Archive for 10月, 2008

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『閣議決定』

火曜日, 10月 21st, 2008

                                                                  医薬品情報21
                                                                     古泉秀夫

福田首相は2008年6月17日の閣議後、舛添要一厚生労働相と会談し、医学部定員数の削減をうたった1997年の閣議決定の見直しを了承したとする報道がされていた。

舛添厚労相は『安心と希望の医療確保ビジョン会議』などで、医師増員に強い意欲を示し、「現場を見て国民のための政策を堂々と主張する」と、医師養成数増は、現場からの要請であることを強調したとされる。

1997年6月に政府が閣議決定した「財政構造改革の推進について」では、「医学部の整理・合理化も視野に入れつつ引き続き医学部定員の削減に取り組む」との内容を盛り込んでいる。

最近、医師不足が顕著になったことを踏まえて、政府・与党は昨年5月に打ち出した「緊急医師確保対策」で、全都道府県で医師養成数の暫定的な増加を容認しているが、閣議決定との整合性を図るため、将来の定員数を減らし、その分を現状の定員増に割り当てるという、姑息な手段を弄して遣り繰りをしていたようだが、いずれは限界を迎える手法にしか過ぎない。あるいは今以上に、状況を悪化させる結果を招くかもしれない。

「医療確保ビジョン会議」で、医師増員の方針を打ち出した舛添厚労相に対しても、閣議決定が『呪縛』となって、実効的な医師確保は出来ないのではないかと指摘する意見が出されていた。

今回の件は、医学部の定員を閣議決定で縛るなどという硬直的なことをしたばかりに、柔軟な対応が出来ず、医師の絶対数の不足を来してしまったということである。ある意味閣議決定さえなければ、世間の動向を見ながら文部科学省の判断で、医学部の学生数を調整することも出来たはずなのに、閣議決定に絡め取られて、何もしないまま今日の体たらくを迎えたということである。

最もこの閣議決定、役人にとってはある意味、仕事をしないための便利な口実になっている可能性もある。閣議決定があるから出来ないとか、閣議決定を取り消すことは出来ないとか、あらゆる場面で何もしない口実に使われる。

医療は誰よりも先ず医師が行動を起こすことによって仕事が始まる。つまり医師の数が多ければ、それだけ医師が仕事をし、仕事をするためには余分な患者を増やす。その結果、医療費は増大し、財政を圧迫する。

1997年6月の閣議決定では、「医学部の整理・合理化も視野に入れつつ引き続き医学部定員の削減に取り組む」としているが、その前までは1県1医科大学等という話で、医科大学の新設を進めていた。それが突然掌を返すようにこのような方策を建てたのは、高齢化社会の到来=患者数の増大、従って医療費を抑制するためには、医師の増大を極力抑えようという発想からである。

しかし、医療が必要なのは高齢者ばかりでなく、更に病人だけに必要なのではない。子供を産む場合にも、医師の存在を無視することはできない。更に最近のように、患者に対する説明だの何だのと、やかましいことを言えばいうほど、医師は手を取られて医師の数は足りなくなる。

状況を見ながら柔軟な対応が必要な医学生の数の調節を、閣議決定にしてしまったということが大いなる間違いだったということである。閣議決定に持ち込もうと考えた責任者は誰だったのか。それこそ出てきて責任を取って貰いたいものである。

      (2008.7.14.)

『花菖蒲』

火曜日, 10月 21st, 2008

鬼城竜生

かねて行きたいと思っていた『横須賀市立しょうぶ園』に、6月18日(水曜日)遂に一大決心で出かけることにした。本当は京浜急行の『汐入駅』から『しょうぶ園』まで歩きたいと考えていたのだが、何せ正確に道を辿るための地図が手に入らなかった。よこすか観光花菖蒲-01 マップ(横須賀集客促進実行委員会)に”池上十字路”から”しょうぶ園”入り口、”しょうぶ園”迄の詳細な地図は見られるが、”汐入”から”しょうぶ園入り口”迄の地図は大雑把に過ぎて初めて歩くには頼り無いと思われた。

取り敢えず”汐入駅”迄でかければ、駅に近隣の見所を案内する地図が置いてあるのではないかと思ってのことであるが、儚くも期待は消えて、地図は見あたらなかった。それ以上に驚いたのは”汐入駅”の近辺は田舎の小さな町という認識でいたが、開けすぎるぐらい開けており、先ずそれに驚かされた。更に駅前に”しょうぶ園”直通のバスが待機しており、”しょうぶ園”が書き入れ時であることが理解できた。しかし、待機中のバスは平日ということもあり、さほど混ではいなかったので、今回は歩く方針を変更して直ちにバスに乗った。

バスの進行に合わせて道路を観察していたが、さほど難しい道とは思えず、帰りは歩こうという野心を心に秘めていたが、これは大失敗に終わる。つまり行く時に左に見えた景色は帰りには右の景色になるという単純なことを忘れて帰りには“汐入駅”に辿り着くことが出来なかった。更にいえば、車の運転をしない当方とすれば、バスの窓という高い位置から確認した景色は、歩く時には全く別物に見えるということもコロッと忘れてしまっていた。

”しょうぶ園”は約3.8ヘクタールの公園に412種の14万株の花菖蒲が咲き、6月1日から6月30日迄が「花しょうぶまつり」の期間であ花菖蒲-02 る。花菖蒲の他に藤苑、石楠花苑があり、その他、睡蓮池、日本庭園も施設図には記入されている。本当はこの「ふじ苑」の藤の花を写真に撮りたいと思っていたのだが、花の時期に胆石症・胆嚢摘出等の患いで入院、その後の体力回復のための養生等、色々あって来ることが出来なかった。普通、藤の花は棚作りにされており、以前写真に撮ってみたことはあるが、平板な写真になってしまい、藤棚の写真は思った以上に上手く撮れないということを経験した。

その点、「横須賀市営しょうぶ園」の藤は、棚 作りだけ ではなく花菖蒲-03、種々の形に育てられているということなので、写真が撮りやすいのではないかと思っていたのである。今回、藤は花の時期を過ぎていたが、花の時期には是非とも写真を撮りに来たいと思わせる景が見られた。

花菖蒲は、野生の花菖蒲を原種とする純国産の園芸植物であるとされている。栽培が盛んになったのは江戸時代で、先ず武士階級の間で栽培熱が高まり、その後花菖蒲-04庶民にまで広がっ てきた。栽培が広がることにより、様々に品種が生み出されるようになった。更に栽培地も広がりを見せ、江戸を中心に発展した江戸系(五月晴・紫衣の誉・湖水の色等)、江戸系の流れをくむ肥後系(幸若の舞・三笠山等)、伊勢の 松坂を中心に改良された伊勢系(淺茅原・星月夜等)の3品種群が成立したとされる。また明治以降は、外国にも輸出され、欧米人好みに改良した品種(米国:マジックルビー等)も生まれている。

「横須賀市営しょうぶ園」は確かに威張るだけの花菖蒲が見られ、更には菅笠に紺絣を纏い、赤い襷をした女性が花殻を摘む姿は、将に画になる景色ということが出来る。更に園内の彼方此方に紫陽花の花が咲いており、今年、あちらこちらに紫陽花の写真を撮りに歩きながら、あまりいい写真が撮れずにいたが、花菖蒲と紫陽花という構図で写真が撮れたが、紫陽花は期待していなかっただけに、巧妙な天の配剤に感謝したところである。

さて帰りは断固歩くということで、「しょうぶ園」の受付の女性に「汐入駅」迄の地図はありませんかと訊ねたところ、渡された地図は”よこすか観光マップ”だった。

仕方がないということで闇雲に歩き始めたが、最終的にはJRの衣笠駅に辿り着き、商店街の蕎麦屋で蕎麦を食し、衣笠駅から逗子駅、更に川崎に出て戻ってきたが、総歩行数は11,141歩であった。

(2008.7.12.)

『昔は横十間川といわれたもんです』

火曜日, 10月 21st, 2008

鬼城竜生

横十間川親水公園で花菖蒲が見られるという新聞の記事に惹かれて、6月19日(木曜日)に出かけることにした。京急蒲田駅から特急に乗って大門で大江戸線に乗り換え、門前仲町まで。門前仲町で東西線に乗り換え、東陽町駅で降りた。

駅の改札辺りで『東陽町駅横十間川-01周辺案内地図』を手に入れて、横十間川親水公園を探したが、縦横の寸法が短く、掲載されていない。 本来なら裏側に広範囲の地図が掲載されているはずであったが、残念なことに平成16年10月16日(土)に開催された「第3回東京メトロ沿線ウォーキング」のチラシから一部変更して起こしたとする「おすすめウォーキングコース」の地図が収載されていたため、全く目的地を探すことは出来なかった。

駅の案内地図を頼りに東陽町駅1番口から出て、四つ目通りを区役所方面に歩を進めた。途中で昼飯を食おうと思ったが、適当な店が見つからず、歩いている内にバス停の前にある地図に、横十間川の方向が書かれていた。手に入れた地図では四つ目通りの突き当たりは東京原木開館で切れているが、その先の川、仙台堀川を超えたあたりから”横十間川親水公園”が始まっていた。

横十間川の名称について、公園入り口にあった解説板によると、江戸初期に開削され、川幅は十間(約18m)あり、江戸城から見て横に流れていたのでこの名称になったとされていた。四つ目通りを右に曲がり、横十間川親水公園の看板を見て公園内に入ると、稲の植え られた田圃が先ず眼に入ったが、車窓の風景として見る以外、これ程間近に見たことは、最近無かったのではないか。田の畦に妙に拘ってまとわりついている小鳥がいたが、何をしていたのだろうか。虫でも捕っているのかと思ったがそうでもなく、ただ畦の下の空間にもぐり込んだり出たりしているだけのように見えた。

公園内の“花菖蒲園”には、およそ90種類、約1000株の花菖蒲が植えられているということで、そこそこ見栄えのする景色にはなっ横十間川-02 ていた。但し、この花菖蒲は、区民ボランティア「花菖蒲クラブ」の会員が中心となって育ててきたものであると紹介されていたが、素人でここまで花菖蒲を咲かせることが出来るのかどうか、何人かはプロ並みの腕を持っている人がいるのではないかと思わせる に十分な咲かせ方をしていた。

その他、水車の付いた 小屋もあったが、残念ながら水車は回っていなかった。水がない訳ではないので、水車は回した方がいいのではないかと思ったが、相当ガタも来ているようで、あるいは回らないのかもしれない。

ところで何で川を埋めてしまったのか。

資料によると『横十間川の流れている一帯は、近隣にあった工場 等の地下 水の汲み上げにより地盤沈下が激しく、いわゆるゼロメートル地帯となっていた。 これにより川から水が横十間川-03溢れる危険があったため、横十間川の一部を埋め立て、親水公園として整備された。公園は1984年4月1日に開園された。横十間川の多くは、既存の川を生かしつつ、川を身近に感じることのできる親水公園として大き く変わった。総延長は約1970mの細長い公園で、面積は約50,583m2になる。』

『西は大横川合流地点までで、北は小名木川合流地点までとなっている。北の小名木川合流地点より先は、また横十間川として河川になっている。地名としては北砂、扇橋、海辺、千石、南砂、東陽にまたがる(いずれも江東区)。途中に同じく河川を埋め立てて作った仙台堀川公園と合流している。』

その他、『川底にはダイオキシン(dioxin)が堆積しており……』とする資料も見られ、それもあって一部埋め立てが行われたのか。川を埋めずに、船での運行を考える等すれば、東京もこれ程暑くならずに済んでいるのかもしれない。

今回の歩行総数9,764歩で、一万歩には若干足りなかった。

(2008.7.1.)

「アムロジンとグレープフルーツの相互作用」

金曜日, 10月 10th, 2008

KW:相互作用・アムロジン・ベシル酸アムロジピン・amlodipine besilate・グレープフルーツ・grapefruit・dihydropyridine系・Ca拮抗薬・CYP3A4

 

Q:アムロジンとグレープフルーツの相互作用は報告されているか

 

A:アムロジン錠(大日本住友)は、ベシル酸アムロジピン(amlodipine besilate)を主成分とする製剤である。その適応は『高血圧症・狭心症治療薬、持続性Ca拮抗薬』とされている。なお、添付文書中に『grapefruit』との相互作用については何等記載されていない。
amlodipineは、dihydropyridine系の第3世代に属するCa拮抗薬である。本薬は血中濃度半減期が36時間と他のCa拮抗薬に比較して極めて長い。作用発現が緩やかで、作用持続時間が長いため、降圧効果に優れたCa拮抗薬として汎用されている。高血圧症に対する第一選択薬である。

食事の影響:健常成人にamlodipine 5mgをクロスオーバー法により空腹時及び食後に単回経口投与した場合、血清中amlodipineの体内動態値はTmaxが食後投与でやや遅延した以外は、Cmax、t1/2、AUCのいずれにも有意差は認められず、本薬の吸収は食事摂取による影響は受け難いことが確認された。従って、本薬の投与に際しては食前・食後投与の選択は任意で選択できる。

代謝部位及び代謝経路:主として肝臓で代謝される。健常成人16例にamlodipine 5mgを経口投与した時、24時間までの尿中に認められる主な代謝物としてamlodipineのdihydropyridine環が酸化されたpyridine環体とその2位の酸化的脱アミノ体等が認められた。尚、主要代謝物のCa拮抗作用は、最も強力なものでもamlodipineの1/25以下であったの報告が見られる。

代謝に関与する酵素(CYP450等)の分子種:主にCYP3A4により代謝される。

尚、本薬のgrapefruitとの相互作用について、次の報告がされている。

本薬とGF-jとの相互作用については、使用上の注意に設定されていない。その理由はGF-jによるamlodipineの血中濃度の上昇は軽度(Cmax 115%、AUC 116%に上昇)で、血圧と心拍数に影響はなかったとの報告及び薬物動態と血圧に影響はなかったとする、何れも外国人によるdataが報告されていることによる。

cytochrome 450(CYP)酸化系酵素の特徴

?ミクロソームに局在し、他は核膜に弱い活性が認められる。
?肝臓における活性が特に強く、他の臓器の活性は1/5-1/30とされる。CYP3A4の活性は腸管で高い
?分子多様性で多数のサブファミリーの酵素が存在する。更に遺伝多型を示す多くの分子種が存在する。
?脂溶性の薬のみ酸化
?基質特異性が極めて低く、一つの分子種で多くの薬を代謝し、一つの薬の一つの代謝経路にも多くのcytochrome 450が関与する。
?多くの化学物質により特殊なcytochrome 450が誘導を受ける。
?基質特異性が低いので、他の化学物質により活性が阻害されやすい。

経口投与された薬は主として小腸粘膜から吸収され門脈系に入るが、粘膜壁を通過する際、代謝を受ける。特に人の場合には、CYP3A4の発現量がかなり高く、この分子種により主として代謝される薬では小腸における代謝の関与がかなり高い。

一方、grapefruitについては次の報告が見られる。

grapefruitが薬物の効力に影響することは、最近では広く知られてきている。grapefruitは肝臓ではなく小腸上皮細胞内のCYP3A4及びP-糖タンパク質(MDR1:multidrug resistance protein 1)を特異的に阻害することが知られている。その結果、これらの基質となる薬の代謝及び小腸管腔への排泄が抑制され、吸収量が顕著に増大する事例がある。更にgrapefruit juiceによる抑制効果は、服用する薬によっては、数日間持続することがあるので、そのように薬物を服用する際にはgrapefruit juiceの飲用を中止することが無難である。

grapefruit juiceの飲用がCYP3A4に影響する原因物質として、従来grapefruit juice中の種々の含有成分が標的とされてきた。しかし最近になって6′,7′-Dihydroxybergamottin(DHB)が、原因物質であることが判明してきた。但し、薬物とDHBとの相互作用だけでは説明のつかない現象が見られ、その部分にはP-糖タンパク質が関与していることで説明されている。

DHBはCYP3A4のmechanism-based inhibition(MBI:非可逆阻害)であることが動物実験により確認されたが、更に単なるCYPの阻害剤ではなく、CYP3A4の分解を促進し、CYP3A4を消失する作用を持つことが判明した。

但し、同じCa拮抗剤でも注射剤では相互作用が見られないということもあり、CYP以外にも何らかの因子がgrapefruit juiceとの相互作用に関与していることが予測され、検証の結果小腸でのP-糖タンパク質が吸収・排泄過程で関与していることが判明した。P-糖タンパク質は、小腸上皮細胞で、有害物質などを体外に排泄する作用を持っている。P-糖タンパク質とCYP3A4の基質・阻害剤は相同性が高いことが知られている。

 

1)アムロジン錠添付文書,2007.12.
2)アムロジン錠「サンド」IF,2008.7.
3)アムロジン錠IF,2008.1.
4)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル 2008;医学書院,2008
5)中野重行・他編:臨床薬理学 第2版;医学書院,2003
6)大西憲明・編著:一目でわかる医薬品と飲食物・サプリメントの相互作用とそのマネジメント;フジメディカル出版,2003

[015.2.AML:2008.8.8.古泉秀夫]

「アリシンについて」

金曜日, 10月 10th, 2008

 

KW:薬名検索・アリシン・allicin・アリイン・aliin・ニンニク・チアミン・thiamine・vitaminB・ビタミンB

 

Q:アリシンの効能について

A:アリシン(allicin)は鎖状含硫化合物の一つで、植物中の抗菌成分としてニンニク[Allium sativum (Liliaceae)]中に含まれる。更にニンニクの鱗茎中にはallicinの前駆物質としてのアリイン(aliin)が含まれているが、aliinは無臭無刺激性の針状結晶である。

ニンニク中のaliinを含む細胞が破壊されると、共存する酵素allinaseによって分解され、ニンニク特有の刺激強臭の油状物質であるallicinを生ずる。

ニンニク中の含硫アミノ酸アリイン(aliin)はニンニクを擂り潰すと共存する酵素allinaseの作用でニンニク特有の臭成分allicinを生成するが、allicinはヒト消化管内のチアミン(thiamine:vitaminB1)と容易に反応し、アリチアミン(allithiamine)を形成する。allithiamineはvitaminB1分解酵素(aneurinase:thiaminase)の作用を受けず、優れた腸管吸収と高い血中濃度を示し、生体内でthiamineに復元して機能するが、服用後ニンニク臭が出る欠点があった。この臭いの発生のない類似化合物が合成され、活性vitaminB1(フルスルチアミン:fursultiamine)として使用されている。

allithiamineに含まれるallicinはにニンニクの強臭の原因物質であるため、この臭気の少ない物質が求められ、allithiamine類似のプロスルチアミン(prosultiamine)が合成された[アリナミン注射液10mg]。しかし、prosultiamineにも注射時にニンニク臭が見られるため、fursultiamineが新たに合成された等の報告がされている。

ニンニク中の成分であるアリシン(allicin)は、チアミン(thiamine)と反応してアリチアミン(allithiamine)となる。allithiamineの血中濃度は長時間維持されるため、vitaminB1の働きが通常より長く持続するという効果が期待されている。

医薬品としてのvitaminB1の適応は次の通りである。

○ビタミンB1欠乏症の予防及び治療
○ビタミンB1の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、甲状腺機能亢進症、妊産婦、授乳婦、はげしい肉体労働時等)
○ウェルニッケ脳症
○脚気衝心

○下記疾患のうちビタミンB1の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される場合
    ●神経痛
    ●筋肉痛、関節痛
    ●末梢神経炎、末梢神経麻痺
    ●心筋代謝障害
    ●便秘等の胃腸運動機能障害
    ●術後腸管麻痺
ビタミンB1欠乏症の予防及び治療、ビタミンB1の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給、ウェルニッケ脳症、脚気衝心以外の効能・効果に対して、効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでないとする注意が添付文書中に記載されている。

 

1)田中 治・他編:天然物化学 改訂第6版;南江堂,2002
2)アリナミン注射液10mg添付文書,2007.8.改訂
3)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル 2008;医学書院,2008
4)林 輝明・他監修:健康・栄養食品事典-機能性食品・特定保健用食品-;東洋医学舎,2008改訂新版

   [011.1.ALL:2008.6.29.古泉秀夫]

「ヘルベッサーとクレープフルーツの相互作用」

金曜日, 10月 10th, 2008

KW:相互作用・ヘルベッサー・ジルチアゼム塩酸塩・グレープフルーツ・grapefruit juice・Ca拮抗剤・生物学的利用率

 

Q:ヘルベッサーとグレープフルーツの相互作用は報告されているか

 

A:ヘルベッサー(田辺三菱)はジルチアゼム塩酸塩:diltiazem hydrochlorideを成分とするCa拮抗剤である。その承認適応小は狭心症、異型狭心症・本態性高血圧症(軽症-中等症)である。添付文書中にgrapefruit juiceとの相互作用は記載されていない。

代謝に関与する酵素(CYP450等)の分子種:該当資料無

grapefruit juiceによる経口投与後のAUC、Cmaxの変化率(%)

bioavailability(生物学的利用率) 薬品名 ACU変化率(%) Cmax変化率(%)
30-40% diltiazem 110 102

本薬服用時のgrapefruit juiceの影響については、上表に見られる通り殆ど影響を受けていないと考えられる。

従って、本薬服用時のgrapefruit juiceの飲用は特に問題はないものと考えられる。

 

1)ヘルベッサー錠添付文書,2007.10.
2)ヘルベッサー錠IF,2008.2.
3)中野重行・他編:臨床薬理学第2版;医学書院,2003

   [015.2.DIL:2008.8.8.古泉秀夫]

「モスピラン・トップジンMスプレーの安全性について」

木曜日, 10月 9th, 2008

KW:毒性・中毒・モスピラントップジンMスプレー・アセタミプリド・acetamiprid・チオファネートメチル・thiophanate-methyl・園芸用殺虫剤

Q:保育園の近接地に区の家庭菜園用地が準備されている。そこで使用される予定といわれているモスピラントップジンMスプレーの安全性について

A:モスピラントップジンMスプレー(フマキラー株式会社)の有効成分はアセタミプリド:0.0050%・チオファネートメチル:0.040%及び水、界面活性剤等:99.955%である。
本品は園芸用殺虫剤で、水溶性である。

*アセタミプリド(acetamiprid);CAS-160430-64-8。ネオニコチノイド系殺虫剤。劇毒区分=劇物(2%以下は指定無し)。魚毒性=A類(コイの半数致死濃度:10ppm以上・ミジンコの半数致死濃度:0.5ppm以上)。眼刺激性がある。企業が明らかにした毒性試験の概要では、催奇形性、発癌性は何れも認められなかったとしているが、試験データの詳細は不明。動物細胞を用いた試験で、染色体異常が認められている。

広範囲に100倍希釈液が地上散布された例で、化学物質過敏症患者や周辺住民から胸痛、不整脈、頭痛等の身体異常の訴えがあったため、散布を中止した例が報告されている

残留性:ADI*は0.066mg/kg体重/日。ポジティブリストで農作物:0.01-50ppm以下。

ADI:毎日一生食べ続けても健康に悪影響がない量。

*チオファネートメチル(thiophanate-methyl);CAS-23564-05-8。殺菌剤。劇毒区分=指定無し。魚類毒性=A類(コイの半数致死濃度:10ppm以上・ミジンコの半数致死濃度:0.5ppm以上)。サッカロマイセス菌で変異原性が認められる。企業の行った動物実験では催奇形性や生殖系への影響はないとされるが、本品中の不純物や代謝生成物(carbendazol)に由来する催奇形性、発癌性が懸念されるの報告が見られる。企業の明らかにした発癌性、催奇形性、変異原性試験の各結果に関する試験データの詳細は不明とされている。但しEPA(アメリカ環境保護庁)は人に対する発癌性の恐れがある農薬としてあげている。

残留性:ADI*は0.08mg/kg体重/日。ポジティブリストで農作物:0.1-10ppm以下。

ADI:毎日一生食べ続けても健康に悪影響がない量。

散布90日後の林檎の葉面上に散布量の11%のthiophanate-methylが残留していたとの報告がある。残留中に土壌中の水分で分解し、催奇形性、発癌性のあるカルベンダゾール(carbendazol)が生じていたことが確認されている

両者を配合した製品の性状は「類白色水和性懸濁液体」とされている。

また本品の使用上の注意として

*重複散布や多量散布は薬害を生じるおそれがあるので注意する。
*本剤の連続使用によって薬剤耐性菌が出現し効果の劣った事例があるので、過度の連用はさけ、なるべく作用性の異なる他の薬剤と組み合わせて輪番で使用する。
等の報告があり、安全に使用する上での注意として、次の記載が見られる。

*人に向かって噴射しない。
*使用の際は、農薬用マスク、手袋、長ズボン、長袖の作業衣などを着用する。作業後は直ちに手足、顔等を石けんでよく洗い、うがいをする。
*かぶれやすい体質の人は取扱いに十分注意する。

等の注意が記載されているが、本品の配合成分に由来する過敏症の発生、更には長期に残留するとの報告がされているため、市街地の家庭菜園で使用は避けるべきではないかと判断する。

なお、農水省局長名による『住宅地等における農薬の使用について』なる通知文書が発出(2003.9.16.消費安全局局長通知)されている。

具体的注意事項

*定期的に農薬を散布することはやめる。
*病害虫等の被害が発生した場合、被害を受けた部分の剪定や捕殺等により、病害虫防除を行うよう最大限努める。
*日頃から病害虫防除の早期発見に努める。
*やむを得ず農薬を使用するときは、以下のことを守る。

(1)農薬の削減等

*先ず、誘殺、塗布、樹幹注入等、散布以外の方法を検討する。
*やむを得ず農薬を散布する場合でも、最小限の区域における散布に止める。

(2)非食用農作物であっても守るべきこと(省略)

(3)農薬散布の時間帯

*農薬散布は無風又は風が弱いときに行うなど、近隣に影響が少ない天候の日や時間帯を選ぶ
*風向き、ノズルの向き等に注意する。

1)植村振作・他:農薬毒性の事典 第3版;三省堂,2006
2)フマキラー株式会社製品資料,2008

[63.099.SOR:2008.4.11.古泉秀夫]

「ベニカDスプレーの安全性について」

木曜日, 10月 9th, 2008

KW:毒性・中毒・ベニカDスプレー・エトフェンプロックス・etofenprox・クロチアニジン

Q:保育園の近接地に区の家庭菜園用地が準備されている。そこで使用される予定といわれているベニカDスプレーの安全性について

A:ベニカDスプレー(住友化学)の有効成分はエトフェンプロックス 0.05%・クロチアニジン 0.008%で、人畜毒性については『普通物』とされている。

本品の製品安全性データシートによると次の通り報告されている。

農薬の種類:エトフェンプロック・クロチアニジン液剤。

成分・含有量:エトフェンプロックス 0.050%・クロチアニジン 0.0080%。界面活性剤・水:99.942%。

最重要危険有害性:通常の使用方法ではその該当がない。
有害性:通常の使用方法ではその該当はない。
環境影響:水産動物に対して影響がある。
物理的・化学的危険性:通常の使用ではその該当がない。
形状:無色、澄明水溶性液体。無色、比重:0.994。pH:6.92。引火点:無。
安定性:通常の条件下では安定。
反応性:通常の条件下では安定。
可燃性:通常の条件下では安定。
回避条件:熱、火花等が発生するなど引火し易い条件。
危険有害な分解生成物:通常の使用方法では生成しない。

急性毒性:LD50 >2000mg/kg(雄、雌)(ラット経口)
     LD50 >2000mg/kg(雄、雌)(ラット経皮)

局所効果:動物実験(ウサギ)で、眼及び皮膚に対して刺激性無し。
感作性:動物実験(モルモット)で、皮膚感作性無し。

環境影響情報
魚毒性:マ ゴ イ LC50(96時間) 919mg/L
     オオミジンコ EC50(48時環) 6.4mg/L
     藻     類 EbC50(0-72時間)>1000mg/L

*etofenprox、CAS No.80844-07-1。化学構造が炭素、水素、酸素だけからなる新しいタイプの殺虫剤。従来のピレスロイド系殺虫剤(化学構造的には全てエステル結合を有する。)と異なりエーテル結合を有したもので、ピレスロイドの作用機作を有しながら魚毒性はB類である。

白色結晶性粉末。融点:36.4-38.0℃、溶解性はアセトン、クロロホルム、n-ヘキサン、ケロシン、ベンゼン等に易溶。水溶解度は1ppb以下(25℃)。水、酸、アルカリに安定。

許容濃度:etofenprox 3mg/m3 。人畜毒性は普通物。魚毒性=B類。急性経口毒性LD50:>40,000mg(ラット)、>100,000mg/k(マウス)。RTECS=急性経口毒性LD50>42,800mg/kg(ラット)。

劇毒区分=指定無し。etofenproxの多量投与により甲状腺癌の発生増加が認められたとの報告があるが、企業が明らかにした毒性の概要では、変異原性、催奇形性、発癌性は認められなかったとしている。試験データの詳細は不明。
残留性:ADIは0.03mg/kg/日。ポジティブリストで農作物(0.1-10ppm以下)に残留基準がある。食品中の残留農薬では白菜とレタスに0.01ppmが検出された例がある。

*clothianidine、CAS No=210880-92-5。チアゾール環を有するネオニコチノイド系殺虫剤である。分子式:C6H8CIN5O2S=249.68。本品の中毒症状としては、経口投与で自発運動の低下、眼瞼閉鎖及び振戦などが見られたが、経皮投与では全く異常は認められなかった。鼻部曝露による吸入毒性試験では、運動失調及び半閉眼などが認められた等の報告がされている。またclothianidine原体は、ウサギの眼粘膜に対して軽度の刺激性があるとされている。劇毒区分=指定無し(普通物)。魚毒性:極めて弱い。

この殺虫剤の作用機作は、他のネオニコチノイド系殺虫剤と同様に、昆虫の神経細胞の接合部において、ニコチン作動性アセチルコリン受容体に結合し、神経の異常興奮を引き起こし、虫を死に至らしめる。clothianidineの特長は、ネオニコチノイド系の中では蒸気圧が比較的低いので、シックハウス症候群などのリスクが低い。そのため、家屋などでのシロアリ駆除剤としてマイクロカプセル剤が市販されている。clothianidineの蒸気圧は、同じネオニコチノイド系殺虫剤のイミダクロプリドに比較して約1500分の1といわれる。

本品の使用に際し、

*風向きなどを考え、周辺の人家、自動車、壁、洗濯物、玩具、ペットなどに散布液がかからないよう注意する。
*作業中や散布当日は、散布区域に小児やペットが立ち入らないよう注意する。

等の注意書きの記載がされている。

1)農薬の手引き2008;化学工業日報社,2008
2)ベニカDスプレー製品安全データシート,2007.6.29.改訂日
3)植村振作・他:農薬毒性の事典 第3版;三省堂,2006
4)住友化学園芸製品資料,2008
5)14303の化学商品;化学工業日報社,2003

[63.099.SOR:2008.4.11.古泉秀夫]