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薬局苦情拾遺[4]

木曜日, 9月 27th, 2007

医薬品情報2 1

古泉秀夫

7)処方せん料は要らない

H18.4.14.「日本薬剤師会は医薬分業の説明不足」(患者・電話)

日本薬剤師会のパンフレットには、分業のメリットばかり書いてあって、処方せん発行にはコストがかかることが何も書いていない。医薬分業の仕組みや意義は理解するが、処方せんを発行するのに処方せん料がかかるとは何事か、薬剤師会は医師会に処方せん料をなくすように圧力をかけるべきだ。医師と薬剤師の勝手な都合で患者負担ばかり増やされては困る。

またコストのことをきちんと(パンフレットで)説明しないのは患者をバカにしている。医療にかかる料金や内容が患者に分からなすぎる。

[事務局対応]御意見を伺うのみ[薬事新報,No.2466:331(2007)]。

医薬分業の仕組みや意義を理解するとしながら、処方せん料が気に入らないというのでは、些か論理の展開に矛盾があると言われても仕方がない。

患者を診断した結果、書かれる『処方』は、その医師が永年にわたって研鑽・蓄積してきた知識に基づいて書かれるもので、それが『処方せん』という形式として患者に渡される。つまり『処方』というのは、その医師の知的財産であり、その財産を『処方せん』という形式で手に入れるとすれば、当然の結果として対価(処方せん料)の支払いが求められる。

日本人の悪い癖で、眼に見えない知的財産に対して、それを利用しても金を支払うなどと言う実行行為は思いも及ばないことのようであるが、むしろ無形の知識に対する対価の方が高いことを理解すべきである。

『処方せん料』という言い方は院外処方せんの場合で、68点(680円)、1枚の処方せんに薬が7種類以上書かれている場合には40点に減点される。更に後発医薬品を含んだり、長期処方した場合には、基本点数に点数が加算される。

因みに病院内で調剤される場合、『処方料』に名前が変わり42点(420円)、1枚の処方せんに薬が7種類以上書かれている場合、29点に減点される。

金額的に見た場合、処方せん料は決して高くはない。勿論、病気が治らなければ何の役にも立たない処方せんということになり、その処方せんの対価は無闇に高いものに付くことになるが、病気が治れば、高い安いの話ではなくなる。

ただ、同じ処方せんなのに院外と院内で差があるのはおかしいのではないかという疑念を持たれる方もおられるかもしれないが、これは規制当局が、しゃにむに医薬分業を前進させようという魂胆で、院外処方せん誘導目的で点数の設定をしているということである。また、1枚の処方せんに7種類以上の薬剤が記載されている場合、処方せん料(処方料)が減点されるのも、1枚の処方せん当たりの薬剤数の削減を狙った厚生労働省の誘導的点数設定であるといえる。つまり薬の種類が多ければ、それだけ健保の財政に悪影響を及ぼすということである。

またこの問題は、薬剤師会と医師会が話し合って決めることではなく、厚生労働大臣が診療報酬の点数を決めているので、もし不満があるなら厚生労働省に直接言うことが必要だろう。自由主義経済の中にあって、医療関係だけは統制経済下にあるといわれる所以である。

8)薬の説明書は要らないのに

H18.4.19.「薬の説明は要らないのに」(患者・電話)

薬局で「いつも同じ薬だから説明書は要らない」と言っていたのに、この4月からまた発行された。薬局で説明を求めたところ、「(説明書があろうとなかろうと)値段は変わらない」というだけで、よく分からなかった。さらに詳しく説明を求めたところ、窓口の支払額が100円安くなった。

値段のことだけでなく、1回目は説明が欲しいと思うが、同じ薬であれば説明書や説明は要らないというのが多くの患者の意見ではないだろうか。保険財政が逼迫しているのだから、厚生労働省や業界団体もよく考えてもらいたい。

[事務局対応]御意見を伺うのみ[薬事新報,No.2466:331(2007)]。

情報の提供については、従来は「患者の求めに応じて」行うこととされていたが、平成14年4月1日より、薬剤師による情報提供の義務(薬剤師法第25条2項)が規定されたことから算定用件の見直しが行われた。薬剤情報提供については、患者の求めに応じて行うだけではなく、薬剤師として情報提供の必要性が認められる場合には、提供する責務があるということである。

[1]『薬剤服用歴管理料』は、保険薬剤師が、患者ごとに作成した薬剤服用歴の記録に基づいて処方された薬剤の重複投薬、相互作用、薬物アレルギー等を確認した上で、次に掲げる事項その他の事項を情報提供し、薬剤の服用に関し、基本的な説明及び指導を患者又はその家族等に行った場合に算定する。

ア 当該薬剤の名称(一般名処方による処方せん又は「後発医薬品への変更可」欄に処方医の署名若しくは記名・押印のある処方せんの場合においては、現に調剤した薬剤の名称)、剤型(色、剤型等)

イ 用法、用量、効能、効果

ウ 副作用及び相互作用

エ 服用及び保管取扱い上の注意事項

オ 保険薬局の名称、情報提供を行った保険薬剤師の氏名

カ 保険薬局又は保険薬剤師の連絡先等

[2]『薬剤服用歴管理料』は、同一患者について第1回目の処方せん受付時から算定できる。

[3] 『薬剤服用歴管理料』を算定する場合は、薬剤服用歴の記録に、次の事項等を記載する。

ア 氏名・生年月日・性別・被保険者証の記号番号・住所・必要に応じて緊急時の連絡先等の患者についての記録

イ 処方した保険医療機関名及び保険医氏名・処方日・処方内容等の処方についての記録

ウ 調剤日・処方内容に関する照会の要点等の調剤についての記録

エ 患者の体質・アレルギー歴・副作用歴等の患者についての情報の記録

オ 患者又はその家族等からの相談事項の要点

カ 服薬状況

キ 患者の服薬中の体調の変化

ク 併用薬(一般用医薬品を含む。)の情報

ケ 合併症の情報

コ 他科受診の有無

サ 副作用が疑われる症状の有無

シ 飲食物(現に患者が服用している薬剤との相互作用が認められているものに限る。)の摂取状況等

ス 指導した薬剤師の氏名

[4]薬剤服用歴の記録は、同一患者についての全ての記録が必要に応じ直ちに参照できるよう保存・管理する。

[5]『情報提供』は、文書又はこれに準ずるものにより行うこととし、当該文書は、調剤を行った全ての薬剤の情報が一覧できるようなものとする。ただし、調剤をした薬剤をやむを得ず複数の薬袋に入れ交付する場合は、薬袋ごとに一覧できる文書とすることが出来る。

[6]『これに準ずるもの』とは、視覚障害者に対する点字、カセットテープ又はボイスレコーダーへの録音その他のものをいう。

[7]効能、効果、副作用及び相互作用に関する記載は、患者等が理解しやすい表現によるものとする。また、提供する情報の内容については正確を期すこととし、文書において薬剤の効能・効果等について誤解を招く表現を用いることや、調剤した薬剤と無関係の事項を記載しないこと。

[8]情報提供に当たっては、抗悪性腫瘍剤や複数の異なる薬効を有する薬剤等であって特に配慮が必要と考えられるものについては、情報提供の前に処方せん発行医に確認する等慎重に対応すること。

[9]薬剤服用歴の記録は、最終の記入の日から起算して3年間保存する。

[10]在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者については、算定できない。

『薬剤服用歴管理料』は、上記の[1]-[10]を満たす場合に、処方せん受付時において22点を算定する。ただし、『結核予防法』第34条にかかるものは算定対象にならないので注意を要する。

なお、例示として示されている記録事項は、患者や使用する薬剤などに応じて適宜判断するもので、保険薬剤師には、患者やその家族などに適切な服薬指導を行う上で、必要な情報を得て、それを記録し、次回の調剤時に活用することが求められる。

最後の『保険薬剤師には、患者やその家族などに適切な服薬指導を行う上で、必要な情報を得て、それを記録し、次回の調剤時に活用する』とされている以上、薬が替わらない限り毎回同じ印刷物を提供する等という無精なことは避けるべきである。更に、服薬状況を確認し、その会話の中から副作用の前駆症状等を補足し、更には医師の処方以外の医薬品あるいはOTC薬、いわゆる健康食品等の摂取についても眼を光らせるべきである。

患者に無駄な服薬指導だと思われることは、専門家としては恥ずべきことである。現在治療している病気に対して、風邪の時期になれば風邪を引かないための予防方法、食中りの時期になれば、食べ物の注意等、新たな病気を背負い込むことで本来の病気の治療が困難にならないための注意とう、細かな気配りをすることが必要ではないか。

1)日本薬剤師会・編:保険薬局業務指針2006年版;薬事日報社,2006

(2007.9.9.)