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ビタミンの国際単位について

月曜日, 8月 13th, 2007

KW:物理化学的性状・ビタミン・ビタミンA・ビタミンD・ビタミンE・プロビタミンA・国際単位・International unit・IU

Q:ビタミンのI.U.単位をmg単位に換算する計算方法について

A:ビタミンの生物学的効果を単位として現すときに、国際単位が用いられる。医薬品の生物学的検定法に用いる国際的基準薬品を国際標準品といい、その一定重量のもつ力価又は純度を1国際単位(International unit:I.U.)という。 現在、ビタミンの多くは純物質が解明され、化学的な定量が可能になったため、国際単位が使用されるビタミンはA、D、Eの3種のみである。

ビタミンA 1I.U. 純全トランスビタミ ンA1アセテート0.000344mg(レチノールの 0.000300mgに相当)
プロビタミンA 1I.U. 0.0006mgの 純全トラ ンス-β-カロチンに相当。
ビタミンD 1I.U. 0.025μgのD3 に相当。
ビタミンE 1I.U. dl-α-トコフェ ロール 1mg相当。

[014.4.INT:2004.1.13.古泉秀夫]


  1. 美濃 真:ビタミンE製剤とトコフェロールの生物力価-質疑応答第11集;日本医事新報,1984
  2. 幸保文治:ビタミンのIU国際単位;日本医事新報,No.3125(1984)
  3. 糸川嘉則:最新ビタミン学;フットワーク出版,1998

ビタミンK含有食品の一覧表について

月曜日, 8月 13th, 2007

Q:飲食物中に含有されるビタミンKの一覧はあるか

A:ビタミンKについては、1日の所要量が約100μg、腸内細菌の合成したKを吸収して利用する。腸内細菌のない新生児では、欠乏症を起こすことがあるが、成人では欠乏症は殆ど見られないとされている。また、離乳期以後腸内細菌により1?1.5mg (1000μg?1500μg)供給。1歳まで5?10μgとする報告もされている。

従って、「四訂食品成分表」では、食品中のビタミンK量は測定されていなかったため、それぞれ個人的に測定した数値が使用されていた。しかし、「五訂食品成分表」ではビタミンKについても測定値が収載されたので、その数値を用いて以下に一表を作成する。

なお、「五訂食品成分表」では、ビタミンKについて、次の説明がされている。

「食品に含まれるビタミンKはK1とK2であり、その効力は同等である。主としてK1は緑色の野菜(植物の葉緑体で産生。煙草、緑茶に多い。)に含まれ、K2は微生物により作られるので、発酵食品に含まれている。

ビタミンKは、血液凝固に必要な蛋白性の凝固因子や骨の石灰化調節因子となる蛋白質の肝臓における合成に関与している。欠乏症は新生児・乳児のビタミンK欠乏性頭蓋内出血や新生児メレナ(タール様の黒色便を伴う)がある。過剰症としては、新生児・乳児の溶血性貧血、過ビリルビン血症、大人の溶血性貧血がある。

測定は資料からビタミンKを抽出後、定量妨害成分を除き、高速クロマトグラフ法を用いた。成分値はK1とK2の一種であるメナキノン-4の総和で示した。」

1500以上-3000μg 抹茶葉(2900=2.9mg)
1000以上-1500μ 煎茶葉(1400=1.4mg)、挽き割り納豆(1300=1.3mg)
900以上-1000μg ワカメ-乾-素干し(970=0.97mg)
800以上-900μg 糸引納豆(870=0.87mg)
700以上-800μg パセリ葉(730=0.73mg)
600以上-700μg シソ葉(650=0.65mg)、もろへいや茎葉-生(640=0.64mg)
500以上-600μg アシタバ-生(590=0.59mg)
400以上-500μg 小松菜葉-茹で(450=0.45mg)、春菊葉-茹で(440=0.44mg)
350以上-400μg 赤ひじき-生(360=0.36mg)、芽たで芽生え(360=0.36mg)
300以上-350μg

(0.30以上-0.35mg)

干しひじき(330)、トウミョウ茎葉(320)、行者ニンニク葉・葉鞘-生(320)、カブ葉-生(310)
250以上-300μg

(0.25以上-0.30mg)

ほうれん草葉-茹で(300)、芽キャベツ結球葉-生(300)、小松菜葉-生(290)、つまみな葉(270)、西洋種なばな茎葉(270)、西洋種なばな茎葉(260)、紅茶(260)
200以上-250μg

(0.20以上-0.25mg)

春菊葉-生(250)、ニラ葉-生(250)、大根葉-生(240)、なが昆布-素干し(240)、ブロッコリー花蕾-生(230)、ほうれん草葉-生 (230)、タアサイ葉-茹で(230)、なばな花蕾-生(220)、葉だいこん葉(220)、野沢菜葉-塩漬(220)、タアサイ葉-生(220)
150以上-200μg

(0.15以上-0.20mg)

大豆油(200)、ひろしまな葉-塩漬(200)、カイワレ大根芽生え(200)、アサツキ-生(190)、パクチョイ葉-生(190)、カラシナ茎葉- 生(170)、ブロッコリー花蕾-茹で(170)、ワカメ湯通し塩蔵-塩抜き(170)、調合油(170)、葉にんじん葉(160)、サニーレタス葉 (160)、リーフレタス葉(160)、おごのり-生(160)
100以上-150μg

(0.10以上-0.15mg)

マヨネーズ卵黄型(140)、ワカメ-生(140)、葉ネギ(140)、黄ニラ(130)、三つ葉-生(130)、ワケギ葉-生(130)、マヨネーズ全卵型(130)、大豆モヤシ-生(120)、チンゲンサイ葉-生(120)、エンダイブ葉(120)、こごみ若芽-生(120)、とんぶり種子-茹で (120)、こねぎ茎葉(120)、京菜葉-生(110)、菜種油(110)
50以上-100μg

(0.05以上-0.10mg)

花ニラ花茎(100)、チシャ-サラダ菜(100)、オクラ果実-生(90)、真昆布-素干し(90)、カイワレ大根(80)、キャベツ結球葉-生 (80)、グリンボール結球葉(80)、胡瓜果実-糠味噌付(75)、ワカメ-乾-灰干し(70)、玉チシャ[レタス](70)、ザーサイ-漬物 (70)、莢隠元-生(60)、しかくまめ-若莢-生(65)、豆腐[炭酸水素ナトリウム水処理](55)、シシトウガラシ果実-生(55)、茎にんにく花茎-生(55)、モズク-生塩抜き(55)
10以上-50μg

(0.01以上-0.05mg)

莢豌豆-生(50)、莢豌豆-生(50)、胡瓜果実-生(50)、若鶏-心臓(50)、フレンチドレッシング乳化型(50)、茎にんにく花茎-茹で (50)、ニンニクの芽(49)、枝豆未熟豆-生(43)、オリーブ油(42)、枝豆未熟豆-茹で(41)、グリーンアスパラガス-生(40)、ニガウリ果実-生(40)、西洋カボチャ-生(40)、白菜結球葉-生(40)、西洋カボチャ-水煮(39)、フライビーンズ-種皮付(38)、きな粉(37)、米糠油(36)、ベイなす果実-あげ(36)、牛第四胃-茹で(35)、ズッキーニ果実-生(35)、くびれづた-生(35)、大豆-米国産・中国産-乾 (34)、フレンチドレッシング分離型(34)、卵黄-生(31)、醗酵バター(30)、スナップ豌豆若莢(33)、わらび-茹で(29)、レッドキャベツ結球葉(29)、黄ニラ葉(29)、ふじまめ若莢-生(29)、綿実油(29)、ピスタチオ-炒り味付(29)、若鶏-筋胃[砂肝](28)、カシューナッツ炒り味付(28)、たけあずき(28)、グリンピース-生・茹で(27)、松の実-炒り(27)、牛脂[ヘット](26)、若鶏-もも・皮なし (26)、豚小腸-茹で(26)、豌豆-フライ・味付(24)、無塩バター(24)、ひよこ豆-フライ・味付(23)、鮑-生-内臓除(23)、煎茶-浸出液(21)、合鴨肉・皮付き-生(21)、豚-胃腸(21)、空豆未熟豆-生(21)、根深ネギ(21)、空豆未熟豆-茹で(20)、ピーマン果実-生 (20)、コーヒー-炒り豆(20)、マーガリンソフトタイプ(20)、若鶏-腸(19)、豆味噌(19)、豆腐よう(18)、大豆-国産全粒-乾 (18)、豚-ロース(18)、カリフラワー花蕾-生(17)、バター[家庭用有塩](17)、牛第二胃-茹で(16)、スモークタン(16)、緑豆全粒 -乾(16)、むかでのり塩蔵-塩抜き(16)、ウズラ全卵-生(15)、若鶏-肝臓(14)、豚胃-茹で(14)、クリーム高脂肪(14)、レンズ豆 (14)、トレビス葉(13)、豚軟骨-茹で(13)、空豆全粒-乾(13)、なす果実-生(13)、生ハム長期熟成(12)、紅茶-浸出液(12)、鶏卵全卵-生(12)、豆板醤(12)、米淡色辛味噌・赤色辛味噌(11)、向日葵油(11)、テンペ(11)
1以上-10μg

(0.001以上-0.01mg)

ぶどう豆-煮豆(10)、サフラワー油(10)、麦味噌(9)、ひよこ豆全粒-乾(9)、セロリ葉柄(9)、ブラックマッペモヤシ-生(9)、ベイなす果実-生(9)、牛小腸-生(9)、ビーフジャーキー(9)、ラム(9)、牛舌(8)、豚腎臓(8)、全粉乳(8)、紅花隠元-乾(8)、隠元豆全粒-乾 (8)、小豆-乾(8)、豌豆豆[鶯豆]-煮豆(8)、チコリー若芽(8)、みょうがたけ茎-生(8)、米甘味噌(8)、ミニトマト果実(7)、赤ピーマン果実-生(7)、蕎麦-全層粉(7)、豚脂[精製ラード](7)、乳用肥育雄牛-肩ロース(7)、若鶏-むね・皮なし(7)、くるみ-炒り(7)、大豆 -国産全粒-茹で(7)、生ハム促成(7)、マトン(6)、フォアグラ-茹で(6)、小豆こし餡(6)、お多福豆-煮豆(6)、エシャロット鱗茎(6)、ライ豆全粒-乾(6)、牛第一胃-茹で(6)、牛腎臓(6)、牛心臓(5)、豆腐木綿(5)、フキ葉柄-生(5)、ゴマ油(5)、玉蜀黍油(5)、アカダミアナッツ-炒り味付(5)、小豆晒餡(5)、鯖-生(5)、牛第三胃(5)、豚小腸-茹で(5)、豚子宮-生(5)、コーヒーホワイトナー-液状乳脂肪 (5)、牛小腸(4)、鹿肉-生(4)、豆腐絹ごし(4)、にんじん根-生・水煮(4)、パーム油(4)、落下精油(4)、銀杏-生(4)、牛第三胃-生 (4)、茹で小豆缶詰(4)、トマト果実(4)、生ソーセージ(4)、烏骨鶏全卵-生(4)、サザエ-生-内臓除(3)、小豆-茹で(3)、富貴豆-煮豆 (3)、黄ピーマン果実-生(3)、ゆし豆腐(3)、紅花隠元-茹で(3)、青海苔-素干し(3)、猪豚肉・脂身付き-生(3)、ロースハム(3)、隠元豆全粒-茹で(3)、山ウド茎(3)、たけのこ-生・茹で(2)、トマトジュース果汁100%(2)、らっきょう-甘酢付(2)、鶏むね(2)、乳用肥育雄牛もも、脂身なし(2)、乳用肥育雄牛ヒレ(2)、馬肉(2)、豚ロース-脂身付(2)、豚ヒレ-大型種(2)、まこも茎-生(2)、胡麻-乾(2)、プロセスチーズ(2)、牛肝臓(1)、牛第一胃(1)、豚ロース-脂身なし・もも、脂身付・もも、脂身なし-大型種(1)、豚心臓(1)、豚足(1)、ベーコン(1)、スモークレバー(1)、ウインナーソーセージ(1)、カマンベールチーズ(1)、卵白-生(1)、玉蜀黍-フライ・味付(1)、玉蜀黍- 生(1)、ヤングコーン幼雌穂(1)、剥き胡麻(1)、干瓢-乾(1)、コーヒーホワイトナー-液状植物性脂肪(1)、かき油(1)、普通牛乳(1)、人乳(1)

[1999.10.13.古泉秀夫]


  1. 香川綾・監修:四訂食品成分表;女子栄養大学出版部,1994
  2. 香川芳子・監修:四訂食品成分表;女子栄養大学出版部,1999

排卵誘発剤・ドパミン受容体作用薬・ホルモン剤併用の理由

月曜日, 8月 13th, 2007

KW:薬物療法・ホルモン剤・パーロデル錠・ドオルトン錠・クロミッド錠・norgestrel・ethinylestradio・ clomifene citrate・bromocriptine mesilate・不妊症・造精機能障害・排卵誘発剤・性ホルモン剤・ドパミン受容体作用薬

Q:次記処方せんに関連する下記の質問について調査されたい。

  • ドオルトン錠 1錠 分1朝食後 5日間
  • クロミッド錠(50) 2錠 分2朝・夕食後 5日間
  • パーロデル錠(0.25) 0.5錠 分1朝食直後 28日間
  1. クロミッド錠服用開始後何日目当たりが最も妊娠しやすいのか
  2. クロミッド錠の男子適応について
  3. パーロデル錠併用投与の意味及び食直後の理由

A:調査の結果は下記の通りである。

分類 性ホルモン製剤(卵胞・黄体ホルモン配合剤) 排卵誘発薬(ホルモン様作用関連物質) ドパミン受容体作用薬
品名 ドオルトン錠

(シエーリング)

クロミッド錠

(塩野義)

パーロデル錠

(ノバルティス)

適応症 1)機能性子宮出血

2)月経困難症

3)月経周期異常(稀発月経、頻発月経)、過多月経、子宮内膜症、卵巣機能不全

排卵障害に基づく不妊症の排卵誘発

適応外使用:造精機能障害

1)産褥性乳汁分泌抑制、乳汁漏出症

2)高プロラクチン血性排卵障害

3)高プロラクチン血性下垂体腺腫(外科的処置を必要としない場合に限る)

4)末端肥大症、下垂体性巨人症

5)パーキンソン症候群

用法

用量

[機能性子宮出血]1日1錠7-10日間連続

[その他]1日1錠 月経周期第5日から約3週間連続

第1クール:1日50mg 5日間

第1クール無効の場合:1日100mg(5日間)これを限度とする。

3クールで効果が見られない場合中止。

適応外使用:造精機能障害:(50mg) 0.5-1錠

[適応1-3]1日1回2.5mg 夕食直後

効果を見ながら1日5-7.5mgまで漸増し分2-3(食直後)。

[適応4]1日2.5-7.5mg 分2-3(食直後)

[適応5]1日1回1.25-2.5mg朝食直後から開始

1-2週毎に1日2.5mgずつ増量し維持量を決定(標準:1日15.0-22.5mg)

投与上注意   *無排卵症の患者に対して試みる場合には、まずgestagen、estrogen testを必ず行って、消退性出血の出現を確認し、子宮性無月経を除外してから投与を開始する。

*無月経症患者においては投与前にgestagen testを行い、消退性出血開始日を第1日として5日目に、また投与前に自然出血(無排卵周期症)があった場合はその5日目に投与を開始する。

*投与後基礎体温が高温相に移行した場合は、投与を中止し、必ず妊娠性率の有無を確認する。

*産婦人科・内分泌専門医の管理の基に投与すること。

*1日5mgの場合は朝食及び夕食直後に、7.5mg以上の場合は毎食直後に分服。

*投与開始時に悪心・嘔吐、血圧の急激な下降があらわれやすいので、初回は夕食時に半錠から始めることが望ましい。

*本剤の『食直後』での服用に関して、「食事中に服用する(食直後、又は箸を置く前に服用する)」とする記載が見られる。また、「本剤による嘔気・嘔吐は多くの場合、食中あるいは食直後の投与により軽減される」とする報告も見られる。

本処方中の各薬剤の併用目的は、各薬剤の承認適応症から『不妊症』の治療と予測することは可能であるが、あくまでも予測であり、医師に確認しない限り確定情報とはならない。従って本質問が患者からの質問であるとすれば、患者自身が主治医に確認するよう助言する。

clomifene citrate服用後開始後何日目が最も妊娠の可能性が高いかという質問に対しては、確定した回答は困難である。

clomifene citrate による無排卵周期症及び第1度無月経症の排卵誘発率は、それぞれ約83%、60%と良好であるが、妊娠率は全体として24%である。一方、第2度無月経例は、排卵率は低く、妊娠は成立していない(月経又は出血5日目から本剤を1日50-100mg投与)。つまり排卵率の高さに比較して妊娠率は低いとする上記の報告はみられるが、服用開始後何日目に妊娠する可能性が高いかについては報告されていない(通常排卵は本剤投与終了後5-10日以内に起こるの報告)。

clomifene citrateの男子適応は、未承認適応として『造精機能障害』に使用されているとする報告が見られる。

bromocriptine mesilateの併用の理由及び食直後の意味は、上表を参照されたい。

[035.1.INF:2005.10.11.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2005
  2. 日本薬局方クエン酸クロミフェン錠:IF,2002.7.
  3. パーロデル2.5mg:IF,2001.8.
  4. 泉谷知明・他:女性診療科における薬物療法のタイミング-6.不妊症と排卵誘発-1)クロミフェン療法;産婦人科の実際,51(11):1719-1725(2002)

バイアスピリン錠の粉末化について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:物理化学的性状・特殊用例・粉末化・バイアスピリン錠・アスピリン・aspirin・腸溶錠

Q:バイアスピリン錠の粉末化による調剤は可能か

A:バイアスピリン錠100(バイエル薬品)は、1錠中にアスピリン(aspirin)100mgを含有するフィルムコーティング錠である。本剤は耐酸性のフィルムコーティングを施すことにより有効成分であるアスピリンが胃で溶出せず、小腸で速やかに溶出し、吸収されるように製剤設計を行った腸溶錠である。

剤形 温度安定性 湿度安定性 光安定性 水溶解性 力価 融点 総合判定
× ? ? ? ? ? ? ? ? ×

なお、本剤添付文書中の9.適用上の注意-(1)服用時の1)として『本剤は腸溶錠であるので、 急性心筋梗塞の初期治療に用いる場合以外は、割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないで、そのままかまずに服用させること』の記載がされ ている。

なお、aspirinは低薬価の原末も市販されており、経管投与等の投与が必要な場合、aspirin原末を秤量して投与する。なお、その際、 胃腸障害を防止する目的で消化器用薬を併用する等の配慮が必要である。

[014.4.ASP:2004.10.4.古泉秀夫]


  1. バイアスピリン錠100mg添付文書,2002.3.改訂

バイアグラの処方せんによる調剤

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:法律・規則・バイアグラ・クエン酸シルデナフィル製剤・処方せん・自費診療・要指示医薬品

Q:バイアグラは処方せんによる調剤が義務づけられているがその根拠になる文書はあるか

A:次の指示文書が発出されている。

保険発第20号

平成11年3月9日

都道府県民生主管部(局)

保険主管課(部)長 殿

国民健康保険主管課(部)長

厚生省保険局医療課長

クエン酸シルデナフィル製剤に係る取扱いについて

平成11年1月25日付けで薬事法上承認された標記医薬品(バイアグラ錠25mg及び同50mg)については、薬事法に基づく要指示医薬品に指定され、同日付け医薬発第90号医薬安全局長通知により、外国において市販後に死亡例を含む重篤な心血管系等の有害事象が報告されていること等の理由により、医師の処方せんに基づく投与又は販売を義務付けているところである。

本製剤については、保険給付の対象としないこととし、これに伴い、本製剤に係る処方、本製剤による重篤な副作用等患者の健康被害を防止する観点から行われる検査等の一連の診療行為及び調剤行為についても、保険給付の対象とはならないこととなるので、関係者に対し、周知徹底を図られたい。

また、保険給付の対象とはならない診療行為及び調剤行為については、保険診療に係る診療録又は調剤録とは明確に区別することも併せて周知されたい。

更に関連する通知として、次の文書が発出されている。

平成11年3月3日

各都道府県衛生主管部(局)長 殿

厚生省健康政策局指導課長

クエン酸シルデナフィル製剤について(通知)

標記については、平成11年1月25日に薬事法に基づき製造(輸入)の承認がなされた勃起不全治療薬(別添1)であり、また、同法に基づく要指示医薬品として指定されたところである(平成11年1月25日医薬発第87号;別添2)。

本剤は、使用上の注意において、硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド等)との併用により降圧作用が増強し、過度に血圧を下降させることがあるので、本剤投与の前に、硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤が投与されていないことを十分確認し、本剤投与中及び投与後においても硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤が投与されないよう十分注意するよう警告がなされ、また、硝酸剤または一酸化窒素(NO)供与剤についても使用上の注意において「クエン酸シルデナフィルを投与中の患者」を禁忌とするよう指示がなされた(平成11年1月 25日医薬安第5号;別添3)ところである。

このことから、虚血性心疾患の発作を起こして救急医療機関を受診した救急患者への対応等について、今般、日本救急医学会及び日本循環器学会より提言がまとめられた(「バイアグラに関する日本救急医学会・日本循環器学会の提言」平成11年2月22日;別添4)ので、参考までに送付する。

貴職におかれては、今後、貴管下の各救急医療機関等に対して、上記の点を十分に配慮し、消防機関とも十分連携を取りつつ、救急医療体制の確保を図るよう、お願いする。

医 薬 企 第20号

医薬審第 456号

平成11年3月3日

各都道府県衛生主管部(局)長 殿

厚生省医薬安全局企画課長

厚生省医薬安全局審査管理課長

クエン酸シルデナフィル製剤について(通知)

標記については、本日付け指第17号により硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤との併用等に関して通知されたところであるが、その販売及び管理に当たっては、厳重かつ慎重な対応が求められるものである。

このため、本年1月25日付け医薬発第90号により、管下の卸売販売業者、薬局等に対して、その販売及び管理についての周知徹底方依頼したところであるが、薬局における標記医薬品の販売又は授与は、医師の処方せんに基づき個人の患者の状況に応じて調剤されたものに限って認められるものであり、薬局は医師の処方せんの交付を受けた者以外の者に対して販売することはできないことにつき、併せて管下医療機関等に対して周知徹底されるようお願いする。

以上の発出文書の要点は下記の通り。

  • 保険給付の対象とはならない(また、本製剤に係る処方、本製剤による重篤な副作用等患者の健康被害を防止する観点から行われる検査等の一連の診療行為及び調剤行為についても、保険給付の対象とはならない)。
  • 保険給付の対象とはならない診療行為及び調剤行為については、保険診療に係る診療録又は調剤録とは明確に区別すること。
  • 医師の処方箋が必要 [生活改善薬として、同様な取り扱いにある「ニコレット*」については、「指示せん」でも投与が可能であるが、本剤は、指示せんによる投与はできない(要指示医薬品)]
  • 硝酸剤との併用は禁忌(→日本救急医学会及び日本循環器学会より「バイアグラに関する日本救急医学会・日本循環器学会の提言」(平成11年2月22日)が出されている)。

*「ニコレット*」については、2001年6月20日OTCとして承認取得(ただし、指定医薬品)。

*2005年4月1日以降、『要指示医薬品』は『処方せん医薬品』に変更された。

[615.1.SIL: 2004.7.13.古泉秀夫]


  1. https://ksweb.medks.com/lib/tpc/htm/tpc010905.htm,2004.7.13.

醗酵アガリクスについて

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:物理・化学的性状・醗酵アガリクス・Agaricus blazei Murrill・アガリクスブラゼイムリル・β-(1→3)D-glucan・glucose・cellulose

Q:醗酵アガリクスについて

A:Agaricus blazei Murrill(アガリクス・ブラゼイ・ムリル)は、担子菌類ハラタケ科に属する茸。

和名:ヒメマツタケ。

別名:カワリハラタケ。

アガリクスの抗腫瘍活性の中心は、子実体から生成した多糖、菌糸体の培養ろ液から採取した多糖・蛋白多糖であるとされている。

茸の抗腫瘍活性を示す主要成分は、多糖類のβ-glucanで、中でもβ-(1→3)D-glucanという特別な構造を持ったものが抗腫瘍活性は強いと報告されている。因みにglucanはglucoseのみからなる多糖類のことであり、セルロース、アミロース、デキストランがこの類に含まれるとされている。

◆cellulose(セルロース)

D-glucoseがβ -1,4結合で直鎖状に重合したもので、高等植物の細胞膜の主成分で、植物体の骨格成分となっており、また細菌、海藻、海産動物のホヤ類の外皮にも存在する。

celluloseは恐らく多糖類中で最も分子量の大きい物質で、化学薬品に対する抵抗性が強く、微生物に侵されにくい。

その構造はD-glucoseが β-1,4glucoside結合で、約3000個重合しており、方向性のある微結晶(ミセル)を作り、繊維構造を取ることができる。

ヒトにはβ- 1,4glucoside結合に作用する消化酵素がないのでcelluloseは消化されず、吸収利用されないが、少量の存在は消化管の蠕動運動を促進し、また便通を整えるのに役立つ。

草食動物は消化管内の微生物の働きによりcelluloseを分解し、生じる有機酸その他を吸収、利用してエネルギー源とすることができる。

celluloseは繊維素ともいわれ、殆どは細胞外に存在し、植物の堅固な細胞壁、繊維組織、木組織の主要な細胞外構成成分である。

水に不溶、分子量50,000-250万

glucose残基で300-1,500個。

一般に哺乳動物の消化管はcelluloseの加水分解酵素が分泌されないため食物としては利用できない。

唯一の例外がウシなどの反芻動物で、酵素cellulaseを胃の細菌が産生する。最近、celluloseは大腸癌の予防の関係で注目されている。

その他、celluloseはβ-1,4glucoside結合した多糖類。天然には植物体の細胞膜の主成分として存在し、生物界の有機物質の 50%以上を占め、通常、ヘミセルロースやリグニンなどを狭雑する。

cellulose中のβ-1,4-glucan結合を加水分解する酵素 cellulaseはある種の菌類、細菌、軟体動物、高等植物等にその存在が知られているとする報告も見られる。

◆amylose

D-glucoseがα-1,4-glucoside結合に よって直鎖状に重合した多糖で、澱粉中に20-25%含有される。

熱水に溶解し、amylase(唾液、膵臓に分布)によって加水分解される。

◆dextran

蔗糖を微生物により発酵させ、生産される多糖類。 glucoseのポリマーで、主としてα-1,6結合によって構成されている。

現在、医薬品として使用されているβ-D-glucanの製剤として次の3製品があるが、消化管からの吸収が悪いとして2製品は注射剤である。

物質名(会社名) 適用 抽出法
クレスチン
(呉羽-三共)

原末=1g

経口 担子菌類の一種『さるのこし かけ』の熱水抽出物。蛋白質と結合した多糖類で、カワラタケの菌糸体より得られたもの。

糖質の主要成分はβ-1,4-glucanであり、glucose の基数個に1個の割合で、glucoseの3位及び6位で分枝した構造が推定されている。

平均分子量約10万。

sizofiran

ソニフィラン
(科研)

1管=20mg

注射 本品は、スエヒロタケの菌糸 体培養ろ液から得られる多糖体を、超音波照射と高速噴射処理により低分子化した物質である。重量平均分子量:約450,000。

本品はglucoseのみからなる多糖体で、その基本構造はβ-1,3結合を主鎖とし、主鎖のglucose残基3個に対し1個の割合でβ-1,6結合で分岐したglucose側鎖を有し、その分岐は規則的である。

水溶液中では三重ラセン構造を有する三量体として存在する。

lentinan

レンチナン
(山之内)

注射 本品は、椎茸の子実体の熱水 抽出エキスより得られた抗悪性腫瘍性多糖体を生成して得られたもので、β-(1→3)結合を主鎖とする高分子glucanである。

上記の各報告からAgaricus blazei Murrillについて、吸収能を強化する目的で、『醗酵アガリクス』以外にも微細化した製品等、種々の製品が市販されているが、いずれも健康食品としての扱いであり、製品の吸収について、科学的根拠となる資料(体内動態等)は公表されていない。

[014.4.AGA:2004.3.29.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  2. 奥田拓道・監修:健康・改訂新版 栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001
  3. 薬科学大辞典 第3版;廣川書店,2001
  4. 医学大辞典;南山堂,1992
  5. クレスチン添付文書,1999.2.新様式第1版
  6. クレスチンインタビューフォーム,1990.2.改訂
  7. ソニフィランの概要,1996.3.作成
  8. レンチナンインタビューフォーム,2003.4.新様式第3版
  9. 小池五郎・他編:栄養学事典;朝倉書店,1982

肺繊維症の治療薬-パーフェニドンについて

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:薬名検索・肺繊維症・パーフェニドン・ピルフェニドン・pirfenidone・間質性肺炎・肺繊維症・S-7701・AMR-69・PRFD

Q:肺繊維症の治療薬であるパーフェニドンは国内で入手可能か

A:『パーフェニドン』ではなく『ピルフェニドン』とする標記がされている資料もあるが、英名標記はいずれも『pirfenidone』であり同一のものであると判断する。

  • 別名:S-7701、PRFD、AMR-69、[商]Deskar(米・Marnac社)。
  • 化学名:5-methyl-1-phenyl-2(1H)-pyridinone。
  • 薬理:TNF synthesis inhibitor。
  • 薬効:呼吸器官用薬-間質性肺炎、特発性肺線維症。[米国preclinical(Marnac):強皮症、硬化性腹膜炎、増殖性硝子体網膜症、子宮筋腫]。[米国第II相臨床試験(Marnac):肺繊維症、肝線維症、腎線維症)。
  • 剤形:経口剤。 到達段階:申請済。間質性肺炎:orphan drug指定(1998.9.4.)。
  • 予定商品名:グラスピア(塩野義)。
  • 概要:pirfenidoneは、ヒト線維芽細胞増殖抑制作用を有する経口又は局所投与が可能なpyridinpne誘導体である。抗繊維化剤として、開発されている。線維芽細胞増殖及び繊維芽細胞コラーゲン産生を阻害し、繊維芽細胞によるコラゲナーゼ産生を増強することによって効果を発揮するとされる。また、本剤はTNF-α産生阻害作用も有する。本剤は血液脳関門を通過することができ、消化管から容易に吸収される。主として肝臓で代謝されるが、皮膚の真皮層によっても代謝しうるとされる。亜急性及び慢性臨床試験、急性、亜急性、亜慢性動物試験の結果、本剤が安全であることが示唆されている。

海外では肺繊維症、強皮症、硬化性腹膜炎、増殖性硝子体網膜症(PVR)、子宮筋腫、良性前立腺肥大症、ケロイドなどに対して効果を示す可能性が検討された。

また多発性硬化症に対しても有効であるとする治験結果が報告されている。

国内では間質性肺炎及び特発性線維症について開発が進められていた。2002年12月申請。既に承認されたの報告が見られる。

[011.1.PIR:2004.2.9.古泉秀夫]


  1. 明日の新薬CD-ROM版,2004.2.3.
  2. (株)クラヤ三星堂:薬報No.109:6-7(2004)

パップ剤の名称の由来について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:語彙解釈・パップ剤・名称・由来・cataplasms・poultice・thick pap・パン粥

Q:パップ剤の名称の由来について

A:パップ剤について、次の報告がされている。

パップ剤(cataplasms)

パップ剤は、通例、医薬品の粉末と精油成分を含むもので、泥状に製するか、又は布状に展延形成して製した湿布に用いる外用剤である。従前広く使用されていたカオリンパップを主体とした定義となっており、用時リント布等に展延後患部に貼付し、湿布又は冷湿布に用いる泥状の剤形(泥状パップ剤)とされていたが、11局から現在主流となっている形成パップ剤を定義に加えた。なお、USP・BPには定義がない。

本剤は古くから用いられている剤形で、記録に残る最も古い製剤の一つといわれている。パップ剤は本来、用時加温して熱いうちに布上に厚く展延し、皮膚に適用して水分と熱の存在下に薬物を作用させ、炎症又は誘導刺激作用による疼痛寛解を目的とした製剤である。

その他、『パップ剤(cataplasma《poultice》):医薬品の粉末と精油成分を混和し泥状に製した湿布用外用剤。』とする報告も見られる。

  • cataplasm:パップ[剤]、湿布[剤]。軟らかい薬物を外用する投薬法。cataplasma=cata+plasma。poultice。cata=下方を意味する連結語。反を意味する接頭語。plasma=リンパ液の液体部分等。
  • poultice:L.puls(pult-)、a thick pap、湿布、パップ[剤]。種々の粉末やその他の吸湿性物質を油性又は水性の液体で湿したマグマ、あるいは粥状物質。通常、皮膚表面に直接貼付して使用する。軟化剤、緩和剤、又は刺激薬を用い、皮膚や皮下組織に対し、逆刺激効果を有する。
  • thick:層。厚み。
  • pap:パン粥(ミルクか水に浸したパンくずのように軟らかい食物)。

以上の各報告から判断して、最も古いパップ剤である『カオリンパップ』の外観が、パン粥を一定の層に展延して貼付するように見えたことからパップ剤の呼称が用いられたものと考えられる。あるいは当初『パン粥』そのものを布に展延して、湿布剤として使用していた可能性も考えられる。

[615.8.PAP:2003.9.11.古泉秀夫]


  1. 第十四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001
  2. 最新医学大辞典 第2版;医歯薬出版株式会社,1996
  3. 和田攻・総監修:医学生物学大辞典;朝倉書店,2001
  4. ステッドマン医学大辞典 改訂第4版;メジカルビュー社,1997

パンセダンの毒性と処置

日曜日, 8月 12th, 2007

?KW:漢方薬・毒性・中毒・誤飲時処置・パンセダン錠・パッシフローラエキス・セイヨウヤドリギエキス・カギカズラエキス・ホップ乾燥エキス

Q:パンセダン10錠を1回に服用したとする患者が急患室に来ているが、本剤の毒性と処置は

A:パンセダン(佐藤製薬)は、1錠中に次の成分・含有量を有する植物性の静穏剤で、一般用薬としてして市販されている製剤である。

  • パッシフローラエキス…………40mg
  • セイヨウヤドリギエキス………10mg
  • カギカズラエキス………………22.5mg
  • ホップ乾燥エキス………………9mg

本剤の適応症は、神経衰弱症候の次の諸症として「不眠、いらいら、不安、興奮、眩暈、耳鳴、動悸、頭痛」であり、用法・用量として成人1回1?2錠、1日2回服用とされている。

本剤の動物による50%致死量は、マウス・ラットで92錠/kgとされており、ヒトにおける過量服用例が報告されていないため、確定した判断とはならないが、1回10錠程度の服用範囲であれば、致死的な作用は発現しなと考えられる。

服用後既に一定時間が経過した事例で、考えられる影響としては「眠気」等が挙げられるので、医師の監視下で安静状態を確保する必要があるかもしれない。

服用直後であれば、胃洗浄等適当な方法による薬物の除去も考慮する必要があるが、胃洗浄による患者負担を考えた場合、本剤の服用量によっては、そこまでの処置を要しないのではないかと考えられる。。

尚、参考までに、各配合剤の作用等について以下に紹介する。

パッシフローラエキス[学名:Passifloraincarnata]

トケイソウ科。南米原産のつる性の植物。その開花期における茎、葉は鎮静などに用いる。成分としてバルマン系アルカロイド等。

セイヨウヤドリギ[学名:Viscumalbum]

ヤドリギ科。ブナ、カシの樹上に吸根で固着寄生する。雌雄異株の常緑低木。鎮静剤として用いる。成分としてコリン、アセチルコリン、アルカロイド(ビスコトキシン)等。

Viscotoxinは、心収縮停止作用を持つ毒素である。viscotoxinはアミノ酸残基88個からなり、分子量9,600のポリペプチドである。毒性は腹腔内注射で概ね1.14mg/kg(マウス)程度である。

カギカズラ(釣藤)[学名:Uncariarhynchophylla]

アカネ科。日本、中国に自生するつる性の植物。その木化したカギ状の側枝を薬用に用いる。成分としてRhinchophyllin及びIso-rhinchophyllinの2種のアルカロイドを含有する。

リンコフィリンは少量で呼吸中枢を興奮し、青蛙の心臓に対してジギタリス様作用を呈する。血圧はリンコフィリンにより著しく下降し、末梢血管は拡大する。家兎の静脈内注射による一般症状は、著明なる呼吸促迫と運動麻痺で、致死量に達すれば呼吸麻痺により死亡する。最小致死量は、家兎静脈内注射で30?40mg/kg、0.3g皮下注射では呼吸頻数を示した。

ホップ[学名:Humuluslupulus]

クワ科。長野、北海道で栽培されている。雌雄異株のつる性の植物で、その成熟花序包葉に点在する腺毛を薬用に用いる。成分として精油、苦味質等である。苦味成分はhumulone、lupuloneといったクロログルシン誘導体である。また、純粋なイソプレノイドであるセスキテルペン、humuleneを精油中に含有する。

ホップ腺は、健胃、鎮静及び利尿薬として不眠症、膀胱カタル等に用いる。

[510.FD5.63.099PA][1991.4.15.・1999.3.29.一部修正.古泉秀夫]


  1. 日本医薬情報センター・編:一般日本医薬品集第5版;薬業時報社,1985
  2. パンセダン添付文書,512G
  3. 刈米達夫・他:和漢薬用植物;広川書店,1954,p.48,p.352
  4. 柴田承二・編:薬用天然物質;南山堂,1982
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.61,1991.4.15.より転載

排便消臭剤について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW :薬名検索・人工肛門・ストーマ・排便消臭剤・消臭剤・健康食品・OS 液・スメルナーク・シャンピニオンエキス・人参葉乾燥粉末・緑茶エキス・竹エキス・フラボノイド

Q:人工肛門(ストーマ)を行っている患 者の便の消臭目的に使用する薬剤について

A:排便消臭目的で市販されている製品として、次の製品が紹介されている。

商品名(会社名) 含有成分 特徴
エチケット・ビュー
(ダイリン)

[東京都港区新橋5-14-6第2秋山ビル TEL:03-3578-0401]

OS液

(緑茶を主体とした天然食用植物エキス-タンニン、 フラボノール等にビタミンを配合)

健康食品。

1回1錠毎食後服用。(90粒)。

グリーンエンゼル(サラダメロン和光農場普及会)(和光研究農場)

[〒096 北海道名寄市日進105番地TEL.01655-4-3224]

人参葉乾燥粉末。

野菜だけで出来た天然活性緑素、ビタミン・ミネラル・粗繊維を豊富に含む。

健康食品。アルカリ性食品。

1日3g-2週間の服用で、著 効19.78%、有効(気にならなくなった)62.64%。

また、1日1g・2回食後服用で同様の効果。(25g)。

スメルメイトTAB
(日本ケミファ)

消臭TAB
(フォーエバー(株))

[東京都千代田区鍛冶町1-7-2 TEL.03-3256-5607]

スメルナーク

(杉、ヨモギ、白樺、紫蘇等の35種類の植物 から約180種の有機化合物を抽出、ブレンドしたもの)

健康食品。食後1粒服用。

噛んで食べると口中が爽やかになる。(90粒)。

チャットタイム(有限会社ユニプレス)

[〒169 東京都新宿区北新宿1-29-3 秀健ビル TEL.03-3360-1161]

シャンピニオンエキス

食物繊維(セルロース、ポリデキス トロース)

有胞子性乳酸菌

オリゴ糖

健康食品。

腸内の有害物質をクリーンにするシャンピニオン エキスを主体に植物繊維、

有胞子性乳酸菌・オリゴ糖の配合により排便時の臭いを抑制する。

シャンピニオンエキス[マッシュルームからの抽出エキス] (240粒)。

NIOONE[におわん]
(カンロ株式会社)
シャンピニオンエキス

緑茶エキス

竹エキス

フラボノイド

ビタミンC

オリゴ糖

健康食品。1日8?9粒。
マシュロム(ユウキシステム(株))

[東京都江東区北砂3-12-7TEL.03-5683-5371]

シャンピニオンエキス[Bio-M](マッシュルームからの抽出エキス) 健康食品。(90粒)。

シャンピニオンエキス:マッシュルーム抽出の天然成分で、無味無臭のエキス

[生理活性効果] 
シャンピニオンエキスに含まれるミネラル・アミノ酸・マンニトール・ヘミセル ロース等キノコ特有の成分により、コレステロール溶解性・血圧降下作用・ウイルスに対する免疫作用があるとする報告がされている。
[悪臭除去効果]
メチルメルカプタン(野菜の腐敗臭・口臭に類似)・トリメチルアミン(魚の腐 敗臭・アンモニア臭に類似)に対する消臭効果がある。
[食後口臭除去効果] 
食後に腸内で発生する悪臭物質を抑制し、肺から出てくる臭気に効果がある。
[腸内清浄効果] 
加齢とともに多くなる大腸内の有害物質(腐敗性分)を抑制する。

緑茶エキス:緑茶から抽出した天然エキス。

[悪臭除去効果] 
緑茶に含まれるポリフェノールが化学反応を起こし、メチルメルカプタン(野菜の腐敗臭・口臭に類似)等の臭いを消す作用がある。

竹エキス:竹から抽出した天然エキス。

[制癌作用] 
エキスに含まれる多糖類に制癌作用があるとされている。
[抗菌作用] 
エキスに含まれる有機酸・フェノール化合物が効果を示す。
[口臭除去効果] 
口内の消臭作用がある。

フラボノイド:天然成分

[悪臭除去効果]
メチルメルカプタン(野菜の腐敗臭・口臭に類似)・トリメチルアミン(魚の腐敗臭・アンモニア臭に類似)に対する消臭効果がある。
[虫歯防止効果]
虫歯菌に対する増殖を阻止する
[抗酸化効果]
生体内の脂肪が酸化するのを防ぐ。

スメルナーク

松・檜・白樺・蓬・熊笹・紫蘇・アロエ・お茶など35種類の植物から真空乾留装置により抽出し た植物抽出エキス(主にテルペン類)。森林浴(フィトンチッド)の作用で悪臭が相殺され、臭いが消える。

以上、検索できた「排便消臭剤」は、健康食品に類するものであり、医薬品として市販されているものはなかった。しかし、報告されている各種資料から、一応の有効性が推定されるため、これらの健康食品中から適当な製品を選択し、使用することは可能である。但し、健康食品であるため、処方箋での交付は出来ない。

[011.1OST:1996.8.29.古 泉 秀夫・1999.3.19.・2004.3.4.一部改訂]


  1. 人工肛門の臭気防止にはニンジンの葉の粉末が効果;朝日新聞, 1995.2.27.
  2. 人工肛門の消臭効果-ニンジンの葉の乾燥粉末;朝日新聞, 1994.6.19.
  3. 排便後の臭い改善「消臭植物シリーズ<粒>」;薬局新聞, 1995.20.
  4. 週刊読売・広告,1996.3.31.
  5. 食後に服用便利な1錠-においないし「お年寄り介護用品」;毎日新聞, 1994.7.7.
  6. ひらめきを育てる「清潔症時代にピタリ-排便消臭剤;読売新聞, 1995.11.29.
  7. SDIC DIワンポイント実例 No.27「排便消臭剤の入手」; SDIC Contents Pharmacy,No.108(1985.6)
  8. 国立札幌病院薬剤科・私信,1996.8.29.
  9. カンロ株式会社・私信,1996.8.29.
  10. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:NHS.DI- News,No.1576,1997.7.8.  転載

ハイポアルコールの安定性

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:物理化学的性状・使用期限・安定性・ハイポアルコール・Hypo-alcohl・ヨウ素系消毒薬・着色除去・清拭剤

Q:包交回診車上に、開封日不明のハイポアルコール500mL入瓶が置かれているが、使用残液の取扱いについて

A:ハイポアルコール(Hypo-alcohl)の処方として、次の処方例が紹介されている。

Rx.8%- Hypo-alcohl

  • チオ硫酸ナトリウム(Na2S4O6)——40g
  • エタノール———- 250mL
  • 蒸留水——-適量
  • 全量——-500mL
  • 貯法:遮光・室温保存
  • 有効期限:なるべく速やかに使用する。
  • 適応:ヨウ素系消毒薬使用時の着色除去

Hypo-alcohlは、ヨウ素系消毒薬使用時の着色除去目的で使用する清拭剤である。着色除去の機序は、一般に次の化学変化によると考えられている。

 I2+2NaS2O3=2NaI+Na2S4O6

チオ硫酸ナトリウムとヨウ素は定量的に反応するとされている。

ヨウ素は水に極めて溶け難い(1g/100mL以上-1,000mL未満:溶解度は水で0.018g/100mLの溶媒量)性質を持っており、ヨウ素系消毒薬の消毒後のヨウ素による着色除去に蒸留水が使用されない理由とされている。

チオ硫酸ナトリウムによって変化した生成物であるNaI(ヨウ化ナトリウム)は、水に溶け易い性質を持っており、水に対する溶解度は179g/100mLと報告されているので、ヨウ素による着色の除去は容易になる。

以上報告されているHypo-alcohlの性状を考えると、例えばpovidone iodineによる消毒後、直ちにHypo-alcohlを使用することには消毒効果上問題があるといえる。

手術用Isodineによる一般的な手術野消毒法

  1. 手術野、手術部位を除毛し、水で湿す。
  2. 手術用Isodine液を取り(約10×15cm当たり本剤1mL)、泡立たせ、5分間十分に塗擦する。
  3. 滅菌ガーゼで拭き取る。
  4. 更にIsodine液の塗布を行う。
  5. 乾燥後あるいは5分経過後、Hypo-alcohlで着色を除去する。

以上の手技に従えば、特にHypo-alcohlによる消毒効果の減弱はないものと思われる。

その他、チオ硫酸ナトリウムはヨード還元剤であり、ヨウ化カリ水銀(HgI2・2KI)の作用を不活性化する。ヨウ化カリ水銀の500倍液で手洗いした後、5%-チオ硫酸ナトリウム溶液に手を浸すと、増菌が見られたとする報告がされている。

Hypo-alcohl中のalcohl濃度について、局方無水エタノール(99.5v/v%)を使用したとしても製剤化されたHypo-alcohl中のalcohl濃度は約50%である。

その他報告されている製剤処方例を見ると70v/v%-alcohlの使用例も見られるが、この濃度のalcohl濃度では完成品のalcohl濃度は35v/v%であり、いずれも消毒効果を期待できる濃度とはいえない。

従って、使用頻度にもよるが、病棟におけるHypo-alcohlの請求量として、500mL瓶入りの製剤は多すぎるといえる。

開封後のHypo-alcohlを室温中に長期保存すれば、当然アルコール成分は蒸発し、製剤中のalcohl濃度は限りなく低下する。

保存製剤が、万一細菌に汚染されていた場合、ヨウ素剤で消毒した部位を再度汚染することになると考えられるため好ましくない。

[615.28.HYP:2003.6.26.古泉秀夫]


  1. 古泉秀夫・代表編著:医薬品情報Q&A[1];株式会社,1990
  2. 日本病院薬剤師会・編:院内における消毒剤の使用指針;薬事日報社,1987
  3. 日本病院薬剤師会・編:病院薬局製剤-特殊処方とその調製法;薬事日報社,1982
  4. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1993

バイアル瓶ゴム栓のコアリングについて

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:物理化学的性状・バイアル瓶・ゴム栓・コアリング・注射針・穿刺回数・細菌汚染・保存剤

Q:バイアル瓶のゴム栓に対する注射針の穿刺回数の目処について

A:バイアル瓶ゴム栓の穿刺によるコアリング(ゴム片が穿刺により削り取られること)の発生、あるいは空気、溶液の漏出等に関する試験結果の報告として、次の報告が見られる。

  1. 10回までの穿刺では、コアリングの発生は見られなかった。
  2. 10回までの穿刺では、ゴムと思われるフラグメントは、対照及び試料のいずれにおいても検出されなかったが、20回以上の穿刺では、試料にフラグメントの発生が見られる傾向があった。
  3. 10回の穿刺後においても、ゴム穿孔部分からの内容液の漏出は認められなかった。10回穿刺後に加圧しても空気や内容液の漏出は認められなかった。
  4. 5回程度の穿刺の後では、内容液がやや漏れてくる。しかし、通常使用では3回程度の穿刺と考えられるため、問題にはならない。

コアリングの発生は、穿刺回数のみが影響するわけではなく、穿刺する際の針の角度等、穿刺する者の技術的な問題も含まれる。従って、上記穿刺回数に関する実験結果から、臨床現場での“何回まで穿刺が可能か”とする質問に対する回答を得ることは困難である。

穿刺によるコアリングの発生要件として、次の報告がされている。

  1. 針刺しの方法:角度、カット面、速度、穿刺部位等
  2. ゴム栓:材質(ブチルゴムが主流。プロモブチルゴムから塩素化ブチルゴム等へ変更している企業もある)、構造(ゴム栓は密封性を高めるために容器口部周縁から圧縮される力を受けるように設計されている。)、針刺し部の形状及び厚み。
  3. 注射針:針の経、形状、肉厚、ヒール部の処理

穿刺時、針が回転したり、ゴム栓面に対して斜めに針刺しするとコアリングが発生し易いといわれる。

コアリングの発生を少なくするためには、

  1. 注射針はゴム栓の指定位置(IN、◎印など)に垂直にゆっくりと刺す。
  2. 注射針を途中で回転させない。
  3. 針刺しを数回行う場合は、同一カ所を避けて穿刺する。

なお、バイアル瓶の使用に際し、注意しなければならないのは、穿刺による細菌汚染である。

分割使用を目的とする注射剤は、使用から次の使用の間、密封することができる容器-バイアル瓶が用いられる。しかし使用毎に外部から栓を通して注射針を突き刺すので、注射針を通しての細菌汚染が起こりえる。この汚染による細菌の増殖を防止するため、製剤総則では『注射剤で分割使用を目的とするものは、別に規定するもののほか、微生物の発育を阻止するに足りる量の保存剤を加える』としている。

汚染は多種の混合汚染が考えられるので、保存剤は多種の微生物に有効なものでなければならない。一般に分割使用を目的とした注射剤以外はこのような想定をしていない。

従って一度密封容器中に注射針を接触した注射液には、全く保存性がないと考えるべきであるとする報告も見られる。

*保存剤:benzethonium chloride、benzalkonium chloride、phenol、cresol、chlorobutanol、methylparaben、ethylparaben、propylparaben、benzyl alcohol等。

以上の各報告からバイアル瓶ゴム栓への穿刺回数については、穿刺技術及び保存剤の添加等を考慮の上、個々に判断すべき問題であると考える。なお、保存剤の添加されていない製剤では、『密封容器中に注射針を接触した注射液には、全く保存性がない』との判断も必要である。

[014.4.INJ:2003.7.22.古泉秀夫]


  1. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,26(3):247-248(1999)
  2. 戸倉康之・編:改訂版注射薬マニュアル;照林社,1997
  3. 第十四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001

濃縮サルビアについて

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:薬名検索・シソ科・濃縮サルビア・サルビア・salvia・セイジ・ sage・ヤクヨウサルビア・サルビノリンA・salvinorin A

Q:テレビニュースで放映していた濃縮サ ルビアとはどのような物なのか

A:通常、薬用に使用されるサルビアは、シソ科のSalvia officinalis L.(サルビア)である。原産は、地中海地域、特にアドリア海地域で、部分的にはヨーロッパ諸国で栽培される。輸入生薬は、アルバニアと旧ユーゴスラビアから来る。

多年生で茎の基底部が木質化した高さ70cmまでの植物(半灌木)である。

  • 同意語:Salbeibl

ノコギリヤシについて

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:健康食品・生薬・ノコギリヤシ・鋸椰子・Serenoa repens・Serenoa serrulata・セレノアレペンス・Sabal serrulata・Saw Palmetto・ソーパルメット

Q:前立腺肥大症に効果があるとされるノコギリヤシについて

A:ノコギリヤシ(鋸椰子)は、北米原産のヤシ科シュロ属の低木で、学名:Serenoa repens(セレノア・レペンス)・S.serrulata又はSabal serrulataと呼ばれる植物である。

1892年米国において、ノコギリヤシの果実エキスが膀胱や尿道など泌尿器の疾患に効くとする研究結果が発表され、以後ヨーロッパを中心に高齢男性を悩ませる前立腺肥大への特異的な効用が検討されてきた。

  • 標榜効能:前立腺肥大、膀胱炎、男性機能改善。

Saw Palmetto(ソーパルメット-Serenoa repens;Sabal serrulata)の使用は、18世紀初頭に本品の実に頼る生活をしていたフロリダ半島の原住民にまで遡り、その実は睾丸萎縮、陰萎(インポテンス)、前立腺炎、男性の性欲低下、また肉体滋養の強壮剤として米国indian達に使用されていた。他の歴史的使用法として、女性の不妊治療、豊胸、授乳強化、生理痛、性欲促進、更には気管支粘膜の強化及び去痰等があげられる。

Saw Palmettoは、米国南東部に生息する低木の椰子の木である。

乾燥成熟果実の抽出物には脂肪酸、ステロール(β-シトステロール、カンペステロール及びスチグマステロールを含む)、フラボノイド及びその他の成分が含まれる。

種々のシトステロールが活性成分であると考えられている。

Saw Palmetto製品の成分は標準化されていないが、大部分のSaw Palmettoは、脂肪酸及びステロールを85-95%含有している。

Saw Palmettoの果実抽出物は、in vitroで男性ホルモン作用、抗エストロゲン作用及びおそらく抗炎症作用を有することが報告されている。

高用量ではテストステロン-5-α還元酵素を阻害し、テストステロンからジヒドロテストステロンへの転換を減少させる。またアンドロゲン受容体への結合を阻害する。しかし、ある研究ではラットにおける高用量群でも抗男性ホルモン作用及び5-α還元酵素阻害作用は証明されず、また健康男子で7日間摂取後に、血清ジヒドロテストステロン濃度は減少しなかった。

  • 副作用:Saw Palmetto抽出物を摂取した者で、頭痛、胃腸障害、高血圧、インポテンス及び性欲減少が報告されている。

以上の各報告からSaw Palmetto果実抽出物は、前立腺肥大症の症状を軽減すると思われるが、発表された資料は限られており、抽出物の成分も標準化されていないとする報告が見られる

[015.9.SAW:2004.2.10.古泉秀夫]


  1. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典-機能性食品・特定保健食品-;東洋医学舎,2000-2001
  2. 前立腺肥大症に対するソーパルメット;The Medical Letter<日本語版>,15(4):18(1999.2.12.)

ネオドパゾールとハルナールの同時服用

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:臨床薬理・パーキンソン病・ネオドパゾール錠・ハルナールカプセル・levodopa・benserazide hydrochloride・tamsulosin hydrochloride

Q:パーキンソン病でネオドパゾールを服用中の患者が、他院でハルナールの処方を出された。パーキンソン病治療目的で通院中の病院の薬剤師が、ハルナールはいらないといったため患者はハルナールの服用を中止している。相互作用とは違う理由によると思われるが、考えられる理由は

A:服用中の薬について考える前に、次の点を整理しなければならない。

  1. 患者が他院を受診した理由及びパーキンソン病治療中の医師は、そのことを承知しているのか?。
  2. 他院受診時、患者は現在治療中の病気及び服用中の薬剤について、ハルナールを処方した医師に伝達してあるのか?。
  3. 患者の病状が不明な段階で、医師の処方した薬剤について、薬剤師が要・不要の判断を下すことは避けなければならない。また患者に直接いうということは問題である。もし処方上何等かの疑義があると判断したとすれば、それぞれの処方医に疑義照会すべきであり、結果的に診療の妨害をしたことになれば問題としなければならない。

次に服用中の薬剤について検討した結果を紹介する。

項目 levodopa・ benserazide hydrochloride

ネオドパゾール錠(第一)

tamsulosin hydrochloride

ハルナールカプセル(山之内)

作用機序 本剤はlevodopaと芳 香族L-アミノ酸脱炭酸酵素阻害薬benserazideを4:1の比率で配合したパーキンソニスム治療剤である。パーキンソン病・パーキンソン症候群患者において、脳内線条体で不足しているドパミンを補う効果があり、ラットにおける実験により次の作用が認められている。

levodopaはドパミンの前駆物質であり、血液-脳関門を通過し、脳内で脱炭酸酵素の働きによりドパミンに転換され、パーキンソン病・パーキンソン症候群の症状を改善する。

しかし、単独投与の場合、levodopaは末梢組織において脱炭酸酵素により急速にドパミンに転換される。

そのため体内に吸収されたlevodopa量に比べ、血液-脳関門を通過して脳内に取り込まれるlevodopaは少ない。一方、benserazide hydrochlorideはlevodopa脱炭酸酵素阻害薬であり、脳以外の末梢組織でlevodopaの脱炭酸反応を防ぐ。このため配合剤では末梢での血中levodopa濃度が高まり、脳内へのlevodopa移行量が増加する。levodopa単独投与に比し、levodopaの1日量を約 1/5に減量でき、同等又はそれ以上の効果を発揮する。

また食欲不振、悪心、嘔吐等の消化器障害を軽減する。また、塩酸ピリドキシン(Vitamin B6)併用時でも作用は減弱されない[添付文書,2003.3]。

尿道及び前立腺部のα1受容体を遮断することにより、尿道内圧曲線の前立腺部圧を低下 させ、前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善する。

ヒト前立腺標本での受容体結合実験において、塩酸プラゾシンより2.2倍、メシル酸フェントラミンより40倍強いα1受容体遮断作用を示した[添付文書,2004.7]。

副作用 泌尿器[排尿障害0.1%未 満] ?

パーキンソン病治療目的で、現在、患者が服用中のネオドパゾール錠の副作用として排尿障害が報告されており、薬剤の副作用により尿の排出が困難であるとすれば、本剤処方医と相談の上対処すべき問題である。

また、患者に前立腺肥大による排尿困難が見られるとすれば、患者の判断で他院を受診するのではなく、主治医に相談の上、他医への検診依頼を受けるべきであり、主治医と意見調整のできる範囲内の医師の治療を受けることが基本原則である。

医師間で意見の調整が可能な状況があれば、薬物相互作用等の薬物療法に係る調整が可能となるため、患者の安全性確保の上からも、主治医に相談なしに診療先を増やすべきではない。

なお、tamsulosin hydrochlorideは不要だとした薬剤師の判断の根拠については、検討材料が不足しているため、質問内容から類推することはできない。

[015.4.LEV:2004.12.14.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004