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「6年制が迎える崩壊の危機?」

金曜日, 2月 3rd, 2012

   魍魎亭主人

 

2011年12月13日に開催された文部科学省の『薬学系人材養成の在り方に関する検討会』(座長=永井良三・東京大学大学院医学系研究科教授)で、薬科大・薬学部が質の高い入学者を確保するための対応策について、ワーキンググループから報告を受けた。薬科大学については6年制学科の5年次進級率が低く、今後、薬学生の質低下が大きな問題になるとして対応策を検討していた。この日は定員充足率や進級率などが特に低い大学に対し改善を求めていくことや、今後の対応についてヒアリングを実施していく方向性が示されたが、結論には至らず、引き続き検討していくことになった。

文科省の調査では、6年制1期生が入学した2006年度の6年制学科入学者数は国公私立大合計で11,119人、5年次進級者は8,684人で、進級率は78.1%で8割を下回った。更に5年次に進級した学生のうち、実務実習を終了したのは8,581人で、入学者のうち実務実習まで終了できた学生は77.2%に留まっている。

ワーキンググループの井上圭三座長(帝京大薬学部長)は「学生の質の確保が出来ないと進級率がどんどん悪くなる。極めて深刻な問題」と指摘。各大学に自己点検・自己評価を求めて改善策のヒアリングを行うの提案を行っている。結論については1期生が受験する最初の国家試験の結果なども参考にすることで意見の一致を見たという[日刊薬業,2011.12.14.p.2]。

多分、国家試験の結果は、悲惨な状況になるのでは無いか。もし、それが避けられたとすれば、また手品が使われ、各大学が、国試の受験者を大幅に絞り込むという手を使った結果ということかもしれない。しかし、現実問題として、国家試験の後でも、各薬科大学は改善策を打ち出すことは出来ないのでは無いかと思われる。何故なら自ら大学の数が多すぎるから減らそう等という結論を導き出すことは出来ないと考えられるからである。

「進み続ける少子化」を鍵語としてこの問題を考えた場合、受験生の数の減少=学生確保のための無理な募集=経営安定化のための合格者決定という循環を繰り返す限り、学生の質を上げることは困難ではないのか。都内の薬科大学・薬学部でも共立薬科大学を呑み込んだ慶應義塾大学薬学部、医学部及び附属病院が併設されている昭和大学薬学部等、それなりの優位性のある大学は、一定の応募者を確保できているが、それ以外の多くの所では、応募者は減少傾向を見せており、特に地方の大学では、入学者の定数確保が難しかったという話も聞こえてくる。

少なくとも少子化という現実のなかで、更に6年制という長期間の学費負担に耐えられないと考えたとすれば、今後とも受験者数の増大は考えられない。更に6年制の学校を卒業し、卒業後の評価が見えてこない現状では、益々応募者は減少する。しかし今更4年制に戻ることは出来ない。

このような状況の中生き残りを図るとすれば、大学の統廃合しか道はないのではないかと思われるが、如何であろうか。

        (2012.1.7.)