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『薬剤師法第25条の2の改正について』

火曜日, 8月 26th, 2014

KW:法律規則・薬剤師法・第25条・情報提供義務・情報指導義務・医薬品の適正使用

Q:薬剤師法第25条の改正について

A:2013年に成立した改正薬剤師法は、2014年6月12日から施行される。今回の改正で、薬剤師法第25条の2は、従来の「情報提供義務」から「情報提供及び指導義務」へと変更されている。
薬剤師法 第25条(調剤された薬剤の表示)として『薬剤師は、販売又は授与の目的で調剤した薬剤の容器又は被包に、処方せんに記載された患者の氏名、用法、用量その他厚生労働省令で定める事項を記載しなければならない。

第25条の2(情報の提供) 薬剤師は、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報を提供しなければならない。

改正条文

 

第25条の2(情報の提供及び指導)薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たっている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。

第25条に記載されている『厚生労働省令で定める事項』とは、次の6項が規定されている。
一 当該薬剤の名称(一般的名称があるものにあつては、その一般的名称。以下同じ。)
二 当該薬剤の有効成分の名称及びその分量(有効成分が不明のものにあつては、その本 質及び製造方法の要旨。以下同じ。)
三 当該薬剤の用法及び用量
四 当該薬剤の効能又は効果
五 当該薬剤に係る使用上の注意のうち、保健衛生上の危害の発生を防止するために必要 な事項
六 その他当該薬剤を調剤した薬剤師がその適正な使用のために必要と判断する事項

また、『薬剤服用歴管理指導料を算定する場合』、患者ごとに作成された薬剤服用歴に基づき、投薬に係る薬剤の名称、用法、用量、効能、効果、副作用及び相互作用に関する主な情報を文書又はこれに準ずるもの (以下この表において「薬剤情報提供文書」という。)により患者に提供し、薬剤の服用に関して基本的な説明を行うこととされている。

ア.患者ごとに作成した薬剤服用歴の記録に基づいて、処方された薬剤の重複投薬、相互作用、薬物アレルギー等を確認した上で、次に掲げる事項その他の事項を文書又はこれに準ずるもの(以下「薬剤情報提供文書」という。)により情報提供し、薬剤の服用に関し、基本的な説明を患者又はその家族等に行うこと。


(イ) 当該薬剤の名称(一般名処方による処方せん又は後発医薬品への変更が可能な処方せんの場合においては、現に調剤した薬剤の名称)、形状(色、剤形等)
(ロ) 用法、用量、効能、効果
(ハ) 副作用及び相互作用
(ニ) 服用及び保管取扱い上の注意事項
(ホ) 保険薬局の名称、情報提供を行った保険薬剤師の氏名
(ヘ) 保険薬局又は保険薬剤師の連絡先等

等が、規定されている。今回の25条2項の改正で、『必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない』とされたことから、少なくとも従来、印刷して手渡していた用紙に記載されている程度の内容では、『必要な薬学的知見』に基づく説明にはなっていないと考えられる。

患者が服用する薬に関し、その効果について、正確な事実を伝えることを第一義とすべきであり、間違えても企業のコマーシャリズムに寄り添った妙な期待感を持たせる様な説明をすべきではない。画期的な新薬は画期的な副作用を潜在化している可能性があり、妙な期待感を持たせるべきではない。正確な事実を事実として説明すべきである。

更に患者にとって最も重要な情報の一つは、副作用であり、副作用については重篤な副作用であるからと云って隠すことがあってはならない。実害を受けるのは、処方医でもなければ調剤する薬剤師でもなく、その薬を服用する患者自身だからである。患者に情報を伝える際の根拠となるべき資料は、最高裁判例を見るまでもなく、第一義的には添付文書であり、添付文書に記載されている内容を如何に噛み砕いて伝達するかが重要な役割となる。『先ず添付文書の記載事項を守る文化』を拡散すべきである。

1992年(H4)に厚生省薬務局によって『21世紀の医薬品の在り方に関する懇談会』が設置され、翌年1993年(H5)に出された報告に「医薬品の適正使用」に関する定義が報告されているが、それは次の通りである。

「医薬品の適正使用」とは、先ず的確な診断に基づき、患者の症状にかなった最適の薬剤、剤形と適切な用法・用量が決定され、これに基づき調剤されること、次いで患者に薬剤についての説明が十分に理解され、正確に使用された後、その効果や副作用が評価され、処方にフィードバックされるという、一連のサイクルである。

「医薬品の適正使用」のサイクルには、六つのステップがある。

1.的確な診断、最適な薬剤・剤形、適切な用法・用量
2.調剤
3.薬剤の説明を十分に理解
4.正確に使用
5.効果や副作用を評価
6.処方にフィードバック

1)一般社団法人日本病院薬剤師会「改正薬剤師法施行への対応について」;http://www.jshp.or.jp/cont/14/0526-1.html,2014.7.7.
2)21世紀の医薬品の在り方に関する懇談会 報告,1993
3)http://www.aska-p.jp/適正使用, 2014.4.21.

            [615.1.LOW.2014.7.22.古泉秀夫]