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『リレンザ』で3人がショック、1人死亡

金曜日, 5月 31st, 2013

                           魍魎亭主人

厚生労働省は2013年2月27日、抗インフルエンザ薬の一つ「リレンザ」を2009-2012年に使用した患者3人がアレルギー性ショックを起こし、このうち1人が死亡したと発表した。薬の添付文書の副作用欄に「ショック」を書き加え、患者を十分に観察するよう医師に求めた。リレンザは年間推計170万人が使用している。

厚労省によると、死亡したのは30歳代の女性。2012年、家族がインフルエンザに感染したため、医療機関で予防のために吸入したが、数分後に呼吸困難となり、間もなく死亡した。気管支ぜんそくの発症歴があり、当日は発熱や感染性胃腸炎の症状があったという。2009年には、インフルエンザと診断された10歳代の女性が、リレンザを吸入した6時間半後、一時的に意識を失ったとされる。もう1人は10歳代の男性で、同年、一時的に呼吸困難となったという(2013年2月27日 読売新聞)。

リレンザ服用後、呼吸困難に陥り死亡した女性の場合、気管支喘息の既往があり、しかも服用時には発熱と感染性胃腸炎の症状が出ていたという。普通患者がこの様な状態の時に直接症状に係わりの無い薬を使用するということは避けるべきで、しかも予防目的で使用したと云うことの意味が分からない。

どんな薬でも期待されない『有害作用』は存在する。薬の情報の集積文書である添付文書の記載事項を順守し、なるべく整った環境で使用すべきである。今回の場合、家族がインフルエンザに罹患しており、予防投与の適応ではあるが、注意事項として『本剤を予防に用いる場合には、原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である下記の者を対象とする』とされている。

(1) 高齢者(65歳以上)
(2) 慢性心疾患患者
(3) 代謝性疾患患者(糖尿病等)
(4) 腎機能障害患者

以上はいずれにしろインフルエンザウイルスに罹患した場合、重篤化するかあるいは致死的な影響を受けるとされる範疇に属する。その意味で言えば、今回の患者は該当しないと云うことになるが、残念ながら添付文書には『原則として』という魔法の言葉が付け加えられている。

『原則として』という言葉は、基本的な規則・決まり事という意味ではあるが、そこには例外的な事例も許容されるという理解が入り込む。従って『原則として』という文言が入ると、限りなく原則は矮小化され、例外事項が拡大化してしまう。つまり如何に添付文書に『原則として』という言葉が書かれようが、『医師の判断』が優先されてしまう。

         (2013.4.5.)