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「緩んでしまった箍」

水曜日, 10月 26th, 2011

        魍魎亭主人

 

肺がん治療薬「イレッサ」の副作用を巡って患者の遺族らが国と製薬会社に損害賠償を求めた訴訟に絡み、厚生労働省幹部らが和解勧告に懸念を示す声明を出すよう関係学会に働きかけた問題で、同省内の検証経過を示す文書が黒塗りで開示されたのは不当だとして「薬害オンブズパースン会議」(東京)が、国に全面開示を求める訴えを東京地裁に起こしたとする記事が眼に付いた。これに対し厚生労働省は「適正に開示しており、訴状を見た上で対応を検討したい」という例によって例のごとき紋切り型の対応を示している[読売新聞,第48738号,2011.10.21.]。

検証経過を示す文書を黒塗りにして開示したと云うが、それを一般には開示したとは云わないのではないか。結果に自信があるのであれば、そのまま出せば済む話で、何も黒塗りにすることは無い。もしそれが都合の悪い文書であれば、最初から内部問題として、公開することなく突っぱねた方が潔かったのではないか。開示したという事実を残して、都合の悪いものは隠して、逃げることが出来ると考えていたとしたら御粗末極まりない。

最も「イレッサ」裁判の判決を有利に導こうと、その道の権威といわれる諸氏に意見を求める根回しをして、それが外部に漏れるという、従前なら考えられない組織的な緩みの方が、御粗末と云えばより御粗末かもしれない。将に厚生労働省、組織としての箍が明らかに緩んでいると云われても仕方が無い。

しかし、考えてみると、世論を喚起し、裁判を有利なものにしたいという発想そのものが御粗末といえば御粗末だったのではないか。裁判所において十分に所信を述べることで、「イレッサ」承認の正当性を示すのが厚労省の役割であって、世の同情を得て裁判に勝とうなどと云う姑息なことを考える筋のものではない。これでは世の批判を受けている原発の世論誘導と何ら変わるところがない。世論誘導という、全く似たような発想が、経済産業省、厚労省で見られると云うことは、最近の役所は、目的達成のためには、恥も外聞もなく、何でもありという考え方と云うことなのか。

この裁判を通して厚労省に期待したのは、添付文書の法的な位置付けを明確にすることだったのである。単なる助言的な文書なのか、法的に拘束力のある文書なのか。現状は単に保険請求に影響する程度で、何の拘束力もない。特に医師は、添付文書に拘束されることを嫌い、添付文書情報を信頼性の低いものとして見がちである。薬剤師はその立場上、添付文書の記載事項を順守させようと努力するが、拘束力のない単なる法的文書では、往々にして無駄な努力に終わってしまう。だから薬剤師の立場からすれば、法的拘束力のある文書にすべきだと考える訳である。

キノホルムによるスモンの発生も医師の適応外使用が原因であり、日本商事が開発した帯状疱疹治療薬“ソリブジン”が、1993年9月の発売後1年間に15人の死者を出した事件も、添付文書の記載事項をよく読みさえすれば、避けられた話である。勿論、治験段階で投与された患者3人が死亡していたことが後から判明したり、企業のMRが「兎に角採用してくれ、採用してくれ」の一点張りで、使用を迫ったという結果はあるにしろ、添付文書に法的拘束力があれば避けられたはずである。尤もその当時の添付文書の書き方は、概ね企業に肩入れした書き方になってはいたが。

今回「イレッサ」の判決で、添付文書の記載順序が問題になったようだが、何番目に書いてあろうが、医師の認識は変わらない。更に副作用としての“間質性肺炎”の重要性について、重大な副作用の中に書いてあれば、順番に関係なく、医師なら重視するはずである。従って何番目に書いてあるかが問題ではなく、添付文書の記載内容に配慮する意識が薄いことが問題なのである。添付文書は薬を使用する際には、順守すべきものであるとすることが是非とも必要なのである。

           

  (2011.10.23.)

「信じられないことが起こるものです」

水曜日, 10月 26th, 2011

         医薬品情報21 
                古泉秀夫

§ 立正佼成会付属佼成病院(東京都中野区)は12日、80歳代の女性に対する胃の内視鏡の際、薬剤を誤使用し、女性を重篤な状態に陥らせる医療過誤が起きたと発表した。同院や報告を受けた東京都によると、医療過誤が起きたのは9月22日。女性は外来で同院を訪れて検査を受けた。その際、検査に使用する薬剤の濃度が誤っていたため、帰宅後、体調が悪化したという。現在は別の病院に入院し、治療中という[読売新聞,第48729号,2011.10.12.]。

§ 立正佼成会付属佼成病院で起きた医療過誤で、同病院は12日、記者会見を開き、同病院の男性内科医(34)が、胃の内視鏡検査で通常の7倍以上の濃度の酢酸を使用していたことを明らかにした。神保好夫院長は、「全ての責任は当院にあり、深くお詫び申し上げる」と謝罪した。同院によると、女性は胃がんで、9月22日に癌の部位を特定する内視鏡検査を受けた。酢酸は癌の部位を白く浮かび上がらせる検査薬として使われるが、この検査法は同院では行われていない。内科医は院内にあった酢酸原液を薄めて使ったが、高濃度だと健康被害が生じるという認識が薄く、通常1.5-3%のところを結果的に23%で使用した[読売新聞,第48730号,2011.10.13.]。

§ 同院で起きた医療過誤で、誤って高濃度の酢酸を検査薬として使用され重篤な状態に陥っていた患者が14日午後に死亡したと発表した。警視庁は業務上過失致死の疑いもあるとして病院関係者から詳しい事情を聞く方針[読売新聞,第48732号,2011.10.15.]。

§ 少なくとも人の命に係わる以上、経験の無い治療なり検査なりを行うなら、前もって調べるのが当たり前である。調べた上で確認し、確信を持って初めて実行する。勿論、患者の容体によっては、時に果断に行動することも必要ではあるが、今回の事例では特に緊急に対応する必要は無かったのでは無いか。もし、自分で調べることが苦手だというなら、院内にいる薬剤師に調査の依頼をすればいいわけで、そのために院内には医薬品情報担当の薬剤師がいるはずである。

§ 残念ながら今回この女性患者は亡くなられた。患者にとっては甚だしく不幸な話ということになるが、調べるという僅かな努力をないがしろにしたばかりに、人一人の命を縮め、自らも業務上過失致死ということになれば、医師として致命的な状況に追い込まれてしまう。医師であれば何をしてもいい。あるいは医師である自分のすることは全て正しいと思っていたとすれば、とんでもない思い上がりだと云わなければならない。

§ 新聞報道報道の範囲からは、今回の事件が発生した背景は全く解らない、従って軽々に判断すべきではないのかもしれない。何か特段の事情があって、結果として今回の事態を出来させたと思いたい。それでなければ今回の出来事は“あまりにも信じられないことが起こった”と云わざるを得ない。

              

  (2011.10.15.)

「善光寺」

水曜日, 10月 26th, 2011

     鬼城竜生

 

2010年10月10(日曜日)-11日(月曜日)の連休を利用して長野市で日薬の学術大会が開催された。10日の夜同窓会の催しがあり、参加しなければならない為、午後に着く電車善光寺-01で出かけた。現地の方々の綿密な準備と、全国からの参加者もあり、50名を超える集会となり、久々に盛大な会になったといえる。

翌日は学術大会に参加する予定は入れていなかったので、善光寺を覗いて行くことにした。“The Saihokukan Hotel”を出たところで霧のような雨が降っていた。傘はいらないかと思ったが、折角持ってきたのだからと折りたたみ傘を広げたが、何と手持ちの傘のうち一番小さな傘を持ってきたようで、本降りになったら丸ごと濡れるのを覚悟しなければならないような傘だった。

玄関を出て左に行き、最初の信号を左に行くと、電話機の石碑に出くわした。写真を撮って直ぐ突き当たりの広い通り、多分善光寺表参道を左に行くと直ぐ北野文芸座なる演芸場みたいなものが見えた。その前を過ぎて真っ直ぐ行くとやがて大きな門が見えて来たが、近づいて見ると仁王門ということであった。仁王門の前を仲見世通りが三門まで繋がり、その奥に本堂が見えた。
                                   
善光寺-02所で信州善光寺について、一光三尊阿弥陀如来を御本尊として、創建以来約千四百年の長きに亘り、阿弥陀如来との結縁の場として、民衆の心の拠り所として深く広い信仰を得ておりますとする説明がされている。更に『善光寺縁起』によればとして、御本尊の一光三尊阿弥陀如来は、インドから朝鮮半島百済国へとお渡りになり、欽明天皇十三年(552年)、仏教伝来の折りに百済から日本へ伝えられた日本最古の仏像といわれております。この仏像は、仏教の受容を巡っての崇仏・廃仏論争の最中、廃仏派の物部氏によって難波の堀江へと打ち捨てられました。後に、信濃国司の従者として都に上った本田善光が信濃の国へとお連れし、はじめは今の長野県飯田市でお祀りされ、後に皇極天皇元年(642年)現在の地に遷座いたしました。皇極天皇三年(644年)には勅願により伽藍が造営され、本田善光の名を取って「善光寺」と名付けられました。創建以来十数回の火災に遭いましたが、その度ごとに、民衆の如来様をお慕いする心によって復興され、護持されてまいりましたとする解説が見られる。山号は「定額山」(じょうがくさん)。

善光寺は宗派によらず、全ての善男善女をお迎えする信仰の名刹とされており、善光寺は無宗派のお寺であるとされている。しかし、天台宗と浄土宗の山内寺院によって護持されており、それぞれの法要が毎朝務められているとされる。

善光寺-03善光寺-04天台宗の方は『本坊大勧進』と称して三門の左側にあり、その説明によると「勧進とは人々に仏法を説き作善をなすように勧誘策進することであり、この名を寺名にした大勧進は、開山、本田善光公以来、代々善光寺如来さまにお奉えし、民衆の教化と寺院の維持管理にあたってまいりました。弘仁八年伝教大師が信濃路巡化のみぎり、善光寺に参籠され、爾来、天台の宗風により今日に至っております。大勧進は天台宗大本山で善光寺二十五ヶ院の本坊として、住職は善光寺の住職も兼ねております。」とされている。

一方、大本願は「善光寺の創建(西暦642年)当初からその歴史を共にしてきた尼僧寺院で、代々の大本願住職、尼公上人が善光寺上人として、その伝統を継承されてきました。現在は浄土宗の大本山で、浄土宗の宗祖法然上人と二祖聖光上人とが善光寺如来の夢告により、法縁を結ばれたり、浄土宗西山派の祖証空上人、三祖良忠上人、その他数多くの浄土宗系の高僧たちにより信濃に念仏の教えが広められました。また、孫弟子、諏訪の蓮仏が北條時頼の帰依を受けて善光寺への信仰が広められ、善光寺信仰が大衆の心に大きく生かされました。江戸時代、慶長六年(1601年)善光寺-05徳川家康によって大本願を歴代住職とし、大勧進は経理面を担当するように制度化されました。」とする説明がされている。

兎に角、本堂の屋根の形も神社の屋根と寺院の屋根とが二つ重なったような形で、後で聞いたところによると、この屋根を「撞木造り」と呼ぶのだそうである。これは入母屋造りの屋根をTの字に組み合わせた構造であるとしているが、初めての経験で、仕掛けが良く理解出来ていない。大勧進と大本願で御朱印は頂いたが、よく考えたら大勧進は御不動さんで、結局、正確には御朱印は三カ所で頂戴しなければいけなかったのではないかと反省している。

帰り大門の交差点で左側を見たところ鳥居が見えたので、行ってみたところ“武井神社”なる額束が見られた。「武井神社は善光寺の参道の東側にある神社である。車の厄除け神社として知られており、社地の左半分を駐車場として使用している。湯福神社、妻科神社とともに善光寺の鎮守としても存在しており、地区の産土神として崇敬されている。江戸時代の以前には「武井明神」と呼ばれていたとされており、その後に本来の呼び方だった武井神社へ戻したといわれている等の紹介がされている。

善光寺-07電車が早い時間に指定されていたので、そのまま帰途についたが、本日の総歩行数は、12,034歩。

[2010.10.29.]

「熱ショック蛋白質について」

日曜日, 10月 9th, 2011

KW:語彙解釈・熱ショックタンパク質・熱ショック蛋白質・heat shock protein・ストレス蛋白質・stress protein

Q:熱ショック蛋白質について

A:熱ショック蛋白(質)、heat shock protein:HSP、hsp。ストレス蛋白質;stress proteinともいう。
『細胞又は個体が熱や化学物質に曝されると合成が誘導される一群の蛋白質の総称。原核生物から高等動物まで広く生物界に存在する。』

細胞や個体が平常温度より5-10℃程度高い温度変化を急激に受けた時、合成が誘導される蛋白質群の総称である。HSPの合成は、熱ショックの他、様々な化学物質-電子伝達系の阻害剤、遷移金属、SH試薬、ethanolなどによっても誘導される。そのためHSPはストレス蛋白質とも呼ばれている。

HSP群は、原核生物から高等真核生物に至るまで広く生物界に存在する。真核生物では、HSP90、HSP70、ユビキチン(ubiquitine)及びHSP26などの低分子量HSP群が代表的HSPであり、それぞれのアミノ酸配列は進化の過程でよく保存されている。

HSPの合成は、転写と翻訳の両段階で制御されているが、特に転写開始機構がよく解析されている。真核生物の場合、全てのHSP遺伝子のプロモーターの上流には特異的な共通塩基配列が存在し、この配列に特異的転写開始因子が結合すると転写が開始される。真核生物のHSPの多くは多重遺伝子族を形成している。例えばヒトHSP70の場合少なくとも約10種のHSP70遺伝子が存在する。それらの中には、構成的に合成されており熱ショックでは誘導されず、そのアミノ酸配列も熱ショック誘導性のものとかなり違っているものもある。HSPの機能は多岐にわたっている。HSP70は変性蛋白質(伸びたポリペプチド鎖)に結合し、その会合沈殿を防ぐ。ATP依存的に結合蛋白質を遊離する。小胞体にあるGRP78(Bip)、GRP94、ミトコンドリアにあるHSP75などは同族蛋白質である。HSP60(Gro-EL)はフォールディング中間体モルテングロビュール構造を認識し結合する(→蛋白質のフォールディング)。これらの非完全構造体の蛋白質に結合し、その会合沈殿を抑え、フォールディングを補佐する蛋白質を分子シャペロンと総称する。

その他、『高等動物では、比較的高分子量のHSP90ファミリーとHSP70ファミリー、低分子量のHSP27ファミリーが存在する。各遺伝子のプロモータ部分には熱ショックエレメント(HSE)という特異的な塩基配列があり、ここに転写因子である熱ショック因子(HSF)が結合すると転写が開始される。ストレス誘導されたHSPを蓄積した細胞は再度のストレスに耐性を持つ。また、熱ショック蛋白質は、細胞内で新生ポリペプチドの折りたたみや輸送、変性しかかった蛋白質の再折りたたみを助け、分子シャペロンとも呼称されている。』とする報告がされている。

また、『グルコースの欠乏により発現が増大するグルコース調節蛋白は、熱ショック蛋白と相同性が高い。この蛋白質自体、酵素活性や細胞構造を形成する働きは持っていない。他の蛋白質と複合体を形成し、その蛋白質の折りたたみ、アセンブリー(assembly)、構造維持を助ける介添役(シャペロニン;chaperonine)としての機能を持つ。』とする報告もある。

熱ショック蛋白質のについて、『熱カロリーの刺激によって発生する熱ショック蛋白質の生体反応を利用して、体力の向上、抵抗力の調整に役立てようとする』手法である。HSPの細胞修復力を利用して、治療に利用しようとする考え方である。

1)最新医学大辞典 第3版;医歯薬出版株式会社,2006
2)今堀和友・他監修:生化学辞典 第3版;東京化学同人,2002
3)伊藤正男・他総編集:医学書院医学大辞典 第2版;医学書院,2009

 

   [615.8.HSP:2011.9.2.古泉秀夫]

「ポリオ不活化ワクチンについて」

日曜日, 10月 9th, 2011

KW:薬名検索・ポリオ不活化ワクチン・inactivated polio vaccine・ IPV・副作用・ポリオの会

Q:『ポリオ不活化ワクチン』について、次の事項を調査されたい。
?副作用について
?実施している医療機関。地域的傾向がありますか。
?実施している医師に何か傾向が見られますか(卒大等)
?入手方法(海外からの直輸入と聞いていますが)。

A:ポリオ不活化ワクチン(inactivated polio vaccine: IPV )の副作用について、次の報告が見られる。

『不活化ワクチンは副反応の極めて少ないワクチ ンである。乳児に不活化ワクチンのみを筋肉内又は皮下注射したとき現われる副反応として、0.5-1.5%に注射部位の発赤、3-11%に硬結、14-29%に圧痛が挙げられている。多くの国で採用されているDTPまたはHibと不活化ワクチンとのの混合ワクチンの場合には、特に不活化ワクチンの副反応が加算されることはないとされている (アベンチス・パスツール・コンノー ト研究所)。不活化ワクチンは40カ国以上で使用されており、少なくても1億 2千 500万人以上に接種されているが、製造企業に寄せられる苦情として、特定のカテゴリーに当てはまるものはない。とくに神経系の疾患としてギランバ レー症候群との関係が懸念されたが、その頻度はバックグランドと差がない。

米国のワクチン副反応届出システムに、不活化ワクチンが重症な疾患に関与 してい るとの報告はされていない。フランスでは 1990年から94年までに5600万回接種が行われたが、 ワクチン関連の重症例の報告はなかった。

最近のフランスと米国の不活化 ワクチン市販後調査によると、接種部位の反応と発熱が記載されているが、同時にDTPの うち特に百日咳菌体を含むワクチンが接種さ れているので不活化ワクチンによるものかどうかはっきりしない。しかし、対照としたDTPのみの接種の副反応の出現率は同じである。その他 に、ワクチンに起因するような臓器疾患の報告はない[ポリオ及び麻しんの予防接種に関する検討小委員会資料提出資料-ポリオワクチンに関する追加報告;国立感染症研究所,2003]。

なお、不活化ポリオ・ワクチンの接種について、公的病院として案内している千葉県立佐原病院小児科の告知(2010年12月10日・2011年2月2日改訂・2011年3月7日改訂第2版)では、導入するvaccinesは次の通りであるとして、以下の紹介がされている。

薬剤名:IMOVAX Polio 0.5mL
製造元:Sanofi Pasteur
製造国:フランス
輸入商社:RHC http://www.rhc-net.com
Monzen http://www.monzen.co.jp
出荷国:スイス・香港・シンガポール
注射部位・方法:腕 又は 太ももに 皮下注射 又は 筋肉注射
更にIPVの利点・問題点として、次の内容を告知している。

 

<利点>

・軽い下痢や発熱を伴わない上気道炎ならば接種ができる。
・ワクチン関連麻痺の危険がない。
・免疫に問題があっても、接種可能なことが多い。

 

<問題点>

・定期予防接種にはならないため、接種は有料となる。
厚生労働省・経済産業省に輸入申請書を提出し、厚労省地方厚生局から薬監証明書を取得して輸入するワクチンだが、日本では未承認の薬のため、万が一接種に伴い健康被害が生じた場合、予防接種法に基づく「予防接種健康被害救済制度」による各種補償は受けられない。「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法」も適用されない(ワクチン輸入商社による補償制度は整備されている)。
・皮下又は筋肉注射のため、注射に伴う痛みや副反応(アナフィラキシー、発赤・腫れ、神経損傷など)の可能性がある。
・抗生剤のネオマイシン、ストレプトマイシン、ポリミキシンBでアナフィラキシーを起こした場合は、接種できない。

 

<副反応>

・治験中に見られた副反応は次のとおり。
患者395 人に対し、注射部位の発赤0.7-2.4%、痛み0.7-34%、腫れ0.4%。小児205人に対し、接種後38.1℃以上の発熱が、1回目10%、2回目18%、3回目7%。
・市販後調査
アナフィラキシー 0.01%以下
発疹・じんましん 0.01%以下

?実施している医療機関。地域的傾向がありますか
IPVの導入は、医師個人あるいは個別の病院の判断でされているものであり、公的機関での全国規模での調査はされていない。従って正確なところは不明であるが“ポリオの会”のHPに当会が調査した結果が公表されており、参照資料とすることは可能である。

?実施している医師に何か傾向が見られますか(卒大等)
調査はされていない。少なくとも面倒な手続きを経て、医師個人の輸入になるため、少しでも安全なvaccinesの接種をしたいという、親の熱意に動かされての対応がされていると考えられるので、卒大等は関係ないのではないかと思われる。

?入手方法(海外からの直輸入と聞いていますが)。
千葉県立佐原病院小児科の告知にも一部記載が見られるが、最も無難なのは輸入代行会社に依頼することと考えるが、業者の選定は既に実施している近医に確認することが無難であると考える。

1)ポリオの会:http://www5b.biglobe.ne.jp/~polio/archive/20101012map.pdf,2011.3.28.
2)横浜市営研究所:http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/idsc/disease/polio1.html,2011.3.28.
3)ポリオの会http://polio.board.coocan.jp/?m=listthread&t_id=202&summary=on,2011.3.28.
4)千葉県立佐原病院小児科:http://www.sawara-hospital.jp/3-outpatient/polio_brief.pdf#search="千葉県立佐原病院小児科",2011.3.28.

  [011.1.IPV:2011.3.29.古泉秀夫]

「アムロジンとグレープフルーツの相互作用」

日曜日, 10月 9th, 2011

 

KW:相互作用・アムロジン・ベシル酸アムロジピン・amlodipine besilate・グレープフルーツ・grapefruit・dihydropyridine系・Ca拮抗薬・CYP3A4

Q:アムロジンとグレープフルーツの相互作用は報告されているか

A:アムロジン錠(大日本住友)は、アムロジピンベシル酸塩(amlodipine besilate)を成分とする薬物である。薬効分類は『高血圧症・狭心症治療薬。持続性Ca拮抗薬』として分類されている。従来、添付文書中に『grapefruit』との相互作用について、特に記載されていなかったが、2010年8月『使用上の注意改訂のお知らせ」の連絡文書が配布され、グレープフルーツジュースとの相互作用に係わる注意が添付文書に記載された経緯について説明がされた。

3.相互作用

本剤の代謝は主として薬物代謝酵素CYP3A4が関与していると考えられている。

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等

臨床症状・措置方法 機序・危険因子
グレープフルーツジュース 本剤の降圧作用が増強されるおそれがある。同時服用をしないよう注意すること。 グレープフルーツに含まれる成分が本剤の代謝を阻害し、本剤の血中濃度が上昇する可能性が考えられる。

グレープフルーツジュース

相互作用を検討した臨床試験結果に基づいて、アムロジピンはグレープフルーツジュースとの相互作用は受け難いことが報告されています。また、その一方で、グレープフルーツやグレープフルーツジュースの摂取によってアムロジピンの降圧作用が増強したと疑われた症例が報告され、これらの症例ではグレープフルーツに含まれる成分がアムロジピンの代謝を阻害し、その血中濃度が上昇した可能性が考えられました。したがって、併用注意に追記することとしました。

[アムロジンとの相互作用が疑われた症例]

 

  副作用名 性・年齢 使用理由(合併症)

発現時
投与量

発現時期 処置 転帰
1

血圧低下感、
失神

男・60代 高血圧(多発性脳梗塞)

5mg

2.5mg

129日目
再投与64日目

中止

継続

回復

回復

 

グレープフルーツの摂取を避けて投与継続。

2.女性(60歳代)高血圧(SLE、ループス腎炎による腎不全、不整脈)の治療目的で本剤5mgを投与。1年2ヵ月目にショック(血圧低下に伴う意識消失)。投中止で回復。(経過)発現直前は食事摂取不良の状態で、食事が取れないためグレープフルーツを15日間毎日摂食。

3.女性(50歳代)本態性高血圧症で本剤5mgを投与。1年6ヵ月目に低血圧による失神。投与中止により回復。(経過)グレープフルーツを日常的に摂食。

 

尚、従来amlodipine besilateとgrapefruitとの相互作用について、次の報告がされている。

amlodipineとGF-jとの相互作用については、使用上の注意に設定されていない。その理由はGF-jによるamlodipineの血中濃度の上昇は軽度(Cmax 115%、AUC 116%に上昇)で、血圧と心拍数に影響はなかったとの報告及び薬物動態と血圧に影響はなかったとする、何れも外国人によるdataが報告されていることによる。

 

cytochrome  P450(CYP)酸化系酵素の特徴

?ミクロソームに局在し、他は核膜に弱い活性が認められる。
?肝臓における活性が特に強く、他の臓器の活性は1/5-1/30とされる。CYP3A4の活性は腸管で高い
?分子多様性で多数のサブファミリーの酵素が存在する。更に遺伝多型を示す多くの分子種が存在する。
?脂溶性の薬のみ酸化
?基質特異性が極めて低く、一つの分子種で多くの薬を代謝し、一つの薬の一つの代謝経路にも多くのcytochrome P450が関与する。
?多くの化学物質により特殊なcytochrome P450が誘導を受ける。
?基質特異性が低いので、他の化学物質により活性が阻害されやすい

経口投与された薬は主として小腸粘膜から吸収され門脈系に入るが、粘膜壁を通過する際、代謝を受ける。特に人の場合には、CYP3A4の発現量がかなり高く、この分子種により主として代謝される薬では小腸における代謝の関与がかなり高い

一方、grapefruitについては次の報告が見られる。

grapefruitが薬物の効力に影響することは、最近では広く知られてきている。grapefruitは肝臓ではなく小腸上皮細胞内のCYP3A4及びP-糖タンパク質(MDR1:multidrug resistance protein 1)を特異的に阻害することが知られている。その結果、これらの基質となる薬の代謝及び小腸管腔への排泄が抑制され、吸収量が顕著に増大する事例がある。更にgrapefruit juiceによる抑制効果は、服用する薬によっては、数日間持続することがあるので、そのように薬物を服用する際にはgrapefruit juiceの飲用を中止することが無難である。

grapefruit juiceの飲用がCYP3A4に影響する原因物質として、従来grapefruit juice中の種々の含有成分が標的とされてきた。しかし最近になって6′,7′-Dihydroxybergamottin(DHB)が、原因物質であることが判明してきた。但し、薬物とDHBとの相互作用だけでは説明のつかない現象が見られ、その部分にはP-糖タンパク質が関与していることで説明されている。

DHBはCYP3A4のmechanism-based inhibition(MBI:不可逆阻害)であることが動物実験により確認されたが、更に単なるCYPの阻害剤ではなく、CYP3A4の分解を促進し、CYP3A4を消失する作用を持つことが判明した。

但し、同じCa拮抗剤でも注射剤では相互作用が見られないということもあり、CYP以外にも何らかの因子がgrapefruit juiceとの相互作用に関与していることが予測され、検証の結果小腸でのP-糖タンパク質が吸収・排泄過程で関与していることが判明した。P-糖タンパク質は、小腸上皮細胞で、有害物質などを体外に排泄する作用を持っている。P-糖タンパク質とCYP3A4の基質・阻害剤は相同性が高いことが知られている。但し、P-糖タンパク質の影響については、現段階では否定的であるとするとする報告も見られる。

1)アムロジン錠添付文書,2007.12.
2)アムロジン錠「サンド」IF,2008.7.
3)アムロジン錠IF,2008.1.
4)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル 2008;医学書院,2008
5)中野重行・他編:臨床薬理学 第2版;医学書院,2003
6)大西憲明・編著:一目でわかる医薬品と飲食物・サプリメントの相互作用とそのマネジメント;フジメディカル出版,2003
7)アムロジン錠・OD錠-使用上の注意改訂のお知らせ:大日本住友,2010.8.
8)国立健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報; http://www.nih.go.jp/eiken/,2010.9.13.

             [015.2.AML:2008.8.8.古泉秀夫・2010.8.30.改訂]