存添加物名簿からアカネ色素を消除し、同条第4項に基づき官報に公示することにより、当該食品添加物及びこれを含む食品の製 造・販売・輸入等を禁止することとしました。(施行日は官報公示の日から3月を経過した日)

なお、国民からの意見聴取は、同条の2第3項に基づき、既存添加物名簿の改正とと もに行うこととします。

アカネ色素を使用した食品の表示欄には、「着色料(アカネ)」や「アカネ色素」など、添加物としてアカネ色素を使用した旨の表示が義務づけられております。一般消費者も、アカネ色素を含む食品を摂取しないようご注意下さい。

なお、今回の取扱いに伴い、厚生労働省のホームページにQ&Aを掲載しておりま す。

(参考)

「アカネ色素」について

(1) アカネ色素の特徴について

  • アカネ科の植物であるセイヨウアカネの根から得られる。アリザリン及びルベリトリ ン酸を主成分とする色素であり、黄色?赤紫色を呈する。

(2)アカネ色素の流通実態等について

  • 生産量は、平成14年度に約5トン、平成15年度に約3トンと報告有。・アカネ色素 を使用した食品の国内生産量については、数値を把握していない。アカネ色素を使用した食品の輸入は、平成14年に約40トン、平成15年に約23トン(アカネ色素そのもの の輸入報告はない)。
  • 韓国においては使用が認められているが、米国及びEUにおいて使用は認められてい ない。その他の国の情報は、把握していない。
  • 主な対象食品は、ハム・ソーセージ等の畜肉加工品、かまぼこ等の水産加工品、菓子 類、清涼飲料水、めん類及びジャム等に使用されていると関係業界より報告されていたが、これまでに 使用が確認されているのは、ハム・ソーセージ等の畜肉加工品及び菓 子類である。

(3) 食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律附則第2条の2について

  • 既存添加物名簿に登載された天然添加物(以下「既存添加物」という。)は、平成7 年の食品衛生法改正により、食品衛生法第10条に基づく指定を受けなくとも引き続き 使用等することが可能とされた。
  • 平成15年の食品衛生法改正により、人の健康を損なうおそれがあると認められた既 存添加物について、食品安全委員会及び薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、同名簿 からその名称を消除し、使用等を禁止することができることとされた。

「アカネ色素」に関するQ&A

Q1:アカネ色素とはどのような食品に使用されていますか。

A:アカネ科のセイヨウアカネ(Rubia tinctorum LINNE)という植物の根から抽出して得られた着色料であり、黄?赤紫色を呈するとされています。アカネ色素の生産量は、平成14年度に約5トン、平成15年度に約3トンであったと報告されています。また、アカネ色素を使用した食品の国内生産量は把握しておりません。一方、アカネ色素としての輸入の報告はありませんが、アカネ色素を使用した食品の輸入は平成14年に約40トン、平成15年に約23トンです。

主な使用対象食品は、ハム・ソーセージ等の畜肉加工品、かまぼこ等の水産加工品、菓 子類、清涼飲料水、めん類及びジャム等に使用されていると報告されていたが、これまでに使用が確認されているのはハム・ソーセージ等の畜肉加工品及び菓子類です。

韓国においては使用が認められておりますが、米国及びEUにおいては使用が認められ ていません。その他の国の情報は把握していません。

なお、アカネ色素を使用した食品の表示欄には、「着色料(アカネ)」や「アカネ色素」 など、添加物としてアカネ色素を使用した旨の表示が義務づけられております。一般消費者は、これをもとに使用の有無を判断することができます。

Q2:アカネ色素の発がん性について教えてください。

A:ねずみ(ラット)を用いて試験したところ、腎臓の尿細管という部分に悪性腫瘍の発生が認められました。また、これまでの安全性試験の結果からみると、遺伝子に直接作用して発がん性を示している可能性が示唆されております。このようなことから、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼したところ、7月2日、「腎臓以外の臓器の所見等について、今後とも情報収集が必要であるが、提出された書類からは、遺伝毒性及び腎臓への発がん性が認められており、アカネ色素についてADIを設定できない。」旨の回答がなされました。

Q3:アカネ色素は使用禁止になったのですか。

A:7月2日の食品安全委員会の回答(Q2参照)を受け、7月5日、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いたところ、「食品添加物「アカネ色素」を既存添加物名簿から消除することが適当である。なお、その施行については、食品衛生上の危害の発生を防止するため緊急を要するものと考えることから、早急に行うべきである。」旨の答申がなされました。厚生労働省としては、今週中に既存添加物名簿を改正し、アカネ色素の製造、使用等を禁止する(施行日は官報公示の日から3月を経過した日)こととしております。

なお、国民からの意見聴取は、既存添加物名簿の改正とともに行うこととしております。

Q4:アカネ色素が使用された食品をたべても大丈夫ですか。

A:アカネ色素を使用した食品の表示欄には、「着色料(アカネ)」や「アカネ色素」な ど、添加物としてアカネ色素を使用した旨の表示が義務づけられておりますので、そのような食品の摂食は、お控え下さい。

なお、ねずみ(ラット)を用いた発がん性試験に用いられたアカネ色素の量は多く、実際に食品に含まれている量とは乖離があるものと考えます。現時点でアカネ色素及びこれを含む食品による人の健康被害は報告されておらず、今回の食品安全委員会及び薬事・食品衛生審議会の評価結果はねずみ等の試験結果に基づくものであり、ヒトの健康危害を未然に防ごうとするものです。

テーラーメイドの情報とは何か?

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

『昼夜を問わず製薬メーカに連絡を取り医薬品についてテーラーメイドの情報提供を依頼したい場面がしばしば生じる。』とする文書の断片が眼に触れた。

tailormaid(order-made:和製英語)とは、注文して洋服を作るということであり、吊しの洋服ではなく、注文主の身丈にあった洋服を作るということである。つまり医療でいえば、tailor medicine(オーダメード医療を行う)であり、お仕着せの医療ではなく、個々の患者の身丈に合わせた医療をするということである。

ところで製薬企業が持っている情報は、通常、薬に関する全体的な情報であって、個々の患者に対応した情報ではない。製薬企業が医療関係者に知らせることの出来る情報は、あくまでその薬に関する総論的な情報であって、その情報の多くは、添付文書に反映されているはずである。

更に、患者の個別情報を手に入れることの出来ない製薬企業は、病状の異なる個々の患者に対応する情報を提供することは出来ない。またそのような情報を提供する資格を製薬企業は持っていない。つまり製薬企業が、個々の患者の治療に関係することが出来る資格を持っていない以上、患者の病状を判断し、情報を提供するなどということはあり得ないということである。

ところで、製薬企業の夜間・休日における医薬品情報提供体制の必要理由として、次の事例が挙げられていた。

  1. 「今月初めに他院でA型肝炎の予防目的でグロブリン製剤を投与したという男性が来院し、来月早々から長期間中国に行くのでA型肝炎ワクチンを必要とするならしてほしいと申し出ている。グロブリン製剤の効果はどれくらい持続しているものか教えてほしい」という内容であった。ワクチン関係の書籍でグロブリン製剤は即効性はあるがさほど持続しないことを確認したものの、やはり製薬メーカーに連絡して情報提供していただくことにした。早速、グロブリン製剤を扱う某メーカーに連絡を入れるが、営業終了を告げるテープに切り換えられ、緊急連絡先のアナウンスもなかった。
  2. 製品を開封したものの液が抜けて空であったり
  3. いつの間にか製品の包装形態が変わったりと驚かされる事例
  4. あるいは幼児の誤飲に関する事例等 があったが、いずれも上手く連絡が取れず、タイムリーな情報提供はしていただけなかった。

海外渡航者に対するA型肝炎の予防については、1995年 7月に不活化A型肝炎ワクチンが発売されるまで、免疫グロブリン製剤の筋注によって実施されていた。ただし、現在使用されている免疫グロブリン製剤はA型肝炎に対する抗体価が低くなっているとされるため、原則的にはA型肝炎ワクチンの使用が求められる。

A型肝炎ワクチンは、2週内し4週間隔で、2回接種を受ける。2回注射で免疫はでき、6ヵ月以上持続するが、数年にわたって長期免疫を持続するためには、摂取後約6ヵ月に3回目の追加接種を受けることが望ましい。なお、16歳未満の小児についてはまだ認可されていない。

免疫グロブリンは、有効期限が短いので、出発直前に接種し、長期間にわたる場合、追加接種することになる。通常は外地滞在期間が3ヵ月以内では0.02mL/kg 1回筋注、3ヵ月以上にわたる場合は0.05mL/kgを4-6ヵ月毎に繰り返す方式が採られている。

米国におけるA型肝炎ワクチンの接種について、次の報告がされている。

ワクチンは少なくとも流行地へ行く4週間前までに実施すべきである。早急に予防する必要な場合には、免疫グロブリン(IG)0.02mL/kg投与と同時に、初回のA型肝炎ワクチンの投与を(解剖学的に異なる部位)行ってもよい。

旅行者のうちで、ワクチン(の成分)にアレルギーのある者やワクチン接種を拒否した者は、免疫グロブリンの1回投与(防護を希望する期間が2ヵ月未満の場合は0.02mL/kg、2-5ヵ月間の場合は0.06mL/kg)を受ける。旅行が5ヵ月を超える場合は、繰り返し投与する。

今回の医師の質問に回答するのに、各製剤の添付文書に加えて、以上の資料以外に何か必要なことがあるとは考えられないが、これ以上にどの様な資料が必要だというのであろうか。わざわざ休日や夜間に質問してまで、手に入れなければならない資料が、何かあるとは考えられない。

『製品を開封したものの液が抜けて空であった』については、納入時の検収の問題であり、検収の徹底を図れば改善される問題である。

また、検収は十分に行ったが、黙視では確認できない程度の不備があって、液抜けがあったとしても、休日や夜間に、製薬企業に連絡するほどに緊急性のある話しだとは考えられない。休日明けに企業に連絡し、製品の交換と、不備の理由の検討及び回答を求めれば済む話しである。

『いつの間にか製品の包装形態が変わったり』とお嘆きのようであるが、これも納品時の検収で分かるはずであるが、それが分からないということは、納品時の検収はしないということであろうか。

更に包装変更のご案内等は、各企業とも嫌になるほど持ち込んで来ているはずである。MRが全く薬局に届けていないとすれば、それは担当MRと薬局の医薬品情報管理室の関係のまずさであり、修復しなければならない。

もしMRが医薬品情報管理室には届けているにもかかわらず、薬局内の薬剤師の眼に触れていないとすれば、薬局内の情報伝達の問題であり、局内の情報伝達の仕組みを考えなければならない。しかし、これらの問題の多くは、薬局内の日常業務に係る不備が原因であり、この問題について、企業の休日や夜間にどのような対応を求めようとしているのか、理解の埒外である。

『あるいは幼児の誤飲に関する事例』というが、企業に対応を求めている間の時間差について、どう考えておられるのか。運良く企業から回答が得られればよいが、もし回答が得られなければ、企業からの回答を待っている間の時間経過によっては、助かるものも助からないという事態が起こりえる。

第一、企業が市販している全ての薬は、過去に誤飲が行われ、その全てについて対応方法が確立していると考えるのは考えすぎである。ただ、希望的観測を述べれば、企業が入手した誤飲等に対応する情報は、インタビューフォームあるいは自社のホームページ等に反映し、自由に情報が入手できるようにしておいていただければ、その都度電話で質問する必要はない訳である。

最も、電話によるやりとりは誤伝の最大の理由になる訳で、電話による情報の収集を避ける意味からもホームページの活用を図るべきである。

自殺目的での薬物摂取時の対応や誤用に対応する情報は、なによりも迅速で、正確であることが求められる。医薬品情報管理室では、雑誌等に発表される過去の事例を日常的に収集し・評価し・加工し・分類し・事例が発生した場合、直ちに検索できるようにしておかなければならない。

更に市販されている急性中毒処置の手引き書は、数種の図書を購入し、索引の使用に精通しておくことが必要である。その他、『(財)日本中毒情報センター』の電話番号等は、急患室に表示しておくべきであるが、必ずしも電話が繋がる保証はない。

日常的に収集した情報の中に、該当する情報がない場合、予測される服用量・服用者の年齢・体重・服用薬物の毒性・性状(酸性・アルカリ性の区分)・半減期等を検討し、医師に一定の判断を示さなければならない場合がある。事故への対応はある意味時間との勝負であり、当てにならない先に電話などをし、時間を無駄にすることは避けなければならない。

可能であれば、幾つかの手段を並列的に同時進行で行うことが無難であるが、日・当直時の薬剤師の配置人員によっては、実現は困難である。

いずれにしろ安易に製薬企業を頼り、製薬企業からの情報を医師に伝達することが薬剤師の実施する医薬品情報管理業務だと思っているとすれば、それはとんでもない間違いである。 薬剤師は情報の単なる取り次ぎ屋ではなく、コピー屋でもない。自らの専門性によって収集し評価した情報を自己責任のもとに提供することで、医療を担う専門職能としての責任果たしているのである。

アンケートの依頼状を配布する方法一つ見ても、他を頼るという姿勢は、薬剤師の依存体質の発露だといわなければならない。既に時代は大きく変貌している。あらゆるものに依存する薬剤師の体質は、根底から変えていかなければならない。

[2004.9.12.]


  1. 木村三生夫・他:予防接種の手引き 第8版;近代出版,2000
  2. 高久史麿・他監訳:ワシントンマニュアル第9版;メディカルサイエンスインターナショナル,2002
  3. 小川陽子・他:製薬メーカーの夜間・休日における医薬品情報提供体制に関する実態調査報告;日病薬誌,40(9):1137-1140(2004)

テレビ電話は薬剤師に代わり得るか

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

ドン・キホーテが、薬剤師によるテレビ電話相談方式を導入し、夜間、薬剤師不在店舗での医薬品販売を実施しようとしたのに対し、厚生労働省は『薬事法違反』だとして販売を認めなかった。それに対してドン・キホーテ側は、同システムを用いて医薬品の無料配布を行い、無料で配布する以上『薬事法違反』ではないと称している。

一方、稼げれば何でも有りというこの行為に対し、石原都知事は「大いに奨励する」などと先走ったお節介談話を開陳して見せたが、行政の長としては、法律・規則を遵守させるという立場が基本であり、法の裏道をくぐるような行為に対し、甚だ不見識な談話であり、時と場所をわきまえない意見開陳は論外である。また、その発言を受けて、左顧右眄する東京都の役人も、“長い物には巻かれろ”の典型みたいなまねは止めた方がいい。

新聞報道では総合ディスカウントストアなどと書かれているが、言い換えれば単なる廉売屋であり、その廉売屋が薬を扱うことが出来るのは、薬剤師が配置され、薬剤師の管理の下に薬を取り扱うという大前提があるからである。その規則の下で薬の取扱いを許可されたのであれば、規則に従って薬剤師を雇用するのが筋である。また、頼みもしないのに24時間営業をしたいというのであれば、二交代なり三交代が可能な数の薬剤師を雇用するのが当然であり、人件費抑制のため薬剤師の採用を手控え、テレビ電話相談方式を導入して代替の手段としたいという発想は本末転倒であり、むしろ薬の販売から撤退するというのが、取るべき道である。

何かといえば、大衆的な要望を持出し、要望に応える必要性を強調して、社会正義は我が方に有りとする論調を振りかざすが、大衆の意見は常に同一方向を示すわけでわない。以前、ドン・キホーテの深夜営業を拒絶した地域の報道がされていたが、結局はなし崩しに営業を実施したのではなかったのか。都合のいいときにのみ世論を振りかざすのは、商道徳に則った対応とはいえない。

日本語には『常備薬』という言葉がある。緊急時に対応するため、前もって必要とされる状況を予測して準備しておく薬のことである。

ドン・キホーテの言い分によれば、夜間緊急に必要とする薬の購入希望に対応するため、薬剤師がテレビ電話で相談を受け、必要とする薬を販売するとしているが、これはあくまで平時の対応であって、真の意味での緊急対応とは違う。大きな災害が発生し、交通網が遮断されるというような状況が発生した場合、身動きが取れない中でどう対応するかが重要な課題であって、この様な問題を解決するためには、各家庭が日常的に『常備薬』を持つことが必要なのである。他人のポケットを当てにする対応を習慣づけることがいいとは限らない。

それに緊急で解熱を要する場合とはどの様な場合か。また緊急で風邪薬を服まなければならないとい状況とは、どの様な場合か。本来なら緊急に医師の診察を受けるべき者が、気付かずにそこにいるかもしれない。直接対面して、相手の顔色や状況から手に入れる情報に重要な情報がある。テレビ電話で手に入れられる情報は、あくまで情報のうちの極く一部だということを考えれば、そこまでドン・キホーテにサービスをしてもらう必要はない。

必要なら薬剤師を24時間体制で配置すべきである。

[2003.10.13.]

調剤ミス

水曜日, 8月 15th, 2007

鬼城竜生

川崎市地域医療課は2007年3月2日、高津休日急患診療所(高津区)で2月25日、インフルエンザと診断された5歳の男児2人と7歳の女児 1人に、用量の4倍近いタミフルを調剤するミスがあったと発表した。薬剤師が“秤”の単位を間違えた結果、男児1人と女児1人が1回分を服用した。市は「命にかかわるミス」と謝罪しているが、いまのところ服用による副作用は起きていないと説明している。

発端は診察を受けた男児の親から「薬の量が多いのでは」との問い合わせがあったことから。確認したところ、市から委託を受けている市薬剤師会の薬剤師が「タミフルドライシロップ」を調剤する際に、“秤”の単位の設定が、本来はグラムのはずが匁(もんめ)になっていた。1匁は3.75gで、用量の4倍近くを3人に調剤したという。

また、同じ2月25日には、川崎休日急患診療所(同市川崎区)で、タミフルカプセルの処方が必要な川崎区内の男性患者(40)に、顆粒の総合感冒薬を調剤するミスもあったという。

この“秤”にはグラムと“匁”など四つのモードがあり、それぞれ数値と単位が表示される仕組み。調剤担当者が単位を確認しなかったのが原因としているが、“匁”に切り替わっていたのは、操作ミスか機械トラブルのどちらかの可能性があるとみて調べている。全区の休日急患診療所で、単位をグラムに固定する措置をとったという。

この事件の甚だ不思議な点は、調剤室で使用することのない“秤”の単位モードがある“秤”を使用していたということである。区域内に漢方の専門医がいて、秤量の必要がある漢方の原薬を出すということであれば解らなくもないが、休日急患の診療に漢方の専門医が当たるとも考えられない。

調剤室内の仕事は、mg又はg単位の仕事が中心であり、“匁”で量ることは先ず有り得ない。その意味では、調剤室内に置く“秤”は、mg及び gの秤量が出来るものであればそれでいいわけで、調剤過誤の原因になる可能性のあるものは調剤室内に置かないという基本原則からいえば、第一義的には “秤”の選択の失敗だということが出来る。

次に問題なのは、調剤した薬剤師の注意力の欠如である。朝、調剤室を開けた時点で、調剤室内の各機器の点検を行うのは常識であり、なかでも “秤”は、毎朝チェックするのが基本原則である。もし薬を秤量する前に、“秤”の0点のチェック等をすませておけば、今回の秤量過誤は起こらなかったはずである。

タミフルカプセルの処方に対し、顆粒剤の総合感冒薬を調剤したなどという過誤は、薬剤師としては論外といわざるを得ず、言い訳のしようがない。処方せんは見るものではなく読むものだと良くいわれるが、読むことによって処方せんに記載されている薬品名を正確に確認できる。更に調剤終了後、薬袋に入れる前に、再度処方せんと薬物を突合し、調剤の結果を確認する。

電車や汽車の運転手が、発車する前に必ず“指呼確認”を行っているが、薬剤師も同様の作業が必要なのである。特に1人勤務の職場の場合、各動作毎に“指呼確認”をすることが患者の安全を確保し、自らの身分を守る結果に繋がるのである。薬剤師にとって調剤は重要な仕事であり、調剤の安全確保の努力は、患者に対する責務である。

[2007.5.23.]

父親の失敗

水曜日, 8月 15th, 2007

鬼城竜生

小学校3年生の時に父親から100万円の金を貰い、株を買って儲けろといわれたという挿話[読売新聞,第46781号,2006.6.7.]

が実話であるとすれば、村上ファンドの代表だった村上世彰(ヨシアキ)容疑者の父親は、明らかに子供の教育を間違えたといわなければならない。

金があれば何でもできる、金だけが正義だと考える子供を育ててしまった結果が、今回のインサイダー取引(証券取引法違反)になったとすれば、東大を出る学力は持っていたが、世間の常識という点では、真っ当が理解できない、歪(イビツ)な成長の仕方をさせてしまったということである。

何時の時代であれ、世間で生きていくためには、規則を守るのは最低の条件で、もし、選ばれた人間は何をやってもいいんだと思っていたとすれば、思いあがり以外の何ものでもない。逮捕される前、自ら希望したという記者会見のTVカメラの前で『プロ中のプロが見逃してしまった』等と臆面もなく叫んでいたが、自惚れもいいところである。真の意味で『プロ中のプロ』とは、どの様な場合でも見逃しをしないから『プロ中のプロ』なのである。

しかし、一番不思議なのは、報道機関の取扱である。

最近でこそ見られなくなったが、長いこと村上世彰容疑者の紹介記事の後に、元通商産業省(現経済産業省)なる括弧付きの尻尾を付けて報道していたが、あれは記者連中が村上ファンドの信用性を裏打ちするために、元上級職国家公務員であることを引き合いに出すことで、意図的に声援を送っていたということなのであろうか。

更に解らないのは、村上ファンドのあのやり方と総会屋のやり方と何処が違うのかということである。どう考えてもその違いを理解するまでには至らなかった。

確かに総会屋は大量の株式を保有しているわけではなく、株主総会に出席できる権利を得られる最小株を手に入れ、株主総会に出席して、議場を混乱に陥れるか、あるいは議場混乱回避を条件に、議事運営協力金名目で、沈黙を金に変えるという手法を取ると理解している。

それに反して、村上ファンドの場合は、大量の株を保有し、会社の経営権を脅かす存在であるというところでは、違うといえば違うが、支配的株主代表ということで、会社経営者に種々ものを申し、株の値段をつり上げ、売り抜けて稼ぎを上げるという手法は、膨大な資金を要することであり、総会屋とは異なりそれなりの危険が伴うことは間違いない。

しかし、経営者に脅しをかけるという点では、全く総会屋と同じことのように見えるが、何処かが違っていたとでもいうのであろうか。

更に驚くべきことに、政府の規制改革・民間開放推進会議の議長である宮内義彦オリックス会長が、村上ファンドに出資し、同社と提携関係にあったということである。この会議は小泉総理の意を受けて、何でもかんでも民間に渡せ、大幅な規制緩和を実行しろ等ということを決定してきた所であり、村上ファンドが株の購入で自由に動けたのも、その規制緩和の御陰ではないかとされている。

一方で規制緩和の話を進め、一方でその結果を受けて稼ぎを生み出す等というのは、おかしいのではないかと思うが、おかしいと思う感覚は余りにも庶民的すぎて、それこそおかしいのかも知れない。

それにしてもTVという媒体は、目新しい英雄を次々に作り出してみせるが、つぶすのも早いというのは、ホリエモンの例で証明して見せてくれたが、今回の場合も見事という以外言いようがない。

(2006.6.10.)

調剤薬局は大丈夫なのか?

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

先日、甲府に行く用事があって、新宿駅構内のコーヒーバーで珈琲を飲んでいたとき、隣にいた若い二人連れが、保険請求の話を始めた。

どうやらその若い二人連れは、薬剤師のようであったが、話の内容は、如何にしたら稼げるかという話題であった。個人経営の薬局であれば、収益を上げるために努力することは当然としても、一方で調剤薬局というのは、患者が服用する薬の安全を確保するという重要な役割を担っているはずである。

嘗て病院で取り扱っていた処方せんを院外に出すとき、混雑する病院の外来薬局では、患者に対する十分な服薬指導はできないということで、外来処方せんは一切外に出せというのが現厚生労働省の言い分だったはずである。

つまり患者への便益提供が、病院の外来薬局では困難であり、更に院内の医師が書く処方せんに対する第三者的な鑑査ができず、使用薬剤に対する抑制効果が得られないということで、厚生労働省の半ば強制的な院外処方せん発行圧力により、多くの医療機関から処方せんが出されるようになったという経緯がある。

彼らの話の中で、一包化調剤で加算が取れる分はできるだけ取る工夫をするという話をしていたが、そういう話を耳にすると、それは違うだろうという気になるのである。

我々が外来調剤で、一包化調剤(1回服用分ずつ1包化調剤)を行ってきたのは、多種類の錠剤が処方されるという現状から患者自身が個別に区分して服用するのでは、服用間違いが起こる可能性があるということから、実調剤の完成形としての一包化調剤を実施していたのであり、調剤料として処理すべきものであって、特別に加算を付けるべきものではないはずである。

医師の処方せん通り市販の包装形態であるPTPやSPの形で薬を取揃え、別々の薬袋に入れて患者に渡し、薬袋の記載に従って患者が服用するという形態は、決して完成度の高い実調剤とはいわない。薬剤師が実施する実調剤は、患者が間違いなく服用できる形態にまで実調剤を高めることであるはずである。一包化加算があるから一包化するのではなく、薬の誤用を防止するためにこそ一包化調剤は実施されなければならない。

ところで平成16年度『全国医薬分業担当者会議』資料中の国民・患者から寄せられた意見・苦情等(H.16.3.30.-17.3.10.)の一部として、次の資料が掲載されていた [薬事新,No.2379:796(2005)]。

[H.16.8.18.「薬を間違えたのに、開き直られた」(患者:電話)]

地域の夜間救急診療所に勤めている薬剤師の態度に文句をいいたい。

薬を間違えたのに「大した間違いじゃない」、「別に体に問題ない」などといわれ、開き直った態度を取る。

私は薬剤師会の役員もやっていて「偉いんだ」的な態度も取られた。地元では有名な人らしいが、薬を間違えられたのは1回や2回じゃない。

あまりの態度に腹が立ったので、薬剤師会に電話した。改善を求めたい。

[H.16.9.7.「薬局で薬を間違えられた。服用してしまった」(患者:電話)]

薬局で薬を間違われた(倍量)。服用してしまった。

お詫びの文書を持ってこさせたところ、文書には「今まで二重チェックだったが、今後は五重にチェックします」と書いてあった。

後日その薬局に五重チェックをしているかを見に行ったら、やっていなかった。

そんなことが許されるのか。この現状をどこに報告すればいいのか。

[H.16.9.9.「薬局で薬を間違えられた。どう対応すればよいですか」(患者の家族:電話)]

精神科を受診している妹に「メレリル(1)2錠 分2×朝夕」を長いこと処方され、クリニックで指定された隣の薬局で調剤して貰っている。

先日も3週間分処方されてきたが、渡されたのは「アマリール(1)2錠 2×朝夕」だった。薬を渡されたときは「前回と同じです」といわれ、中味の確認はしなかったという。2週間服用後、薬局と病院に確認したところ、処方が間違ったのではなく、調剤が間違っていたことが分かった。

メレリル(1)は白色、アマリール(1)はピンクでシートに「糖尿病薬」と書いてある。たくさんの薬の調剤ならともかく、これ一種類だけなのに、何故薬剤師は間違ってしまったのか。薬の調剤をし直ししたということで郵送されてきた薬も当初3週間分送るといっておいて2週間分しか送付されず、1週間分は後から送付してきた。こんな薬局・薬剤師を許可していて大丈夫なのか。その薬局は年配の薬剤師が一人で、その奥さん(薬剤師かどうかは不明)が一緒に仕事をしている。

このような薬局に対してどの様に対応したらよいのか。

薬剤師であれば、調剤過誤の結果が、患者の生命に係わる危険性を含んでいるものであることを、常に認識しておかなければならない。調剤過誤に簡単な過誤も重大な過誤もないのである。簡単な過誤の繰返しが、やがて重大な過誤に連動していくことは、世間一般の常識であり、航空機や電車等の事故が発生する度に話題となることである。

人の命に関わる仕事をしている薬剤師が、過誤に対して鈍感であるということは、薬剤師としての仕事に不適合であるといわなければならない。

薬剤師たるもの『処方せんを手にしたとき、精神の緊張を最高水準に維持』しておかなければならないのである。

(2005.8.6.)

調剤過誤

水曜日, 8月 15th, 2007
読売新聞の読者投書欄“気流”(第46266号,2005.1.7.)に『調剤薬局の業務に望みたい緊張感』という町田市の読者の投書が掲載されていた。「調剤薬局である日、名前の似ている妻と娘の薬を取り違えて調剤されたことがありました。私がその場で気づいて指摘すると、『名前が似ているから仕方ないわよね』と薬剤師はいいました。私は半ばあきれて帰宅しました。 また、別の薬局では塗り薬の明らかな調剤ミスがあり、全く違った薬を渡されたこともあります。いつもと色が違うので使用する前に気づき、幸い大事には至りませんでしたが、調剤薬局も医療現場だという認識が薄かったからでしょうか。

薬の調剤は患者の命に関わる重要な仕事だと思います。そうした意識が高く、緊張感を持って業務に当たる調剤薬局が、今後増えてくれることを期待したいです。」

今回の投書の中身は、薬剤師に対する誹謗中傷というのではなく、どちらかといえば叱咤激励という内容である。

ところで薬剤師免許を持っている人間であれば、誰でも調剤をすることは出来る。しかし、することが出来るということと、調剤が出来ることとは、本来は別物である。まず集中力のない人間は、実調剤には向かない。長時間一定の緊張を持続することが求められる実調剤の場で、集中力が途切れれば、その段階で調剤過誤が発生する。

落ち着きのない人間は、処方箋を読み、必要な薬物を取るという過程の中で、頭と手の動きが一致しないということで調剤過誤を起こし易い。

整理・整頓の能力のない人間も、実調剤には不向きである。自分が実調剤を行う調剤台の上や周囲の整理・整頓が出来ず、乱雑な状態にしたままであれば、これも調剤過誤の原因を作っているようなものである。

種々の筆跡で書かれた処方箋を読みこなし、瞬時に判断して薬を取りだし、薬袋に入れる。この作業を一定時間連続して行うことが必要であり、油断をすればその時点で調剤過誤を起こしてしまう。また、コンピュータで打ち出される没個性な文字で印字された処方箋は、それだけで過誤を起こす要因となり得ることを理解しておかなければならない。

更に実調剤は、処方箋を受け取り、処方内容を鑑査し、薬袋を取り揃え、患者氏名・用法指示を記入するところから始まっているのである。また調剤の最終局面として、絶対に必要なのは調剤鑑査であり、二重監査を行うことによって調剤過誤は限りなく減少させることが出来るはずである。

しかし、どんなに注意をしたとしても調剤過誤は発生する。それは実調剤を人が行うことによる宿命なのである。ただし、給料を貰ってやっている仕事で甘えは許されない。最高の注意を払って、それでもなお調剤過誤が起こったとすれば、後は誠心誠意お詫びするしか方法はないということである。

薬袋の名前の記入を間違えたと思われる今回の事例で、『名前が似ているから仕方ないわよね』等、引かれ者の小唄みたいないい訳を薬剤師がしたとすれば、なにをか況やである。名前の記載間違いを起こした自らの責任を放棄し、患者の名前に責任を転嫁する等ということは、やってはならないことであり、自らの間違いを間違いとして、率直にお詫びを申し上げる以外に対処の方法はないのである。

決して、たかが名前の書き間違いなどと考えてはならない。その安易さが、やがては取り返しのつかない致命的な過誤につながっていくのである。

[2005.1.22.]

調剤再考

水曜日, 8月 15th, 2007

1.調剤とは何か?

薬剤師の任務を規定した薬剤師法第一条に『薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする』の記載がされている。

また薬剤師の業務について規定した第十九条では、調剤について『薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、医師若しくは歯科医師が次に掲げる場合において自己の処方せんにより自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤するときは、この限りでない。』としている。

本来、調剤は『薬剤師の専権事項』であり、他の何人も行ってはならない業務である。ただし、第十九条の条文に加えられている『ただし書』以降の条文があるばかりに、我が国では未だに正常な形での医薬分業が成立しておらず、『自己の処方せんにより自ら調剤する』という建前で、薬剤師以外の者による調剤が行われている。しかし、これはあくまで特例事項であり、調剤が薬剤師の表芸であることに何ら変わりはない。

調
調える

ほどよく合わせる

調合すること

調剤した薬品

調剤の『調』は調えるあるいはほどよく合わせる等の意味があり、『剤』は調合することあるいは調剤した薬品(散剤・水剤・錠剤等)等の意味を持つとされている。通常、調剤というと、だれもが思い浮かべるのは、調剤室内で行われる薬剤師業務の極く一部ではないかと思われるが、薬剤師が行う調剤業務は、『実務行為としての調剤』だけではなく、薬剤師が係る全ての業務を包括したものが、『調剤』という言葉で示されていると考えている。つまり調剤とは、次の各業務を全て包括した業務なのである。

[1] 実務行為としての調剤

いわゆる調剤室において、一般的な薬剤師の仕事として、眼に触れる仕事である。通常、薬剤師の行う調剤業務というと、この仕事が全てのように思われるが、薬剤師にとっては行うべき仕事のほんの一部でしかない。しかし、一般に理解されている仕事、薬剤師の表芸ということからいえば、最も重要な業務の一つである。従って、どの様な状況になろうとも、薬剤師自身が『実調剤』をないがしろにすることがあってはならない。

[2] 医薬品管理業務

薬品管理業務は、調剤室内の薬品全般の管理と病院であれば、各外来の処置室・診察室・手術室・各病棟・放射線科・検査科等に配置される医薬品等の物品管理及び管理事務を行う業務である。購入した医薬品の品質管理と同時に、遊休在庫をなくし、施設運営費の多くを占有する医薬品等の効率的な運用に努めなければならない役割がある。更に麻薬・覚醒剤等法規制の厳しい医薬品の管理、感染症の発現を理由とした生物学的製剤の管理等、医薬品管理業務は多岐にわたっている。薬事法上の薬局ではない病院の調剤所においても、医薬品の管理については、薬事法等の法律の規制を受けている。

[3] 製剤業務(含・特殊製剤)

調剤予備行為としての”予製剤”の調製と院内限定使用の”院内特殊製剤”の調製がある。院内特殊製剤は、患者の治療に必要不可欠な薬でありながら、市販されていない薬を院内調製する。多くの場合、原料となる薬物は試薬・農薬等の化学薬品であり、厚生労働大臣が医薬品として承認していないものである。

医師の調製依頼を受けた院内特殊製剤は、院内倫理委員会の承認を得て調製するが、使用に際しては文書による説明と文書による同意取得が必須である。更に製剤室において各種資料を用いて院内特殊製剤用の添付文書を作成する。

院内特殊製剤の調製は、医師の処方せんに基づく院内限りの製剤であり、院外に持ち出さない限り医薬品としての扱いを受けず、薬事法による規制を受けない。これは病院の薬剤部等は、医療法上の調剤所であり、薬事法上の薬局の扱いを受けないということに由来する。従って、院内特殊製剤を”院外処方せん”に記載することは、絶対にあってはならない。また、院内特殊製剤を他院に持参して使用することも行ってはならない。

[4] 医薬品情報業務

医薬品は『物+情報=医薬品』という定式で示される。従って、医薬品の使用に際して、最も重要なのは、医薬品に添付される情報、いわゆる『添付文書』の記載内容の遵守を最優先するということである。添付文書は、その薬の膨大な情報を所持する製薬企業が、適正で安全な薬物療法を実施する上で、必要とされる情報を医師等の医療関係者に伝達するために作成したものである。ただし、添付文書に収載される情報は、全て過去に経験した範囲内の情報であり、最新の知見は、常に文献等の形で報告されるため、情報の蒐集体制を確立することが必要である。更に患者に致命的な影響を与えかねない重篤な副作用、相互作用等の情報を蒐集し、添付文書を見る機会の少ない医師に伝達する等の業務を行う。

[5] 服薬指導業務

従来の医療は『由らしむ可し知らしむ可からず』の誤った解釈の上に立った愚民政策-患者には可能な限り診療内容を知らせないという医療を行ってきたが、『インフォームド・コンセント(informed consent)』の導入とともに、医療を提供する側は、患者に対して『説明責任(accountability)』を有することが明確にされてきた。

薬剤師の服薬指導業務も、医療情報の公開という流れの中で、生まれてきた業務であるが、薬剤師にとって初めて患者の身近に接して実施する業務であり、患者の満足が得られなければ、評価されない業務である。医療関係者と患者の関係で『情報の非対称性』がいわれている。服薬指導業務は、患者の薬物療法に関して不足する情報を充実するための業務である。

[6] 医薬品試験業務

注射薬の配合変化試験、シロップ剤の配合変化試験、軟膏剤の配合変化試験、錠剤粉砕後の安定性、脱カプセル後の安定性、院内特殊製剤の安定性試験、院内特殊製剤の含有量確認試験等、院内における薬物療法の安全な運用に係わる各種の試験業務を行っている。

[7] 臨床治験業務

臨床治験業務は、新しい薬の開発のためには避けて通れない業務ということであるが、治験薬の管理は、薬剤師にとって重要な業務の一つである。特に二重盲検試験の実施薬では、投与開始時点で登録された患者は、治験終了まで同一の薬剤を服用しなければならず、処方が出されるたびに治験薬の登録番号、残薬等を突合し、帳簿に記録するという作業を繰り返す。これは途中で番号を間違えて患者に渡せば、その時点で登録抹消の憂き目を見ることになり、脱落例になってしまうからである。更に治験が終了した薬剤は、投与量、残量を検収し、治験依頼会社に返戻する等の作業を克明に行わなければならない。

2.調剤実務の目的

調剤実務の目的は、疾病の治療に必要とされる薬物を、医師の処方に基づいて、正確に調整し、患者に渡すということである。

  1. 誤用回避
  2. 服用容易性
  3. 服用便宜性(簡便性)

調剤実務は、医師の意図する治療効果を挙げるために、薬剤師が薬物を調整するものであって、まず第一に考えなければならないのは、患者が誤った薬物の服み方をしないように調整するということである。医師の処方意図に反した調整を行い、誤った服用がされれば、挙げるべき効果は期待できない。 次の処方の場合、果たしてどの様な実調剤を行うのか。

Rx.

  • ユリノーム錠——1錠
  • 炭酸水素ナトリウム—–3 g

以上分1——朝食後

処方医の所属する病院薬局も、その後院外処方として持ち込んだ市中薬局A及び門前薬局Aも、炭酸水素ナトリウム 3 g 分1の処方に対して、1包1gを3連包装した市販包装品をよこしたのである。

この調整方法では、服用する患者が、服用するたびに1包1gに包装された炭酸水素ナトリウム3包を薬包紙等の上に開け、服用しなければならない。これでは薬剤師は実調剤を放棄し、最終責任を患者に押し付けているといわれても仕方がない。

このことに対する市中薬局Aの回答は『この包装しか市販されていない』であり、門前薬局Aは『薬局で分包すると汚染が起こるなど衛生上よくない』ということであったが、これらのいい訳は、正当な理由にはなっていない。

また、院外薬局から手渡された薬物の説明書は、次のものであるが、これについても薬中心の説明であり、疾病からの説明になっていない。これで正当な患者説明が終了したと考えているとすれば、それは違うということである。

薬品名 市中薬局A 門前薬局A
ユリノーム50mg このお薬は、痛風の 治療に用 います 水又は白湯で飲んで 下さい。 事前に砕いたり、口の中で砕いたりして飲まないで下さい 痛風の発作をやわら げる薬尿 酸を排泄させる薬です ◆飲み合わせに注意 が必要な 薬があります。他の医療機関で診察を受けたり、薬局の薬を購入する際には、この文書を見せて下さい。

◆発疹・かゆみ、日光皮膚炎等の過敏症や、気になる症状が現れた時は服用を中止し、医師か薬剤師に相談して下さい。

◆この薬を飲んでいる間は水分を多めに摂取して下さい。服用を始めた時、一時的に痛みが強くなることがありますが、指示通りに飲んで下さい。

炭酸水素ナトリウム このお薬は、胃酸を 中和する 薬です   胃酸を抑える薬です ◆飲み合わせに注意 が必要な 薬があります。他の医療機関で診察を受けたり、薬局の薬を購入する際には、この文書を見せて下さい。

◆発疹・かゆみ等の過敏症状や、気になる症状が現れた時には服用を中止し、医師か薬剤師に相談して下さい。

◆牛乳やカルシウム製品は必要以上に取り過ぎないようにして下さい。

メバロチン錠5 このお薬は、コレス テロール を下げる薬です 水又は白湯で飲んで 下さい。 事前に砕いたり、口の中で砕いたりして飲まないで下さい コレステロールを下 げる薬 ◆飲み合わせに注意 が必要な 薬があります。他の医療機関で診察を受けたり、薬局の薬を購入する際には、この文書を見せて下さい。

◆発疹・かゆみ、日光皮膚炎等の過敏症状、筋肉痛や脱力感等の気になる症状が現れた時は服用を中止し、医師か薬剤師に相談して下さい。

◆定期的に血液検査を行い、医師の指導を受けて下さい。また、食事療法、運動療法、体重のコントロール、ストレスを減らすといった生活上の努力をして下さい。

ユリノーム錠(benzbromarone)は尿酸排泄促進薬であり、痛風の治療薬でも、痛風発作をやわらげる薬でもない。患者に細かなことを説明をしてもと考え、大雑把な説明をしているとすれば、それは甚だしく失礼な話である。日常的に眼に触れる日刊紙やテレビ等で取り上げられる健康相談で、高尿酸血症や痛風は屡々扱われており、尿酸排泄促進薬があることは知られている。その意味では、尿酸排泄促進薬が、痛風を直接治療する薬でないことも知られているはずである。

benzbromaroneと併用される炭酸水素ナトリウムは、胃酸を中和する目的など期待されていない。尿酸排泄促進薬を服用中の患者では、尿路結石等の発現を予防する目的で、尿をアルカリ化するという治療が行われる。通常はsodium citrate・potassium citrateの合剤であるウラリット錠が使用されるが、それに代わるものとして炭酸水素ナトリウム(重曹)が使用される。つまりここで使用される炭酸水素ナトリウムは、胃酸の中和目的でなく、尿アルカリ化の目的であり、医師の説明と異なった説明を薬剤師が行うことは問題であるといわなければならない。

ところで『口の中で砕いたりして飲まないで下さい』という注意は、日本語としては正しくない。第一口の中で砕くとは、どうやれば砕けるのか。噛み砕くしか方法はないはずであるから、正しくは『噛み砕いて飲まないで下さい』とすべきである。

副作用の防止対策

門前調剤薬局Aの説明文書には、各薬剤の副作用の極く一部が記載されている。 ところで各薬剤の添付文書中に記載されている副作用は、下記の通りである。

ユリノーム錠(鳥 居)

benzbromarone

錠:25mg・50mg

炭酸水素ナトリウム

sodium bicarbonate

原末

メバロチン錠

pravastatin sodium

錠:5mg・10mg

重大な副作用

劇症肝炎等の重篤な肝障害、黄疸(定期的な肝機能検査)

  重大な副作用

横紋筋融解症(筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇)

肝障害(黄疸、著しいAST・ALT上昇)

血小板減少(紫斑、皮下出血等)

ミオパシー

末梢神経障害

過敏症(ループス様症候群、血管炎等)

過敏症(蕁麻疹、発 疹、顔面 発赤、紅斑、掻痒感、光線過敏症)

肝臓(AST・ALT・Al-Pの上昇、黄疸)

消化器(胃痛、腹痛、胃部不快感、胃腸障害、胸やけ、悪心、下痢、軟便、口内のあれ)

その他(浮腫、心窩部不快感、頭痛)

代謝異常(アルカ ローシス、 ナトリウム蓄積による浮腫等)

消化器(胃部膨満、胃酸の反動性分泌等)

皮膚(紅斑、脱毛、 光線過 敏、発疹、湿疹、蕁麻疹、掻痒)

消化器(嘔気・嘔吐、便秘、下痢、腹痛、胃不快感、口内炎、消化不良、胃部膨満感、食欲不振、舌炎)

肝臓(AST・ALT・Al-P・LDH・γ-TP上昇、肝機能異常、ビリルビン上昇)

腎臓(BUN・クレアチニン上昇)

筋肉(筋脱力、CK上昇、筋肉痛、筋痙攣)→横紋筋融解症の前駆症状の可能性。

精神神経系(眩暈、頭痛、不眠)

血液(血小板減少、貧血、白血球減少)

その他(耳鳴、関節痛、味覚異常、尿酸値上昇、尿潜血、倦怠感、浮腫、しびれ、顔面紅潮)

市中薬局Aでは、副作用等に関連する注意事項の記載は一切されておらず、口頭での注意もされなかった。門前薬局Aでは、一応の説明はされているが、ユリノーム錠では『劇症肝炎等の重篤な肝障害』に関連する説明がされておらず、定期的な肝機能検査に関する注意事項の記載もされていない。

メバロチン錠では、横紋筋融解症・肝障害・血小板減少・ミオパシー・末梢神経障害・過敏症のいわゆる重大な副作用について、前駆症状等の説明が不足あるいはされていないということである。

副作用の前駆症状の説明は、副作用が重篤化する前に、副作用を回避できる可能性を探るためのものであり、更に光線過敏は、日常生活の中で、僅かな注意を払うことで回避可能なものとなる副作用である。

薬剤師教育の6年制化に伴い、調剤薬局も学生実習の場として利用される。薬剤師にとって最も基本となる実調剤に対する姿勢が、いい加減な調剤薬局を教育現場として選択するわけにはいかない。更に患者と医療関係者が持つ医療情報について『情報の非対称性』がいわれている。こと薬については、薬剤師が情報提供に努力することによって、『情報の非対称性』を改善しなければならない。また薬剤師教育の現場としては、薬剤師にとって重要な情報管理を蔑ろにする調剤薬局を選ぶわけにはいかないということである。

(2004.11.23.)


  1. 薬事衛生六法;薬事日報社,2004
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004

調剤薬局の危機管理

水曜日, 8月 15th, 2007

事故を起こすことが嫌なら何もしないことである。仕事をしなければ、仕事に伴って起こる事故は発生しない。人が行動を起こせば、その行動に伴って何等かの軋轢が生じるのはやむを得ない。

最近、報道関係で調剤薬局における調剤過誤が報道されるようになってきた。院外処方せんの発行枚数が増加し、保険薬局での調剤件数が増加すればするほど、調剤に関連する過誤は増加する。つまり、仕事が増えれば増えるほど過誤は増加するという原則からすれば、それは当然の結果だといえる。

病院薬局における調剤業務も、ある意味でいえば過誤との戦いであるということができる。院外処方せん発行以前は、1日7-800枚の処方せんを調剤するのが普通であり、その中で如何に過ちのない調剤をするかの工夫や努力をしてきたというのが病院薬局の調剤の歴史である。

[1] 処方せんを読む

まず我々が徹底したのは『処方せん』は見るものではなく、読むものだということである。医師の書いた薬品名が必ずしも正しいとは限らない。類似の商品名が多いということは、薬剤師が『読み間違える』だけではなく、医師が『書き間違える』こともあるわけである。従って、処方内容を正確に読むだけではなく、処方内容の組み合わせについても検討する。処方内容が通常見られる処方薬の組み合わせと異なっているとすれば、患者の病状に何等かの変化があったのか、あるいは医師の処方の書き間違いなのかという検討が必要になるわけである。そのためには処方医の診療科を知ることが必要であり、処方せんに記載されている診療科名を常に念頭に置いて処方の鑑査をすることが必要である。

処方の鑑査をして、疑念を持てば処方医に確認する。これが患者の安全を守るための基本であり、調剤過誤を起こさないための基本である。処方を読み、薬剤師の感性が疑念を呼びかけているにもかかわらず、無視して調剤に取りかかることで過誤を起こし、後で反省しても何の意味も持たない。

[2]鑑査システムの導入

調剤過誤を防止するためには、『鑑査システム』を導入することが絶対に必要である。例えば、薬剤師が2名で仕事をする場合、処方鑑査をし薬袋を取り揃えた薬剤師は調剤をしない。調剤を終了した段階で、総鑑査に回る。つまり処方鑑査をし、薬袋を揃えるという作業の中で、『処方せんの鑑査』をし、調剤をする段階で、別の眼で『処方鑑査』をし、調剤終了時点で、再度別の眼で『処方と薬』の内容を鑑査をするという『二重鑑査』を常に実施するということが必要である。また、散剤の調剤を行う際には、秤量をした薬剤師は、攪拌・分包を行わず、別の眼で散剤の監査を行った後で、攪拌・分包を行う等『鑑査システム』の導入を図ることが必要である。

2名の薬剤師が勤務している場合、相互に一定時間毎に持ち場を交代することによって同一の作業を継続することで陥る慣れを排除し、緊張を維持することも可能である。なお、1名の薬剤師で、調剤を行う場合、これらの作業を全て1人でしなければならないため、『指呼確認』を徹底して行うことが必要である。

嘗て病院薬局における最大の患者サービスは、待ち時間の短縮と考えられていた時期があるが、待ち時間を短縮するあまり、手抜きとも思われる調剤をしている薬局が見られたが、調剤過誤を起こさないということこそ最大のサービスであり、更に情報提供が求められる現在の薬局業務では、待ち時間の短縮を最大のサービス要件とすることは無意味である。

[3] 過誤発生時の対応

どの様に努力を積み重ねたとしても、人間であることの悲しさで過誤は発生する。つまり人の係わる作業から過誤を絶無にすることは不可能ということである。過誤発生防止のために最大限の努力をしたとしても、やはり過誤は発生する。従って、過誤が発生した場合、どの様に対応するのかを決定しておくこともまた重要なことである。

事故発生時の最優先課題は『即応性』である。あらゆる発生事態に対して、常に素速く対応することができる体制を構築しておくことである。調剤した薬剤師が、自らの調剤過誤に気付いた場合、直ちに上司に報告すると共に、患者に連絡し、実害の及ばないように調剤薬の服用の中止を依頼する。同時に再調剤した薬剤をもって、患者の自宅まで交換のために持参する。この際、一切の言い訳は必要なく、むしろ『誠意あるお詫びの言葉』が必要である。

薬剤師が気付く前に、患者が気付いて、苦情の形で申し入れられた場合、直ちに処方せんを確認し、言い訳をする閑があれば『お詫びを』すると共に、手早く再調剤し、患者に渡すことが必要である。

患者から苦情が出された場合、種々言い訳を述べる人がいるが、どの様な話であれ、それは誤った側の理論であり、患者にとっては何の意味も持たない話である。実害が伴わない限り、『誠意あるお詫び』と、手早い『再調剤』を何よりも優先すべきである。

不幸にして患者に実害がでた場合、情報の公開と誠意ある対応が何よりも重要であり、つまらない言い訳は何の役にも立たないばかりか、患者に不信感を持たせるだけである。

以上の各種の対応は、必ず処方医にも連絡し、どの様に対応し、その結果がどうなったかまで、報告することを忘れてはならない。

大学全入時代

水曜日, 8月 15th, 2007

鬼城竜生

大学・短大の志願者数が、入学者数と一致する状態を『大学全入時代』というそうである。文部科学省は、当初『2009年度』を予測到来時期としていたが、昨年の夏に2年速く前倒しして『2007年度』に到来時期を修正した。

理論的には、入学希望者が大学という名前であれば何処でも良いと考えているのであれば、希望者全員が大学に入れるということで、ある意味でいえば甚だしく喜ばしいということになるのであろうが、入学を希望する方は、大学という名前であれば何処でもいいというわけにはいかない。やはり勉強したい学問があり、手に入れたい資格があり、自分が将来やりたいと考える学問の学べる学校を選択する。

『大学全入時代』を迎えて、競争力の弱い大学の経営は一層困難になると予測されているとされる。2005年6月、山口県萩市の萩国際大を運営する学校法人萩学園が定員割れで東京地裁に民事再生法の適用を申請、改めて私大の経営危機がクローズアップされたとされるが、各大学の生存競争が今後過酷なることは十分予測される。

これを受けて大学経営セミナー等を開催する「日本私学経営活性化協会」(東京都千代田区)は、「私学経営支援委員会」を発足させたという。今後は、経営悪化した私大からの要請で現地調査を行い、経営診断や再生計画の策定を手がけるという。再生資金の融資も行う方針で、破綻状態に陥る前の速い段階で相談して欲しいとしているようである。

また「日本私立学校振興会・共済事業団」は、「学校法人活性化・再生研究会」を設置し、「破綻保険」の具体的内容を検討するとしている。各大学が拠出した資金を破綻大学に投じ、在校生が卒業するまで学校運営を確保するのがねらいだとされている。大学・短大の統合を進める大学版M&A等も検討課題になる見通しとされるが、これらの全ての方策は、各個別大学の経営内容の厳密な分析無しには進捗しない。世間一般の風がなかなか吹き込まない大学の住人である教授諸兄が、果たして自校の経営を何処まで冷徹に分析できるのか。気付いたときには手遅れというのが大方の実態ではないか。経営学博士が必ずしも自校の経営に精通しているとは限らないのが学問の常である。

ところで一般的には、大学の整理に入ろうという時代に、薬科大学のみが次々に新設されているが、一体どういう訳か。しかも6年制に移行するという厄介な時期に、次々と新設されることの意味がよく理解できないところである。悪く勘ぐれば取り敢えず入学させてしまえば6年間は学費の取りっぱぐれがないからとしか考えられない。

従来から運営されている大学に比べて、新設大学は、将に『競争力の弱い大学』に分類されるのではないか。どの程度の基礎財源を用意して開校したか知らないが、学生零で10年は持つなどという驚異的な財源を保有しているとは考えられない。更に予備校からの情報として薬科大学への希望者が、前年比で2割程度は低下しているといわれている。更に更に同じ6年制なら医学部に行った方が卒業後の収入は安定している。4年制の他の医療関係の大学を目指す等々の話も耳にする。

最初に万歳する薬科大学は何処か知らないが、他との差別化を図るために、思い切った手立てを取らなければ、最早生き残れないということであろう。

(2005.11.6.)


  1. 再建プロ集団 破たん保険も-私大救済策急ピッチ-国や私学団体「全入時代」控え;読売新聞,第46567号,2005.11.4.

「それは唐突に訪れてきた」 -statin剤の副作用なのか?。それとも………-

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

兎に角、今までに経験のないことに遭遇した。最初に痛み出したのは両脇の腰の部分で、椅子から立つときに無闇に痛みが走った。しかし、その痛みは長続きせず、暫く立っていると消えてしまった。これは座る姿勢が悪くて、筋肉痛が起こっているのだろうと自己診断した。

その次に、異な事もあるもんだと思ったのは、床屋に行ってバリカンを当てられると、無闇に頭皮が痛いのである。三分刈りのバリカン入れが、それほど力を入れてやっているとは思えないのに痛みを感じた。しかし、この痛みも、職人の力の入れ方の所為であろうと、深く考えることはしなかった。

これらのことに気がついたのは、2006年1月半ばのことであった。

大学で90分授業を二駒行い、帰りは駅まで歩いた。その距離約30分。その後約30分電車に乗って、幸い空いていて坐ることができた。さて電車を降りて駅の階段を昇る段になって、えらく足が重く、足を持ち上げるのにそれなりの力を入れないと、階段を昇ることができなかった。解りやすくいえば、 4-5時間山登りをやった後の足の疲労度である。

おいおいなんだいこれは。僅か二駒の授業と30分のテクリで、こんなに足が重いとは。年の所為とはいえ、何かおかしいんではないかと思ったのが最初の疑問である。

椅子から立ち上がるときの腰回りの痛みは相変わらずというか、酷くなったような感じで、正常に歩き出すまでにより時間がかかるようになった。

これはいよいよ年のせいで、筋肉痛が出るようになったのか。それとも座る姿勢が悪くて、永年の姿勢の悪さの積み重ねで、筋肉に異常が起こっているのかと思っていたが、胡座をかいている時に、膝の後ろが無闇にだるくなり、足を伸ばして膝をひねる等ということをしなければならなくなった。

やがて寝る前に痛み止めの貼付薬を貼りまくる話になったが、朝起きると足の裏が痛く、立つときに思わずよろけるような羽目に陥った。面白いのは何分か立っていると、足の裏の痛みは足の甲に突き抜けて、やがて腰を曲げながら歩くことができるようになり、更には正常な二足歩行が可能になるという経過を、毎朝とるようになったということである。

毎朝この儀式を繰り返しているうちに、肩や背中が痛くなり、下腹部は過剰な腹筋をやった後のように、重苦しい状態になり、思わず息をつめているとそれが遠ざかるという状況が続き、ついには頭を洗おうとすると、立てた指が触れる部分の頭皮が痛いという状況に立ち至った。

鬚を剃ろうとすれば、剃刀の当たる皮膚が痛いということ迄見られるようになった。

なんだこれは………。今までに経験のない痛みに周章てたが、この時点では何が理由かわからなかった。しかし、そのうちに服んでいる薬の副作用ではということで、兎に角、疑わしい薬を止めてみる他にないと考え、statin剤の服用を中断した。

中断4日目当たりから痛みは幾らか楽になったが、まだ確信するほどではない。更に中断を継続して8日目を過ぎた当たりから一部の痛みを除き、全体的には痛みが治まりつつある。

この結果から見れば、明らかにstatin剤の副作用ではないかというのが自己診断である。この間2ヵ月に1回の検査が 1回入っているが、creatine kinase(CK)は若干高めを示したものの、医師が注意を向ける程の変化ではなかった。しかし、痛みだけは確実に増幅したということである。

総じてstatin系の薬剤は、副作用は非常に少ない薬とされている。

しかし、脂溶性のcerivastatin sodium(セリバスタチンナトリウム)は、高頻度の筋炎並びに横紋筋融解症を発症し、更にそれに起因する死亡例が世界中で200例に及んだことから 2001年、cerivastatinは世界市場からの撤退を余儀なくされた。

最近10年間のstatinを用いた大規模臨床試験から換算すると、 statin投与による救命症例と死亡症例の比率は、救命が1万-10万例に対し死亡は1例といわれている。

myopathy(ミオパシー)の発現頻度は、我が国では5%未満といわれているが、諸外国では10倍以上にCPKが増加した場合、myopathy発症を考えるとされており、発症頻度については7万例に1例と算定されている。

myopathyは単に筋肉痛、易疲労感を感じるだけのもの、更に血中のCPK のみが上昇する。また重症例では横紋筋融解症のため急性腎不全により死亡する等の症例も存在する。

但し、statinによる横紋筋融解症は100万処方に 1例と算定されている。myopathyの初期症状は、筋肉痛よりも筋肉がだるい等の訴えがあることに注意が必要である。

myopathy(筋症):筋肉自体が侵されて生じる疾患の総称。筋症は筋肉に病変が起こっている場合で、筋肉は種々の原因で侵されるが、外因による筋障害も多く、ステロイドミオパシー、クロロキンミオパシー、ビンクリスチンミオパシーなどがある。こうしたミオパシーの際には、一般的には四肢近位筋である肩、腰などの筋の脱力が目立ち、立ち上がり動作、階段の昇降などに困難を自覚することが多いとされている。

さて、今回経験したこの奇妙な事実は何なのか。

少なくとも薬の服用を中止したことで痛みが薄らいで行くという経過を取っているところを見ると、 statin系の副作用と思われるが、物の本にはこのような厄介な痛み方は書いていない。

仕事の関係で、種々の副作用についての文献を読む機会はあったが、このような奇妙な痛み方を書いたものは知らない。

いずれにしろ経験した副作用の細かな症状をより正確に報告するそんな場所が必要ではないかと感じた次第である。

(2006.4.8.)


  1. 医学大辞典;南山堂,2001
  2. 日本病院薬剤師会・編:重大な副作用回避のための服薬指導情報[1];薬業時報社,1997
  3. 名尾良憲・他編著:臨床医薬品副作用ハンドブック;南山堂,1999
  4. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2006
  5. 和田 攻・総監修:医学生物学大辞典;朝倉書店,2001
  6. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2001
  7. 多田紀夫:HMG-CoA還元酵素阻害薬の副作用;ドクターサロン,50(4):246-252(2006)
  8. ローコール錠添付文書,2005.5.
  9. 高久史麿・監修:臨床検査データブック;医学書院,2003-2004

ゾロの使用推進

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

いわゆる『ゾロ』の使用は、医療費の総枠抑制圧力の中、膨張し続ける医薬品費を何とか抑制できないかということで、厚生労働省が編み出した窮余の一策であるといえる。従って、その導入の根本は、あくまでも先発品に比較して値段が安いということである。更に従来は『ゾロ』という通称で呼ばれていた薬物が、専ら『ジェネリック』と称されているが、後発医薬品が突然変異を起こしたわけではなく、従来の薬物と何の変わりもない物なのである。

その意味でいえば、先日行われた『第4回ジェネリック研究学術大会』において、日本薬剤師会の漆畑氏が、後発医薬品の薬価算定について、『2004年度から初収載時の薬価が先発品の0.7掛けに引き下げられたことについて、手厳しかったか』との認識を示し、再考の必要性を示唆した。更に『後発品の評価について、剤形の工夫など患者にメリットをもたらす物については評価する仕組みも必要』との認識を示したとする報道がされていた。

しかし、この判断は、医療財源の厳しい状況の中で、甚だ甘い判断だといわざるを得ない。先発品との比較で、薬価にさほどの差がないのであれば、わざわざ後発医薬品を使用する意味がない。更に従来では考えられなかった厚生労働省の後押しで、後発医薬品の使用量は明らかに増大すると考えられている。そのような状況の中で、財政当局が後発医薬品の薬価を上げるなどという判断をするとは考えられない。

また、剤形上の工夫についていえば、製薬企業として患者の服用性向上のために努力することは当然のことであり、相当に利便性の高い剤形でなければ、それを理由にして薬価を上げるなどということも考えられない。

現在、後発医薬品に関連して吹いているジェネリック風は、あくまでも医療費の総枠抑制という財政事情に由来するものであり、薬価の引き上げ等ということは、期待しようもないことは誰もが承知しているはずである。

同じ大会において医療人権センターCOMLの辻本氏は、『知らないうちに後発医薬品に代えられていた』、『薬剤師に後発医薬品のことを質問しても「同じですよ」という返事だけ』、『医師に質問しても「安くなるから貴方にとって得」という返事だけ』といった患者からの声を紹介し、情報不足から患者は後発医薬品への不安を払拭しきれないのが現状であると指摘したとされるが、ここにも後発医薬品に対する誤解があるのではないかと思われる。

後発医薬品が専ら『ゾロ』という通称で揶揄的に呼称されていたのは、先発品の特許切れと同時に、雨後の竹の子並みにゾロゾロと販売されていたからである。その意味では、開発段階を飛ばしているため、基礎的な資料、臨床治験段階の資料等は存在しない。しかし、先発品の市販後に臨床現場で発生した副作用等は後発医薬品の添付文書にも反映されており、薬物の使用に支障を来さない程度の情報は存在する。従って添付文書の範囲内であれば、患者からの質問について、回答することは可能なのである。

またある意味で、現在のように後発医薬品に商品名を付けず、一般名(generic name)で市販されたと仮定すれば、同一成分である先発医薬品の情報を代替して読み替えることは可能であり、情報量は限りなく増大する。

後発医薬品をジェネリックと称するのは、一般名(generic name)で考えることが基本にあるからであり、後発医薬品を医師が処方する場合にも、商品名で記載するのではなく、一般名で記載するという方式を確立すべきである。医師が処方せんに一般名で記載すれば、患者に投与する薬物は薬剤師が選別することになるが、この際、薬価差益にのみ眼を向けることは止めて欲しいものである。

薬物の決定に際しては

  1. オレンジブックに収載されている物
  2. 通常の流通形態にある物(製品の安定供給に卸も一定の責任を果たす)
  3. 企業の社会的責任について認識している会社(副作用情報収集体制の確立)

等の基準に基づいて判断すべきである。

くどいようではあるが、後発医薬品の使用を選択するかどうかは、ある意味で医療の本質とは関係なく、医療費の抑制という財源問題なのである。医療関係者は勿論のこと、患者自身もその点を明確に認識し、後発医薬品の使用に協力すべきである。

(2005.9.21.)


  1. NEWS&TOPICS;調剤と情報,11(9):1138(2005.9.)