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『蠟梅について』

土曜日, 3月 7th, 2015

KW:生薬・蝋梅・唐梅・ロウバイ科・ロウバイ属・Calycanthus fertilis・蜡梅・腊梅・ソシンロウバイ・素心蝋梅・マンゲツロウバイ・満月蝋梅・トウロウバイ・唐蝋梅

Q:蝋梅は漢方としての使用例は見られるのか

A:中国、温帯アメリカ原産。庭木にされる落葉低木。12~2月に芳香のある花を付ける。花は萼片と花弁の区別のない多数の花被片から成る。花被片*は淡黄色で蝋を染み込ませたような光沢がある。最も内側の数片は暗紫色である。葉は対生、全縁である。秋に熟す果実は3cm程の長卵形で色は暗褐色、光沢はなく、蛹か昆虫の巣を想像される。

基原:ロウバイ科(Calycanthaceae)ロウバイ属。蜡梅:Chimonanthus praecox(L)Link.(ロウバイ)の萼付きの花を乾燥したもの。

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性味:味は辛・苦、性は平。

別名:唐から導入されたことから唐梅、蠟梅、臘梅。ソシンロウバイ(素心蝋梅)、マンゲツロウバイ(満月蝋梅)、トウロウバイ(唐蝋梅)等の栽培品種がある。よく栽培されているのはソシンロウバイで、花の中心まで黄色く、花全体が黄色である。ロウバイの基本種は、花の中心部は暗紫色で、その周囲が黄色である。

処方名:蜡梅花、蜡梅、腊梅花、腊梅。

生薬名:蝋梅花。

使用部位:蕾

薬効:熱による眩暈、煩悶、口渇、喉の腫れに用いる。但し、漢方では用いられないとするほか、漢方では解熱、鎮咳、鎮痛薬として、熱病煩渇、咳嗽、小児麻疹、百日咳、火傷などに用いられるとする報告及び頭痛、発熱、口渇、胸内苦悶、多汗等の治療に用いられるとする報告がみられる。

使用方法:鎮咳、解熱に蝋梅花1日量4~8gに300mLの水を加え、1/3量になるまで煎じたものを3回に分服する。蝋梅花20~30gを200mLのゴマ油に漬けたものは火傷に効果があるの報告が見られる。
              
成分:花蕾にはcineole、borneol、linalool、camphor、farnesol、テルピネオール、セスキテルペノール、インドール、アルカロイドのカリカンチン及びイソカリカンチン、フラボン類のmeratin、α-carotene、キモナンチン等を含む。その他精油としてα-ocimene、3-hexenol、1,8-cineole等を含むとする報告がある。

有毒部:種子。種子に含まれるalkaloidのカリカンチン(calycanthine)は、哺乳動物に対し、ストリキニーネ様作用を示し、ウサギの摘出腸管、子宮に対して興奮作用が見られる。また麻酔ネコ、イヌに対して心臓抑制による血圧降下作用が認められた。ストリキニーネ様作用による平均致死量は静脈注射でマウスに対して43.79±1.89mg/kg、ラットに対し17.16±0.82mg/kg。その他、calycanthineは中枢神経を麻痺させ、手足の硬直性痙攣を来す。calycanthineの致死量はマウス44mg/kg(静脈注射)、ラット17mg/kg(静脈注射)であるとする報告も見られる。

*花被片:通常、花弁と萼が形態的に類似する、あるいは殆ど区別できない場合に、花弁と萼をまとめて花被片という。

1)指田 豊・他:身近な薬用植物-あの薬はこの植物から採れる;平凡社,2013
2)海老原昭夫:知っておきたい身近な薬草と毒草;薬事日報,2003
3)三橋 博・監:原色牧野和漢薬草大圖鑑;北隆館,1988
4)神戸中医学研究会・訳編:漢薬の臨床応用;医歯薬出版,1979

                                 [011.1.CAL:2015.1.6. 古泉秀夫]