トップページ»

「嗜銀顆粒について」

火曜日, 5月 21st, 2013

KW:語彙解釈・嗜銀顆粒・しぎんかりゅう・銀親和細胞・argentaffin cell・タウ蛋白質・銀親和反応・argentaffin  reaction・カルチノイド・嗜銀反応・銀親和性

Q:嗜銀顆粒について

A:嗜銀顆粒(しぎんかりゅう)とする直接的な標記は検索できなかったが、嗜銀(細胞)腫=カルチノイド、嗜銀反応=銀親和性とする用語は確認できた。

銀親和細胞(argentaffin cell)については、「アンモニア性硝酸銀液やヘキサミン銀液などで処理した時に、銀塩を還元して、褐~黒色に染まる顆粒を持った細胞。この反応はセロトニンの存在と関係が深いと考えられている。胃腸の内分泌細胞(基底顆粒細胞)の多くは銀親和細胞である。

銀親和反応(argentaffin  reaction)<銀還元反応、嗜銀反応>。アンモニア銀などの銀塩を還元して、銀粒子を析出させる反応を云う。Fontana-Masson染色がよく用いられる。小腸クロム親和細胞、セロトニンを含むカロチノイド、メラノサイトが陽性反応を示す。→好銀反応。

好銀(性)細胞(argyrophil cell):好銀反応陽性を示す細胞。主として各種アミン、ポリペプチド産生の内分泌細胞を指す。消化管好銀細胞、膵島A細胞、下垂体好銀細胞、甲状腺C細胞、副腎髄質細胞、カルチノイドなどが含まれる。乳癌などで、カルチノイドの形態を示さずに、好銀反応を示すものがあり、好銀性細胞癌と呼ばれる。

カルチノイド(carcinoid)

<好銀性細胞腫:argyrophil cell tumor>、<嗜銀[細胞]腫:argentaffinoma>、<銀親和性細胞腫>、<腸クロム親和性細胞腫:enterochromaffin tumor>、<類癌腫:carcinoid tumor>。腸クロム親和細胞より発生する腫瘍で、原始腸管である前腸(分化して肺・胃・近位十二指腸・肝・胆・膵となる)、中腸(遠位十二指腸・空腸・回腸・右結腸)、及び後腸(左結腸・直腸)、更にその他の臓器(胸腺・子宮膣部・乳腺・腎・皮膚など)に生じ、それぞれ発生部位により分類されている。それらの病床像・予後等には多少の違いはあるが、いずれも腫瘍組織は特有な増殖像(索状・島嶼状・ロゼット状など)を示し、腫瘍細胞は均一で、原形質内に銀親和性又は好銀性反応陽性の顆粒を有し、電顕により分泌顆粒であることが証明できる。しばしば肝・肺に移転する。

その他、嗜銀顆粒について、次の説明が見られた。

嗜銀顆粒とはタウ蛋白質の異常蓄積の一種で、アルツハイマー病や神経原線維変化型認知症にもしばしば出現する。しかし、それらの疾患がないにも拘わらず、嗜銀顆粒が大量に出現し、認知症を惹起する場合が知られている。

認知症の一つのタイプにグレイン病(Grain disease)と呼ばれるものがある。Grainは小さな粒子のことで、1980年代の終わりに銀を用いた脳組織の新染色法であるGallyas-Braak(ガリアス・ブラーク染色)が考案され、脳内に銀によって染色されるGrainが出現するタイプの認知症があることが確認された。
§高齢者の認知症の中でアルツハイマー型に次いで多いとする報告が見られる。
§Grainはリン酸化されたタウ蛋白質が主成分であることが知られている。
§物忘れ、見当識障害が見られる。精神的には頑固さ、怒りっぽさが目立ってくるとする報告が見られる。

また、嗜銀顆粒性認知症(grain disease:DG)

とは、中枢神経系に嗜銀顆粒(argentaffin granules:AG)と呼ばれる構造物が出現する認知症である。高齢者では頻度の高い疾患であるが、臨床診断の指標がなく病理学的検索からの発信が急務であるとする報告が見られる。

1)最新医学大辞典 第3版:医歯薬出版,2005
2)東京都健康長寿医療センター病理解剖コラボレーション(共同研究事業),2024.8.16.

          [615.8.GRA:2013.3.27.古泉秀夫]