Archive for 3月 31st, 2015

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§蹌々踉々[4]

火曜日, 3月 31st, 2015

            鬼城竜生

                              『ワクチン接種歴』

例えば、『貴方は破傷風ワクチンを接種していますか』と聴かれて、はっきり『している』と回答できる人が、どの程度いるだろうか。破傷風が特殊すぎるというのであれば、『麻疹ワクチン』でもいい。摂取したことがあるのか無いのか。乳幼児の頃のワクチンの接種歴など、殆どの人々が正確に記憶していないというのが実情ではないか。
突然この様な話を持ち出されても、なへんに話の意図があるのか分かりづらいと云うことになるのかもしれないが、先日知り合いが怪我をした時、熱が下がらないということから、破傷風ではないのかという話になり、破傷風ワクチンの接種の記憶にまで立ち至ったというわけである。
種々のワクチンを接種することは重要なことである。しかし、それを当人が明確に認知する手立てが取られていないということは、医療提供側としては怠慢ではないのか。電子化したカードの中に、ワクチン接種歴を登録する等ということは出来ないのかどうか(呑)。

                                『消炎酵素薬』

抗炎症・腫脹作用、喀痰・膿汁の融解・排泄促進作用、抗生物質の病巣部移行促進作用等を有するとするのがserrapeptaseの薬理作用である。本薬は1995年に行われた再評価における承認条件として、厚生労働省から必要なdataを揃えるよう求められていた。そこで武田薬品では、自主的に慢性気管支炎、足関節捻挫を対象とした試験を実施したが、プラセボ対比で有効性を示すことができなかった。これを受けて1月19日の厚労省の薬事・食品衛生審議会医薬品再評価部会は、本薬の有効性を検証する再試験の実施を指示。同社は再試験の実施に向け、試験デザインを見直す方向で検討を進めてきたが、最終的に有効性を証明することは困難と判断。武田薬品は2月21日販売を打ち切り、自主回収すると発表した。1968年に承認された同薬は、2009年度決算ベースで年間売り上げ約67億とされている[読売新聞,第48496号,2011.2.21.]。本薬の後発品は10製品ばかりある。後発品の定義は全く同じ薬ということである。当然これも消滅する定めにある(呑)。

                                「ついに出た」

2011.2.11.読売新聞によれば、担当医が常用量の5倍の治療薬を記載した処方箋の誤記を見逃したとして、薬剤師法の規定違反で損害賠償を求める判決が出されたという。「治療薬は劇薬指定され、重大な副作用を生じ得る医薬品で、常用量の5倍だったことを考慮すれば、担当医に紹介すべきだった」ということで薬剤師の過失を認定したという。従来であれば、医師の処方誤記が問題になるだけで、調剤した薬剤師に迄は手が伸びなかったのではないか。それが今回は薬剤師の責任が明確に判断されている。責任ありとされた今回の事例の薬剤師は調剤担当者なのか、それとも調剤の鑑査をした薬剤師なのか。新聞の記事からは読み取ることが出来なかったが、詳細な判決文を読みたいものである。何れにしろ顔の見える薬剤師ということは、このような責任の取らされ方をするということなのだろう(呑)。

                                『独善の排除』

薬剤師の書く論評を読む度に、何時も不思議に思うのは、なぜ同じような論調になるのだろうかということである。常に反省しつつ、業務の改善をしなければ、しなければという理論の展開は、一見前進的に見える。しかしこれは、いってみれば、何も改善はしておらず、旧態依然とした業務に流されていたというこになるのではないか。改善できない言い訳も、やれ員数が足りない、やれ院外処方箋の発行がされていない等の、似たり寄ったりの内容で、殆ど御当人の改善しようとする力量は棚上げされている。入院患者の服薬指導は、仕組みが完成して金が取れるようになったから実施するという仕事ではない。薬の専門家として、当然しなければならないことと認識していれば、どんなに忙しかろうと、患者の元に行かなければならない。何も向こう受けを狙った改革が必要なわけではなく、患者の治療にどう貢献するかが重要なはずである(呑)。

(2015.3.31.)

『ジェネリック医薬品批判記事への反論?』

火曜日, 3月 31st, 2015

                          魍魎亭主人

週刊文春1月8日号に「本当は危険なジェネリック医薬品」と題する取材記事が収載されたという。残念ながら読むことは出来なかったが、概ね次のような趣旨だったようだ。
『最近、薬局で安価なジェネリック医薬品を勧められた経験がある人も多いのではないか。厚労省は医療費削減のために、積極的に推奨しているが、果たして本当に先発品と同じ効き目があるのだろうか。その効果と共に安全性や製造ルートなどを多角的に検証した』と云うことのようである。

この記事に対してNPO法人ジェネリック医薬品協議会(GEDA)の理事長が1月15日文書による反論を行ったという。
『ジェネリック医薬品への正しい理解が広く速やかに浸透し、それが着実に定着していくことを標榜しているGEDAとして反論する。以下に詳述する前に、ジェネリック医薬品について、正しい理解のために重要なポイントを簡潔に述べると、①主薬(薬効成分)、その投与量、投与方法、更に生物学的同等性試験(薬物が血中へ入る量と入る速さ)が一定の許容域の範囲であれば、同等医薬品と見なせる

②上記①の考えは、欧米では1960年代に、日本国内では1970年代初めに確立され、医薬品の製造承認の基準に盛り込まれている。

③上記①は、1997年に国際薬学連合のみならず、世界保健機構及び国際医師会連盟においても公式に承認され国際承認事項になっている。

④上記①に関する学問領域は、実に日進月歩し信頼性が増している。そして日本の医薬品製造技術及び行政規制が、上記①を十分保証できる水準にあることは、国の内外で高く評価されているところである[週刊薬事新報,第2874号(20-21),2015]。

細かなことを云うようだが、『同等医薬品と 見なせる』と云うことはどういうことか。『見なす』とは『①見てこれこれだと仮定又は判定する。実際はどうであるかにかかわらず、こういうものだとして扱う』、『②見極める、見届ける。』、『③見るようにする。』、『④性質を異にする事物について、法律上これを同一視する。『推定』と区別して用いる』ということになるようで。

つまり『見なせる』と云うことは、あくまで性質を異にするものであるが同一視すると云うことであって全く同じではないと云っているのではないか。更に最近のTV-CMで、製剤的な工夫を施し、より飲み易くしている等と宣うているが、それは最早後発品とは云えない。その製剤的な工夫が、賦形剤等の変更により行われているとすれば、最早『生物学的同等性』が維持されているとは考えられない。

賦形剤の変更により、吸収率が上がり、副作用が発現したなどと云うこともあり得るのである。

           (2015.3.25.)

OTCエパデール「試験的販売」へ

火曜日, 3月 31st, 2015

                      魍魎亭主人

高脂血症治療薬「エパデール」(一般名:イコサペント酸エチル)のスイッチOTC薬が4月中旬にも発売される見通しだった。しかし、販売に際して「薬局・薬店が適正に販売できているか」を見極めるというOTC薬としては前代未聞の「適正使用調査」が義務付けられることになったという。そのため調査が終わるまでは店舗を限定した「試験的な販売」が行われるという。調査は最短でも3ヵ月は要すると見られ、「本格販売」までにはまだ相当の時間がかかりそうだという報道がされていた。

「エパデール」のスイッチOTC薬については、承認段階から問題があったと云うことである。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の一般用医薬品部会で、日本医師会の常任理事が、エパデールのOTC化に断固反対の姿勢を崩さず、審議は難航を極めた。しかも全会一致の慣例を無視して、医師会の常任理事以外が賛成するという賛成多数の原則論で珍しく厚生労働省が押し切ったという経緯がある。

「エパデール」のスイッチOTC薬化に、厚生労働省が珍しく執念を燃やしたのは、今後のself-medicationの導入推進の手段として、導入を図りたいと考えていたからではないかと思われる。従って今後も慢性疾患の治療薬をswitch化すると云う底意が隠れている。医師会はそれを見抜き、断固反対という姿勢を見せていたのではないか。それからすると今回の「適正使用調査」は、簡単に済むような話にはならないのではないかと思われる。

医師会の意見が種々加味されれば、「適正使用調査」の内容は、簡単なものにはならないことが予測される。現在、具体的な内容が未だ見えてこないので何とも云いようがないが、厚生労働省も経緯があるだけに、抵抗できないのではないか。

不思議なことは、「エパデール」のような、血液検査をしなければその効果が判定できないような薬を何故OTC薬化しようとするのか。更に何回か薬を服めば治癒するという性質の薬ではない。この様な厄介な薬をOTC薬化するのでは無く、短期間の使用で結果の出る薬はもっと有りはしないか。

例えば肉芽形成作用のある傷薬の外用剤あるいは化膿性皮膚疾患に使用可能な外用剤等々、医師の処方では無く、医師の指示書に基づいて薬局で個人が購入する、その様な手法の薬の導入があってもいいのでは無いか。

「エパデール」のOTC薬は2社が販売したが、1社は「適正使用調査」の困難さから撤退したと聞く。これでは仏造って魂入れずで、意味がない。医療用医薬品のOTC薬化については、どの範囲の薬を取り上げるのか、基本的なところを決めてから話を進行させるべきではないのか。何でもかんで槍玉に挙げるというやり方をしていたのでは、医師会の反論を受けるだけで終わってしまう。

                                 (2015.3.31.)