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『米・ヘパリン剤で死者81人』

土曜日, 7月 26th, 2008

 

医薬品情報21
古泉秀夫

 

米・食品医薬品局(FDA)は人工透析などの際に血液凝固を防ぐために使われる『ヘパリンナトリウム製剤』の副作用によると見られる死者が、2007年から2008年2月までに62人に上がったと発表した。2月に約20人の死亡を発表したが、その後に報告が相次いだ。FDAはヘパリンに似た化合物の混入が原因と見ており、ヘパリン製剤を塗布した医療機器などについても混入の有無を調べるよう、業界に指導する。

発表によると、副作用と見られるアレルギー症状による死者は、2006年3人、2007年は10月まで計13人だったが、11月に入り急増した。副作用の多発は当初、米バクスター社の製品で発生していたが、今回の62人には他社製品による発生も含まれている。国内の3社もバクスター社と同じ中国の工場で作った原材料を使っていたため、製剤を自主回収している。

ただ、現時点で混入物と副作用の因果関係は解明されていない。

人工透析などの際に血液凝固を防ぐために使われる「ヘパリンナトリウム製剤」の副作用問題で、国内2社が輸入した製剤の原薬から不純物が検出されていたことが厚労省などの調べで判った。米バクスター社等の製品を使った米国の患者81人が2008年3月までにアレルギー反応で死亡して発覚した。検出された不純物は、製剤の主成分であるヘパリンと似た『過硫酸化型コンドロイチン硫酸』。副作用との因果関係は不明だが、米食品医薬品局(FDA)が原薬を供給していた中国企業を調査したところ、提出された試料から、本来は含まれていない過硫酸化型コンドロイチン硫酸を検出。その後、他国の複数の企業の原薬からも見つかった。

厚労省が国内の各企業に製剤や原薬の検査を指示した結果、2社が輸入した原薬に含まれていることが判明した。製剤からは検出されなかったが、2社は独逸と中国の企業から不純物を含んだ原薬を輸入・保管、中国企業は米バクスター社にも出荷していた。

国内では3月、製剤を製造・販売していた別の3社が、米バクスター社と同じ供給源(米国)の原薬を使っていたため、製品を自主回収している。しかしこの不純物は、国内のヘパリン製剤会社が今回導入を決めた厳格な検査方法で、確認できるとして、厚労省は問題のない製剤については出荷を認めることを決めた。

ヘパリンナトリウム製剤の添付文書に記載されているヘパリンナトリウム(heparin sodium)の原料は『健康なブタの小腸粘膜に由来』する物質から精製するとされている。ブタなら相当広範囲な国で飼育されていると思われるが、何故、こんなものまで中国依存になるのか。製造するものに関して、中国は色々と問題がある国であることは、今まで報道されたニュースの中味が証明している。

ヘパリンナトリウム製剤は、一般に広く知られる薬というのではないが、医療上は重要な役割を持っている医薬品である。これがもし手に入らないという状況になったとすれば、医療業務の一部は間違いなく干上がってしまう。それほどに重要な薬の原料を、世界中が中国に頼っているというのは間違いではないか。少なくとも重要な薬の原料は自給する気構えがないと問題が起こる。

ただ、米国での副作用報告の大部分は、高用量(5,000-50,000単位)のボーラス(bolus)投与(迅速な作用を期待して静脈内に高用量の薬物を短時間で投与する方法)によるものとされていることから、厚生労働省は品質問題だけではなく、使用に際し『投与量・投与速度』について留意するよう注意を喚起している。

 

1)読売新聞,第47451号,2008.4.9.
2)読売新聞,第47465号,2008.4.23.
3)薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会;ヘパリンナトリウム製剤等について,平成20年4月22日

 

(2008.5.1.)

「フィブリン糊使用550カ所」

土曜日, 7月 26th, 2008

  

医薬品情報21
    古泉秀夫

縫合用接着剤として『フィブリン糊』を使用していた医療機関が約550カ所に上がることが田辺三菱製薬の調査で判ったとされる。カルテ等が残っている血液製剤フィブリノゲンを使用された患者約8000人弱のうち約4割が『糊』の使用者だったことも厚生労働省研究班の調べで判明した。『糊』はフィブリノゲンに他の薬品を混ぜて使うが、当時、その使用法が薬事法では未承認であり、調査も大幅に遅れていた。

ところで旧ミドリ十字のフィブリン糊を使用した可能性がある医療機関として、556施設の名称を公表した[読売新聞,第47454号,2008.4.12.]。ほぼ大きな病院が網羅されているところを見ると、この『糊』の使用の特殊性が判る。やはり手術件数の多い病院が、網羅されているということのようである。

旧ミドリ十字は、適応外使用で『糊』の使用を推奨しており、あまつさえ1989年の時点で、19人の感染者を把握しながら「糊による感染者はゼロ」とする虚偽の報告を旧厚生省にしていたとされる。旧ミドリ十字を引き継いだ旧ウェルファイド社は2001年段階で『糊』の使用者を79,000人と推定していたが、調査の進捗状況ははかばかしくなかった。

今回公表される医療機関名も『糊』を使用した全てを網羅しているとは限らないとされている。

『フィブリン糊』のうち感染の恐れがあるのは、旧ミドリ十字が製造販売したフィブリノゲンを用いたもので、主に1981年-1987年頃まで使用されたものであるとされている。

この『糊』を使用されたのは、必ずしも大手術時の止血や縫合時という訳ではなく、そんな事例にも使用していたんですか、と思われる病名も見られる。『がん、脳出血、骨折、気胸、大動脈瘤、心臓手術、胃潰瘍、心筋梗塞、尿路結石除去、火傷等』、将に幅広く使用されていたもんだという病名が報告されている。

この問題に関して言えば、何時まで待っても、完全な調査は終わらないのではないか。

先ず使用されたのが、厚労相の承認を得ていない製品であり、いわゆる“適応外使用”である。その意味では使用する側も保険請求が出来ない製品だということで、若干後ろめたさを感じながら使用されていたはずである。いわゆる“院内特殊製剤”で、医師の依頼により薬剤部で無菌的に調製していたはずである。従って、意外と表に出ない使い方がされていたのではないかと思うのだが、その意味では全ての記録が残っているということではないような気がするのである。

従って1981年-1987年の約6年間に何らかの形で観血的治療(所謂血を見る治療)を受けた記憶のある人は、受診した病院に調査を依頼することが必要ではないだろうか。更に少しでも疑念があれば、検査を受けて結果を確認することが必要ではないか。検査の結果感染していないことが確認されれば、その時点で過去を引き摺ることをやめることが出来るということである。
何時までも不安を抱えていても仕方がない。

 

1)読売新聞,第47453号,2008.4.11.

[2008.4.13.]

『西洋館巡り』

土曜日, 7月 26th, 2008

 

   鬼城竜生

 

見慣れない花が、TVの画面に映し出され、オヤッということで見ていたところ横浜にある『外交官の家』の庭に咲いているというので、2月16日(土曜日)出かけることにした。横浜駅で根岸線に乗り換え、石川町駅で下車。元町口を出て石川郵便局前を過ぎて大横浜-001 丸谷坂を登ると、イタリア山庭園入り口に到着するが、入って直ぐの建物は、建物の入口に置いてある“山手西洋館マップ”によると、“7.ブラフ18番館”という建物だった。

“ブラフ18番館”は、横浜市認定歴史的建造物で、大正末期に建てられた外国人住宅で、カトリック山手教会の司祭館として平成3年(1991年)まで使用されていた物だという。平成5年(1993年)にイタリア山庭園内に移築復元され、震災復興期(大正末期?昭和初期)の外国人住宅の暮らしを再現し、当時の横浜家具を復元展示しているという。
“ブラフ18番館”に向かう道の左手に、梅の木が1本だけ見事に花開いていた。

ところで、”6.外交官の家“は、場所が横浜なので、行くまでは”外交官の家“そのものがある物だと思っていたが、辿り着いてみると現役の”外交官の家”ということではなく、これも古い洋館を移築した物だった。

洋館の案内によると、この建物はニューヨーク総領事やトルコ特命全権大使などをつとめた明治政府の外交官内田定槌氏の邸宅として、東京渋谷の南平台に明治43(1910)年に建てられたものだという。設計者はアメリカ人で立教学校の教師として来日、その後建築家として活躍したJ.M.ガーディナーで、建物は木造2階建てで塔屋がつき、天然スレート葺きの屋根、下見板張りの外壁、華やかな装飾が特徴のアメリカン・ヴィクトリアンの影響を色濃く残しているといわれている。室内は1階に食堂や大小の客間横浜-002 など重厚な部屋が、2階には寝室や書斎など生活感あふれる部屋が並んでいる。これらの部屋の家具や装飾にはアール・ヌーボー風の意匠とともに、アーツ・アンド・クラフツ(19世紀イギリスで展開された美術工芸の改革運動)のアメリカにおける影響も見られる。平成9(1997)年に横浜市は、内田定槌氏の孫にあたる宮入氏からこの館の寄贈を受け、山手イタリア山庭園に移築復元し、一般公開した。そして同年、国の重要文化財に指定されたという。室内は家具や調度類が再現され、当時の外交官の暮らしを垣間見ることが出来るようになっている。各展示室では、建物の特徴やガーディナーの作品、外交官の暮らし等についての資料が展示されている。

坂道を上り詰めた山手イタリア山庭園で、先ず最初に行き会うのは“ブラフ18番館”で、その隣の”外交官の家“の庭に咲いているのがTVで放映されていた花ということであるが、どうやら『ジャノメエリカ』という名前のようである。しかし、TVで見たときは綺麗な紫赤色の花に見えたが、実際に眺めてみると、何とも薄暗い花がパラパラ見えるだけで、来たのは失敗だったかなと一瞬思わされた。

横浜-003 『ジャノメエリカ』は、ツツジ科エリカ属の植物の一種。南アフリカ原産の常緑低木。花期は11月-翌年4月頃で桃-薄紫色の花を咲かせる。名前は花の中心の黒い部分(葯)が蛇の目模様に見えることから来ていると説明されている。

学名:Erica canaliculata。和名:ジャノメエリカ。別名:クロシベエリカ。英名:channelled heath。科名:ツツジ科、属名:エリカ属。性状:常緑低木、原産:南アフリカ。花色:桃-薄紫色(葯が黒)。特徴:高さ2mになる大型エリカ。よく分枝して、小枝の先端に3個ずつ花を付ける。株全体としては多数の花が付く。花は小さな鐘形で、桃色花であるが、黒い葯が目立。和名はこの花と葯の色に由来している。開花期は大変長く、11月頃から春まで見られるが、ほぼ周年咲きに近い。暑さにはやや弱いが乾燥には強い。

しかし、写真に撮った後の再生画面で見ると、十分派手な花色を示していたが、肉眼で見るよりは写真写りがいいという不思議な花である。

さて今回の“山手西洋館マップ”巡りは、全く順番が逆になりケツから回ることになったが、山手トンネルの上にあった喫茶店で、サンドイッチと珈琲を飲んだ。喫茶店を出て右に山手本通りを行くと、代官坂上という交差点の直ぐ先に”5.ベーリック・ホール”の前に出る。この建物も横浜市認定歴史的建造物で、イギリス人貿易商B.R.ベリック氏の邸宅としてJ.H.モーガンの設計により昭和5年(1930年)に建てられた物だという。スパニッシュスタイルを基調とし、戦前の西洋館として最大規模を誇る建物だといわれており、更に建築学的にも価値ある建物であるとされている。

横浜-004 直ぐ隣に”4.エリスマン邸“がある。”エリスマン邸“も横浜市認定歴史的建造物で、日本の建築界に大きな影響を与え『現代建築の父』と呼ばれるA.レーモンドの設計。横浜の大きな生絲貿易商絹糸貿易商シーベルヘグナー商会の支配人であったエリスマン氏の私邸として大正15年(1926年)に山手127番地に建築された。現在の元町公園には平成2年(1990年)に移築復元されたという。

”3.山手234番館“は、 同じく横浜市認定歴史的建造物で、朝香吉蔵の設計により昭和2年(1927年)頃に建築された外国人向け共同住宅で、横浜市に現存する数少ない遺構の一つであると説明されている。従来は四つの同一形式の住戸が中央の玄関ポーチを挟んで左右対称に向かい合い、上下に重なっていたとされる。

”1.山手111番館”は横浜市指定文化財で、J.H.モーガンの設計により大正15年(1926年)に、アメリカ人J.E.ラフィン氏の住宅地として現在地で建てられたとされる。スパニッシュスタイルの赤瓦と白い壁が美しい西洋館である。但し残念ながらこの建物は現在工事中で、中を覗くことは出来なかった。 横浜-005

山手西洋館マップの最後が”2. 横浜市イギリス館“で、横浜 市指定文化財である。昭和12年(1937年)に英国総領事公邸として建築された建物で、近代主義を基調としたモダンな形と伝統を加味した重厚な美しさは、当時の大英帝国の風格をよく現していると説明されている。昭和44年(1969年)に横浜市が買い取り、平成2年(1990年)横浜市指定文化財となり、平成14年(2002年)に一般公開されるようになったという。

その後港の見える丘公園を覗き、公園前交差点左に入り外国人墓地資料館を右に曲がると横浜地方気象台と書かれた表示が見えた。その前を過ぎて山手外国人墓地の塀沿いの道が続く。外人墓地の資料館を見学した後、クリーニング発祥の地の記念碑を右にみてみなとみらい線の元町・中華街駅に潜り込んだ。

総合計歩数として11,569歩を稼がせて貰った。

  (2008.3.3.)

「甘草の1日最大許容量について」

月曜日, 7月 14th, 2008

KW:薬物療法・甘草・glycyrrhiza・甘草末・甘草エキス・グリチルリチン酸・1日最大許容量・副作用

 

Q:漢方薬の併用療法がされる場合、配合される甘草の1日最大許容量はどの程度か

A:[局]甘草(glycyrrhiza)は、Glycyrrhiza  uralensis Fisher 又はGlycyrrhiza glabra Linné(Leguminosae)の根及びストロン(葡萄茎:地表面に沿って伸張する茎)で、時には周皮を除いたもの(皮去りカンゾウ)である。本品は定量するとき、換算した生薬の乾燥物に対し、グリチルリチン酸2.5%以上を含む。
[本質]生薬、鎮痛鎮痙薬(胃腸薬)、去痰薬。
[原植物]我が国ではGlycyrrhiza  uralensisを起源とするものを東北甘草と称している。また西北甘草の一部もこれを起源とする。
甘草製剤の1日最大投与量については、次の報告が見られる。

品名 1日量

甘草
[グリチルリチン酸2.5%以上]

5g/水約600mLで煎じ分3服用
甘草末 最大量1.5g

甘草エキス
[グリチルリチン酸4.5%以上]

配合剤として1日最大量0.6g。
通常1.5-6.0g 分3<医療用>

副作用

水製エキス20-45g/日等多量の服用で浮腫、高血圧。総量4gの服用で高血圧、心筋障害、水血症、36gのキャンデー2-3個/日・6-7年問摂取で高血圧、低カリウム血症、血漿レニン活性減少、偽性アルドステロン症、四肢弛緩麻痺。100-200g/日・1-4週間服用で低カリウム血症、血漿レニン活性、尿中アルドステロン排泄減少、浮腫、頭痛、嗜眠状態等の副作用に関する報告。

 

なお、甘草製剤の投与量については、『長期大量使用により、偽アルドステロン症が発現した症例』の発現に伴って、旧厚生省より各都道府県知事宛、薬務局長発出の以下の指示があるため、この指示を参照されたい。

                                                                    薬発第158号
                                                              昭和53年2月13日

各都道府県知事 殿

                                                                  厚生省薬務局長

 

              グリチルリチン酸等を含有する医薬品の取扱いについて

 

最近、グリチルリチン酸等を含有する医薬品の長期大量使用により、偽アルドステロン症が発現した症例が報告されている。
これらの情報について、中央薬事審議会の副作用調査会において検討した結果、グリチルリチン酸、その塩類、甘草又はそのエキス剤(以下「グリチルリチン酸等」という。)を含有する医薬品については、今後、下記のとおり取り扱うこととしたので、御了知のうえ、貴管下関係業者に対し周知徹底方よろしく御配慮願いたい。
なお、下記1に該当する医薬品については、速やかに当該製造(輸入販売)業者から使用上の注意事項の追加記載措置に関する報告を徴し、その措置状況の把握確認を行うこととされたい。
おって本件副作用情報の概要は、別添2のとおりであるので、参考とされたい。

      記

 

1.今後製造(輸入)するグリチルリチン酸等を含有する医薬品(経口剤、注射剤)については、別添1の使用上の注意事項を追加記載した文書を添付して販売させること。なお、1日最大配合量がグリチルリチン酸として40mg未満、甘草として1g(エキス剤については原生薬に換算して1g未満)の場合には記載する必要はない。

2.今後製造(輸入)承認を与える一般医薬品(経口剤)については、グリチルリチン酸等の1日最大量を次のとおりとしたこと。ただし、漢方生薬製剤であって、甘草湯、芍薬甘草湯等のように使用期間のごく短いものについてはこの限りでない。

成分名 1日最大配合量
グリチルリチン酸 200mg
グリチルリチン酸の塩類 グリチルリチン酸として200mg
甘草 5g
甘草のエキス類 原生薬に換算して5g

注)上記成分を2種以上配合する場合には、当該成分ごとに配合する分量をそれぞれの1日最大量で除して得た数値の和が1を越えないこと。

 

3.既に製造(輸入)承認及び許可を受けているグリチルリチン酸等を含有する一般用医薬品のうち、グリチルリチン酸等の配合が上記2の基準に適合しない品目については、遅くとも1年以内に、処方若しくは用法用量の変更を行わせるか又は当該品目の承認整理届及び製造(輸入)品目の廃止届を提出させること。

(別添1)

              グリチルリチン酸等を含有する医薬品の使用上の注意事項

 

1.1日最大配合量がグリチルリチン酸として100mg以上又は甘草として2.5g以上(エキス剤については原生薬に換算して2.5g以上)の医療用医薬品の使用上の注意に追加記載する事項

(1)次の患者には投与しないこと

    1)アルドステロン症の患者
    2)ミオパチーのある患者
    3)低カリウム血症のある患者

(2)副作用

    1)電解質代謝:低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定など)を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止すること。
    2)神経・筋肉:低カリウム血症の結果としてミオパチーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣れん・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止すること。
    3)相互作用:フロセミド、エタクリン酸又はチアジド系利尿剤との併用により血清カリウム値の低下があらわれやすくなるので、注意すること。

2.1日最大配合量がグリチルリチン酸として40mg以上100mg未満又は甘草として1g以上2.5g未満(エキス剤については原生薬に換算して1g以上2.5g未満)の医療用医薬品の使用上の注意に追加記載する事項

副作用

電解質代謝:長期連用により低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止すること。
また、低カリウム血症の結果としてミオパチーがあらわれるおそれがある。

3.1日最大配合量がグリチルリチン酸として40mg以上又は甘草として1g以上(エキス剤については原生薬に換算して1g以上)の一般用医薬品の使用上の注意に追加記載する事項

(1)次の人は服用前に医師、薬剤師に相談すること。

    1)血圧の高い人又は高齢者
    2)心臓又は腎臓に障害のある人
    3)むくみのある人
    4)医師の治療を受けている人

(2)服用中又は服用後は次のことに注意すること。

    1)本剤を服用することにより、尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる、血圧が高くなる、頭痛等の症状があらわれた場合には服用を中止し、医師、薬剤師に相談すること。
    2)数日間服用しても症状の改善が見られない場合は服用を中止し、医師、薬剤師に相談すること。
        (漢方生薬製剤以外の製剤に追加記載すること。)
    3)長期連用しないこと。
        (漢方生薬製剤以外の製剤に追加記載すること。)
    3)’短期間の服用にとどめ、連用は避けること。
          (短期服用に限られる漢方生薬製剤に記載すること。)
    3)’’長期連用する場合には、医師、薬剤師に相談すること。
         ( 3)’以外の漢方生薬製剤に追加記載すること。)

(別添2)

                               副作用情報の概要

 

グリチルリチン酸、その塩類、甘草又はそのエキス剤は抗アレルギー剤、肝疾患用剤、 胃腸薬、鎮咳去痰薬等に配合されており、甘草は漢方生薬の1成分としても広く用いられている。また、これらの成分は、矯味剤としても用いられており、この場合は比較的少量が添加されている。
グリチルリチン酸、甘草等は、大量を使用するとナトリウム貯留、カリウム排泄促進が起こり、浮腫、高血圧、四肢麻痺、低カリウム血症等の症状があらわれ、これらは偽アルドステロン症1)として報告されている。
最近、我が国でグリチルリチン酸の長期(1カ月以上)使用による偽アルドステロン症の発現が報告されている2-7)。これらの症例では大部分が1日500mg以上の投与を受けているが、この半量程度で発現したとしている例もある6)。
甘草についても、1日5-10g(煎剤)を1年以上使用した例で偽アルドステロン症8)が、また、芍薬甘草湯及びその類方(1日量中に甘草9gを含む煎剤)で一時的な浮腫、シビレの発現が報告されている9)。
これらのグリチルリチン酸等によると思われる偽アルドステロン症の症例は、いずれもグリチルリチン酸等の投与中止後緩解しているが、グリチルリチン酸等を含有する医薬品の使用に当たっては、これらの副作用症状に注意する必要がある。

 

(参考文献)

1)Conn,J.,Rovner.,D.R.and Cohen,E.L.:Licoric-induced pseudoaldosteronism,JAMA,205:492-496,1968
2)小西孝之助:グリチルリチン酸による偽アルドステロン症の1例、第265回内科学会関東地方会、1976.日本内科学会雑誌,66(5):576,1977
3)花崎信夫ら:グリチルリチン大量投与による偽アルドステロン症について;日本臨床,34(2):390-394,1976
4)金敬洙ら:Glycyrrhizin投与による偽アルドステロン症の1例-レニン・アルドステロン系の変動を中心に;内科36(5):880-884,1977 5)竹越忠美ら:グリチルリチン大量投与によるPseudoaldosteronismの1例;第91回内科学会北陸地方会、1976.日本内科学会雑誌,66(5):581,1977
6)小西孝之助:グリチルリチンによる偽性アルドステロン症の研究;慶応医学,54(5):491-502,1977
7)宅間永至ら:著名な低カリウム性ミオパチーを認めたGlycyrrhizin製剤による偽性アルドステロン症の1例;第61回日本神経学会、関東地方会,1997
8)杉田 実ら:甘草によるPseudoaldosteronismの1例;日本内科学会雑誌,,63(11):1312-1317,1974
9)矢数道明:芍薬甘草湯及びその類方の臨床的研究;日本東洋医学会誌,15(1):6-10,1964

 

1)第一四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001

 

[035.1.GLY:2004.6.22.古泉秀夫・2008.7.14.改訂]

「紫陽花葉(Japanese hydrangea)の毒性」

日曜日, 7月 13th, 2008
対象物 紫陽花・アジサイ。額紫陽花・ガクアジサイ。英名:Japanese hydrangea。漢方名:八仙花(ハチセンカ)[植物名実図考]。異名:粉団花、紫陽花(シヨウカ)[現代実用中薬]
成分 本品には抗マラリアalkaloidが含まれている。花はルチンを含み、乾燥した花に含まれる量は0.36%を超える。根とその他の部分にはダフネチン-メチルエーテルとウンベリフェロンが含まれている。根には又ヒドランゲノール、ヒドランゲア酸とル ヌラル酸が含まれ、葉にはスキンミン等も含まれる。八仙花の 変種である八仙繍球(H.macrophylla var.hortensia]の根、樹皮、葉、花の中にはウンベリフェロン-ジグルコシド(ネオヒドランギン)も含まれる。その他、アジサイ属植物の一種からは抗マラリアalkaloidとしてのフェブリフギンが発見されている。
花の含有成分としてアントシアニン(anthocyanin)、酸性で赤、アルカリ性で青、中性では紫色を呈する配糖体。
アジサイには青酸配糖体が含まれている。1920年に米国で馬及び牛のアジサイ中毒の報告がある。
アジサイには青酸配糖体が含まれている。1920年に米国で馬及び牛のアジサイ中毒の報告がある[Bruce,E.A.
1920.Hydrangea poisoning.J.Am.Vet.Med.Assoc.58:
313-315.]。
植物中に含まれる青酸(HCN)を発生する天然有機化合物は、青酸化合物(cyanogen)と総称されている。その分布は広くバラ科、イネ科、マメ科、キク科、シダ類など、約100科2000種類の植物に存在しているとされる。化学構造的には、青酸配糖体(cyanogenic glycoside)と青酸脂質(cyanogenic lipid)とに分類される。植物成分としての青酸配糖体として、梅・杏・桃等の果実仁に含まれるアミグダリン(amygdalin)が知られているが、アジサイ中の青酸配糖体もamygdalinであるとする報告が見られる。
*紫陽花の含有毒素について、青酸配糖体とする意見を否定する見解があり、現在、青酸配糖体とした根拠になる原著論文の検索が行われているとする報告が見られる。

青酸配糖体は、熱に安定なので、加熱処理だけでは除紫陽花-01 去できない。筍は青酸配糖体が最も高濃度に含むものの一つであるが、この青酸配糖体タキシフィリン(taxifilin)は例外的に熱に弱く、35-40分の煮沸で分解する。筍はよく茹でること。茹でる際にはシアン化水素が逃げやすいように、鍋の蓋を取っておくこと。茹でた後に水で曝すことが重要である。
青酸配糖体は、熱に安定なので、加熱処理だけでは除去できない。筍は青酸配糖体が最も高濃度に含むものの一つであるが、この青酸配糖体タキシフィリン(taxifilin)は例外的に熱に弱く、35-40分の煮沸で分解する。筍はよく茹でること。茹でる際にはシアン化水素が逃げやすいように、鍋の蓋を取っておくこと。茹でた後に水で曝すことが重要である。
一般的性状 紫陽花:ゆきのした科アジサイ属。学名:Hydrangea macrophylla Seringe var.otaksa Makino又はHydrangea macrophylla(Thunb.)Ser.。「アジ」は集まる。「サイ」は真と藍で、青い花が集まって咲く様子からいう。額紫陽花を母種に、日本で生まれた園芸品種。庭に栽植する落葉低木。茎は束生し高さ1.5m位、茎や葉は額紫陽花と同じ。花は6-7月、殆ど装飾花。額片4-5、大形で花弁状。花弁4-5は極小。雄しべ10、雌しべ退化。花柱2-3。結実しない。
額紫陽花:ゆきのした科アジサイ属。Hydrangea macrophylla Seringe。周囲に装飾花の咲いた様子を額に例えたもの。本州関東南部以西、伊豆諸島など暖地の海岸に近い山地に生え、広く庭に栽植する落葉低木。
基原:ユキノシタ科の植物、繍球(シュウキュウ和名:アジサイ)の根、葉、花。
薬効:1.[現代実用中草薬]抗マラリア薬で、効能は常山と同様である。又心臓病にも用いられる。2.[四川常用中草薬]マラリア、心熱驚悸(五臓の熱により心悸高進するもの)、煩躁(胸中の熱と不安を煩といい、手足をばたつかせることを躁という)を治す。
植物に含まれる青酸配糖体は、青酸と糖が結合した物質で、加水分解されると青酸(シアン化水素)糖に分解する。植物は青酸配糖体と青酸配糖体加水分解酵素を別々の細胞に含んでいるが、咀嚼や胃内での消化によって両者が接触すると青酸配糖体が加水分解される。また、青酸配糖体は、腸内細菌のβ-グルコシダーゼでも加水分解される。
毒性 鶏にエチルアルコールでの抽出液13g/kg以上を皮下注射すると死亡する。イヌに0.2g/kgを経口投与すると嘔吐を惹起する。1.5g/kgを静脈あるいは皮下注射すると嘔吐、血便があり、死亡する。死亡したイヌを病理解剖したところ内臓の著しい充血、血管内皮細胞の増殖、消化管と肺に出血が見られた。
青酸配糖体から遊離した青酸は、ミトコンドリアの呼吸酵素チトクローム酸化酵素を阻害し、ATPを枯渇させることにより毒性を示す。最も障害を受けやすいのは、中枢神経系である。
米国では、杏などの種子の仁から取った青酸配糖体amygdalinが“vitaminB17”として癌に効くとして発売され、主に静注で使用されたが、内服すると腸内でβ-glucosidaseによりシアン(cyan)が遊離し、シアン中毒が起こる。シアン化水素のヒト最小致死量は50mgである。シアン化水素ガスの毒性は更に強く、150-200ppmの低レベルでも危険であり、270ppmが即時致死量。90-110ppmで30分の吸入が致死的と考えられている。
症状 青酸(シアン)は、3価の鉄イオン(Fe3+)との親和性が高いため、細胞内の各種酵素と結合し、細胞の酸素利用を阻害する。青酸に曝露すると皮膚、粘膜、気道、消化管と全ての経路から吸収される。特に皮膚では擦過傷などがあると、効率よく吸収される。
青酸中毒は、組織における組織における酸素利用の障害により生じる。このため酸素に感受性の高い臓器から障害を受け、臨床症状は中枢神経系と心血管系に早期から出現する。
初期症状:頭痛、眩暈、不安、興奮、錯乱、中性神経性頻呼吸、呼吸困難、徐脈、高血圧、発汗である。
進行すると意識障害、痙攣、頻脈、血圧低下、呼吸回数の低下、呼吸停止、不整脈、心源性又は非心源性の肺水腫が出現する。
青酸服用後には腹痛、悪心・嘔吐、出血性胃炎などの消化器症状が見られる。心電図上では非特異的な所見を示し、心筋障害、房室伝導障害が見られることがある。
中毒症状には特異的な症状は見られず、細胞呼吸の障害に起因する頭痛、眩暈、悪心、嘔吐、痙攣、意識障害、ショック、呼吸困難などが出現する。臨床検査では組織において酸素が利用できないため、静脈血中の酸素飽和度が高値を示す他、アニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシス、乳酸高値が見られる。
処置 青酸は、肝、腎などに存在するチオ硫酸と反応して毒性の低いチオシアネートとなり、尿中に排泄される。
治療は100%酸素投与と、亜硝酸塩投与により産生したメトヘモグロビンをシアンと結合させ、更にシアンと硫黄を結合させ、腎臓から排泄させるために、チオ硫酸ナトリウム投与する薬物療法を行う。
青酸中毒における治療の原則は、気道確保、静脈路確保、100%酸素投与とともに特異的解毒薬を投与することである。青酸中毒により心肺停止状態となっても適切な心肺蘇生と早期に特異的解毒剤を投与すると改善することもある。
急性中毒の標準的治療である消化管除染は、経口摂取時には実施すべきである。胃洗浄は、特に服用後早期には極力行うべきである。活性炭の投与については、1gの活性炭が35mgのシアンを吸着するという低吸着性のため効果が少ないとされているが、活性炭自体の毒性は低いので、少しでも吸着が期待できる限り投与すべきである。
青酸中毒の対症療法として重要なのは、アシドーシスの補正である。アシドーシスに関しては十分な換気と、重炭酸ナトリウムにより治療する。

特異的解毒剤の投与
(1)亜硝酸アミルの吸入:静脈路が確保される前の来院直後に、鼻腔の下でガーゼに乗せたアンプルを砕き吸入させる。1分間につき30秒間吸入させる。
(2)3%-亜硝酸ナトリウム静脈内投与:300mg/10mL(小児では6mg/kg)を5分以上かけて静脈内投与する。30分以内に症状改善がない場合半量ずつ追加投与する(国内未発売。院内製剤:注射用蒸留水20mLに亜硝酸ナトリウム0.6g溶解して製する。)。
(3)チオ硫酸ナトリウム静脈内投与:10%-チオ硫酸ナトリウム(デトキソール)12.5g(125mL)を静脈内投与する。
(4)シアノキット注射用セット:ヒドロキソコバラミン2.5g/100mL(生食)。通常、成人にはhydroxocobaraminとして5gを日本薬局方生理食塩液200mLに溶解し、15分間以上かけて点滴静注する。小児には70mg/kg(但し5gを超えない)。症状により1回追加投与できる。追加投与する際には15分-2時間かけて点滴静注する。総投与量10g(成人)、140mg(小児。但し、10gを超えない)。

事例 アジサイの葉で客8人が食中毒 つくば市の飲食店

茨城県つくば市の飲食店で、料理に添えられたアジサイの葉を食べた客8人が嘔吐や眩暈などの食中毒症状を起こしていたことが22日、県の調べで解った。アジサイの葉には、胃液などと反応して青酸を生成する物質が含まれている。30歳代と40歳代の女性2人が医療機関で受診した。いずれも快方に向かっているという。店は有毒性を認識しておらず、県の調査に対し、「季節感を出すために添えた」と話しているという。
発表によると、13日夜、つくば市の創作料理店「遊食伊太利庵(ゆうしょくいたりあん)藤右エ門 栄」で、19人のグループが会食し、会食の約30分後に8人が眩暈などを訴えた。
つくば保健所は22日、同店を営業禁止処分にした[読売新聞,第47526号,2008.6.23.]。

備考 植物成分としての青酸配糖体は、昆虫による食害を防衛するためだといわれている。青酸配糖体を含む細胞と青酸を分離する酵素を持つ細胞があり、その両者の細胞が疵付くことで青酸が毒性を発揮するということになっている。しかし、実際には虫食いだらけの紫陽花の葉を見ることは多い。だとすると紫陽花の青酸は大して毒性は強くないということになるのかもしれないが、青酸配糖体がamygdalinだとすると、それほど毒性が弱いとは考えられない。あるいは青酸に強い昆虫がいるのかもしれない。

それにしても“褄”として料理のあしらいに付けられた紫陽花の葉を何にと間違えて口に入れてしまったのか。甚だ不思議である。最も料理とともに皿に乗せられていれば、まさか毒になるものが乗せられるとは思わないから口に入れて仕舞ったのかもしれないが、相当、苦かったのではないかと思われる。日常的に経験のない味のものを口に入れた時には、吐き出すという選択をすることが必要なのではないか。最近食に関するプロの能力が低下しているように見える。その意味では皿に乗せられているからといって安心は出来ないということである。

文献 1)牧野富太郎:原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版I;北隆館,2003
2)清水矩宏・他編著:牧草・毒草・雑草図鑑;社団法人畜産技術協会,2005
3)海老原昭夫:知っておきたい身近な薬草と毒草;薬事日報社,2003
4)田中 治・他編:天然物化学 改訂第6版;南江堂,2002
5)海老?豊・監訳:医薬品天然物化学 原書第2版;南江堂,2004
6)内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療-改訂第2版;南江堂,2001
7)日本中毒学会・編:急性中毒標準診療ガイド;じほう,2008
8)シアノキット注射用セット添付文書,2008.2.
調査者 古泉秀夫 分類 63.099.HYD 記入日 2008.7.20.改訂

「半夏厚朴湯の副作用」

金曜日, 7月 11th, 2008

KW:副作用・漢方薬・半夏厚朴湯・半夏厚朴湯エキス顆粒・半夏・茯苓・厚朴・蘇葉・生姜・副作用・掻痒感・過敏症

 

Q:半夏厚朴湯を服用すると痒みがでるが、その様な副作用は報告されているか

 

A:ツムラ半夏厚朴湯エキス顆粒(医療用)の組成は次の通りである。

本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス2.5gを含有する。
日局半夏(ハンゲ) 6.0g
日局茯苓(ブクリョウ) 5.0g
日局厚朴(コウボク) 3.0g
日局蘇葉(ソヨウ) 2.0g
日局生姜(ショウキョウ) 1.0g

その他、添加物として、次の成分が配合されている。日局ステアリン酸マグネシウム、日局乳糖水和物、ショ糖脂肪酸エステル

本品の適応症は、『気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症:不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、神経性食道狭窄症、不眠症』とされている。

なお、本剤の添付文書には副作用に関する記載は何等されておらず、現在までのところ配合製剤としての副作用は規制当局に報告されていないと考えられる。
個別の生薬について調査した結果は、下記の通りである。

半夏(pinelliae tuber):サトイモ科カラスビシャクのコルク層を除いた塊茎である。健胃消化薬、鎮吐薬、鎮咳去痰薬と見なされる処方及びその他の比較的高頻度で配合。副作用:記載無。

茯苓(Poria cocos):サルノコシカケ科のマツホドの菌株で、通例、外層を殆ど除いたものである。利尿薬、尿路疾患用薬、精神神経用薬、鎮暈薬、鎮痛薬、健胃消化薬、鎮吐薬、保健強壮薬と見なされる処方及びその他の処方に高頻度で配合される。副作用:記載無。

厚朴(Magnolia cortex):朴木の樹皮である。健胃消化薬、寫下薬、鎮咳去痰薬と見なされる処方及びその他の処方に配合されている。また、芳香健胃薬として、あるいは腹痛などにいずれも配合剤として用いることがある。副作用:記載無。

蘇葉(Perilae folium):紫蘇又は縮緬紫蘇の葉及び枝先である。鎮咳去痰薬、かぜ薬と見なされる処方及びその他の処方に少数例配合されている。また芳香健胃薬として胃腸薬に配合することがある。副作用:記載無。

生姜(Ginger root):ショウガの根茎である。かぜ薬、健胃消化薬、鎮吐薬、鎮痛薬と見なされる処方及びその他の処方に高頻度に配合されている。また粉末を芳香辛味健胃薬として配合剤の原料とする。副作用:記載無。

調査の結果、『半夏厚朴湯エキス顆粒(医療用)』の副作用を記録した資料は入手できなかったが、記載がないことと副作用がないことは同意語と成らないので、副作用と考えられる何等かの症状が発現した場合、処方医に相談すること。

 

1)ツムラ半夏厚朴湯エキス顆粒(医療用)添付文書,2007年5月改訂
2)第十五改正日本薬局方解説書;廣川書店,2006
3)井上博之・監訳:カラーグラフィック西洋生薬;廣川書店, 1999
4)高木敬次郎・他編:和漢薬物学;南山堂,1983
5)上海科学技術出版社・小学館・編:中薬大辞典[4];小学館,1998

  [065.PIN:2008.1.28.古泉秀夫]

「ノルバスク錠・ディオバン錠の副作用」

土曜日, 7月 5th, 2008

KW:副作用・ノルバスク錠・ディオバン錠・amlodipine besilate・valsartan・背痛・腰背部痛

 

Q:長期に亘り上記の2剤を服用しているが、最近、背中等の筋肉痛が起こり始めた。これは薬の副作用か。

A:ノルバスク錠・ディオバン錠の報告されている副作用は、下記の通りである。

[分類]一般名・商品名 承認適応症 関連が推定される副作用
[217]amlodipine besilate
ノルバスク錠
(ファイザー)
高血圧症、狭心症 筋・骨格:関節痛、筋肉痛、背痛、筋痙攣、筋緊張亢進。
[214]valsartan
ディオバン錠
(ノバルティス)
高血圧 その他:筋肉痛、関節痛、倦怠感、浮腫、CK上昇、胸痛、疲労感、しびれ、味覚異常、ほてり、血糖値上昇、血清コレステロール上昇、血清総蛋白減少、腰背部痛、脱力感。

 

服用中の両剤ともに、背痛あるいは腰背部痛の副作用が報告されている。添付文書上、これらの副作用発現の背景については何等書かれていないため、服用開始後何日程度で発現したのか、背痛あるいは腰背部痛の痛みの程度あるいは発現の因果関係等の詳細は不明であるが、いずれにしろ副作用と考えられる症状が発現している以上、処方医に相談し、処方変更等の対応を求めることが必要であると判断する。

 

1)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル 2008;医学書院,2008

[065.AML:2008.6.29.古泉秀夫]

「アリシンについて」

土曜日, 7月 5th, 2008

KW:薬名検索・アリシン・allicin・アリイン・aliin・ニンニク・チアミン・thiamine・vitaminB・ビタミンB

 

Q:アリシンの効能について

 

A:アリシン(allicin)は鎖状含硫化合物の一つで、植物中の抗菌成分としてニンニク[Allium sativum (Liliaceae)]中に含まれている。更にニンニクの鱗茎中にはallicinの前駆物質としてのアリイン(aliin)が含まれているが、aliinは無臭無刺激性の針状結晶である。

ニンニク中のaliinを含む細胞が破壊されると、共存する酵素allinaseによって分解され、ニンニク特有の刺激強臭の油状物質であるallicinを生ずる。

ニンニク中の含硫アミノ酸アリイン(aliin)はニンニクを擂り潰すと共存する酵素allinaseの作用でニンニク特有の臭成分allicinを生成するが、allicinはヒト消化管内のチアミン(thiamine:vitaminB1)と容易に反応し、アリチアミン(allithiamine)を形成する。allithiamineはvitaminB1分解酵素(aneurinase:thiaminase)の作用を受けず、優れた腸管吸収と高い血中濃度を示し、生体内でthiamineに復元して機能するが、服用後ニンニク臭が出る欠点があった。この臭いの発生のない類似化合物が合成され、活性vitaminB1(フルスルチアミン:fursultiamine)として使用されている。

allithiamineに含まれるallicinはにニンニクの強臭の原因物質であるため、この臭気の少ない物質が求められ、allithiamine類似のプロスルチアミン(prosultiamine)が合成された[アリナミン注射液10mg]。しかし、prosultiamineにも注射時にニンニク臭が見られるため、fursultiamineが新たに合成された等の報告がされている。

ニンニク中の成分であるアリシン(allicin)は、チアミン(thiamine)と反応してアリチアミン(allithiamine)となる。allithiamineの血中濃度は長時間維持されるため、vitaminB1の働きが通常より長く持続するという効果が期待されている。

医薬品としてのvitaminB1の適応は次の通りである。

○ビタミンB1欠乏症の予防及び治療
○ビタミンB1の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、甲状腺機能亢進症、妊産婦、授乳婦、はげしい肉体労働時等)
○ウェルニッケ脳症
○脚気衝心
○下記疾患のうちビタミンB1の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される場合
    ●神経痛
    ●筋肉痛、関節痛
    ●末梢神経炎、末梢神経麻痺
    ●心筋代謝障害
    ●便秘等の胃腸運動機能障害
    ●術後腸管麻痺
ビタミンB1欠乏症の予防及び治療、ビタミンB1の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給、ウェルニッケ脳症、脚気衝心以外の効能・効果に対して、効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでないとする注意が添付文書中に記載されている。

1)田中 治・他編:天然物化学 改訂第6版;南江堂,2002
2)アリナミン注射液10mg添付文書,2007.8.改訂
3)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル 2008;医学書院,2008
4)林 輝明・他監修:健康・栄養食品事典-機能性食品・特定保健用食品-;東洋医学舎,2008改訂新版

 

[011.1.ALL:2008.6.29.古泉秀夫]