アダラートの脱カプセル化について

KW:物理化学的性状・特殊用例・粉末化・脱カプセル化・アダラート・ニフェジピン・nifedipine

 

Q:アダラートの脱カプセル調剤は可能か

 

A:アダラート(バイエル薬品)は、1Cap.中にニフェジピン(nifedipine)5mg・10mgを含有する橙色の軟カプセル剤で、カ プセル内容物は黄色?帯赤黄色の粘性の液体である。

剤型 ×
温度安定性
湿度安定性
光安定性 ×
水溶解性 ×
力価 ×
臭い
融点
総合判定 ×

 

nifedipineは黄色の結晶性の粉末で、臭い及び味はない。アセトン又はジクロルメタンに溶け易く、メタノール、氷酢酸又はエタノール (95)にやや溶け難く、ジエチルエーテルに溶け難く、水には殆ど溶けない。また光によって変化する。わずかに吸湿性を示す。融点:172-175℃。

本剤原薬の安定性試験の結果を見ると固体状態では比較的安定であるが、吸収性を高めるための液体状態では、耐熱試験の一部で力価の低下が認められている。

また、本品原薬は光に対する安定性が悪く、次の試験結果が報告されている。

試料 保存条件 保存容器 試験成績
固体状態 直射日光照射 無色粉末用アンプル 4日間で外観変化、含量低下 (含量32.2%)
同上 室内散乱光下 同上 10日間変化は認められず安 定であった。
液体状態 直射日光照射 蓋付褐色サンプル瓶 1.5時間後全て分解した。
同上 室内散乱光下 同上 3時間後含量低下が認められ た(含量84.2%)

 

無色透明のガラス瓶中においては比較的短時間で光分解するが、褐色ガラス瓶中においては、24時間後に痕跡程度に光分解物が認められたに過ぎ なかった。またアルミフィルムで包装した褐色ガラス瓶中においては光分解は認められなかった。』

その他、本剤添付文書中の2.重要な基本的注意の(2)として『まれに過度の低血圧を起こし、ショック症状や一過性の意識障害、脳梗塞があらわれることがあるので、その様な場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、速効性を期待した本剤の舌下投与(カプセルをかみ砕いた後、口中に含むか又はのみこませること)は、過度の降圧や反射性頻脈をきたすことがあるので、用いないこと。』とする記載がされている。

以上の各報告から本剤のカプセル内容物は液状をしているため、簡単に脱カプセルすることは困難であり、病院等で看護師が服薬介助を行う場合以 外、実施は困難であると考えられる。また、前もって予製剤することは、製剤の安定性が担保できないため回避すべきである。

[014.4.NIF:2004.10.4.古泉秀夫]


  1. アダラート添付文書,2002.9.改訂
  2. アダラートインタビューフォーム,1999.10.作成