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「ポリオ不活化ワクチンについて」

日曜日, 10月 9th, 2011

KW:薬名検索・ポリオ不活化ワクチン・inactivated polio vaccine・ IPV・副作用・ポリオの会

Q:『ポリオ不活化ワクチン』について、次の事項を調査されたい。
?副作用について
?実施している医療機関。地域的傾向がありますか。
?実施している医師に何か傾向が見られますか(卒大等)
?入手方法(海外からの直輸入と聞いていますが)。

A:ポリオ不活化ワクチン(inactivated polio vaccine: IPV )の副作用について、次の報告が見られる。

『不活化ワクチンは副反応の極めて少ないワクチ ンである。乳児に不活化ワクチンのみを筋肉内又は皮下注射したとき現われる副反応として、0.5-1.5%に注射部位の発赤、3-11%に硬結、14-29%に圧痛が挙げられている。多くの国で採用されているDTPまたはHibと不活化ワクチンとのの混合ワクチンの場合には、特に不活化ワクチンの副反応が加算されることはないとされている (アベンチス・パスツール・コンノー ト研究所)。不活化ワクチンは40カ国以上で使用されており、少なくても1億 2千 500万人以上に接種されているが、製造企業に寄せられる苦情として、特定のカテゴリーに当てはまるものはない。とくに神経系の疾患としてギランバ レー症候群との関係が懸念されたが、その頻度はバックグランドと差がない。

米国のワクチン副反応届出システムに、不活化ワクチンが重症な疾患に関与 してい るとの報告はされていない。フランスでは 1990年から94年までに5600万回接種が行われたが、 ワクチン関連の重症例の報告はなかった。

最近のフランスと米国の不活化 ワクチン市販後調査によると、接種部位の反応と発熱が記載されているが、同時にDTPの うち特に百日咳菌体を含むワクチンが接種さ れているので不活化ワクチンによるものかどうかはっきりしない。しかし、対照としたDTPのみの接種の副反応の出現率は同じである。その他 に、ワクチンに起因するような臓器疾患の報告はない[ポリオ及び麻しんの予防接種に関する検討小委員会資料提出資料-ポリオワクチンに関する追加報告;国立感染症研究所,2003]。

なお、不活化ポリオ・ワクチンの接種について、公的病院として案内している千葉県立佐原病院小児科の告知(2010年12月10日・2011年2月2日改訂・2011年3月7日改訂第2版)では、導入するvaccinesは次の通りであるとして、以下の紹介がされている。

薬剤名:IMOVAX Polio 0.5mL
製造元:Sanofi Pasteur
製造国:フランス
輸入商社:RHC http://www.rhc-net.com
Monzen http://www.monzen.co.jp
出荷国:スイス・香港・シンガポール
注射部位・方法:腕 又は 太ももに 皮下注射 又は 筋肉注射
更にIPVの利点・問題点として、次の内容を告知している。

 

<利点>

・軽い下痢や発熱を伴わない上気道炎ならば接種ができる。
・ワクチン関連麻痺の危険がない。
・免疫に問題があっても、接種可能なことが多い。

 

<問題点>

・定期予防接種にはならないため、接種は有料となる。
厚生労働省・経済産業省に輸入申請書を提出し、厚労省地方厚生局から薬監証明書を取得して輸入するワクチンだが、日本では未承認の薬のため、万が一接種に伴い健康被害が生じた場合、予防接種法に基づく「予防接種健康被害救済制度」による各種補償は受けられない。「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法」も適用されない(ワクチン輸入商社による補償制度は整備されている)。
・皮下又は筋肉注射のため、注射に伴う痛みや副反応(アナフィラキシー、発赤・腫れ、神経損傷など)の可能性がある。
・抗生剤のネオマイシン、ストレプトマイシン、ポリミキシンBでアナフィラキシーを起こした場合は、接種できない。

 

<副反応>

・治験中に見られた副反応は次のとおり。
患者395 人に対し、注射部位の発赤0.7-2.4%、痛み0.7-34%、腫れ0.4%。小児205人に対し、接種後38.1℃以上の発熱が、1回目10%、2回目18%、3回目7%。
・市販後調査
アナフィラキシー 0.01%以下
発疹・じんましん 0.01%以下

?実施している医療機関。地域的傾向がありますか
IPVの導入は、医師個人あるいは個別の病院の判断でされているものであり、公的機関での全国規模での調査はされていない。従って正確なところは不明であるが“ポリオの会”のHPに当会が調査した結果が公表されており、参照資料とすることは可能である。

?実施している医師に何か傾向が見られますか(卒大等)
調査はされていない。少なくとも面倒な手続きを経て、医師個人の輸入になるため、少しでも安全なvaccinesの接種をしたいという、親の熱意に動かされての対応がされていると考えられるので、卒大等は関係ないのではないかと思われる。

?入手方法(海外からの直輸入と聞いていますが)。
千葉県立佐原病院小児科の告知にも一部記載が見られるが、最も無難なのは輸入代行会社に依頼することと考えるが、業者の選定は既に実施している近医に確認することが無難であると考える。

1)ポリオの会:http://www5b.biglobe.ne.jp/~polio/archive/20101012map.pdf,2011.3.28.
2)横浜市営研究所:http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/idsc/disease/polio1.html,2011.3.28.
3)ポリオの会http://polio.board.coocan.jp/?m=listthread&t_id=202&summary=on,2011.3.28.
4)千葉県立佐原病院小児科:http://www.sawara-hospital.jp/3-outpatient/polio_brief.pdf#search="千葉県立佐原病院小児科",2011.3.28.

  [011.1.IPV:2011.3.29.古泉秀夫]