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『医師の診療拒否について』

金曜日, 3月 1st, 2013

 

KW:法律・規則・診療拒否・医師法・応招義務・正当の事由

Q:「医療機関(病院・診療所)は外来受診者を断れない」という法律はありますか?

A:医師の『応招義務』については、医師法第四章第一九条[応招義務等」として、次の規定が定められている。
『第一九条 診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない』
『2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会った医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証明書の交付の求めがあった場合には、正当の事由がなければこれを拒んではならない』
と規定されている。

この医師法第一九条が、医師の診療拒否を『不可』とする根拠である。

この規定でいう『正当な事由』とは「医師の手術中や病院のベッドが満床であることなども一応正当事由になりうるとされているが、訴訟になった場合『具体的事情を考慮して、事実上診療が不可能であったか否かの判断はかなり厳しく判断』されるとされている。また病院についても、医師の場合と同様の診療義務を負っていると解され、所属医師と同様の民事責任が認められる。

なお、受診拒否について、診療拒否によって患者に損害が生じた場合には、医師に過失があるとの一応の推定がされ、診療拒否に正当事由がある等の反証がないかぎり、医師の民事責任が認められている。

『正当な事由』については、一般的な基準となるものを設けることは難しく、厚生労働省においても基準が示されている訳ではない。医学的合理性と健全な社会通念、更に医師法第一条『医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする』とする『医師の任務』に反しないことが必要だと判断される。

尚、質問では“外来患者”のみを挙げているが、“入院患者”も同様であり、医療機関の都合のみで入院患者の退院を強制することは出来ない。

1)基本医療六法編纂委員会・編:基本医療六法 平成22年版;中央法規,2010

         [615.1.LOW:2013.1.29.古泉秀夫]