Archive for 5月 8th, 2012

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「西洋フキについて」

火曜日, 5月 8th, 2012

KW:健康食品・有害作用・セイヨウフキ・西洋ふき・西洋蕗・西洋フキ・butterbur・バターバー

Q:厚生労働省から使用注意の文書が出された西洋フキについて

A:西洋蕗・西洋フキ・セイヨウフキ、学名:Petasites hybridus。

キク科フキ属(petasites)の植物。英名:butterbur。バターバー。フキのヒブリドウス種(petasites hybridus)、ふき葉(petasites officinalis petasites Leaf)、ふき根(petasites root)。セイヨウフキはヨーロッパ全域とアジア北部に分布する、高さ1mになる多年草である。淡桃紫色の花を大型の穂状花序中につける。地上部は夏に、根は春から秋に採取される。

フキ属の学名であるペタシテス(Petasites)は古代ギリシャの医師・植物学者であるペダニウス・ディオスコリデスが、バターバーの大きな葉が羊飼いの雨よけ用の大きなフェルト帽ペタソス(petasos) に似ていることから名付けたと云われている。

また、植物の葉には抗菌物質や抗酸化物質が含まれていることが知られているが、ヨーロッパではかつて、気温の高いときにセイヨウフキの大きな葉でバターを包んでいたことから英語の一般名称であるバターバー (Butterbur) は、それに由来するといわれている。

セイヨウフキの使用部位は葉・根及び球根を用いると云われている。また、セイヨウフキ製品の一部にはピロリジジンアルカロイド(pyrrolizidine alkaloid:PA)が含まれるため、安全性に問題がある。PAは肝臓、肺及び血液循環を損傷し、癌の原因になることもあるとされる。PAを含むセイヨウフキ製品の経口摂取、及び傷口への塗布は、傷口から化合物が体内に吸収されるため、安全ではない。PAを含まないとの認定の記載のないセイヨウフキ製品は使用を避けるべきである。

偏頭痛の予防を目的としてPAを含まず、ペタシン(petasin)及びイソペタシン(isopetasin)の含有率が15%となるよう標準化されたセイヨウフキ根茎のエキス剤を1回50-100mg、1日2回の摂取が報告されている。季節性アレルギー性鼻炎に標準化エキス剤をpetasinとして8-16mg/回、1日3回の摂取が云われている。但し、偏頭痛・季節性アレルギー性鼻炎について、効くと断言できないが、効能の可能性が化学的に示唆されているとする報告がある。主に根茎が使用されるのは、petasin、isopetasinなどの薬効成分が根茎部分に多く含まれているためである。petasin、isopetasinはセスキテルペン化合物である。

「通利について」

火曜日, 5月 8th, 2012

KW:語彙解釈・通利・通・利・精神分析・カタルシス・catharsis・通利療法・カタルシス療法

Q:精神科の図書で見られた「通利」について

A:「通」について「甬」は手桶の形。手桶は筒形で空洞のものであるから、滞ることなく通り抜けることを通と言い「とおる、ゆきわたる、いたる、かよう、あまねく」などの意味に用いる。
「利」について「禾(か)」と刀(りっとう)とを組み合わせた形。禾(穀物の類)を刃物で刈り取る形で、刈り取って儲けとすることから、「もうけ、りえき」の意味となる。また刈り取る刃の「するどい」ことから、のちすべて「するどい、すばやい」の意味となる。

以上の字義を斟酌すると「通利」は、“素早く通り抜ける”ということになる。

通利が精神分析の用語とすると、通利療法に相当するのはカタルシス(catharsis)療法ではないかとされる。抑圧されて無意識の中に留まっていた精神的外傷による凝りを言語・行為又は情動として外部に表出することによって消散させようとする精神療法の技術。浄化法。

またcatharsis(通利)療法。除反応、古代ギリシャの医学では、「病的な体液を体外へ排出する」こととされている。

1)白川 静:常用字解;平凡社,2003
2)広辞苑 第五版;岩波書店,1998

 

     [015.8.CAT:2012.4.3.古泉秀夫]

「臭素剤について」

火曜日, 5月 8th, 2012

KW:薬名検索・臭素剤・bromine agent・bromine・Br・アルカリ金属・アルカリ土類金属・臭化カリウム・potassium bromide・臭化カルシウム・calcium bromide・ブロムワレリル尿素・bromovalerylurea

 

Q:臭素剤という記載が教科書にあったが、これにはどのような薬剤が含まれるのか

A:臭素(bromine)、Br、原子番号35の元素。原子量79.904。ギリシャ語で“悪臭”を意味するbromosより命名された。英名のbromine、独逸名のbromはこれに由来する。ハロゲン元素(塩を造る元素の意)の一つ。二つの安定な同位体79Br(50.57%)、81Br(49.43%)がある。常温で液体である唯一の非金属元素で、天然には単体として存在せず、主としてアルカリ金属及びアルカリ土類金属の臭化物、塩素より遙かに少量ではあるが塩素とともに存在する。また海水1L中に平均67mg含まれている。赤褐色の刺激性の液体で、融点?7.2℃、沸点58.8℃。赤褐色の刺激性の液体で、室温で赤褐色の蒸気を放つ。有毒である。水100gに対する溶解度は3.58g(20℃)である。アルコール、エーテル、ベンゼン、四塩化炭素など、一般の有機溶媒にはよく溶ける。塩素より酸化力は弱いが、酸化剤、殺菌剤、臭素化剤として、また多くの無機、有機臭素製品の原料として用いられ、特に写真材料、医薬品として重要である。
臭素化合物の作用は、成人が0.5g位服用しても認められないが、4-8gを投与すると大脳皮質の知覚領と運動領の興奮抑制作用が現れる。その為、臭素を含む化合物は鎮静剤(ブロムカリ等)、就眠剤(ブロムワレリル尿素等)として応用されている。ただ臭素は体内に蓄積し易いので、長期連用は回避する。

中枢神経の中でも、特に大脳皮質の興奮性を低下させて鎮静効果をもたらすものを鎮静薬といい、臭化カリウム(KBr)、臭化ナトリウム(NaBr)等の臭素剤(bromine agent;ブロム剤:bromides)がこれに入る。臭素剤は吸収は速いが、排泄が遅い為、連用によって蓄積を起こし、ブロム中毒症(bromism)になる。

ブロム中毒症の症状として、不安、鬱状態、運動失調、見当識障害、混迷などの精神障害。発疹、