Archive for 8月, 2014

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『西洋唐花草について』

火曜日, 8月 26th, 2014

 

KW:漢方薬・健康食品・啤酒花・ヒシュカ・ホップ・アルツハイマー病・西洋唐花草・ホップ腺

Q:アルツハイマーに有効とされる啤酒花について

A:2014年1月の毎日新聞の記事として『アルツハイマー病の予防効果が確認されたホップ=サッポロビール提供』なる情報提供がされた。それによると「症状が軽い場合に進行を遅らせる効果」が期待出来るというもので、記事内容は以下の通り。
『京大大学院生命科学研究科の垣塚彰教授(分子細胞生物学)らの研究グループは30日、ビールの原料の一つ「ホップ」のエキスにアルツハイマー病の予防効果があることをマウスを使った実験で確認したと発表した。ビールに含まれる成分ではないが、サッポロビールが商品開発を進める。30日付の米オンライン科学誌「プロス・ワン」に掲載された。
研究グループによると、予防効果が確認されたのはホップの雌株の花に含まれるエキス。啤酒花(ひしゅか)という生薬として中国では鎮痛薬に、欧米では不眠改善のハーブなどとして使われている。妊婦が大量に飲むことは好ましくないとされている。
アルツハイマー病は蛋白質「アミロイドβ(Aβ)」が脳内にたまることが原因の一つとされている。研究グループは、Aβの産出を促す酵素に着目。約1,600種類の植物エキスを調べたところ、ホップエキスに含まれる成分が酵素の働きを最も強く抑えられることが分かったと云うもの。

ホップ(和名:セイヨウカラハナソウ;西洋唐花草)は、アサ科カラハナソウ属のヨーロッパ原産の植物で、日本では中部以北で栽培されているつる性の多年草である。学名:Humulus lupulus L.生薬名:啤酒花。別名:Common Hops.、European Hops.、Hopfenzapfen、Hop Strobile等。花は7月頃開花し、雄花は黄色で小さく、多数が円錐状の花穂につく。雌花は苞が重なり合って、松笠状となる。各苞毎に2個のレンズ状のそう果を結ぶ。

[薬用部分]果穂、腺体(ホップ)。8-9月頃球果を摘み取る。これを風通しの良いところで乾燥させる。ホップを布袋に入れて振り動かし、苞の内側にある顆粒が落ちて集まったものホップ腺という。ホップ腺には苦みと芳香があり、ビールに用いる。

*ホップ腺:雌花穂が成熟するにつれ、苞のつけ根に粘り気のある黄粉状の腺体が発生する。この腺体をホップ腺という。

[成 分]ホップ腺にはフムロン、ルプロン、コムフロン、コルプロンの他、クエルシトリン、精油のα-、β-フムレン、ミルセン等を含む。

[薬効・薬理]科学的データはまだ不十分である。ホップ腺は芳香性苦味健胃作用及び鎮静、利尿作用があり、消化不良、不眠症などに用いられる。その他、不安、緊張、注意欠陥多動性障害(ADHD)、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、高コレステロール血症、腸痙攣、下腿潰瘍、結核、膀胱炎、神経痛等。またホップの成分にはビールの苦味の他に、その腐敗を防ぎ、濁りを抑える働きがあると云われている。
[使用法]健胃、鎮静にはホップ果穂2-5gを1回量として熱湯を注いだものを数分後に服用する。また利尿、健胃、鎮静にはホップ腺0.5-1.5gを1回量として、そのまま水かぬるま湯で服用する。

[体内動態]本品に含まれる化合物に、エストロゲンの作用を減弱させる作用があると推定されている。
[安全性]殆どの人に安全と考えられているが、妊娠中・母乳授乳期に使用することの安全性は未確立。うつ病の患者には使用禁忌。術中・術後に使用される医薬品との併用は過度の鎮静状態になることがある。2週間以内に手術を受ける患者の使用禁忌。

[相互作用]鎮静剤(clonazepam、lorazepam、phenobarbital、zolpidem等)、鎮静作用のあるハーブ、健康食品は作用増強の恐れがあるので併用しない。

1)三橋 博・監:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988
2)日本医師会・他総監修:健康食品・サプリメント(成分)のすべて;Jahfic,2013

        [015.9.HOP:2014.7.25.古泉秀夫]

「アンレキサノクスについて」

火曜日, 8月 26th, 2014

 

KW:薬名検索・アンレキサノクス・amlexanox・喘息・アレルギー性鼻炎治療薬・痩身剤・肥満治療薬・やせ薬・口内炎

Q:アンレキサノクスについて

A:CNNの放送による次の記事が紹介されている。

口内炎の治療に使用される薬物をネズミに投与したところ、肥満ネズミが痩せる効果が確認されたと云う報告を、米・ミシガン大学の研究チームが10日、医学誌ネイチャーメディシンに研究結果を発表した。アンレキサノクスを投与されたネズミは、減食・運動量の負荷なしに、体重が減少したという。研究チームは年内にも臨床試験に踏み切る方針で、人間にも効果が表れる可能性は高いと期待を示している。

amlexanox[JAN]は日本薬局方収載医薬品で、分子式:C16H14N2O4=298.29。CAS:68302-57-8。開発記号:AA-673。商品名:ソルファ錠(武田)。
本品の適応は喘息・アレルギー性鼻炎治療薬で、投与量は、通常成人として1回25-50mgを1日3回。朝・夕・就寝前に経口投与する。アレルギー性鼻炎の場合、通常成人には1回25-50mgを1日3回経口投与するとされている。

ミシガン大学の実験では、高脂肪食を摂餌させて肥満状態にしたネズミにamlexanoxを投与したところ、ネズミは高カロリーの餌を食べ続けているのに体重が減少し、投与を中止すると体重は元に戻った。

この実験結果について検討したところamlexanoxが代謝をコントロールする遺伝子に対して作用することを解明し、ネズミに投与すると食欲を抑えることなく、代謝を上げる効果があることが分かったとしている。

ルイジアナ大学で肥満などについて研究しているジョージ・ブレイ医師は、肥満を抑制するための新薬の開発につながる可能性があると期待を示す。臨床試験の結果、もしヒトにも痩身効果があることが確認された場合でも、例えば心臓等の他の部位に思わぬ副作用が出る可能性もあることから、安全性の検証が不可欠となる。また、本品の使用を中断した場合、体重が元に戻ってしまうのではないかという懸念が持たれている。

CNN:アメリカ合衆国のケーブルテレビ向けのニュース専門放送局。

1)ソルファ錠25・50mg添付文書,2012.4.
2)ソルファ錠25・50mgインタビューフォーム,2012.10.
3)ソルファ点鼻用インタビューフォーム,2012.10.

             [011.1.AML:2014.6.25.古泉秀夫]

『薬剤師法第25条の2の改正について』

火曜日, 8月 26th, 2014

KW:法律規則・薬剤師法・第25条・情報提供義務・情報指導義務・医薬品の適正使用

Q:薬剤師法第25条の改正について

A:2013年に成立した改正薬剤師法は、2014年6月12日から施行される。今回の改正で、薬剤師法第25条の2は、従来の「情報提供義務」から「情報提供及び指導義務」へと変更されている。
薬剤師法 第25条(調剤された薬剤の表示)として『薬剤師は、販売又は授与の目的で調剤した薬剤の容器又は被包に、処方せんに記載された患者の氏名、用法、用量その他厚生労働省令で定める事項を記載しなければならない。

第25条の2(情報の提供) 薬剤師は、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報を提供しなければならない。

改正条文

 

第25条の2(情報の提供及び指導)薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たっている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。

第25条に記載されている『厚生労働省令で定める事項』とは、次の6項が規定されている。
一 当該薬剤の名称(一般的名称があるものにあつては、その一般的名称。以下同じ。)
二 当該薬剤の有効成分の名称及びその分量(有効成分が不明のものにあつては、その本 質及び製造方法の要旨。以下同じ。)
三 当該薬剤の用法及び用量
四 当該薬剤の効能又は効果
五 当該薬剤に係る使用上の注意のうち、保健衛生上の危害の発生を防止するために必要 な事項
六 その他当該薬剤を調剤した薬剤師がその適正な使用のために必要と判断する事項

また、『薬剤服用歴管理指導料を算定する場合』、患者ごとに作成された薬剤服用歴に基づき、投薬に係る薬剤の名称、用法、用量、効能、効果、副作用及び相互作用に関する主な情報を文書又はこれに準ずるもの (以下この表において「薬剤情報提供文書」という。)により患者に提供し、薬剤の服用に関して基本的な説明を行うこととされている。

ア.患者ごとに作成した薬剤服用歴の記録に基づいて、処方された薬剤の重複投薬、相互作用、薬物アレルギー等を確認した上で、次に掲げる事項その他の事項を文書又はこれに準ずるもの(以下「薬剤情報提供文書」という。)により情報提供し、薬剤の服用に関し、基本的な説明を患者又はその家族等に行うこと。


(イ) 当該薬剤の名称(一般名処方による処方せん又は後発医薬品への変更が可能な処方せんの場合においては、現に調剤した薬剤の名称)、形状(色、剤形等)
(ロ) 用法、用量、効能、効果
(ハ) 副作用及び相互作用
(ニ) 服用及び保管取扱い上の注意事項
(ホ) 保険薬局の名称、情報提供を行った保険薬剤師の氏名
(ヘ) 保険薬局又は保険薬剤師の連絡先等

等が、規定されている。今回の25条2項の改正で、『必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない』とされたことから、少なくとも従来、印刷して手渡していた用紙に記載されている程度の内容では、『必要な薬学的知見』に基づく説明にはなっていないと考えられる。

患者が服用する薬に関し、その効果について、正確な事実を伝えることを第一義とすべきであり、間違えても企業のコマーシャリズムに寄り添った妙な期待感を持たせる様な説明をすべきではない。画期的な新薬は画期的な副作用を潜在化している可能性があり、妙な期待感を持たせるべきではない。正確な事実を事実として説明すべきである。

更に患者にとって最も重要な情報の一つは、副作用であり、副作用については重篤な副作用であるからと云って隠すことがあってはならない。実害を受けるのは、処方医でもなければ調剤する薬剤師でもなく、その薬を服用する患者自身だからである。患者に情報を伝える際の根拠となるべき資料は、最高裁判例を見るまでもなく、第一義的には添付文書であり、添付文書に記載されている内容を如何に噛み砕いて伝達するかが重要な役割となる。『先ず添付文書の記載事項を守る文化』を拡散すべきである。

1992年(H4)に厚生省薬務局によって『21世紀の医薬品の在り方に関する懇談会』が設置され、翌年1993年(H5)に出された報告に「医薬品の適正使用」に関する定義が報告されているが、それは次の通りである。

「医薬品の適正使用」とは、先ず的確な診断に基づき、患者の症状にかなった最適の薬剤、剤形と適切な用法・用量が決定され、これに基づき調剤されること、次いで患者に薬剤についての説明が十分に理解され、正確に使用された後、その効果や副作用が評価され、処方にフィードバックされるという、一連のサイクルである。

「医薬品の適正使用」のサイクルには、六つのステップがある。

1.的確な診断、最適な薬剤・剤形、適切な用法・用量
2.調剤
3.薬剤の説明を十分に理解
4.正確に使用
5.効果や副作用を評価
6.処方にフィードバック

1)一般社団法人日本病院薬剤師会「改正薬剤師法施行への対応について」;http://www.jshp.or.jp/cont/14/0526-1.html,2014.7.7.
2)21世紀の医薬品の在り方に関する懇談会 報告,1993
3)http://www.aska-p.jp/適正使用, 2014.4.21.

            [615.1.LOW.2014.7.22.古泉秀夫]

「再生研の中心人物」

火曜日, 8月 26th, 2014

       魍魎亭主人

理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長が、2014年8月5日に自死した。

笹井氏は、『神経系の初期発生の遺伝子・細胞レベルの研究者として知られ、世界で初めてES細胞による網膜の分化誘導と立体的網膜の生成に成功。更にES細胞から視床下部前駆細胞の分化誘導、脳下垂体の立体的な形成にも成功した優秀な科学者として内外で高い評価を受けていた研究者であるとされている。

STAP細胞の論文では、主要著者の一人で、小保方晴子氏の発表記者会見では、STAP細胞の存在について、確信的に話していた。しかし、STAP細胞の発生は奇跡的な事態だったと見えて、発表された論文の瑕疵が次々に指摘され始めた。更に悪いことに論文の中に丸ごとコピーした部分があるとの指摘がされ、写真が違うの何が違うのとの指摘が次々にされ、STAP細胞そのものの存在まで否定される始末になった。

笹井氏にすれば、この分野での第一人者で有り、論文の共同発表者として論文内容に立ち入って後ろ指を指されるようなことは、耐えがたかったと云うことだろう。更に理化学研究所は、国策に依拠した研究所として、体制の変更が求められており、重圧は相当のものだったのではないだろうか。

いずれにしろ小保方氏は笹井氏の望み通り、STAP細胞の存在を証明することに全力を挙げることしかない。それが可能であれば、この無為の騒ぎを終結することが出来るが、もしそれが未完で終わるならば、この騒ぎは何だったのだと云うことになり、我が国にとって重要な頭脳を失ったという負の遺産しか残らないことになる。

        (2014.8.8.)

『盲亀の浮木・優曇華の花』

金曜日, 8月 1st, 2014

                  魍魎亭主人

平成14年度の診療報酬改定で、「薬剤服用歴管理指導料」(41点)の要件が厳しくなった。患者が希望せず、お薬手帳を交付しない場合に7点マイナスして34点の算定になった。そこで調剤薬局の一部で考え出されたのが、紙1枚を折って作っただけのペラペラの1枚物の手帳擬き。

その手帳擬き、薬の情報を記載できる部分は僅かに1頁の薄っぺらな代物。規定されている手帳の要件を最低限盛り込んだ使い捨てタイプで、単に点数を減点されないための方策だという。手帳に記載すべきとして規定された要件というのは『調剤日、薬剤の名称、用法、用量、相互作用その他服用に際して注意すべき事項』となっており、処方された薬の種々の情報を記載することになっているが、情報量を極端に絞り込めば、紙1枚を袋折にした手帳擬きでも情報の記載は可能だろう。

所でお薬手帳を「必ずしも必要としない患者」という切り口で、薬局の現場で手帳に必要事項を『記載』して、服薬管理を行わなければ点数はマイナスになる。これまで可能だった手帳を忘れた患者に対する医薬品情報記載のシールの配布による点数取得も不可とされた。

その結果考え出されたのが、手帳擬きである。しかし、これでは本来の薬剤師による服薬指導は、何処かに消えて無くなることになる。流石に厚生労働省も、この様な安直な方法は駄目だとの断を下したが、真の医薬分業を目指して、患者思考の仕事をしようとする薬剤師を探すのは、『もうきのふぼく(盲亀の浮木)』に等しいと云うことなのか。

薬剤師が書く文書で、お薬手帳の有用性が色々報告されているが、皮肉な言い方をすれば僅かに70円の評価でしかない。しかしそれを取られまいとして手帳擬きを考えるなどと云うことでは薬剤師としての品格が疑われる。

「薬剤服用歴管理指導料」の要件は、患者の薬の適正使用に貢献するため、薬についての必要情報を提供することであり、副作用を防止する、あるいはいち早く発見するために必要な情報を提供することが重要なのであって、別に手帳が重要なわけではない。手帳は飽く迄情報提供の手段(道具)であって、手帳を渡しておけばそれで済むという話ではない。当然OTC薬の記録から健康食品の記録まで、患者が服用している全ての物の情報を集約して管理することが必要になるはずである。

先日、何時もの薬を調剤薬局で受け取った。その時「手帳はお持ちですか?」ときかれたので「持っていません」と回答すると、追いかけて「家にはあるけれど今日は持ってきてないと云うことですか」、「いや前から必要ないと申し上げていますが」、「ああそうですか」と云う遣り取りがあった。

前回まではこんな遣り取りはなく、黙ってシールを出すということがされていたが、今回は手帳は不要と云われた場合、点数が取れないと云うことになったため、確認をしたのだろう。しかし手帳不要は前にも伝えてあり、厳密に言えば、殆ど情報の提供はうけていなかった訳で、本来なら「薬剤服用歴管理指導料」を取るのはおかしいと云うことではないのか。

薬を受け取る窓口で、唐突に「血圧はどうですか」という質問をされたが、この質問は何のための質問だったのか意味が分からない。血圧が安定していないと、ここで薬剤師に血圧の不安定さを伝えたとして、薬剤師に何か出来るのか。処方の変更は医師の範疇であり、病状の変化は医師に伝えなければ、処方の変更はされない。血圧が安定していると云うことは、薬の変更は必要としないと云うことであり、薬局での薬剤師と患者の対話としては、甚だ間が抜けていると云えるのではないか。

所で「盲亀の浮木」とは、「会うことが非常に難しいこと、めったにないことのたとえ。また、人として生まれることの困難さ、そしてその人が仏、または仏の教えに会うことの難しさのたとえ。大海中に棲すみ、百年に一度だけ水面に浮かび上がる目の見えない亀が、漂っている浮木のたった一つの穴に入ろうとするが、容易に入ることができないという寓話ぐうわによる。」と云うことであり、「優曇華の花(うどんげのはな)」は、三千年に一度開くとされており、非常に珍しい現象の例えである。つまり点数が付く付かないに関係なく、患者が必要とする情報を提供する薬剤師は、稀れなのかという寓意である。

            (2014.5.5.)

『漁夫の利』

金曜日, 8月 1st, 2014

                   魍魎亭主人

日本ジェネリック製薬協会(会長・澤井弘行)は、2112年度の薬価制度改革で、長期収載品薬価の追加引き上げの対象に、後発品も含まれるという厚生労働省の対応に、断固反対を表明しているという。また、内用薬で10品目以上の参入が見られた場合、後発品の薬価が先発品の六掛けに引き下げられるという話から、中堅以下の後発品メーカーは、原価率が60%を超えており、設備投資などで多くの資金を要するため、これ以上の引き下げがあれば、安定供給は出来なくなると発言しているようである[リスファックス,第5987号,平23.12.20.]。

この御意見も端から聞いているとおかしな話で、中堅以下の後発品メーカーでは、原価率が60%を超えていると云うが、それは薬価制度とは全く関係のない話で、企業救済のために医療費を配分していいなどと云う話はどこにもない。何で国民の納付した保険料あるいは税金を使って後発品企業を救済しなければならないのか。企業経営者としては甘え以外の何者でもない。

後発品が製造できなければ製造できないでかまわない。第一現在の後発品使用は、後発品企業の努力によって、製品が流動化したわけではなく、国の強引な政策によって、流動化したに過ぎない。どさくさ紛れに甘い汁を吸いたいと考える企業まで救わなければならない義理は国民にはないのではないか。

厚労省は後発品の使用目標30%が達成できないとして、後発品使用で期待される医療費の抑制を達成不能分を長期収載品薬価の切り下げで補填したいと考えているようであるが、長期収載品薬価の薬価を切り下げすぎると後発品の利用が減るとして、後発品も薬価切り下げの仲間に入れると云うことのようである。しかし、これも判らない話で、後発品の初発薬価が先発品の7掛けに設定されるということ自体が高すぎる設定ではないのかと申し上げたい。後発品を七掛けにするなどと云う価格の高止まりに維持する必要はないと考えるのである。

もし後発品の薬価を高止まりにするというなら、長期収載品の薬価をサッサと7掛けにしてしまえばいいのではないか。そうすれば後発品を無駄に造ることもなく、後発品の使用を30%等という目標設定を立てることもなく、医療費の抑制も可能になるのではないか。第一、未だにゾロという名前の時代の残渣を引き摺り、同一原料で10~20の商品が販売され、酷い場合には30を超える商品が発売されると云う状況になる。

しかし、後発品の数が多ければ多いほど、発売された全ての後発品が使われる訳ではない。売れない後発品は自ら価格を下げ、価格競争で製品を販売しようとする。それなら最初から後発品の薬価は5割程度に設置し、製品数も抑制する。更に後発品推奨のために、医師、調剤薬局に付けている報奨金みたいな手当は廃止する。そのことで患者の負担が減れば、黙っていても患者は、後発品を希望する様になるといえる。

                (2014.2.27.)

「上野の御山の五重塔」

金曜日, 8月 1st, 2014

                  鬼城竜生

上野東照宮の牡丹園で、春の牡丹展を始めたというので、4月25日定期の受診の後、上野に出かけることにした。京浜東北線の快速で大森から上野まで、品川経由で変に電車を乗り継ぐことをしなくとも、最も春牡丹-001早く辿り着くコースだと云春牡丹-002うことに遅ればせながら気が付いたが、半世紀を過ぎるほどに住んでいて今頃気が付くというのは相当呆けている。

牡丹園の牡丹は見頃と云えば見頃だったが、既に幾つかは茎が折られて、花が毟られた跡が見えた。何株もの花が、一斉に用意ドンで作のは難しく、自ずと時差が出てくる。さっさと咲いてしまう花もあれば、その隣で未だ蕾のままのものがある。その蕾も硬く小さなものから明日には咲くのではないかと思われる蕾もある。飽く迄花が開くと云うことは自然現象であり、何日から何日迄という、人の勝手に決めた期間内に全てが都合よく咲くとは限らない。

上野東照宮と云えば、1616年2月4日、見舞いのために駿府城にいた藤堂高虎と天海僧正は、危篤状態の徳川家康に呼ばれ、三人一つ所に末永く魂鎮まるところを作ってほしいという遺言を受けたという。そこで藤堂家の屋敷地であった上野に1627年に東照宮を造営したとされている。つまり東照宮とは、徳川家康(東照大権現)を神様としてお祀りする神社で、日光東照宮、久能山東照宮が知られているが、全国各地に数多くの東照宮が存在するため、『上野東照宮』と呼ばれているが、正式な名称は『東照宮』であるとされる。

1651年に三代将軍・徳川家光が大規模に建替を行ったのが、現存する社殿であるという。金箔をふんだんに使い、大変豪華であったことから「金色殿」とも呼ばれてい春牡丹-003たという。最近になって改修された東照宮の社殿は、その意味ではこの当時の社殿を復元したものということが出来るのではないか。なお、 当時は東叡山寛永寺の一部として管理されていたが、神仏分離令により寛永寺から独立したという。

その後、戦争や震災などの災厄に合うも、一度も被災することなく、江戸の面影をそのまま現在に残している貴重な文化財建造物であると云われる。所で、現在は上野動物園の園内に移築されており、東京都の所持品になっているという。元々は上野東照宮の一部として建設されたが、明治になってからの神仏分離令により、寛永寺の所属となり、更に昭和33年に同寺より東京都に寄付がなされ、現在では上野公園の管理下にある。

この五重塔は、寛永8(1631)年に建立されたが、寛永16年3月に花見客の不始末で失火により焼失してしまった。しかし、その後直ちに再建され、それが現存している塔だと云われている。流石、徳川家康を祀る神社である。直ちに建て直したと言うが、今なら何億と云う金額が必要になるだろうから、建て直しなどそう簡単に決意できないだろう。

そういえば上野の五重塔より目立っている塔として、京都の顔とも云うべき『八坂の塔(法観寺)』があるが、これ壊れた後の再建資金の積み立てはしてあるのかしらね。あの場所から五重塔が無くなってしまうと、相当の痛手を被ることになるというか、間抜けな姿になりはしないかと思うが、初建当時から今までに3回火災の被害を受けているとのことで、その都度時の権力者の支援を春牡丹-004受け再建された歴史があるようであるが、今後万一壊れた場合、再建可能かどうか、気になるところである。
この日の総歩行数9931歩。

           (2014.5.2.)