トップページ»

「アルツハイマー病治療薬tacrineについて」

木曜日, 9月 6th, 2007

KW:薬名検索・tacrine・タクリン・コリンエステラーゼ阻害薬・AChE阻害薬・Cognex・コグネックス・ブチルコリンエステラーゼ・BuChE・アルツハイマー病・アルツハイマー病治療薬・Alzheimer’s disease(AD)・記憶障害・認知症

Q:アルツハイマー病治療薬tacrineについて

A:tacrineはコリンエステラーゼ阻害薬(アセチルコリンエステラーゼとブチルコリンエステラーゼの両方を阻害)で、認知促進薬に分類される。

商品名:Cognex(瑞西・Warner-Lambert)

*本品は可逆的に中枢作用性のacetylcholine esterase:AChEを阻害し、acetylcholineの利用度を上げる。増加したacetylcholineの利用度は、記憶を調節する新皮質のコリン作動性神経の変性を一部補う。その他、butylcholine esterase(BuChE)を阻害する。

*本品は成長因子を遊離するか、あるいはアミロイド沈着を阻害するかもしれない。

*AChE阻害薬はシナプス間隙のacetylcholineの分解を遅らせ、acetylcholineの機能を延長させる働きがある。アルツハイマー病に対し、唯一その効果が認められた治療法である。

*AChE阻害薬のフィゾスチグミンは、効果発現が遅く、蓄積による副作用の頻度が高いことから開発された中枢性・可逆性の非特異的cholinesterase(ChE)阻害剤がtacrineである。1993年に世界初のAlzheimer’s disease(AD)の治療薬として発売された。AD治療薬の道を開いた化合物である。しかし、消化器症状などのコリン性副作用や、肝酵素の上昇などの頻度が低くないことから、日本での開発予定はないと報告されている。また、国外においても肝機能障害発現のため、使用されなくなっているとする報告が見られる。

*本品の適応症として『アルツハイマー病、他の疾患による記憶障害、認知症』

*本品の副作用として、AChEの末梢での阻害による消化器系の副作用・BuChEの末梢での阻害による消化器系の副作用・AChEの中枢での阻害は悪心、嘔吐、体重減少、睡眠障害。注意すべき副作用として悪心、下痢、嘔吐、食欲不振、胃酸分泌亢進、消化不良、体重減少。筋肉痛、鼻炎、発疹。重篤な副作用として肝トランスアミナーゼの上昇、肝毒性。肝と関連する臨床検査値異常の発現頻度が他のAChE阻害薬に比べて高いため、その使用に際しては定期的な臨床検査を施行する必要がある。

*その他、発症の初期段階にあるAD患者に対して、tacrineを処方したところ劇的に改善効果が碓認された。その他、多施設試験でも全般的臨床スコアと認知機能、日常機能においてtacrineの効果が証明されたとする報告がされている。tacrine投与群の3分のlは、プラセボ投与群よりも有意に効果が認められた。但し、本品は症状を改善し、疾患の進行を遅らせることがあるが、変性過程を元に戻すことはない。その一方、コリン性副作用-消化器症状が出現して、使い続けることができなかった患者は全体の20%に達した。50%の患者には無症候性のトランスアミナーゼ(肝機能障害)の上昇が見られた。

1)仙波純一・訳:精神科治療薬処方ガイド;メディカル・サイエンス・インターナショナル,2006

2)http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/ALZkusuriNIKKEInew.html,2007.2.3.

3)山口 登・他:薬物療法概論-Alzheimer病治療薬を中心に-;日本臨床,61(増刊号9):566-569(2003)

[011.1.TAC:2007.2.5.古泉秀夫]