Archive for 4月 6th, 2008

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「シリカゲルの毒性」

日曜日, 4月 6th, 2008
対象物 シリカゲル(sillica gel)
成分 sillica gel[SiO2・xH2O]
一般的性状

ガラス状の透明又は半透明の粒子で、微細構造を持ち1gで450m2以上の表面積を有する。ガスの吸着能力が大で、この能力は低温ほど大である。水分の場合は、4℃以下で特に大である。放出は150-200℃で行う。水分のみならずアルコール、エーテル、ベンゼン、ガソリン、その他有機溶剤やガス、亜硫酸ガスどもよく吸着する。吸湿剤として使用するものには、ある程度以上水分を吸着すると色が変化するように微量のコバルト塩を付けたものが市販されている(青ゲル:乾燥時は青色で吸着すると無色あるいは赤色となる。)。コバルト塩の添加量は約5%とする報告が見られる。
CoCl2       + H2O →  CoCl2・6H2O
(淡青色)                      (淡赤色)

毒性

sillica 自体は、腸管から殆ど吸収されず、低毒性であり、成人経口時の推定致死量は15g/kg以上の無毒物質であるとされている。従って、家庭用として使用される包装単位では、誤摂取による中毒症状は発現しないとされており、症状としては局所粘膜の脱水程度であるとされる。
なお、コバルト塩については、25%が腸管から吸収されまた消化管刺激作用がある。sillica gel大量摂取の場合、塩化コバルトの毒性に注意。

症状 経口摂取:コバルト塩による消化管粘膜の糜爛、血便、嘔吐、顔面紅潮、低血圧、耳鳴。
処置

少量の摂取であれば、特別な処置を必要としない。大量摂取の場合でも、異物としての処置(経口摂取された異物は3日以内に80%が糞便中に自然排泄)-自然排泄によるが、時に下剤による排泄促進を図る。
ただし、稀に口腔粘膜又は消化管粘膜に付着することにより糜爛が生ずることがあるので水分(小児ではジュース等)、牛乳、粘膜保護剤(マーロックス、アルロイドG等)を投与する。小児で大腸粘膜に付着したためと考えられる疫痢様下痢の報告がある。
眼に入った場合:流水で洗浄。

事例 幼児がシリカゲルを3粒程度誤飲した。どの様に対処すればよいか。
備考 別名:ケイ酸ゲル。
文献

1)薬科学大辞典 第2版;広川書店,1993
2)西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル改訂3版;医薬ジャーナル,1986
3)鵜飼 卓・監修:第三版 急性中毒処置の手引き;薬業時報社,1999
4)13901の化学商品;化学工業日報社,2001

調査者 古泉秀夫 分類 015.11.SIL 記入日 2002.10.2.

「キイボカサタケ(黄疣傘茸)の毒性」

日曜日, 4月 6th, 2008
対象物 キイボカサタケ(黄疣傘茸)
成分 含有成分不明
一般的性状

ハラタケ目イッポンシメジ科イッポンシメジ属。キイボカサタケ(黄疣傘茸)。学名:Rhodophyllus murraii(Berk.et Curt.)Sing.。又はEntoloma murraii(Berk.et Curt.)Sacc.とする記載が見られる。日本、北米に分布。
子実体:クヌギタケ型で小型。
傘:幼児円錐形から開いても低い円錐形で先端に乳頭状の小突起(中央部に乳首状の突起)があり、湿っているとき長い条線が見られる。色は淡黄色又は鮮黄色で、絹糸状光沢がある。表面は平滑。肉は淡黄色で、脆く薄い。傘径1-6cm。
子実層托:襞は幅が狭く疎で、柄に上生する。色は黄色から肌色(初め黄色、胞子が熟すると肉色)になる。
柄:柄の長さは3-11cm。太さ2-4mm、中心生で細長く、中空。色は黄色で、表面には縦の条線がある。捻れることがある。肉質は傘と同様。
味・匂い:無味・無臭。
発生:夏から秋にかけて針葉樹又は広葉樹林内の腐植の多い地に群生か散生する。腐生菌。

毒性 食毒不明。
症状

胃腸刺激型(胃腸系の中毒症状)。

▼侵害部位・臓器:消化管(胃腸炎型中毒)。

▼症状

▼1]悪心、嘔吐、腹痛、下痢。

▼2]脱水症状、体温下降、血圧低下。

▼3]循環不全。

▼潜伏期:30分-3時間。

▼死亡率:稀。

▼平成10年(1998年)10月3日午後、檜原村内で18人(男性6人、女性8人他、年齢22-88歳)がバーベキューパーティを行い、参加者が前日山梨県内で採取したきのこを味噌汁、網焼きにして全員で摂食。うち14人が摂食後4時間-8時間30分の間に吐気、嘔吐、下痢を発症。おおよそ10時間45分経過後(午後11時45分頃)に発症者10人が2カ所の病院に入院した。翌日回復し、全員退院。摂食したきのこの残品を秋川保健所が調査したところ、オシロイシメジ、ホテイシメジ、キイボカサタケなどが確認され、きのこを原因とする食中毒と断定された。

▼[註]この事例はキイボカサタケのみでなく、その他悪酔い型の症状を示すホテイシメジも摂食しているため、中毒症状の発現がキイボカサタケによるものとは断定できないが、外国ではキイボカサタケを摂食して食中毒を発症している症例が報告されているため、イボカサタケの仲間の摂食は注意すべきであるとする報告が見られる。

処置

胃腸刺激型食中毒に対する処置は『支持療法』である。
摂食直後であれば、
毒物の除去
催吐、胃洗浄
活性炭投与

対症療法
補液

事例

毒キノコ食べ女性死亡=キイボカサタケで-愛知(7月23日・時事通信)

▼イッポンシメジ科のキイボカサタケとみられる毒キノコを食べた愛知県東海市の女性(86)が食中毒となり、死亡していたことが23日、分かった。同県が発表した。県生活衛生課キイボカサタケ.jtdの画像 によると、女性は19日午前、1人で自宅近くの知北平和公園(同県大府市)を散歩中にキノコを採取した。夕方に自ら調理して食べたが、翌朝に嘔吐(おうと)や下痢などの症状を起こした。病院で治療を受け、自宅静養していたが、22日午前に脱水で死亡した。

▼毒キノコ食べ脱水症状、愛知で86歳女性が死亡(7月23日・読売新聞)

▼愛知県健康福祉部は23日、同県東海市の女性(86)が、毒キノコを食べたことによる脱水症状で死亡したと発表した。同部によると、女性は今月19日、同県大府市の知北平和公園を散歩中にキノコを採取し、同日夕、自宅で調理して食べた。女性は翌朝、嘔吐(おうと)や下痢などの症状を訴え、医院で点滴を受けるなどした後、自宅で療養していたが、22日午前10時ごろ、死亡した。

▼中毒:毒キノコを食べ、東海の女性死亡 /愛知(7月24日・毎日新聞)

▼県知多保健所に23日入った連絡によると、東海市内の女性(86)が今月22日、大府市内の公園で採った毒キノコを食べ、食中毒による脱水症で死亡した。県によると、県内で毒キノコによる死者が出たのは2年ぶり。女性は19日午前、同市内の知北平和公園を散歩中に、毒性のあるキイボカサタケを採取。同日夕方、ラーメンに入れて食べたが、20日朝になり、吐き気や下痢を訴えた。東海市内の病院で「食中毒の疑いがある」と診断され、点滴を受けたうえで、自宅で静養していたが、22日午前10時ごろ、寝室で死亡しているのを家族が見つけた。毒キノコを食べたのは女性だけだった。家族の話では、女性は今年に入って、2-3回、同公園内で採ったキノコを食べていたという。県生活衛生課は「分からないものを採って食べないようにしてほしい」と話している。

備考

多くの資料で『食毒不明』とされており、報告されている中毒の事例でも死亡は『稀』とされているところから、殺人の手段としては使えない。今回の事例は実際に86歳の女性がラーメンの具として黄疣傘茸を喫食した結果、食中毒を起こしたものである。今回、不幸にして亡くなられているが、下痢症状に伴う脱水症状で、亡くなられたのではないか。年齢から来る体力の低下、各種臓器の機能低下に脱水症状が重なって死の転帰を取ったということのようであり、今後、黄疣傘茸の含有成分等の研究がされ、含有成分の同定がされることに期待したい。
何れにしろ黄疣傘茸は有毒なきのこであり、喫食を止めるべきである。

文献

1)大舘一夫・他監修:都会のキノコ図鑑;八坂書房,2007
2)長沢英史・監修:フィールドベスト図鑑-日本の毒きのこ;学習研究社,2003
3)印東弘玄・他監修:コンパクト版6-原色きのこ図鑑;北隆館,1999
4)奥沢康正・他編著:毒きのこ今昔-中毒症例を中心にして-;思文閣出版,2004
5)西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂7版;医薬ジャーナル社,2005

調査者 古泉秀夫 分類 63.099.MUR 記入日 2007.8.5.

『水仙考』

日曜日, 4月 6th, 2008

                                                                        鬼城竜生    

広報東京都第746号(2008.2.1.)に、葛西臨海公園で2月17日まで“水仙まつり”が行われているという広報が掲載されていた。そこで2月3日(土曜日)整形外科で腰痛のマイクロ波療法を受けた後、品川駅から東京駅を経由して、JR京葉線に乗り換え、葛西臨海公園駅まで出かけた。

水仙-001 駅の直ぐ前が、葛西臨海公園で、足の便は甚だ良いが、東京駅で京葉線に乗り換えるのは甚だ難儀な話で、560m先などという案内が山手線のホームを下りた階段の所に出ていた。

  ところで肝心の水仙だが、これは甚だ残念といわなければならないのは、公園全体の器の大きさに比べて、水仙の植え付け面積が狭いということか、オオ咲いているという感覚からは些か遠かった。水仙は個人の庭で観賞するなら大して本数はいらないかもしれないが、大きな場面で鑑賞するのであれば、壮大な本数がないことには、あまり目立たないのではないかという気がした。しかし、水仙の花の匂いは十分にしていたところを見ると、こちらが思うほどには少ない数ではなかったということか。

まあ当日の総歩行数は11,202歩ということであり、1万歩の目的は達成したので、良しとしておくことにする。

2月7日(木曜日)、前日の雪とも雨ともつかない寝ぼけた天候に反して、日差しも温かく、空も晴れていたので、水仙ロードなる名前で呼ばれている北下浦海岸通りに出かけた。最もこの名称よりは“野比海岸”の方が通りがいいのではないかと思われるので、以後“野比海岸”として話を進めるが、兎に角出かけたのである。京急川崎駅で三浦海岸行きの快速に乗って、京急久里浜海岸まで。最も新大津から三浦海岸まで各駅停車になるので、降りる駅の心配はないが、京急久里浜は駅としては大きな駅である。

水仙-002 京急久里浜駅を下りて東口に出て、開国橋を目指すはずが、駅の前が色々輻輳しており、あまつさえろくな地図を持っていないということで、どうやら平作川に出て夫婦橋経由で開国橋に至る道を外してしまった。結局辿った道は久里浜天神を経由して“くりはま花の国”の横手を通る道ということになってしまった。しかし、道標に従って久里浜港-東京湾フェリーの方向に歩いているうちに港の前を通る212号線に出てしまった。

水仙とは直接関係がないが、港に出る前にあった洋食和食定食なる店に入ってロースカツを食したが、あれだけ見事に肉を延ばしたカツを食ったのは初めての経験である。但し、出てきた豚汁は大きなお椀に入っており、十分に納得出来る味であった。更にキャベツも山盛り付けられており、それなりに納得した。

港を左に見て212号線を歩くことになるが、昔乗船したことのある釣り船ムツ六の船小屋があったのには驚いた。その時は車に便水仙-003 乗して来たので、久里浜港から出船したという意識は丸でなかったのである。港の先、左手に住吉神社を見て、東京電力横須賀火力発電所の前を通るとトンネルに入るが、案内板には130mと書いてあったような気がしたが、さてどうだろう。

  トンネルを出て海側のガードレール際に水仙が見えたが、ほんの僅かな植え込みがあるだけで、なんだい、これで終わったら張り倒すよと思いながら歩いていると、右側の国立アルコール症センター久里浜病院の石垣の上に、見渡す限り水仙の帯が出来ていて、へーってなものである。なるほど水仙ロード等と威張るだけのことはあると感心したが、残念ながら花の方は元気がなかった。多分2月3日に降った雪と、昨日降った氷雨にやられたのではないかと思われる。

ところで2回に亘って水仙を見て歩いたが、水仙の葉を観察すればするほど、ニラと間違えて水仙を誤食した事例があるということが信じられなかった。尤も水仙の葉の若い時の形状は見たわけではないので解らないが、今眼の前にある水仙の茎は、食欲が湧くような代物には見えなかった。水仙は勿論有毒植物である。畑に水仙を植えておいて、それをニラと取り違えて等という話があるようだが、何故、畑に水仙を植える必要があったのか、その必然性が解らない。

因みに本日の歩行数は12,761歩である。

                                                                    (2008.2.8.)