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アドヒアランスについて

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:語彙解釈・アドヒアランス・adherence・コンプライアンス・compliance・服薬遵守・non-compliance・服薬非遵守

 

Q:アドヒアランスとコンプライアンスの違い

 

A:各語の語意について以下の通り解説されている。

語彙 adherence compliance
語意
  1. 密着、粘 着;執着、固執、固守;忠実(fidelity);(強固な)愛着、支持。
  2. 粘着作用;粘着性、粘着力。(精神的な)固守、執着、忠実。
  3. その他、
    1.(………に対する)執着、固守;信奉、支持。
    2.(まれ)(………に対する)粘着、付着。
  1. (命令、申 し出・要求などに)従うこと、黙従、屈服。
  2. 素直さ、従順、(特に)無気力で追従的な素直さ、卑屈。
  3. 応諾、承認。
  4. 協力;服従。
  5. [物理] ひずみとそれを起こす外力との比。
  6. 1.(要求・希望などに)そうこと、承諾。
    2.人の言いなりになること、従順さ、追従。
  7. その他
    1.(要求・命令等に)従うこと.
    2.追従、へつらい。

医療関係解釈

adherence は、患者が治療に能動的に参加できること。患者が実行可能な治療内容であること。患者のセルフケア能力・社会心理的な状態、患者-医療関係者の人間関係等を重視したもので、医療関係者側の因子の影響を受ける。 薬剤関係で見ると 『服薬』に関連してcomplianceは『服薬遵守』と訳され、『コンプライアンスが良い(高い)』、『コンプライアンスが悪い(低い)』と表現されている。

 

■『服薬遵守』という概念は、『医療従事者の指示に、患者がどの程度従っているのか』という視点での評価がされるということである。その判断の基準は、あくまでも医療従事者の側にあり、指示通り服薬できない患者については、患者側の問題として判断され、『服薬遵守』を高めるためには、患者を説得するという行為が行われる。

しかし、non compliance(服薬非遵守)は、全ての要因が患者側にあるわけではなく、医療関係者と患者の信頼関係の不足(患者情報の収集不足、患者の生活習慣に対する無理解、服用困難な処方や剤形の選択、あるいは事前の十分な服用意義の説明不足等)のため、多くは医療従事者側の独善的な思いこみに、その要因の殆どがあるということができる。

■adherenceは、compliance の維持・向上のために志向された概念であり、「熟練した医療従事者達が『患者は治療に従順であるべき』という患者像から離脱することを意図した概念(Stanton,1987)」、「医療従事者-患者間の関係及び相互作用に着目(Ley,1988)と紹介されている。

■adherenceという用語、概念についての認識は「第12回日本エイズ学会 総会(1998.12.1-2)サテライトシンポジウム」において取り上げられた結果であると考えられる。

■現在の抗HIV療法は、服用方法の複雑化(食前、食後、食間等の組み合わせ)、副作用・相互作用も多く、患者には大きな負担となっている。また、慢性の感染症疾患として長期間服用しなければならないための動機付けが困難、服薬非遵守が交差耐性の発現を起こした場合、使用可能な薬剤が少ない、更には経済的な負担が大きいこと等が問題として指摘される。

これらの患者において、服薬率を高めるためには、『医療従事者の指示をいかに守らせるか』だけではなく、薬剤・患者・医療関係者側のそれぞれの因子を総合的に考え、『患者が参加し、実行可能な薬物療法を計画、実行』することが必要である。

ただし、complianceにしろadherenceにしろ、外国では医療関係者が実地医療の中で生み出した思想であるが、我が国の場合、『単なる受け売り』に過ぎず、その認識において差が見られるのはやむを得ないが、患者対医療関係者の関係を真に見直す契機となるよう努力することが求められる。

(参照)アドヒアランスの維持
1. 処方に関して
予測される副作用と対処をあらかじめ説明し、副作用が発現した場合は適切に対処する。服薬条件を単純化する(例えば薬剤毎の食前・食後投与を一括)。有害な薬物相互作用に注意。可能であれば、服薬回数、錠数の少ない処方に変更する。
2. 患者に対して
患者が理解し、受け入れられる服薬計画。治療の意義・目標を説明し理解を求める。最初の処方箋を書く前に、患者が服薬のできる環境を整える時間を設ける。家族・友人の支援を求める。患者の食事時間、日々のスケジュールに合わせた処方、副作用を回避する処方を作成する。
3. 医療関係者に関して
患者との信頼関係の確立。患者にとっての情報源となり、継続的な援助と観察を行う。医療関係者が休暇中などにも患者の問題に対して対応できるよう連絡体制を整える。アドヒアランスの状況を観察し、維持が困難な場合は、来院回数を増やす、家族・友人の支援を求める、医療者チームの中の専門職を紹介するなどの対策をとる。新たな疾患(うつ状態、肝臓病、衰弱、薬物依存など)が出現した場合、アドヒアランスへの影響を考慮し、対処する。医師、看護師、薬剤師、カウンセラー、ソーシャルワーカーなどがチームとなり、アドヒアランスを維持するための対策を考え、互いに患者と密接に連絡を取りながら支援を行う。

[615.8.ADH:2002.11.25.古泉秀夫・2004.2.11.改訂]


  1. 竹林 滋・他:ライトハウス英和辞典;株式会社研究社,1984
  2. 小西友七・代表編:ジーニアス英和辞典;株式会社大修館書店,1995
  3. 堀 成美:アドヒアランスを左右する因子;看護学雑誌62(11),1998
  4. 東京都衛生局医療福祉部エイズ対策室;AIDS News Letter,7-1(65),1999.1.1
  5. 小学館ランダムハウス英和大辞典;?小学館,1979
  6. http://www.hivjp.org/guidebook/guide_07.html (2004.2.11.)

アダラートの脱カプセル化について

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:物理化学的性状・特殊用例・粉末化・脱カプセル化・アダラート・ニフェジピン・nifedipine

 

Q:アダラートの脱カプセル調剤は可能か

 

A:アダラート(バイエル薬品)は、1Cap.中にニフェジピン(nifedipine)5mg・10mgを含有する橙色の軟カプセル剤で、カ プセル内容物は黄色?帯赤黄色の粘性の液体である。

剤型 ×
温度安定性
湿度安定性
光安定性 ×
水溶解性 ×
力価 ×
臭い
融点
総合判定 ×

 

nifedipineは黄色の結晶性の粉末で、臭い及び味はない。アセトン又はジクロルメタンに溶け易く、メタノール、氷酢酸又はエタノール (95)にやや溶け難く、ジエチルエーテルに溶け難く、水には殆ど溶けない。また光によって変化する。わずかに吸湿性を示す。融点:172-175℃。

本剤原薬の安定性試験の結果を見ると固体状態では比較的安定であるが、吸収性を高めるための液体状態では、耐熱試験の一部で力価の低下が認められている。

また、本品原薬は光に対する安定性が悪く、次の試験結果が報告されている。

試料 保存条件 保存容器 試験成績
固体状態 直射日光照射 無色粉末用アンプル 4日間で外観変化、含量低下 (含量32.2%)
同上 室内散乱光下 同上 10日間変化は認められず安 定であった。
液体状態 直射日光照射 蓋付褐色サンプル瓶 1.5時間後全て分解した。
同上 室内散乱光下 同上 3時間後含量低下が認められ た(含量84.2%)

 

無色透明のガラス瓶中においては比較的短時間で光分解するが、褐色ガラス瓶中においては、24時間後に痕跡程度に光分解物が認められたに過ぎ なかった。またアルミフィルムで包装した褐色ガラス瓶中においては光分解は認められなかった。』

その他、本剤添付文書中の2.重要な基本的注意の(2)として『まれに過度の低血圧を起こし、ショック症状や一過性の意識障害、脳梗塞があらわれることがあるので、その様な場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、速効性を期待した本剤の舌下投与(カプセルをかみ砕いた後、口中に含むか又はのみこませること)は、過度の降圧や反射性頻脈をきたすことがあるので、用いないこと。』とする記載がされている。

以上の各報告から本剤のカプセル内容物は液状をしているため、簡単に脱カプセルすることは困難であり、病院等で看護師が服薬介助を行う場合以 外、実施は困難であると考えられる。また、前もって予製剤することは、製剤の安定性が担保できないため回避すべきである。

[014.4.NIF:2004.10.4.古泉秀夫]


  1. アダラート添付文書,2002.9.改訂
  2. アダラートインタビューフォーム,1999.10.作成

アダラートL錠の粉末化について

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:物理化学的性状・特殊用例・粉末化・錠剤粉砕・アダラートL錠・ニフェジピン・nifedipine・徐放錠

 

Q:アダラートL錠の粉末化調剤は可能か

 

A:アダラートL錠(バイエル薬品)は、1錠中にニフェジピン(nifedipine)10mg・20mgを含有する淡赤色のフィルムコーティ ング錠である。

なお、本剤の製剤上の特性について『粒度分布が一定である微粉化ニフェジピン(micronized nifedipine)を用いることにより吸収遅延型又は溶出持続型が達成されたことによる持効錠』とされている。

剤型 ×
温度安定性 ?
湿度安定性 ?
光安定性 ?
水溶解性 ?
力価 ?
?
臭い ?
融点 ?
総合判定 ×

なお、本剤の粉末化については、インタビューフォーム-X-3.薬剤取扱い上の注意点として『本剤は徐放性のフィルムコーティング錠であり、粉砕により作用持続性及び光に対する安定性が失われることが考えられるため、 粉砕して使用しないこと』とする注意事項の記載がある。

従って、本剤を粉末化することは本剤の製剤特性である持効性を喪失させるため行ってはならない。

なお「L」の略号はLong actingの略記である。

[014.4.NIF:2004.10.4.古泉秀夫]


  1. アダラートL錠添付文書,2001.10.改訂
  2. アダラートL錠インタビューフォーム,1999.10.作成

アダラートCR錠の粉末化について

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:物理化学的性状・特殊用例・粉末化・錠剤粉砕・アダラートCR錠・ニフェジピン・nifedipine・有核錠・徐放錠

 

Q:アダラートCR錠の粉末化調剤は可能か

 

A:アダラートCR錠(バイエル薬品)は、1錠中にニフェジピン(nifedipine) 10mg(帯赤灰色)・20mg(淡赤色)・40mg(淡赤褐色)を含有する徐放化システム(有核錠)を導入したフィルムコート錠である。また本剤は nifedipineを一定速度で放出する徐放性の外層部と、それよりも薬物放出速度が速くなるよう設計された内核錠から構成された有核錠である。

従って本剤を粉末化した場合、薬物放出特性、消化管通過速度及び消化管の運動性を考慮したとされる製剤特性が破壊される。

剤型 ×
温度安定性 ?
湿度安定性 ?
光安定性 ?
水溶解性 ?
力価 ?
?
臭い ?
融点 ?
総合判定 ×

 

なお、本剤の粉末化等について、添付文書中に次の注意事項が記載されている。

『9.適用上の注意-(1)服用時:本剤は割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないで、そのま まかまずに服用させること[割ったり、かみくだいたりして服用すると、血中濃度が高くなり、頭痛、顔面紅潮等の副作用が発現しやすくなる可 能性がある]。』

従って、如何なる理由であれ本剤を粉末化することは、本剤を使用する意味を失うことになる。

本剤商品名の『CR』の略号はControlled Releaseを略記したものである。

[014.4.NIF:2004.10.4.古泉秀夫]


  1. アダラートCR錠添付文書,2001.10.改訂
  2. アダラートCR錠インタビューフォーム,1999.3.作成

アクリルアミドの毒性について

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:毒性・中毒・アクリルアミド・acrylamide・発癌性・ポテトチップス・フライドポテト・経皮吸収・土壌凝固剤・接着剤

 

Q:新聞報道されていたアクリルアミドの毒性について

 

A:新聞報道の内容は

『世界保健機関(WHO)の食糧農業機関(FAO)の合同専門委員会が、ポテトチップスやフライドポテトなど高温で調理された食品に含まれる化学物質アクリルアミドについて「健康に有害な恐れがあるかも知れず、食品含有量を低減すべきだ」との勧告を出した。

アクリルアミドは、地下工事の土壌凝固剤などに広く使用される化学物質で、動物実験で発癌性が指摘されていた。更に2002年スウェーデンの研究によって、炭水化物の多い芋類などを120℃以上で焼いたり、揚げたりした加工食品にも含まれていることが新たに判明した。

厚生労働省も同年に国内製品での含有を確認しており、過度の摂取をしないよう呼びかけるとともに、詳細なデータ収集作業を進めている』     [読売新聞,第46325号,2005.3.7.]

とするものである。

アクリルアミド(acrylamide)—–[独]Acrylamid

 

  • 別名:プロペンアミド(propenamide)、CH2=CH-CONH2:71.08。
  • 無臭の白色結晶。
  • 比重1.122(20℃)、融点:84.5℃、沸点:87℃(266Pa)、125℃(3,325Pa)。
  • 水(30℃で水100mLに 215.5g溶ける)、アルコール、アセトンに可溶、ベンゼン、ヘプタンに不溶。
  • 室温で安定、溶融すれば激しく重合する。

 


用途

 

  1. 凝集剤:acrylamide系ポリマーとして水中に懸濁する粒子に作用させ、これを凝集沈降させる。また沈降物の含水率を減らしてろ過などを容易にする。→下水・屎尿処理等。
  2. 土壌改良剤:土粒子を団粒化し、空気の流通性、水浸透性、保水性を改良する目的で、ポリアクリルアミドの加水分解物が開発されている。
  3. 繊維改質及び樹脂加工:合成繊維を含む各種繊維に対して、acrylamideをカルバモイル化又はグラフト重合させ、繊維そのものの基礎物性を改良したりセルロース系織物のシワ防止、防縮、風合いの改良を目的とした樹脂加工等に使用される。
  4. 紙力増強剤:従来から使用されている澱粉、水溶性アミノ樹脂等の代替あるいは併用の形で実用化されている。
  5. 接着剤:ポリアクリルアミドをフェノール樹脂溶液とともに使用したガラス繊維の接着剤、合成ゴム系エマルジョン等と併用した感圧接着剤。
  6. 塗料:アクリル系熱硬化性塗料の原料。
  7. 石油回収剤:ポリアクリルアミド水溶液を地下油層中に注入し石油二次回収を行う。

 

毒性

 

  • 許容濃度0.3mg/m3(皮膚)、ACGIH 0.03mg/m3(TWA)、管理濃度0.3mg/m3。IARC 2A。経皮吸収有り。皮膚、呼吸器、消化管より吸収され、皮膚障害、言語障害、末梢神経炎、小脳性失調などを起こす。中毒症状は主に慢性障害で、神経症状と肝障害を起こす。
  • 粉体、水溶液ともに皮膚から容易に吸収される。生体内に吸収されたacrylamideは分解されやすく、蓄積性が少ないことから中毒からの回復は比較的早いという報告も見られる。
  • acrylamide は皮膚から吸収されやすいのが特徴で、工場での中毒の多くは経皮中毒である。足先からの麻痺で始まり、知覚麻痺から運動麻痺へと進む。
  • 運動失調、四肢冷感、筋力低下、知覚異常、腱反射消失、末梢の関節の位置感覚の減弱、末梢の振動感覚の減弱などが見られるが、圧感は残る。
  • 小脳失調のような症状も見られる。職業性の経皮慢性中毒が殆どであるが、自宅前の道路の下水管埋設のための薬液注入工法に使った地盤凝固剤acrylamideが井戸水に混入し、井戸水を使用していた一家5人に中毒事故が発生したという甚だ稀な事例も見られる。

 

刺激性

 

ウサギ(皮膚) 50mg/3day mild 500mg/24hr mild
ウサギ(眼) 10mg/30sec rinse mild 100mg/24hr moderate

 

急性毒性(LD50:mg/kg)

 

  経口 腹腔内 皮膚
ラット 124 90 400
マウス 170 70 (RTECS)  

 

恐らくヒトに発癌性がある。

その他『アクリルアミド問題の経過』として以下の報告が見られる。

1)スウェーデン食品庁の報告

平成14(2002)年4月、スウェーデン食品庁が、炭水化物を多く含む食材(注1)を高温で加熱して製造した食品(例えばポテトチップス、フライドポテト、ビスケットなど)に、アクリルアミドという化学物質が高濃度に含まれていると世界ではじめて発表した。これはストックホルム大学との共同研究で明らかになったもので、加熱しない生の食材や蒸してつくる食品にはアクリルアミドが見つからないことから、高温加熱によりアクリルアミドが生成すると考えられる。アクリルアミドは発ガン性をもつのではないかと考えられている物質である。 (注1)当初の報告では「炭水化物を多く含む食品」との表現であったが、その後研究でアスパラギンとブドウ糖などが、加熱により反応して、アクリルアミドが生成するということが解明されてきた。

2)各国の対応

スウェーデンと同様の結果がイギリス、ノルウェー、スイス、アメリカなどからも報告されている。アクリルアミドの存在が報告されたのがポテトチップスやフライドポテトなど、日常的に口にする食品であることや、アクリルアミド濃度が飲料水の基準値に比べて高いことなどから、世界中で大きな関心を呼んでいる。しかし、揚げたり焼いたりして作られた食品に高濃度のアクリルアミドが含まれているという報告が出されたが、これらの政府機関では、消費者の食事内容の変更、調理方法の変更については何ら改善方法を示していない。

[63.099.ACR:2005.3.28.古泉秀夫]


  1. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  2. 独立行政法人食品総合研究所:アクリルアミド問題の経過;http://aa.iacfc.affrc.go.jp/keika.html,2005.3.20.
  3. 内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療;南江堂,2001
  4. 化学物質と法規制;http://www.chemlaw.co.jp/index.htm,2005.3.20.
  5. 14303の化学商品;化学工業日報社,2003

アサイベリーについて

水曜日, 1月 9th, 2008

KW:健康食品・機能性食品・アサイベリー・Acai berry・アサイ・Assai・Assai palm・ヤシ科植物・ワカバキャベツ・ワカバキャベツヤシ

 

Q:健康食品の一種としてTV放映されていたアサイベリーについて

 

A:アサイベリー(Acai berry又はAssai berry)又はアサイと呼称される植物は、

  • ブラジル名:Acai
  • 学名:Euterpe oleracea Mar.
  • 英名:Assai palm
  • 和名:ワカバキャベツ・ワカバキャベツヤシ

等で標記されるヤシ科植物である。

Assaiは南米北部に自生し、アマゾン地方を中心として川沿い等の低湿地帯に生育し、年間を通して花が咲くとされている。果実は乾期に収穫され、6月-12月が主な収穫期だとする報告が見られる。

Assaiは通常株立ちし、幹の数は20以上に達するとされている。

木の高さは20m程度で、時に30mに達するものも見られる。

幹の径は約 12cm程度で、葉はヤシ科植物に特有の形態を示す。

花が咲き、実を付ける花序は、1本に3-4個付くとされている。

果実から搾取される果汁液は黒紫色で、果汁そのものに甘味はないとされている。また果実から採取する液には油分が豊富に含まれており、アイスクリームや種々の飲料に加工される。シリアルやタピオカの粒を混ぜて摂食も可能である。

よく「甘くないぜんざいのようなもの」というたとえで紹介されるが、食感はそれに限りなく近い。

新芽は「パルミット」とよばれる高級食材となる。

カロリー 水分 蛋白質 繊維 Ca P Fe カロテン VB1
247.00kcal

45.9g

3.80g

16.9g

118.00
mg

58.00
mg

11.80
mg

9mg

0.35
mg

 

VB2 ナイアシン VC 糖度 酸度 pH ポリフェノール アミノ酸
0.01mg 0.40mg 900mg 6.00% 0.13% 5.21 赤ワインの30倍

 

Feはレバーの約3倍、繊維は牛蒡の約3倍、Caは牛乳と同等とする報告がされている。

ただし、植物中の成分は、生育する環境によって、必ずしも一定していないので、含有成分について過信することは避けなければならない。

[015.9.ACA:2005.11.29.古泉秀夫]


  1. アマゾン群馬の森通信;http://amazon-gunma.hp.infoseek.co.jp.htm,2005.6.28.
  2. ワイルドフルーツサプリメント;http://www.frutafruta.com/c-02a.html,2005.6.28.
  3. http://amazon-gunma.hp.infoseek.co.jp/j-forest-watching06.htm,2005.11.29

「アマランサス葉の含有成分について」

月曜日, 1月 7th, 2008

KW:健康食品・アマランサス・アマランサス葉・葉鶏頭・grain amaranthus・Inca wheat・紐鶏頭・ヒモゲイトウ、仙人穀・センニンコク、繁穂ヒユ、種粒ヒユ、子実用アマランサス

 

Q:アマランサス葉の含有成分について

 

A:アマランサスとは、葉鶏頭の仲間で、ヒユ科、ヒユ属の1年生草本である。60属中に800の種があり、その内10種ほどが食用にされている。メキシコからアンデス南部を原産地とするものや、インドから東南アジア、またヨーロッパが原産のものもある。耐暑性と耐寒性を備えており、生育前半に霜にあたらなければ、生育はしだいに旺盛となる。
学名:Amaranthus hypocondriacus L.、 A. caudatas、 A. curuentus等。
別名:ヒモゲイトウ、センニンコク、繁穂ヒユ、種粒ヒユ、子実用アマランサス
英名:Grain amaranthus、Inca wheat
種類: 雑穀、擬穀類食用。

アマランサス属は、さらにAmaranthus節とBlitopsis節に分けられる。前者はグレインタイプであり、染色用、装飾用、野菜用を含むが、大多数は雑草である。この中には、A. cruentus、南米で栽培されている紐鶏頭(A. caudautus)、メキシコで栽培されている繁穂ヒユ (A. hypochondriacus)及びA. edulisが含まれているが、A. edulisを除き無限花序である。一方、Blitopsis節は無限花序で、頂部に穂があっても小さい。この中には、葉菜用のA. tricolor(葉鶏頭)、A. gangeticus及びA. blitumなどが含まれている。

amaranthusの近縁種

子実用
栽培種 A. hypochondriacus L.
栽培種 A. caudatus L.(紐鶏頭、仙人穀)
栽培種 A. cruentus L.(スギモリケイトウ、フジ鶏頭)

 

葉菜用 A. tricolor L.(葉鶏頭)
葉菜用 A. viridis L.(アオビユ、ホナガイヌビユ)
葉菜用 A. dulius Mart. ex Thell.(スギモリケイトウに近似)
野生種 A. spinosus L.(ハリビユなど)
野生種 A. retroflexus L.(アオゲイトウ)
野生種 A. patulus Bertoloni L.(ホソアオゲイトウ)

 

amaranthusの一部は、広い環境に適応できる。早生種を選べば北海道でも栽培可能なことがわかったと報告されている。普通の葉は先の尖った楕円形を呈している。葉の大きさは種によって多様である。茎色も濃緑から赤紫まで色々である。光合成能力が高い。
amaranthusは、南米Tehuacan ValleyのBC6700-5000の遺跡から発見されている。新世界における古い作物の一つであり、4千年前から耕作され、トウモロコシ、ジャガイモなどと共にインカ古代文明を支えた食物のひとつと伝えられている。
19世紀初頭にインド、ネパール地域に持ち込まれ、この地域を中心に、主として食用目的に栽培されている。中国では葉鶏頭の若い茎葉を野菜とし、薬用とする他、小鳥の餌、あるいは穂や茎葉は豚の餌として使っている。
アメリカでは中国から品種を輸入して栽培しているが、1980年代に、雑草としてのアマランサスを研究中に、薬効があることが解り、健康食品として見直されているとされる。日本でもアレルギー性患者をもつ家庭で関心を持ち始めているが、輸入穀物は検疫の際、燻蒸するため、国産品が求められている。
amaranthusは、葉は野菜、実は穀物、花は観賞用となるほか、ミネラルや良質たん白質が豊富であるため健康食品として、また水田転作作物として関心が持たれつつある。

amaranthus生葉100g中[農業機構(FAO)資料;Elias, J(1977)]

  mineral
蛋白質 食物繊維 Fe Ca Na K P
4.6-14.9g 7.4g 2.2-24.8mg 146-476mg 41-15mg 411-624mg 45-610mg

 

vitamin
A B1 B2 C niacin
65-7715IU 0.01-0.08mg 0.14-0.42mg 12-120mg 0.3-1.8mg

以上、調査の結果を報告するが、まだ野菜としての大衆的認知が得られていないため、食品としての詳細な栄養成分の報告は入手できなかった。しかし、取り敢えず、上記の各成分については、国外での報告例として紹介されていた。

  [015.9.AMA:2006.1.112.古泉秀夫]

 

1)古泉秀夫・編著:わかるサプリメント健康食品Q&A;じほう,2003
2)http://www.agri.pref.hokkaido.jp/chuo/hata2/tokuyo51.htm,2005.11.10.
3)http://misa.ac.affrc.go.jp/mihonen/CROP4.html,2005.11.10.
4)http://www.nava21.ne.jp/~uesugi/ken/seibun/amaranthus.htm,2005.11.10.

イチジクの食効について

月曜日, 1月 7th, 2008

KW:健康食品・機能性食品・生薬・果実・イチジク・無花果・ムカカ・ペクチン

 

Q:健康食品としてイチジクを原材料とした製品が市販されているが、これの食効について

A:通常、イチジクと呼称されている果実は、クワ科の植物で、漢方名『無花果(ムカカ)』(和名:イチジク)の乾燥した花托である。

イチジク(Ficus carica L.)。

落葉低木若しくは小高木。高さは10mに達し、乳汁がある。

異名として阿駅(アエキ)・底珍(テイチン)・天生子(テンセイシ)、映日果(エイジツカ)、優曇鉢(ユウドンハチ)・蜜果(ミツカ)・文仙果(ブンセンカ)・品仙果(ヒンセンカ)等が報告されている。

  • [成分]:果実にはブドウ糖、果糖、蔗糖、クエン酸と少量のフマール酸、コハク酸、マロン酸、ピロリジン-カルボン酸、蓚酸、リンゴ酸、キナ酸及び植物成長ホルモン(オーキシン)を含む。乾燥果、未熟果及び植物の乳汁は抗腫瘍成分を含むとされている。乳汁中にはアミラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ等を含む。
  •  
  • [薬理]:無花果は豊富な栄養分を含み、食用にされる。
    便秘の時には、食物性の軽い下剤になる。
    樹の乳液(ラテックス)には、ラットの移植性肉腫を抑制する成分が含まれる(注射時)。
    乾燥果の水抽出物から活性炭、アセトン処理を経て得られる物質には、抗エールリッヒ肉腫の作用がある。
    未熟果実から得られる乳汁は、ラット移植性肉腫とマウスの自然性乳癌を抑制し、腫瘍を壊死させることができる。
    また移植性腺癌、骨髄性白血病、リンパ肉腫の成長を遅らせ、退化させることができる。この乳汁をラットに0.02mL、ウサギに0.05mL静脈注射すると、直ちに致死する。解剖すると内臓の毛細血管に損傷が見られ、腹腔内注射の状況もこれと類似している。
    皮下注射は局部の壊死を起こすが、経口投与では無毒である。
    石油エーテル、エチルエーテル抽出物は、ウサギ・ネコ・イヌに対していずれも降圧作用があり、呼吸はやや興奮を示す。
    ネコの瞬膜試験では、神経節遮断作用はない。降圧作用の原理は、末梢性のものによると推定されている。
  • その他:主成分は糖で、約10%(乾果は66%)含まれ、ビタミン・ミネラル類も少量ずつまんべんなく含まれている。この他食物繊維のペクチンがあり、腸運動を活性化し、便秘に効果的である。更に三大栄養素の分解酵素が含まれているので、その効果は多様である。
    また無花果には抗炎症作用があり、喉痛、痔疾に効果がある。葉の煎剤を痔の患部に塗布すると効果的であるとされている。果肉や葉からでる白色乳汁に含まれるペプチドは血圧抑制作用があり、外用では疣贅の治療に用いる等の報告がされている。

なお、無花果可食部100g当たりの栄養成分値は下記の通りである。

  エネルギー 水分 蛋白質 脂質 炭水化物-糖質 炭水化物-繊維 灰分
生果 43kcal 87.7g 0.6g 0.1g 10.4g 0.7g 0.5g
乾果 271kcal 22.0g 3.8g 0.6g 66.0g 4.4g 3.2g
缶詰 83kcal 78.4g 0.5g 0.1g 19.9g 0.8g 0.3g

 

無機質
Ca P Fe Na K Mg Zn Cu
26mg 16mg 0.3mg 2mg 170mg ? ? ?
170mg 100mg 1.9mg 12mg 1100mg      
30mg 30mg 0.1mg 8mg 110mg      

 

ビタミンA   ビタミン
カロチン A効力 B1 B2 ナイアシン C  
12μg 0 0.03mg 0.03mg 0.2mg 2mg 生果
30μg 17IU 0.05mg 0.05mg 1.0mg 0 乾果
0 0 0.02mg 0.02mg 0.1mg 0 缶詰

なお、上表のうち項目の無いものについては測定値の記載が無いことを意味する。

[015.9.FIG:2007.3.21.古泉秀夫]


  1. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
  2. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001
  3. イチジクFIGパンフレット[(株)コーワリミテッド 〒171-0031 東京都豊島区目白3-14-20 ]
  4. 香川芳子・監修:四訂食品成分表;女子栄養大学出版部,2000

飲食物中の蓚酸含有量について

月曜日, 1月 7th, 2008

KW:健康食品・機能性食品・食品・蓚酸・oxalic acid・植物・蓚酸低減量・野菜類

 

Q:食品中に含まれる蓚酸の含有量について、測定値は報告されているか

 

A:ヒトの生命維持に必要な栄養成分については、市販されている野菜等の食物全般にわたり測定値の報告がされているが、蓚酸(oxalic acid)は、特に栄養成分として必要性が認められていないため、全食品についての測定値は報告されていないようである。

なお、蓚酸は炭素原子を2個持ち、反応性が高く、金属と塩を作り、生成された塩は極めて溶け難い。

体内での蓚酸塩の沈着により尿路結石が惹起され、蓚酸レベルの高い人に多発する。更に野菜に含まれる蓚酸が、食品中のミネラルと結合し、その結果、これらのミネラルの吸収を阻害する。主にカルシウムと鉄の吸収が阻害されることが報告されており、注意が必要である。

測定値のある一部について、次に紹介する。

表1.食品中の蓚酸含有量(可食部100g中のg量)

食品名 測定部位 可溶性蓚酸 食品名 測定部位 可溶性蓚酸
アカザ 1.690 馬鈴薯 根茎 0.042
ツルナ 1.277 タンポポ 0.037
煎茶* 乾葉 1.044 葉茎 0.036
タケノコ 0.654 キク 花黄 0.035
ホウレン草 葉茎 0.650 春菊 0.027
浜防風 葉茎 0.585 パセリ 0.024
不断草 葉茎 0.580 セロリ 0.022
生姜 0.574 ニラ 葉茎 0.015
茗荷 花茎 0.447 キク 0.012
イタドリ 0.433 トマト 果菜 0.011
茗荷茸 葉茎 0.360 シメジ 全菜 ±
蒟蒻芋 0.175 サラダ菜 ±
ヤツガシラ 根茎 0.175 三つ葉 葉茎(冬) ±
里芋 根茎 0.151 ゼンマイ 葉茎 ±
筍水煮 0.138 ワラビ 葉茎 ±
アカメイモ 根茎 0.125 蒟蒻   0
生茶葉 0.121 土筆 0
葉茎 0.120 フキ 0
薩摩芋 0.103 フキ 0
三つ葉 葉茎(夏) 0.080 胡瓜 果菜 0
ヨモギ 0.063 大根 根茎 0
榎茸 全菜 0.061 紫蘇 青葉 0
大和芋 0.049 根茎 0
ナメコ 全菜 0.043 椎茸 全菜 0

*煎茶の場合1回使用量は2g程度  [中村経子:栄養と食糧,27:33(1974)]

上表の測定値は、可溶性蓚酸としているため、食品中の全蓚酸量として認識するかどうかは別として、植物中には一定量の蓚酸が含まれると考えることは可能である。但し、食物中の蓚酸が、全て体内に摂取されるわけではなく、ゼンマイ・蕨等では前処理として灰汁抜きが行われるため、相当量の蓚酸は植物本体から排出されるものと考えられる。また、茹でるという調理操作を必要とする野菜では、茹でこぼすという前処理によって含有量の低減が可能である。

次にほうれん草中の蓚酸量について、生及び茹でた場合の含有量の推移について、検討した資料を紹介する。

表2.ホウレン草中の蓚酸量の推移(mg/全量g)

  葉身 葉柄 可食部合計
豊葉 840.7/60.42 58.1/29.88 896.3/90.30
ニューアジア 504.2/55.50 35.2/35.40 539.4/90.90
新日本 587.3/53.30 54.3/39.00 641.6/92.30
茹で
  葉身 葉柄 可食部合計
豊葉 415.1/63.75 11.3/24.25 426.4/88.00
ニューアジア 315.7/61.50 13.6/27.10 329.3/88.60
新日本 347.5/58.70 14.2/29.40 361.7/88.10

[草間正夫・他:栄養学雑誌,21(2):13(1965)]

上表から可食部100g中の蓚酸の低減率を計算すると

表3.蓚酸の低減率

ホウレン草種類 低減率(%)
豊葉 51.11
ニューアジア 37.27
新日本 40.86

 

約40%から50%の蓚酸は、茹で汁中に排出されるという結果がでている。タケノコ(茎)の生中の蓚酸量について、可食部100g当たり 654mg、茹でた場合、可食部100g当たり138mgとする測定値が報告されている。この測定値から計算すると低減率は78.9%と計算できる。

また、上表の他、食品100g中の蓚酸量(mg)として次の測定値が報告されている。

食品名 含有量 食品名 含有量 食品名 含有量
ホウレン草 320-1260 リーキ 23-89 レタス 5-20
ナス 10-38 トマト 5-35 林檎 平均15
平均15 平均15 イチジク 80-100
茶葉 300-2000 煎茶 10-18/100mL ココア粉末 500-150

 

以上の報告から植物中に含まれる蓚酸は、生食しない限り茹で汁あるいは煮汁中に相当量溶出することが考えられる。

[015.9.WHE:2007.3.21.古泉秀夫]


  1. 山下光雄:野菜中の蓚酸含有量;日本医事新報社,No.3205:131(1985)
  2. 三浦里代:食品のシュウ酸含量;日本医事新報,No.3993:98-99(2000)

イムノゴールドSについて

日曜日, 1月 6th, 2008

KW:健康食品・機能性食品・担子菌類・イムノゴールドS・イムノエース・AHCC・植物性多糖類・BRM・Biological Respons Modifiers・BCG・MER・レンチナン・バヒアラン・ビラコンポリマー・ベスタチン・Active Hemi Cellulose

 

Q:癌治療中の患者が健康食品と思われる「イムノゴールドS」を服用したいと医師に相談しいるが、これは何か

 

A:イムノゴールドSについて次の資料が入手できた。

イムノゴールドS ・イムノエース [製造元:(株)アミノアップ化学]

 

AHCC(Active Hemi Cellulose)は、穀類をはじめとする植物体に、数種類の酵素を働かせて得られた「植物性多糖類」である。カプセルタイプのイムノゴールドS とAHCCの有用性を高めたマイクロ顆粒タイプのイムノエースがある。

イムノゴールドSは、担子菌を大型タンク培養法を用いて醗酵分解し、独自製法で抽出・精製した植物多糖類加工食品である。活性化されたヘミセルロース(AHCC)・リグニン・多糖蛋白質やミネラルを豊富に含む。

1粒:180mg 90粒/瓶

最近、食品による生体の調節機能が見出され、栄養組成やカロリー量の観点からだけでなく、内分泌系、神経系、免疫系などと係わり合いを持つ生体調節機能、いわゆる三次機能に注目していく動きがあり、新たなバイオサイエンスの登場も伴って、健康を増進させ、病気を予防し、また病気を治療する物質の探究が盛んになっている。このような作用を有する物質を総称してBRM(Biological Respons Modifiers)と呼称している。

この主なものとしてBCG、MER等の細菌由来物質。レンチナン、バヒアラン等の多糖類、ビラコンポリマー、ベスタチン等の合成物質などがある。しかし、BRMはその殆どが静注薬として使用されており、経口で使用されているものは皆無に等しい。

このような背景の中、食品としての免疫賦活物質の開発研究からAHCCが見出された。AHCCは、そのままあるいは食品に添加した場合、消化管を経由して吸収され、BRM的働きをするこれまでにない物質である。

 

*AHCCの概略

AHCCは、担子菌液体大量培養と独自の方法による菌糸体抽出物質で、活性ヘミセルロースをはじめとする植物繊維やβ-1・3グルカン等の多糖類を豊富に含有する。また、これらの成分の他、更に多くの有効成分が含まれていると考えられ、種々の試験の結果

  1. 免疫賦活作用
  2. 成人病予防等

の作用が確認されている。

*AHCCの性状

 

蛋白質 脂質 灰分 ビタミンB1 ビタミンB2
8.7g 0.1g 5.3g 3.7mg 0.97mg 0.40mg

残留農薬:有機塩素系残留農薬;不検出

ラット 経口(♂) 28.3g/kg
ラット 経口(♀) 30.1g/kg

AHCCは、多くのBRMと同様に、好中球の集積を促進する一方、TNF誘導活性を増強した。このことはAHCCが、食細胞が関与する生体防御機構を活性化し、抗癌作用、抗ウイルス作用に関与していることを意味している。実験結果が示すように、AHCCが細菌製剤、サイトカイン類のように生体防御機構に増強的に働くことで、AHCCが生体防御機構を調節し、健康な状態を保持する働きを有していることを意味している。

実際に生体防御系に関る疾病を持つヒトに、日常生活の中でAHCCを摂取してもらった結果、症状の改善が認められた。

[015.9.IMU:2007.2.7.古泉秀夫]


  1. 週間読売,1997.3.23.
  2. 小砂 憲一:食品における免疫賦活物質の開発;New Food Industry,35(2):46-48(1993)

販売会社:(株)リアライズ 〒101東京都千代田区内神田3-5-5大同ビル6階

医薬品の安全性評価のアルゴリズム

日曜日, 1月 6th, 2008

KW:語彙解釈・安全性評価・アルゴリズム・algorithm・算法・因 果関係判定基準・医薬品投与・副作用症状

 

Q:医薬品の安全性評価に関連して見られ るアルゴリズムとはどの様な意味か

 

A:アルゴリズム(algorithm)について、それぞれ次の解釈が記述 されている。

算法

問題を解決するための手順(手続き)。代表的なものに、二つの整数の最大公約数を求めるユークリッドのアルゴリズム(Euclideam algorithm)がある。

コンピュータのプログラムは、ある特定の問題に対するアルゴリズムをプログラミング言語(programming language)で記述したものといえる(1。

電算 一連の算法。与えられた、ある形に属する全ての問題を解く手段、手続き(2。
数理・ソフト

ある問題を解くための一連の手順をいう。算法と訳す。

コンピュータを使ってある問題を解く場合、そのための明確な方法と手順を完全な形で記述する必要がある。

一般に、アルゴリズムとプログラムはほぼ同じ意味で使われるが、実際のプログラムは特定の言語で書かれた(コンピュータで実行できる)もので、アルゴリズムはそのプログラムのもとになった問題解決の手順や考え方をいう。

アルゴリズムの良否は、計算時間や必要なメモリ容量、簡潔さ、解の安定性や誤差などで判断される。

プログラムを設計する場合、アルゴリズムはデータ構造とともに重要なポイントである。

論理学や数学基礎論、計算理論などの学問分野においてアルゴリズムという言葉は、機械的に実行でき、かつ有限時間内に必ず答えを出して終了する計算規則を指すことが多い(3。

因果関係判定基準 副作用発現には多種の要因が交絡しているため、因果関係の判定基準を明確にした場合でも、その判定は評価担当者の知識・経験などにより一致しない場合もある。このためより信頼性のある因果関係判定方法を行うために、アルゴリズム(理論的思考様式に基づいて数学的に処理する手順書)が用いられている(4。

『因果関係判定基準』は、医薬品投与と副作用症状(異常所見)の関連性の推定に使用する。因果関係の推論上最も重要なのは、医薬品投与と副作用発現に至るまでの時間的関係である。投与直後や投与期間中に発現した場合には関連性が強い。また、投与中止後急速に副作用症状が消失している場合にも関連性の強さを示す証拠になる。

I.definite:明らかに関連有り 時間的に明白な相関関係(投与中止後の経過も含む)があり、かつ下記のいずれかに該当する場合『偶然の再投与により同様の所見を認め る場合、薬剤感受性試験(リンパ球培養法、皮膚テスト他)陽性の場合、又は体液・血液内濃度測定により中毒量であることが認められる場合』
II.probable:多分関連有り 時間的に明白な相関関係(投与中止後の経過も含む)があり、かつ原疾患、合併症、併用薬、併用処置など当該医薬品以外の要因がほぼ除外されている場合。
III.possible:関連がないともいえない 時間的に明白な相関関係(投与中止後の経過も含む)があり、原疾患、合併症、併用薬、併用処置など他の要因も推定されるが、当該医薬品による可能性*も除外できない場合。
IV.remote:関連はないらしい(なし) 時間的に明白な相関関係が殆ど無い場合、原疾患、合併症、併用薬、併用措置など他の要因の可能性が大きいと考えられる場合。
V.unknown:関連不明 評価材料不足の場合(判定保留)。

*例えば、類似化合物を含めて過去に同様の報告がある、薬理作用から推定されるもの。

ただし、副作用の中には、最終投与後、数時間から数日後に発現する遅発性のものや中止になっても回復の遅い非可逆的なものもあり、判定するに際して注意が必要である。

また、偶然の再投与が行われた場合、生体内薬物濃度、免疫学的検査に関するデータも重要な証拠になる。

この他、併用薬、併用処置及び生体側の病態との交絡についても評価しなければならない。

algorithmで用いられる因果関係推定のための質問項目は、副作用の発現要因が複雑であるため、研究的には多くの項目を設定することが出来るが、日常臨床の場で発現する、市販後医薬品による副作用情報の評価に用いる algorithmの項目設定は、情報の質・量などを十分考慮し、実用的な範囲に限定して設定することが重要である。

現在、世界各国で用いられる algorithmの着眼点は

  1. 時間的関係
  2. 副作用の既知・未知
  3. 投与中止後の経過
  4. 再投与
  5. 他医薬品、併用処置の影響
  6. 原疾患、合併症、素因などの要因

にまとめられる。

設問 yes(B1) un-known(B2) no(B3)

薬剤投与と副作用発現との時間的関係はあるか(A1)

+2 ?2

薬剤中止後、副作用は軽減・消失したか(A2)

+1 ?1
説明できる病態要因があるか(A3) +1 ?1

説明できる併用薬・併用措置があるか(A4)

+1 ?1

既知所見か又は薬理作用などから推定可能か(A5)

+1
再投与、薬剤感受性試験で陽性か又は過量投与か(A6) +4 *

*未実施例を含む

設問中の6項目の着眼点について調査した結果は

  1. 肯定材料がある場合(B1=yes)
  2. 材料不足又は材料がない場合(B2= unknown)
  3. 否定材料がある場合(B3=no)
definite 7-10点
probable 5-6点
possible 2-4点
remote 1-?5点

 

A6を除く5項目のうち3項目以上の不明の場合は unknownとなる。

[615.8.ALG:2003.12.9. 古泉秀夫]


  1. 伊藤正男・他総編集:医学書院医学大辞典:医学書院,2003
  2. 三省堂編修所・編:コンサイス外来語辞典 第2版;三省堂,1978
  3. 赤堀侃司・監修:標準パソコン用語事典;株式会社秀和システム, 2001
  4. 堀岡正義・編著:医薬品情報-その考え方と実際;薬業時報社,1990

イソジン液の使用濃度について

日曜日, 1月 6th, 2008

KW:滅菌・消毒・ポビドンヨード・Povidone-Iodine・イソジン液・有効ヨウ素・遊離ヨウ素

 

Q:『ポビドンヨードの濃度には、有効ヨウ素濃度と殺菌作用に直接関与する遊離ヨウ素濃度があ る。10w/v%-ポビドンヨード原液では、有効ヨウ素濃度は10,000ppmであり、遊離ヨウ素濃度は1ppmである。100倍希釈した0.1w/v%溶液では、有効ヨウ素は100ppm (0.01w/v%)であるが、遊離ヨウ素濃度は最高濃度25ppmである』とする資料が見られるが、殺菌作用に直接関与する遊離ヨウ素濃度が最高値となる0.1w/v%-ポビドンヨード溶液が最も有効ということか

A:10w/v%-Povidone-Iodine製剤である『イソジン液(明治製菓)』の添付文書に記載されている用法・用量は次記の通りであり。原液での使用を指定している。

 

手術部位(手術野)の皮膚 の消毒、手術部位(手術野)の粘膜の消毒 皮膚・粘膜の創傷部位の消 毒、熱傷皮膚面の消毒、感染皮膚面の消毒
本剤を塗布する。 本剤を患部に塗布する。

 

なお、Povidone-Iodineの殺菌機序について、次の報告がされている。

Povidone-Iodine液はヨウ素を遊離し、その遊離ヨウ素I2が 水を酸化して生じるH2OI+ が、細菌表面の膜蛋白(-SHグループ、チロシン、ヒスチジン)と反応することにより、細菌及びウイルスを死滅させると推定されている。

理論的には、水溶液において、Povidone-Iodineの100倍希釈濃度で遊離ヨウ素濃度が高いが、この遊離ヨウ素が微生物又は有機物と接触して不活化(蛋白結合ヨウ素等)された後の遊離ヨウ素の補給を考慮すれば、原液又は原液に近い濃度での使用が望ましいと考えられるとする報告が見 られる。

希釈倍率と有効ヨウ素の関係は下記の通りである。

  Povidone-Iodine 有効ヨウ素 遊離ヨウ素濃度
原液(10w/v%) 100mg/mL(10w/v%)100,000ppm) 10mg/mL(1w/v%)(10,000ppm) 1ppm
10倍希釈 10mg/mL(1w/v%)(10,000ppm) 1mg/mL(0.1w/v%)(1000ppm)  
100倍希釈 1mg/mL(0.1w/v%)(1000ppm) 0.1mg/mL(0.01w/v%)(100ppm) 25ppm(最高濃度)
1000倍希釈 0.1mg/mL(0.01w/v%)(100ppm) 0.01mg/mL(0.001w/v%)(10ppm) 10ppm*

*:グラフから推定

以上の各報告から10w/v%-Povidone-Iodine製剤の100倍希釈溶液は、理論的には殺菌力が強いとすることができる。

ただし、臨床現場における微生物の消毒は、必ずしも瞬間的な接触により殺滅可能な菌量とは限らず、一定時間継続的に接触することによる効果が期待される場合もあるので、添付文書の規定濃度で使用すべきである。

[615.28POV:2004.4.6.古泉秀夫]


  1. イソジン液インタビューフォーム,2002.9.改訂
  2. イソジン液パンフレットNo.238(AD),2001.7.
  3. 第十四改正日本薬局方解説書;広川書店,2001
  4. 小林寛伊・編:改訂消毒と滅菌のガイドライン;へるす出版,2004
  5. イソジン液添付文書,2001.6.改訂

インポテンス治療薬バゾマックスについて

日曜日, 1月 6th, 2008

KW:薬名検索・インポテンス治療薬・勃起機能・バゾマックス・ vasomax・ゼットマックス・Z-max

 

Q: 新しいインポテンス治療薬のバゾマックスがFDAに申請されたというが、これはどの様な薬か

A:インポテンス治療薬バゾマックス(vasomax)は、Zonagen 社(ゾナジェン社)の開発した勃起機能を高める薬で、成分名はフェントラミン・メシル酸(phentolamine mesilate) である。

商品名ゼットマックス(Z-max)は、メキシコで承認販売された本品の商品名である。

phentolamine mesilateは、白色の結晶性粉末。水に易溶。交感神経抑制薬のうちα-受容体遮断薬に属する。

筋注又は静注によりカテコールアミン産生過剰となり、血圧を急激に下降させる。

細胞腫瘍摘出時の発作性高血圧の予防、細胞腫の診断に用いるとする報告が見られる。

その他、phentolamineはイミダゾリン誘導体 (imidazoline derivatives)で、競合的α受容体遮断作用の他に交感神経刺激作用(心筋興奮、冠血管拡張)を示し、その他副交感刺激作用(消化管運動亢進、唾液腺、汗腺、気道分泌促進)ヒスタミン様作用(胃液分泌促進、末梢血管拡張)、抗セロトニン作用など広範な薬理作用を有している。

本剤を静脈投与した場合、血圧は心臓興奮と血管拡張の両効果の割合に従って変動し、phentolamineは血圧降下を起こす。

臨床的には褐色細胞腫の診断、末梢循環障害の治療などに僅かに用いられている。

副作用は主に心臓作用(頻脈、不整脈)、消化管運動促進による胃腸管刺激作用(腹痛、悪心、嘔吐、下痢)である等の報告が見られる。

[011.1.PHE:2004.2.16. 古泉秀夫]


  1. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  2. 藤原元始・他編:医科薬理学;南山堂,1986

医薬品等の個人輸入について

日曜日, 1月 6th, 2008

KW:法律・規則・個人輸入・医薬品・化粧品・医薬部外品・医療用具・輸入禁止医薬品・血糖降下薬・要指示薬・覚せい剤・ワシントン条約・ CITES・レッドブック・自己責任

 

Q:医薬品等の個人輸入について、手続き等は定められているか

 

A:個人が自ら使用するために医薬品・化粧品等を海外から個人輸入又は持ち帰る場合は、業として行うのではないため、厚生労働大臣の許可は特に必要 とされていない。

この点に関しては、厚生労働省医薬局監視指導課・厚生労働省医薬局麻薬対策課による『医薬品や化粧品などの個人輸入について』が、平成13年4月1 日付で発出されていたが、平成16年4月1日厚生労働省医薬品食品局監視指導・麻薬対策課から新たに『医薬品や化粧品などの個人輸入について』とする文書が発出された。

  • 医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器を営業のために輸入する場合は、薬事法に よって、厚生労働大臣の許可が必要です。
  • 個人が自分で使用するために輸入する場合又は海外から持ち帰る場合は、厚生大臣の許 可は必要ありませんが、輸入できる数量が以下のとおり制限されています。

この場合は、勿論、他人への販売・授与はできません。

該当品目 個人輸入許容量及び制限規定
1.医薬品又は医薬部外品

2カ月分以内

  • ただし、毒薬、劇薬及び処方せん薬は1カ月分以内
  • 外用剤(毒薬、劇薬及び処方せん薬は除く)は1品目24個以内
  • 医薬部外品:養毛剤、浴用剤など人体への作用が緩やかなもの
  • 処方せん薬:使用に当たっては処方せんの交付が必要な医薬品
  • 外用剤:軟膏、点眼剤など

2.化粧品

1品目24個以内

3.医療機器

1セット(家庭用のみ)

  • 電気マッサージ器などのうち家庭用のものに限る。

 

《安全性の保証》

 

  • 日本国内で販売される医薬品・化粧品等は、薬事法で有効性と安全性が確認されています。
  • 個人輸入の場合は、品物が外国から消費者個人に送られますので、このような保証はありません。ご注意下さい。
[事例]
  1. 医薬品に人体に有害な量の「ヒ素」や「水銀」が含まれていた事例。
  2. 糖尿病薬として海外で購入した医薬品に、日本では処方せん薬に指定されている 血糖降下剤が配合されていた事例。
  3. 化粧品に「水銀」など日本では禁止されている成分が配合されていた事例。

 

分類 一般名
スルホニール尿素系(SU剤) acetohexamide、 chlorpropamide、glibenclamide、gliclazide、glyclopyramide、tolazamide、 tolbutamide
スルホンアミド系 glybuzole
ビグアナイド系 buformin hydrochloride、metformin hydrochloride
インスリン抵抗性改善薬 pioglitazone hydrochloride

食後過血糖改善薬(α-グルコシダーゼ阻害薬)

acarbose、 voglibose、
速効型食後血糖降下剤 nateglinide

 

《輸入が禁止されている医薬品》

 

  • 覚せい剤(アンフェタミン、メタンフェタミンなど)は、覚せい剤取締法によって、輸入できません。
  • 麻薬及び向精神薬を輸入する場合は、麻薬及び向精神薬取締法によって、地方厚生局長の許可が必要です。申請窓口は麻薬取締部。
  • 『ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約;Convention on Internatonal Trade Endangerred Species Wild Fauna and Flora;CITES)”』に基づき、自由に輸入できない医薬品や医薬品原料があります。
動物名 概要
犀角(サイカク) 基原動物:附属書I。商業取 引が一切認められないものに分類-税関で所有権の放棄。
麝香(ジャコウ) 中国産麝香鹿:附属書II。 中国政府発行の輸出許可証の添付-商業取引可能。海外旅行の土産としては持ち込めない。
虎骨(ココツ)

基原動物:附属書I。商業取 引が一切認められないものに分類。虎骨酒、海馬補腎丸、活絡丹、参茸虎骨丸等も対象-税関で所有権の放棄。

熊胆(ユウタン) 基原動物:附属書I(アメリ カクロ熊除外)。中国では養殖を行い、屠殺せずに熊胆採取の方法実用化。飼育されたことを証明する原産国の輸出許可書添付-輸入可能。海外旅行の土産としては持ち込めない。

 

《医薬品や化粧品などの個人輸入について》
  • もっと詳しい内用をお知りになりたい場合は、内容に応じ、以下までご相談下さい。
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医薬品・化粧品・医薬部外 品・医療機器等

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関東信越厚生局
電話 : 048-740-0800
FAX : 048-601-1336
(函館税関、東京税関及び横浜税関)
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FAX : 06-6942-2472
(名古屋税関、大阪税関、神戸税関、門司税関及び長崎税関)
九州厚生局沖縄麻薬取締支所
電話 : 098-854-2584
FAX : 098-834-8978
(沖縄地区税関)

ワシントン条約

経済産業省貿易経済協力局貿 易管理部貿易審査課電話 : 03-3501-1659

麻薬、向精神薬、覚せい剤等

厚生労働省医薬食品局監視指 導・麻薬対策課あへん係FAX : 03-3501-0034

 

[615.1.IMP:2001.3.30.古泉秀夫・2005.8.1.改訂]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2001
  2. ワシントン条約:
    http://www.yokohama-customs.go.jp/washington.htm, 2001.3.30.
  3. 日本への持ち込みが規制されている野生生物製品ガイド:
    http: //www.twics.com/~trafficj/souvenirlist.html,2001.3.30.
  4. 日本製薬団体連合会ワシントン条約関係委員会:ワシントン条約と医薬品;日本薬剤師会雑誌,49(7):1263-1265(1997)

ウルシかぶれについて

日曜日, 1月 6th, 2008

KW:毒性・中毒・ウルシ・漆・かぶれ・過敏症・接触性皮膚炎・マンゴー・ギンナン・銀杏・カシューナッツ

 

Q:『漆皮膚炎を起こした人はマンゴー、銀杏、カシューナッツでも同様の皮膚炎を起こすとされていますが、漆かぶれを起こす人すべてに当てはまるのでしょうか。また、それはどの部分(幹・枝、葉、果実、等)への接触によるもので、どういう状態のもの(自生状態、切断もしくは剥皮等)への接触に起因するものなのでしょうか。

 

A:それぞれの植物について、調査した結果は次の通りである。

和名 分類 成分等
ウルシ(漆)

ウルシ科ウルシ属

学名:Rhus vern-iciflua Satokes

樹液・気化成分で接触性皮膚炎

中国、印度、ヒマラヤ原産。日本には奈良時代に渡来。潤液(ウルシル)、塗汁(ヌルシル)の略号。樹皮からウルシ液を取るため植栽される。

[薬用部分]樹脂(乾漆<カンシツ>:日本では未製造)。

[成分]フェノール性化合物のウルシオール、ハイドロウルシオールの他、マンニトール、ゴム質を含む。

[薬効・薬理]ウルシオールはラッカーゼによって酸素と結合し、黒色樹脂状に変わり、急性皮膚炎を起こさせる成分となる。

*ウルシの樹液には刺激性のurushiol、 hydrourushiolが含まれ、樹液が皮膚に付着すると皮膚発赤が起こり、掻痒を伴う炎症や水疱ができる。その後激痛が起こることがある。
個人差もあるが、気化した有毒成分に反応し、過敏な人は漆の木に近づいたり、燃やした煙に当たったりしただけでもかぶれることがある。

ハゼノキ
(琉球ハゼ)

黄櫨、櫨

ウルシ科ウルシ属

学名:Rhus succe-danea L.

樹液で接触性皮膚炎

沖縄から来たハゼの意。本州関東地方南部以西、四国、九州、沖縄及び韓国の済州島、台湾、中国、マレーシア、印度に分布し、採鑞低園樹等に植栽される落葉高木。

[薬用部分]核果から得られる木鑞、櫨鑞。

[成分]脂肪酸のパルミチン酸、オレイン酸、ヤパニン酸、ペラゴニン酸、ステアリン酸のグリセリドを含む。

ヤマハゼ
(ハニシ)

ウルシ科ウルシ属

学名:Rhus silves-tris Sieb.et Zucc.

樹液で接触性皮膚炎

古名ハニシは埴締の略。本州東海道地方から沖縄、朝鮮、台湾、中国。

[薬用部分]果実、葉、根。果実は絞って木蝋。

[成分]果実には脂肪油としてパルミチン酸グリセリド等。葉にはロイホリン、枝にはフィゼチン、フスチンを含む。

ヤマウルシ
(山漆)

ウルシ科ウルシ属

学名:Rhus trichocarpa Miq.

樹液で接触性皮膚炎

山地生のウルシの意。日本各地の山林中に生える落葉低木。

[薬用部分]根皮、果肉の脂肪質(木蝋)。

[成分]種子にパルミチン酸、オレイン酸、ペラゴリン酸、ステアリン酸、トリパルミチン、トリコカルビン酸等を含む。

心材にはフラボノイドのフスチン、フィゼチンの他、β-シトステロールが含まれる。

カスミノキ
(別名:ハグマノキ、煙の木)

ウルシ科コチヌス属

学名:Cotinus coggygria Scop.

ヒマラヤ・南欧原産。

[英]:Smoke Tree。

チャンチンモドキ ウルシ科チャンチンモドキ属

学名:Poupartia fordii Hemsl.

センダン科の香椿(チャンチン)に類似していることに由来。日本では熊本県、鹿児島県の山中に稀に自生

カシューナッツ

(カシュ樹実)

[英]cashew nuts

ウルシ科カシューノキ属

学名:Anacardium occidentale L.

樹液で接触性皮膚炎

西印度、中米原産で、熱帯各地。

[英] Cashew。

ウルシ科の常緑高木。

カシュ樹実の殻に含まれる油のフェノール成分とホルムアルデヒドを反応させて得られる樹脂がカシュー塗料の原料。

[薬用部分]樹皮・根皮。

[成分]樹皮-タンニン。生種子-アナカルジア酸及びカアルドールを含み、かぶれを起こす。種子は火熱を加えて有毒成分を分解する。

コショウボク
(ピンクペッパー)

ウルシ科サンショウモドキ属

学名:Schinus molle

樹液で接触性皮膚炎

[英]Peruvian peppertree、 California peppertree。

[英]pinkpepperは胡椒木の実。

胡椒木の熟した果実をピンクペッパーとして使用する場合、種子や果肉には苦味とともに胡椒類似の味がするとされているが、辛味成分は一切含まれていないとする報告も見られる。彩りに加えられる。

ピスタチオ

ウルシ科カイノキ属(トリバハゼノキ属)

学名:Anacardiaceae Pistacia。

[英]pistachio nuts。

ウルシ科カイノキ属の樹木の実。原産は地中海沿岸。

農耕文明の初期以来、この地に自生していた原種を食用に栽培してきたもので、現在の生産量はイランが世界一。

ピスタチオの脂質にはオレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれている。また、食物繊維が特に多く、ビタミンB1、カリウム、鉄、銅も多く含まれている。

マンゴー(亡果)但し、『亡』は木偏。

ウルシ科マンゴー属

学名:Mangifera indica L.。

印度北東部から北ビルマのヒマラヤ山麓地域原産。[英]: Man-go。

[薬用部分]果実、葉、樹皮。

[成分]果実にマンギフェロン酸、アンボン酸などのトリテルペン、ガロタニン等のポリフェノール、多種のカロチノイド、ビタミンC等を含む。葉、樹皮にマンギフェリン、タンニンなどを含む。

接触性皮膚炎を惹起する成分であるレゾルシン誘導体のカアルドール(cardol-I・cardol-II)は主に Mangoの果皮の部分に含まれているが果肉にも少量含まれている。

症状は顔面、特に口の周りに発現しやすく、赤く腫れて小水疱ができ、強い掻痒を伴う。

[治療]:ステロイド剤の外用。Mangoで接触性皮膚炎を惹起する者は、ウルシ、ギンナンでも皮膚炎を起こすため注意。

イチョウ
(公孫樹、銀杏)

イチョウ科イチョウ属

学名:Ginkgo biloba L.。

外種皮の外層は粘液に富む肉質で特有の臭気を有し、粘液が皮膚につくと炎症を惹起する。

中国原産。鴨脚(ヤアチャオ)の中国宋代の音読の転訛とされる。

日本全土に広く植栽されている落葉高木。

[薬用部分]種子(銀杏<ギンキョウ>)、白果<ハクカ>

[成分]外種子にはフェノール性化合物のギンゴール酸、ビロボール、微量の青酸配糖体。種子を多食又は生食すると中毒を起こし、ときに死亡することがあるので注意が必要。澱粉、脂肪。
葉にフラボノイドのイソラムネチン、ギンゲチンが含まれる。

 

ウルシ科(Anacardiaceae)は双子葉植物に属する科で、70属980種ほどを含む。木本で温帯から熱帯に分布する。果実は核果。花は単性。樹脂を含み、これを漆などの塗料として利用するが、特にウルシに近縁の種(Rhus及びToxicodendron 属)はurushiolを多く含み、これによってアレルギー性皮膚炎を起こしやすい。また、果実の果肉に高融点の中性脂肪を含むものが多く知られ、しばしばこれを広義の蝋として利用する。種子の中の胚の子葉に蓄えられた貯蔵栄養素も、主として脂肪であるものが多く、ナッツ類として食用になるものがある。

なお、ウルシによるアレルギー性皮膚炎を惹起した者では、他のウルシ科の植物による交叉感作が起こりえる。また銀杏の含有成分は、ウルシ科の含有成分と化学構造が類似しており、銀杏ににかぶれる者はウルシ科の植物にかぶれる可能性がある。

山野でかぶれを起こす植物の代表は、山櫨の木、山漆、蔦漆等の漆の仲間である。これらの植物では有毒成分が気化しており、人によっては近くを通るだけで発赤を伴う皮膚炎を起こすことがある。樹液にはurushiolが含まれており、樹液が皮膚に付着するとアレルギー反応を惹起し皮膚炎を生じる。

樹液にかぶれるだけではなく、イラクサなどでは葉や茎の表面の刺毛が皮膚に刺さり、中に含まれるヒスタミンが体内に入って皮膚炎を起こすこともある。また、山芋の周皮を剥くときや摺り下ろしたとろろを食べたとき、手や口のまわり等かぶれるのは、山芋の芋に含まれる蓚酸カルシウムの針状結晶が皮膚に刺さり、機械的な刺激と中に含まれるヒスタミンなどの成分により、化学的な刺激やアレルギー反応が加わって皮膚炎を起こすからである。

 

植物による接触性皮膚炎の発症機序

 

刺激性接触皮膚炎
 
<機械的刺激>:肉眼的・顕微鏡的に観察できるトゲにより、皮膚に機械的刺激が加わることで起こる。:(例)針状結晶をもつシュウ酸カルシウムが含まれているサトイモ。<化学的刺激>:葉汁、茎汁、果汁に含まれる化学物質が皮膚を刺激して起こる。:(例)蛋白質分解酵素をもつパイナップル。

アレルギー性接触皮膚炎
 
原因植物に感作され、アレルギー反応を起こす。:(例)果肉部に感作を起こす成分がある銀杏。
 
光接触皮膚炎
 
皮膚に接触した物質が光にあたることによって刺激物質に変化し、炎症を起こす。:(例)ライムなどの柑橘系やイチジクなどのクワ科植物。
 
アレルギー性接触性皮膚炎(即時型反応によるもの)
 
感作が成立している人に、再度同一抗原あるいは化学構造上類似した物質が接触することにより即時的に生じるもの:レタス、タマネギ、ニンニク、ソバなど
 
遅延型反応によるもの(反応が遅いもの)
 
ウルシ、ハゼノキ、イチョウ、銀杏、プリムラ・オブコニカ、キク、シソなど

[63.099.URU:2006.5.21.古泉秀夫]


  1. 原色牧野日本植物図鑑 I(コンパクト版);株式会社北隆館,2003
  2. 原色牧野日本植物図鑑 II(コンパクト版);株式会社北隆館,2000
  3. 原色牧野日本植物図鑑 III(コンパクト版);株式会社北隆館,2002
  4. http://www.allergy- i.jp/hifu/faq/iga/index_iga07_05.html,2006.5.21.
  5. http: //www.sankyo.co.jp/healthcare/kahun/allergy/syokubutu.html,2006.5.21.
  6. 薬科学大事典 第2版;廣川書店,1990
  7. ハーブスパイス館;株式会社小学館,2000
  8. http://tokyo.cool.ne.jp/nutsno1/page032.shtml, 2006.5.21.
  9. 三橋 博・監修:原色牧野和漢薬草大圖鑑;北隆館,1988
  10. http://www.kyoto-phu.ac.jp/kpu- news/garden/ityou.html,2006,5.21.
  11. 小川賢一・他監修:危険・有毒生物;株式会社学習研究社,2003