Archive for 10月 10th, 2008

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「アムロジンとグレープフルーツの相互作用」

金曜日, 10月 10th, 2008

KW:相互作用・アムロジン・ベシル酸アムロジピン・amlodipine besilate・グレープフルーツ・grapefruit・dihydropyridine系・Ca拮抗薬・CYP3A4

 

Q:アムロジンとグレープフルーツの相互作用は報告されているか

 

A:アムロジン錠(大日本住友)は、ベシル酸アムロジピン(amlodipine besilate)を主成分とする製剤である。その適応は『高血圧症・狭心症治療薬、持続性Ca拮抗薬』とされている。なお、添付文書中に『grapefruit』との相互作用については何等記載されていない。
amlodipineは、dihydropyridine系の第3世代に属するCa拮抗薬である。本薬は血中濃度半減期が36時間と他のCa拮抗薬に比較して極めて長い。作用発現が緩やかで、作用持続時間が長いため、降圧効果に優れたCa拮抗薬として汎用されている。高血圧症に対する第一選択薬である。

食事の影響:健常成人にamlodipine 5mgをクロスオーバー法により空腹時及び食後に単回経口投与した場合、血清中amlodipineの体内動態値はTmaxが食後投与でやや遅延した以外は、Cmax、t1/2、AUCのいずれにも有意差は認められず、本薬の吸収は食事摂取による影響は受け難いことが確認された。従って、本薬の投与に際しては食前・食後投与の選択は任意で選択できる。

代謝部位及び代謝経路:主として肝臓で代謝される。健常成人16例にamlodipine 5mgを経口投与した時、24時間までの尿中に認められる主な代謝物としてamlodipineのdihydropyridine環が酸化されたpyridine環体とその2位の酸化的脱アミノ体等が認められた。尚、主要代謝物のCa拮抗作用は、最も強力なものでもamlodipineの1/25以下であったの報告が見られる。

代謝に関与する酵素(CYP450等)の分子種:主にCYP3A4により代謝される。

尚、本薬のgrapefruitとの相互作用について、次の報告がされている。

本薬とGF-jとの相互作用については、使用上の注意に設定されていない。その理由はGF-jによるamlodipineの血中濃度の上昇は軽度(Cmax 115%、AUC 116%に上昇)で、血圧と心拍数に影響はなかったとの報告及び薬物動態と血圧に影響はなかったとする、何れも外国人によるdataが報告されていることによる。

cytochrome 450(CYP)酸化系酵素の特徴

?ミクロソームに局在し、他は核膜に弱い活性が認められる。
?肝臓における活性が特に強く、他の臓器の活性は1/5-1/30とされる。CYP3A4の活性は腸管で高い
?分子多様性で多数のサブファミリーの酵素が存在する。更に遺伝多型を示す多くの分子種が存在する。
?脂溶性の薬のみ酸化
?基質特異性が極めて低く、一つの分子種で多くの薬を代謝し、一つの薬の一つの代謝経路にも多くのcytochrome 450が関与する。
?多くの化学物質により特殊なcytochrome 450が誘導を受ける。
?基質特異性が低いので、他の化学物質により活性が阻害されやすい。

経口投与された薬は主として小腸粘膜から吸収され門脈系に入るが、粘膜壁を通過する際、代謝を受ける。特に人の場合には、CYP3A4の発現量がかなり高く、この分子種により主として代謝される薬では小腸における代謝の関与がかなり高い。

一方、grapefruitについては次の報告が見られる。

grapefruitが薬物の効力に影響することは、最近では広く知られてきている。grapefruitは肝臓ではなく小腸上皮細胞内のCYP3A4及びP-糖タンパク質(MDR1:multidrug resistance protein 1)を特異的に阻害することが知られている。その結果、これらの基質となる薬の代謝及び小腸管腔への排泄が抑制され、吸収量が顕著に増大する事例がある。更にgrapefruit juiceによる抑制効果は、服用する薬によっては、数日間持続することがあるので、そのように薬物を服用する際にはgrapefruit juiceの飲用を中止することが無難である。

grapefruit juiceの飲用がCYP3A4に影響する原因物質として、従来grapefruit juice中の種々の含有成分が標的とされてきた。しかし最近になって6′,7′-Dihydroxybergamottin(DHB)が、原因物質であることが判明してきた。但し、薬物とDHBとの相互作用だけでは説明のつかない現象が見られ、その部分にはP-糖タンパク質が関与していることで説明されている。

DHBはCYP3A4のmechanism-based inhibition(MBI:非可逆阻害)であることが動物実験により確認されたが、更に単なるCYPの阻害剤ではなく、CYP3A4の分解を促進し、CYP3A4を消失する作用を持つことが判明した。

但し、同じCa拮抗剤でも注射剤では相互作用が見られないということもあり、CYP以外にも何らかの因子がgrapefruit juiceとの相互作用に関与していることが予測され、検証の結果小腸でのP-糖タンパク質が吸収・排泄過程で関与していることが判明した。P-糖タンパク質は、小腸上皮細胞で、有害物質などを体外に排泄する作用を持っている。P-糖タンパク質とCYP3A4の基質・阻害剤は相同性が高いことが知られている。

 

1)アムロジン錠添付文書,2007.12.
2)アムロジン錠「サンド」IF,2008.7.
3)アムロジン錠IF,2008.1.
4)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル 2008;医学書院,2008
5)中野重行・他編:臨床薬理学 第2版;医学書院,2003
6)大西憲明・編著:一目でわかる医薬品と飲食物・サプリメントの相互作用とそのマネジメント;フジメディカル出版,2003

[015.2.AML:2008.8.8.古泉秀夫]

「アリシンについて」

金曜日, 10月 10th, 2008

 

KW:薬名検索・アリシン・allicin・アリイン・aliin・ニンニク・チアミン・thiamine・vitaminB・ビタミンB

 

Q:アリシンの効能について

A:アリシン(allicin)は鎖状含硫化合物の一つで、植物中の抗菌成分としてニンニク[Allium sativum (Liliaceae)]中に含まれる。更にニンニクの鱗茎中にはallicinの前駆物質としてのアリイン(aliin)が含まれているが、aliinは無臭無刺激性の針状結晶である。

ニンニク中のaliinを含む細胞が破壊されると、共存する酵素allinaseによって分解され、ニンニク特有の刺激強臭の油状物質であるallicinを生ずる。

ニンニク中の含硫アミノ酸アリイン(aliin)はニンニクを擂り潰すと共存する酵素allinaseの作用でニンニク特有の臭成分allicinを生成するが、allicinはヒト消化管内のチアミン(thiamine:vitaminB1)と容易に反応し、アリチアミン(allithiamine)を形成する。allithiamineはvitaminB1分解酵素(aneurinase:thiaminase)の作用を受けず、優れた腸管吸収と高い血中濃度を示し、生体内でthiamineに復元して機能するが、服用後ニンニク臭が出る欠点があった。この臭いの発生のない類似化合物が合成され、活性vitaminB1(フルスルチアミン:fursultiamine)として使用されている。

allithiamineに含まれるallicinはにニンニクの強臭の原因物質であるため、この臭気の少ない物質が求められ、allithiamine類似のプロスルチアミン(prosultiamine)が合成された[アリナミン注射液10mg]。しかし、prosultiamineにも注射時にニンニク臭が見られるため、fursultiamineが新たに合成された等の報告がされている。

ニンニク中の成分であるアリシン(allicin)は、チアミン(thiamine)と反応してアリチアミン(allithiamine)となる。allithiamineの血中濃度は長時間維持されるため、vitaminB1の働きが通常より長く持続するという効果が期待されている。

医薬品としてのvitaminB1の適応は次の通りである。

○ビタミンB1欠乏症の予防及び治療
○ビタミンB1の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、甲状腺機能亢進症、妊産婦、授乳婦、はげしい肉体労働時等)
○ウェルニッケ脳症
○脚気衝心

○下記疾患のうちビタミンB1の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される場合
    ●神経痛
    ●筋肉痛、関節痛
    ●末梢神経炎、末梢神経麻痺
    ●心筋代謝障害
    ●便秘等の胃腸運動機能障害
    ●術後腸管麻痺
ビタミンB1欠乏症の予防及び治療、ビタミンB1の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給、ウェルニッケ脳症、脚気衝心以外の効能・効果に対して、効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでないとする注意が添付文書中に記載されている。

 

1)田中 治・他編:天然物化学 改訂第6版;南江堂,2002
2)アリナミン注射液10mg添付文書,2007.8.改訂
3)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル 2008;医学書院,2008
4)林 輝明・他監修:健康・栄養食品事典-機能性食品・特定保健用食品-;東洋医学舎,2008改訂新版

   [011.1.ALL:2008.6.29.古泉秀夫]

「ヘルベッサーとクレープフルーツの相互作用」

金曜日, 10月 10th, 2008

KW:相互作用・ヘルベッサー・ジルチアゼム塩酸塩・グレープフルーツ・grapefruit juice・Ca拮抗剤・生物学的利用率

 

Q:ヘルベッサーとグレープフルーツの相互作用は報告されているか

 

A:ヘルベッサー(田辺三菱)はジルチアゼム塩酸塩:diltiazem hydrochlorideを成分とするCa拮抗剤である。その承認適応小は狭心症、異型狭心症・本態性高血圧症(軽症-中等症)である。添付文書中にgrapefruit juiceとの相互作用は記載されていない。

代謝に関与する酵素(CYP450等)の分子種:該当資料無

grapefruit juiceによる経口投与後のAUC、Cmaxの変化率(%)

bioavailability(生物学的利用率) 薬品名 ACU変化率(%) Cmax変化率(%)
30-40% diltiazem 110 102

本薬服用時のgrapefruit juiceの影響については、上表に見られる通り殆ど影響を受けていないと考えられる。

従って、本薬服用時のgrapefruit juiceの飲用は特に問題はないものと考えられる。

 

1)ヘルベッサー錠添付文書,2007.10.
2)ヘルベッサー錠IF,2008.2.
3)中野重行・他編:臨床薬理学第2版;医学書院,2003

   [015.2.DIL:2008.8.8.古泉秀夫]