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『コケイン症候群について』

金曜日, 3月 1st, 2013

 

KW:語彙解釈・コケイン症候群・Cockayne症候群・早老症・DNA修復遺伝子

Q:コケイン症候群とはどのような疾病なのか。

A:コケイン症候群は常染色体劣勢疾患で、ERCC8遺伝子(DNAの除去修復に重要)の突然変異に起因する。またDNA修復遺伝子の異常により中枢及び末梢神経が障害されることにより、進行性に重度の神経運動発達遅滞、腎不全、難聴、視力障害、歩行障害を呈する疾患であるとされる。これらの疾患の進行により重度の身体障害を来たし、10-20歳代で死亡することが多く、早老症の一種である。本症例は発症年齢により3種類の型に分類される。

コケイン症候群(Cockayne症候群)は、日本においては100万出生あたり約2人、約70-100人の患者数が推定されている。原因はDNA修復遺伝子の異常による。本疾患の線維芽細胞において最も重要な所見は、紫外線に高感受性を示すことであり、紫外線障害によるRNA合成の回復が起こらず、転写された遺伝子の損傷修復、又は“転写と共役した修復”がみられないことだとされている。

Cockayne症候群の症状として、著名な低身長、低体重、小頭を呈し、視力障害、聴力障害、光線過敏などの皮膚症状、中枢神経および末梢神経障害の進行により重度の精神運動発達遅滞を合併する。合併症として低身長、低体重、小頭を呈し、視力障害、聴力障害、光線過敏などの皮膚症状、中枢神経および末梢神経障害の進行により重度の精神運動発達遅滞を合併する。

Cockayne症候群の根本的治療法は報告されていない。白内障に対しては手術、難聴では補聴器が奏功する場合もある。手指振戦に対してはTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)製剤が一部の患者に効果がある。日光過敏に対してはサングラス装着、紫外線防御クリームなどが効果がある。腎不全に対しては腹膜透析を行う場合もある。

Cockayne症候群は、次の3型に分類される。

Cockayne症候群I型:Cockayne症候群の8割を占める。出生時の身長、体重、頭囲は正常。新生児期、乳児期の早期には発達遅滞を認めない。
†生後半年頃より小頭に気づかれることが多く、徐々に、座位、はいはい、つたい歩き等の粗大運動の遅れや、精神遅滞を認めるようになる。一人歩きはできるようになるが、歩き方が不自然で、つっぱったり(痙性)、ふらついて転けることが多い。
†1-2歳をピークに徐々に運動能力は落ちていく。具体的には、末梢神経障害と、中枢神経障害による痙性が進行し、その結果上下肢の拘縮(こうしゅく)が出現し、やがて歩行困難となる。
†同時期より低身長、経口摂取不良に伴う痩せ(やせ)も顕著となる。
†そのほか視力や聴力の低下も出現する。また齲歯(うし)、日光過敏症、腎機能障害および高血圧もしばしば問題になる。
†その他、視力や聴力の低下も出現する。また齲歯、日光過敏症、腎機能障害及び高血圧もしばしば問題になる。
†自然歴としては、以前の報告では12歳前後で死亡する患者が多かったが、最近の全国調査では死亡例の平均年齢は18歳であった。これは栄養管理を含めた医療技術の向上に伴うと考えられる。死亡原因は腎不全、呼吸不全が多い。

Cockayne症候群II型:先天性Cockayne症候群ともいわれており、胎生期より成長障害を認めており出生児には既に低身長、小頭を呈している。また先天性の白内障をはじめとする眼科疾患や、感音性難聴を認めることもある。
†神経学的発達はほとんどみられず、粗大運動の発達はあっても一人歩きはできない。乳児期早期より側彎や関節拘縮を認めるようになる。
†5-6歳で経口摂取不良、消化不良及び痩せが一層悪化し、6-7歳頃に肺炎や腎不全、心不全で死亡することが多い。

Cockayne症候群III型:Cockayne症候群の中で最も頻度が少ないとされる。症例数が少なく、体系的なことは解っていないが、Ⅰ型に比べ発症時期が非常に遅く進行が緩徐である。実際には診断がついていない例もあると考えられる。

1)久保田雅也(国立成育医療研究センター・神経内科):コケイン症候群とは;コケイン症候群研究会,2013.1.30.
2)難病助成拡大を提言 治療法開発に期待の声;読売新聞,第49198号,2013.1.25.
3)太田さやか(国立成育医療研究センター・神経内科):コケイン症候群各論,2013.1.30.

4)福島雅典・総監修:メルクマニュアル 第18版 日本語版 ;日経BP社,2006

          [015.9.COC:2013.1.30.古泉秀夫]