Archive for 8月 1st, 2008

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「OPC-67683について」

金曜日, 8月 1st, 2008

KW:薬名検索・治験記号・OPC-67683・nitroimidazo-oxazole・抗結核薬

 

Q: 治験記号OPC-67683の薬剤について

 

A:OPC-67683(nitroimidazo-oxazole)は大塚製薬で創薬された新規のnitroimidazole誘導化合物の抗結核薬である。本薬はin vitroで、耐性臨床分離株を含む結核菌にMIC値6-24ng/mLと強力な活性を示し、既存抗結核薬との交叉耐性は見られなかった。

in vivoでは、結核菌kurono株感染IRCマウスモデルに対する1日1回28日間経口投与で、肺内生菌数を指標とした有効性は、rifampicin、isoniazidと比べて6-7倍強力であった。ICRマウスへの本剤0.625mg/kg単回経口投与で、血漿中有効濃度は、100.4ng/mL、肺内有効濃度は273ng/gであった。本剤と既存結核剤との併用で、in vitro、in vivoの何れにおいても拮抗作用は認められなかった。

結核菌H37Rv細胞内感染のTHP-1ヒトマクロファージに対し、本剤、isoniazid、rifampicinは72時間曝露で抗結核菌活性を示したが、ethambutol 、streptomycin、pyrazinamideは最大6.25μg/mLでも活性を示さなかった。本剤、isoniazid、rifampicinの90%殺菌濃度はそれぞれ215、123、>780ng/mLで、本剤の細胞内活性は、濃度と時間に依存した。2、4、8、24時間のパルス処理では、本剤の抗結核菌活性はisoniazid、rifampicinと比べて、それぞれ1.8、3.2倍強力であった。本剤は同結核菌感染A549II型肺胞内皮細胞内でも同様の活性を示したことから宿主細胞のタイプに係わらず、細胞内で抗結核菌活性を発揮することが明らかになった。

本剤は比較的良好に経口吸収され、殆どの組織に分布した。分布量は肝臓>腎臓>肺>心臓>小脳>脾臓>血漿の順で、肺組織内濃度は血漿中の3-7倍であった。本剤は肝ミクロゾームで代謝されず、血漿中に主要代謝産物は存在しなかった。また肝ミクロゾームの何れのCYP酵素に対しても阻害活性を示さなかったことから、他剤と併用投与した場合に、薬物動態的相互作用を起こさないことが示唆された。
本薬は2005年12月に米国Washington DCで開催された45th ICAAC国際学会で初めて世界に公表され、世界中から注目を集めるトピックスとなった。現在本薬は海外で第II相臨床試験を継続中である。国内においても第I相臨床試験を終了しており、2007年度から第II相臨床試験に入る予定とされている。

結核患者の年間発生数は少ないとはいえ、一定数以下に減少しようとしない現状があり、更に多剤耐性菌の発現が問題となっている。新しい抗結核薬の開発に対する期待は大きい。本剤が早い時期に臨床現場で使用できるようになることを期待したい。

 

1)ミコール酸阻害作用を有する結核治療剤-OPC-67683;New Current,17(2):18-20,2006.1.10.

[011.1.OPC:2008.2.5.古泉秀夫]

「検査食ボンコロンについて」

金曜日, 8月 1st, 2008

KW:検査試験・薬名検索・検査食・ボンコロン・マグコロール・大腸検査

 

Q:マグコロールの処方とともにボンコロンの記載がされているが、これは何か

 

A:ボンコロン(大塚製薬)は、大腸検査のための検査食であり、次の成分を含有している。

 ボンコロン-01

その他、電解質としてNaCl:8,359mg、Na:3,291mg、K:247.6mg、Ca:66.8mg、P:126.5mg、Fe:0.1mg等をそれぞれ含有する。

 

1)中川安(株)薬事管理課資料,1989
2)国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.721,1994.1.11.より転載
3)株式会社大塚製薬工業広島営業所・私信,2005.11.2.

  [011.1BON:1993.8.3.古泉秀夫・1999.6.9.・2005.11.7.一部修正.]

「烏龍茶の脂肪代謝促進作用」

金曜日, 8月 1st, 2008

KW:健康食品・烏龍茶・脂肪代謝促進作用・茶・緑茶・青茶・Camellia sinensis L.・ツバキ科・カテキン・エピガロカテキンガレート・アッサム種

 

Q:烏龍茶でいわれている脂肪代謝促進作用について

 

A:茶(学名:Camellia sinensis L.)はツバキ科の植物で、原産地は揚子江、メコン川、イラワジ川、プラマプトラ川などの大河上流が集まる中国西南部の雲南省からビルマ北部、アッサム地方にわたると考えられている。
我が国で栽培されている茶の種類は大きく二つに分けられ、寒さに強い中国種(Camellia sinensis L.var.sinensis)と寒さに弱いアッサム種(Camellia sinensis L.var.assamica)に分類される。一般に飲用される茶類は緑茶、紅茶、烏龍茶等があるが、これらは全て同じ茶樹の葉から作られており、加工の仕方により緑茶、紅茶、烏龍茶等に分けられる。

 

茶の模式図b

青茶:半発酵茶。烏龍茶。成熟した新梢を用い、通常17工程を経て完成するといわれているが、上品質のものほど手数をかけている。途中で加熱により酵素活性を止め、乾燥するので半発酵茶といわれる。醗酵は最初に葉を日光に当てて行い、その後、室内で萎凋(葉を萎らせる)が行われる。做青(青色だし)の工程があるのが特徴である。これらの一連の過程で、烏龍茶に特有の香気成分が生じるものと考えられている。また一般的にテアフラビン(紅茶色素)が紅茶の10%程度含まれているとされる。
烏龍茶の効用としていわれているのは、
食欲増進
消化促進
脂肪分解
代謝亢進
等である。
最もよく知られているのは、脂肪分解作用である。烏龍茶を食中・食後に飲めば、脂肪代謝を促進して、肥満の予防に役立つ。この烏龍茶の作用は、食欲増進、消化促進に加えて、脂肪分を円滑に分解し、過剰な脂肪分が体内に残らないように働きかけるもので、肥満の予防作用はその結果の一つにしかすぎない。烏龍茶の効用で大事なのは、食欲を増進する中で、体の栄養バランスを正常に保つよう働くことである。
また烏龍茶は花粉症などアレルギーに効果のあることが、最近の研究で明らかにされた。これは烏龍茶に含まれるカテキン類がアレルギーの原因となるヒスタミンの放出を抑制するためと見られている。緑茶や紅茶より烏龍茶の方が改善効果が強く、特に烏龍茶の茎に含まれているカテキン類から高い効果が得られたとされている。
現在、我が国で市販されている烏龍茶の中で良質とされているのは、福建省・武夷山に産する武夷岩茶(鉄羅漢等)と、同じく安渓に産する鉄観音である。
烏龍茶の醗酵度は半醗酵で、その製法には微妙な感覚が要求され、永年の経験が生きている。醗酵は生葉を粉砕せずに日光に当て、更にその後、室内で葉を萎ませながら葉内の酵素活性を高める。この過程で、生葉中にない香気成分(ネロリドール、インドール、ジャスミンラクトンなど)が発現するといわれている。その他、烏龍茶にはカフェインが少ない、また烏龍茶では緑茶と異なり解毒・殺菌作用が変質しない等の報告がされている。
緑茶には渋味成分としてポリフェノールの一種であるカテキンが含まれている。ラットの餌にラードやコレステロールを加え、カテキンを添加すると、糞中に排泄される脂肪やコレステロールの量が増え、血中脂質を改善することが明らかになった。カテキンが血中脂質を正常化する理由の一つとして、胆汁酸の排泄を増やすことが挙げられている。胆汁酸は肝臓でコレステロールを原料に作られ胆汁に含まれて脂肪を乳化して消化を助けた後、腸から吸収されて肝臓に戻り、再利用される。ところがカテキンを与えると胆汁は再利用されず排泄されるため、コレステロールが血液中で増加しない。血中脂質が減少すると肝臓に蓄積される脂肪が減少するため、脂肪肝を改善し、肝臓の機能も高まるとされている。
烏龍茶の脂肪分解の作用が、カテキンにあるとすれば、緑茶と烏龍茶の間に差はないはずであるが、緑茶と烏龍茶のカテキンについて、次の報告がされている。
緑茶は新鮮葉を蒸すことにより酸化酵素の働きを止め、緑色を保持させたものであり、この製造工程では、エピガロカテキンガレート(緑茶タンニン)を含む他のカテキン類はほとんど変化していない。烏龍茶や紅茶は加熱処理せずに、自然に葉を萎びさせ、醗酵させるもので、その過程でカテキン類は酸化重合してプロアントシアニジンポリマー、theasinensins、theaflavinsやthearubigin(色素)などに変化する。

以上の各報告から、茶葉中に脂肪分解に作用する成分が含まれていることは確かであるが、緑茶と烏龍茶では製造過程の差により、烏龍茶の含有成分がより強力に働くようになっており、更に総合的な効果として、脂肪分解作用を示すものと考えられる。

 

1)健康産業新聞社/「ハーブ」プロジェクトチーム・編:薬用ハーブの機能研究;健康産業新聞社,1999
2)奥田 拓道・監修:健康・栄養食品事典,2004
3)中村丁次・監修:最新版からだに効く 栄養成分バイブル;主婦と生活社,2001
4)田中 治・他編:天然物化学 改訂第6版;南江堂,2002

  [015.9.CAM:2004.12.14.古泉秀夫]

「アルミニウム食器の安全性について」

金曜日, 8月 1st, 2008

KW:毒性・アルミニウム・aluminum・食器・アルミニウム脳症・骨軟化症・体内動態・アルミナ・alumina・酸化アルミニウム

Q:熱伝導がよいということで、アルミ製の鍋を30年近く使用しているが、落ちにくい汚れが付いた時はスチール製のタワシで洗っているため、見たところポツポツと中の少し黒っぽいのが見えています。最近の鍋は、真ん中にアルミニウムを入れて、外側はステンレスというのが多いようです。これもアルミニウム脳症などと騒がれていることのためでしょうか。アルミニウム製の鍋の使用の可否について教えてください。

A:アルミニウム脳症の原因がアルミニウムの食器の使用によるとする確定的な情報は、現段階では入手していない。

アルミニウム(米・aluminum、英・aluminium、独・aluminium、仏・aluminium)は、元素記号:Al、原子番号:13、原子量:26.98154、周期表では典型元素III族に属する金属元素の一つである。CAS No.7429-90-5。銀白色の軽くて柔らかい金属。単体は常温常圧では良い熱伝導性・電気伝導性を持つ。mp660.2℃。比重2.7g/cm3。酸やアルカリに侵され易いが、空気中では表面に酸化膜(アルマイト)ができ、内部は侵され難くなる(不動態)。地球表層部では最も多量に存在する金属。氷晶石やボーキサイトから製する。金属又は軽合金としてその用途は広い。化合物の中で明礬、ケイ酸アルミニウムなどは医薬品として用いられた。

アルミナ(英・alumina・独・tonerde、仏・alumine)、別名:酸化アルミニウム、原子記号:Al2O3、耐熱性、耐腐食性があることを利用し、ルツボ、乳鉢、燃焼管などの実験器具の材料、触媒として使用される。

名称 物理的性状 融点(℃) 水溶解性 比重(水=1) 発火温度
アルミニウム 白-灰色粉末 660 不溶性、反応する 2.7g/cm3 590℃
酸化アルミニウム 白色粉末 2054 不溶性 3.97g/cm3
水酸化アルミニウム 無臭、種々の形態の白色固体 300 不溶性 2.42g/cm3
硫酸アルミニウム 無臭、白色の光沢ある結晶若しくは粉末 770(分解) 易溶性 2.71
ポリ塩化アルミニウム 無色-淡黄褐色の透明な液体 1.19

aluminumは空気中では緻密で、安定な酸化被膜を生成し、この被膜により自然に腐食を防止(被膜の自己補修作用)する。aluminumは塑性加工がし易く、さまざまな形状に成形することができる。紙のように薄い箔や、複雑な形状の押出形材を容易に製造することができることから、極めて広い用途で使用されている。また、aluminumは非磁性体で、磁場に影響されない。この特長はaluminumの他の特性である、軽い、耐食性に優れている、加工性がよい等と組合わせることによって、さまざまな製品に生かされる。主な製品としては、パラボラアンテナ、船の磁気コンパス等の計測機器、電子医療機器、メカトロニクス機器等が見られるが、更にはリニアモーターカーや超電導関連機器にいたるまで、その用途が大きく広がっている。aluminumの熱伝導率は鉄の約3倍。熱をよく伝えるということは急速に冷えるという性質にもなるため、冷暖房装置、エンジン部品、各種の熱交換器、ソーラーコレクター、また、飲料缶等にこの特性が生かされている。

aluminumは殆どの動物や植物の体内に広く存在するが、必須元素ではないと考えられている。試験管内実験においても、aluminumを補因子とする酵素反応は知られていない。aluminumは無害・無臭で、金属が溶出しても、人体を害したり、土壌を汚染することはない。またaluminum化合物による急性中毒は極めて稀で、殆どが慢性中毒で、慢性腎不全患者において、骨軟化症や脳症の発生が報告されている。

通常、ヒトが摂取するaluminumの大部分は、食品や食品添加物等に含まれているもので、その他飲料水や調理器具等からも摂取している。1日当たりのaluminumの摂取量は、地域や食生活によっても異なるが、各研究機関では以下の摂取量を基準として示している。

研究機関 1日摂取量
世界保健機構(WHO) 2.5-13mg
英国農業食料省(MAFF) 3.9mg
スウェーデン食品局(SFNA) 12.1mg
米国食品医薬品局(FDA) 9-14mg

日本国内でも幾つかの試算例があるが、加熱調理を全てアルミ製の鍋で行うような事例でも、食物からの摂取は4-6mg程度とする報告がされている。

aluminumの体内動態は、その殆ど(約99%)が吸収されず、そのまま排泄するとされている。また、僅かに残った部分の大部分は腸管を通して吸収された後、腎臓を経由して尿中に排泄される。一般にヒトの体内には35-40mgのaluminumが安定した状態で存在するといわれ、主に肺、骨等どに分布し、僅かに血液、脳内にも見られるとされる。但し、aluminumの体内動態については、未だ解明されていないのが現状であるとされる。

毒性評価

WHOの最近の評価(WHO,1998)によると、aluminumとその化合物は、ヒトでは殆ど吸収されず、吸収されてもその吸収率は一緒に摂取される塩やpH、生物学的利用率、食事などの様々な因子に左右される。動物実験によるデータは、これらの様々な体内動態パラメーターのため、評価値の算定に利用することは適切ではないと考えられる。また、ヒトに対するaluminum暴露がアルツハイマー症の発症を増強あるいは加速するという仮説が唱えられている
WHO の EHC(WHO, 1997)では、以下のように判断している。『仮説を支持している様々な疫学データの多くが、交絡因子やヒトにおける総aluminum摂取量の考慮が行われていない研究であることには問題があると考えられるが、一概に仮説を却下することはできない。これらの疫学データから求められた100μg/L以上のaluminum暴露によるアルツハイマー症に対する相対リスクは低い(2倍未満)。このリスク値は算出方法に統一性がなく、不確かなものなので、一定地域の人々に対するリスクを正確に算出することは出来ない。しかし、一般の人々のaluminum暴露を制御するのに必要な判断材料としては有用かもしれない。』

更に『aluminumは、中性では安定であるが、酸性やアルカリ性では溶解し易いという化学的性質を持つ。アルミ缶からのaluminumの溶出については、コーラ系飲料で平均0.6ppm、非コーラ系飲料で0.9ppmと、ガラス瓶と比較すると3-6倍のaluminumが溶出しているというオーストラリアの報告がある。缶の内部にコーティングがされているビールについては、溶出はガラス瓶と同程度であった。わが国では、清涼飲料水、ビールともにアルミ缶は全てコーティングされているといわれているが、溶出の有無についての報告はない。アルミ鍋からの溶出に関しては、トマトを煮込むなどの日常的な酸性条件下では64ppmのaluminumが溶出している。これは1食分で約4・のアルミを摂取している換算になる。アルミ鍋はアルマイト加工を施されていても、摩擦等により酸化皮膜が剥がれた場合には容易に溶出しうる[医事新報,p.125-126(96.7.27)]。

以上の各報告から、アルミ鍋の使用に際しては、

?鍋の安定な酸化被膜を疵付けるような金属タワシでの洗浄は行わない。
?煮物等の完了後は直ちに料理を他の容器に移し、アルミ鍋に入れたままにしない。
?使用済みのアルミ鍋は直ちに洗浄する。
?トマトを煮込む、果実のジャムを作る等の酸性条件が予測される場合には、アルミ鍋の使用は避ける。

等の注意を払えば、aluminum製の鍋からのaluminumの溶出は、人体に影響するほどにはならないと考えられる。

またヒト側の要因として、人工透析を要するような高度の腎障害がなければ、aluminumの体内への蓄積はなく、特に問題はないものと考えられる。

1)広川薬科学大辞典[第2版];株式会社廣川書店,1990
2)今堀和友・他編:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998
3)黒川 顕・編:中毒症のすべて-いざというときに役立つ、的確な治療のために-;永井書店,2006
4)社団法人日本アルミニウム協会,2007.10.6.
5)基32 31002アルミニウム1.物質特定情報,2007.10.10.
6)アルミニウムとアルツハイマー病,2007.10.10.
7)内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療-改訂第2版;南江堂,2001:

[63.099.ALU:2007.10.10.古泉秀夫]