Archive for 3月 7th, 2015

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「シマハスノハカズラについて」

土曜日, 3月 7th, 2015

KW:薬名検索・エボラ出血熱・シマハスノハカズラ・縞蓮葉葛・テトランドリン・防己・ボウキ・粉防己・フンボウキ

Q:エボラ感染防ぐ?ハーブとして報道されたシマハスノハカズラについて

A:報道された内容は以下の通りである。
『西アフリカで流行中のエボラ出血熱への感染を、中国原産のハーブで防止できる可能性があるとの論文を、米テキサス・バイオメディカル研究所の桜井康晃研究員らのチームが、米科学誌サイエンスに発表した。
研究チームは、エボラウイルスが細胞の中に入って感染にいたる仕組みを研究。中国原産の植物シマハスノハカズラに含まれる成分の「テトランドリン」が、感染を防ぐことを発見したという。
論文によると、同研究所の高度安全実験(BSL4)施設で、致死量のエボラウイルスに曝したマウス7匹に、体重1kg当たり90mgのテトランドリンを2日に1回投与したところ、約半数の3匹が10日後も生存した。テトランドリンを投与しなかったマウス7匹は、8日後までに全て死亡した。
桜井研究員は、「今後、サルなどでテトランドリンの効果を確認し、エボラ出血熱の薬の開発につなげたい」と話す。
「テトランドリンは中国以外では人間への投与が承認されておらず、投与量によっては人体に有害。現在60種類あるエボラ出血熱の治療薬の候補と同様に、更なる研究が必要だ」としている。
エボラ出血熱は西アフリカのリベリア、シェラレオノ、ギニアを中心に流行、22日現在で2万3729が感染、うち9604人が死亡した。

シマハスノハカズラ(縞蓮葉葛・和名)の基源は、ツヅラフジ科(Menispermaceae)ハスノハカズラ属の植物で、漢方名粉防己(フンボウキ)である。異名として解離、載君行(サイクンコウ)、石解。木防己及びウマノスズクサ科の植物、広防己、異葉馬兜鈴の根。
シマハスノハカズラ(Stephania terandra S.Moore)、石蟾蜍(セキセンジョ)、山烏亀(サンウキ)、漢防己、倒地拱(トウチコウ)、金糸吊鼈(キンシチョウベツ)、白木香(ハクモッコウ)とも云われる。多年生の常緑のつる性よじのぼり植物。根は円柱形で塊状のこともある。外皮は淡褐色か茶褐色。開花期は4-5月、結実期は5-6月。山野丘陵地、草むら、低木林の縁に生える。分布は浙江、安徽(アンキ)、江西、福建、広東、広西及び台湾等。
[採取]秋、掘り出し、洗浄するかコルク部を剥ぎ、長い棒切りにして太い根を縦に2-4分割し、日干しにする。
[成分]粉防己の根にはalkaloidが約1.2%含まれるが、それらはテトランドリン(tetrandrine:C38H42O6N2)、デメチルテトランドリン(demethyl tetrandrine:C36H40O6N2)、ファンチノリン(fanchinoline)、一種のフェノール性alkaloid(C34H42O6N2)、メニシン、メニシジン及びシクラノリン等である。
粉防己のalkaloidは過去様々な異名で呼ばれた。テトランドリンはハンファンチンAとかファンチニンと呼ばれ、ファンチノリンはデメチルテトランドリンとかハンファチンB、フェノール成分はハンファチンCと呼ばれていた。メニシンは、もとはムファンチンA、メニシジンはムファンチンBと呼ばれ、それぞれテトランドリンとデメチルテトランドリンの異性体である。
粉防己の根にはこのほかフラボノイド配糖体、フェノール類、有機酸、精油などが含まれる。
[薬理]①鎮痛作用を示す。煎剤・抽出液には鎮痛作用がある。但し、量を増やすと鎮痛作用がかえって減弱する。総alkaloidの作用が最も強く、有効投与量は50mg/kg、LD50は241-251mg/kgである。ハンファチンCの鎮痛作用は、A・Bに比べて強いが、毒性も強いため実用価値はない。ハンファチンA・B及び粉防己の流エキスか煎剤には、共にかなりの鎮痛作用が有り、Aの作用はBより強く、有効投与量はモルヒネの10-20倍であることが解っている。モルヒネの鎮痛効力を100とすると、粉防己の総alkaloidは約13で、抗ヒスタミン薬であるdiphenhydramineはハンファンチンA及びCの鎮痛作用を著しく高めるが、毒性には影響しない。
②消炎及び抗アナフィラキシー作用、③循環器系の作用(降圧作用、血管拡張作用)、④横紋筋への作用(弛緩作用)、⑤平滑筋に対する作用(子宮平滑筋の抑制)、⑥抗菌、抗原虫、抗悪性主要作用、⑥筋弛緩作用。⑦利尿作用:作用は顕著で、尿量を47%増加した。
[効能]粉防己は利尿、鎮痛薬としてリウマチ性関節炎、高血圧、神経痛、水腫、腫れ物、毒蛇による咬傷などに使用される。
tetrandrineには、消炎・抗アナフィラキシー、解熱、鎮痛、血管拡張、顕著な降圧作用がある。降圧作用は、血管運動中枢と交感神経中枢の抑制及び血管に対する直接作用による。また、下垂体-副腎系を刺激して、副腎皮質機能を亢進させる。demethyl tetrandrineはtetrandrine類似の作用を持つがやや弱い。
[用法・用量]粉防己4.5-9gを水で煎じて服用する。外用には新鮮な根を擂り潰して患部に塗布する。

[註]中国では“防己”として木防己と漢防己を最もよく用いる。但し、日本ではツヅラフジ科清風藤(Sinomenium acutum(Thumb.)Rehd.et Wils)(オオツヅラフジ)を漢防己としており、中国で云う漢防己とは違うので、注意を要する。

1)読売新聞,第49961号,2015.3.1.
2)上海科学技術出版社・編:中薬大辞典[4];小学館,1998
3)三橋 博・監:原色牧野和漢薬草大圖鑑;北隆館,1988
4)神戸中医学研究会・訳・編:漢薬の臨床応用;医歯薬出版株式会社

                               [015.9.STE:2015.3.6.古泉秀夫]

『蠟梅について』

土曜日, 3月 7th, 2015

KW:生薬・蝋梅・唐梅・ロウバイ科・ロウバイ属・Calycanthus fertilis・蜡梅・腊梅・ソシンロウバイ・素心蝋梅・マンゲツロウバイ・満月蝋梅・トウロウバイ・唐蝋梅

Q:蝋梅は漢方としての使用例は見られるのか

A:中国、温帯アメリカ原産。庭木にされる落葉低木。12~2月に芳香のある花を付ける。花は萼片と花弁の区別のない多数の花被片から成る。花被片*は淡黄色で蝋を染み込ませたような光沢がある。最も内側の数片は暗紫色である。葉は対生、全縁である。秋に熟す果実は3cm程の長卵形で色は暗褐色、光沢はなく、蛹か昆虫の巣を想像される。

基原:ロウバイ科(Calycanthaceae)ロウバイ属。蜡梅:Chimonanthus praecox(L)Link.(ロウバイ)の萼付きの花を乾燥したもの。

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性味:味は辛・苦、性は平。

別名:唐から導入されたことから唐梅、蠟梅、臘梅。ソシンロウバイ(素心蝋梅)、マンゲツロウバイ(満月蝋梅)、トウロウバイ(唐蝋梅)等の栽培品種がある。よく栽培されているのはソシンロウバイで、花の中心まで黄色く、花全体が黄色である。ロウバイの基本種は、花の中心部は暗紫色で、その周囲が黄色である。

処方名:蜡梅花、蜡梅、腊梅花、腊梅。

生薬名:蝋梅花。

使用部位:蕾

薬効:熱による眩暈、煩悶、口渇、喉の腫れに用いる。但し、漢方では用いられないとするほか、漢方では解熱、鎮咳、鎮痛薬として、熱病煩渇、咳嗽、小児麻疹、百日咳、火傷などに用いられるとする報告及び頭痛、発熱、口渇、胸内苦悶、多汗等の治療に用いられるとする報告がみられる。

使用方法:鎮咳、解熱に蝋梅花1日量4~8gに300mLの水を加え、1/3量になるまで煎じたものを3回に分服する。蝋梅花20~30gを200mLのゴマ油に漬けたものは火傷に効果があるの報告が見られる。
              
成分:花蕾にはcineole、borneol、linalool、camphor、farnesol、テルピネオール、セスキテルペノール、インドール、アルカロイドのカリカンチン及びイソカリカンチン、フラボン類のmeratin、α-carotene、キモナンチン等を含む。その他精油としてα-ocimene、3-hexenol、1,8-cineole等を含むとする報告がある。

有毒部:種子。種子に含まれるalkaloidのカリカンチン(calycanthine)は、哺乳動物に対し、ストリキニーネ様作用を示し、ウサギの摘出腸管、子宮に対して興奮作用が見られる。また麻酔ネコ、イヌに対して心臓抑制による血圧降下作用が認められた。ストリキニーネ様作用による平均致死量は静脈注射でマウスに対して43.79±1.89mg/kg、ラットに対し17.16±0.82mg/kg。その他、calycanthineは中枢神経を麻痺させ、手足の硬直性痙攣を来す。calycanthineの致死量はマウス44mg/kg(静脈注射)、ラット17mg/kg(静脈注射)であるとする報告も見られる。

*花被片:通常、花弁と萼が形態的に類似する、あるいは殆ど区別できない場合に、花弁と萼をまとめて花被片という。

1)指田 豊・他:身近な薬用植物-あの薬はこの植物から採れる;平凡社,2013
2)海老原昭夫:知っておきたい身近な薬草と毒草;薬事日報,2003
3)三橋 博・監:原色牧野和漢薬草大圖鑑;北隆館,1988
4)神戸中医学研究会・訳編:漢薬の臨床応用;医歯薬出版,1979

                                 [011.1.CAL:2015.1.6. 古泉秀夫]