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「パイベニカスプレーの安全性について」

木曜日, 4月 10th, 2008

 

KW:毒性・中毒・パイベニカスプレー・ピレトリン・pyrethrin・除虫菊・殺虫殺菌剤・ピレトリン-I・ピレトリン-II

 

Q:保育園の近接地に区の家庭菜園用地が準備されている。そこで使用される予定といわれているパイベニカスプレーの安全性について

 

A:パイベニカスプレー(住友化学園芸)は、除虫菊から抽出した天然成分のピレトリン(pyrethrin)を含有する殺虫殺菌剤である。有効成分:ピレトリン乳剤(ピレトリン0.08%)。

ピレトリン(pyrethrin)は除虫菊(シロバナムショケギク、Chrysanthemum cineraefolium)の花の殺虫成分である。ピレトリン-Iとピレトリン-IIがあり、何れも昆虫類に接触毒性を示すため、殺虫剤として使用される。除虫菊にはこの他にシネリンも含まれている。ピレトリン-I:C21H28O3、沸点146-150℃。ピレトリン-II:C22H28O5、沸点200℃。植物体内への取り込みは極めて少なく、植物体表面において急速な光分解を受ける(FAO/WHO合同残留農薬専門会議 2000)。土壌中半減期は1日未満(ピレトリン-I)。光分解:光により速やかに分解される(太陽光下での半減期:10-12分)。

接触毒として虫体に侵入し、神経系に作用して殺すが、温血動物では比較的無害の報告。単独あるいは他の殺虫剤と混合して粉末製剤、石油乳剤として使用される。

[人畜毒性]普通物。毒劇区分:指定無し。魚毒性:B類(コイの半数致死濃度:10-0.5ppm、ミジンコの半数致死濃度:0.5ppm以下)。除虫菊は天然物であるという理由で、農水省は慢性毒性試験データの提出を免除している。残留性:1日許容摂取量(ADI)0.04mg/kg体重/日*。ポジティブリストでピレトリンとして農作物:0.05-3ppm以下。

急性毒性:急性参照量(ARfD)0.2mg/kg体重/日*。

ADI:毎日一生食べ続けても健康に悪影響がない量。
ARfD:1日ここまで経口摂取しても健康に悪影響が出ない量。

上記の報告の通りpyrethrinは比較的安全な化合物であるとすることが出来る。更に太陽光線下では約20-24分程度で分解されると報告されているので、噴霧後一定の時間経過を経た場合、完全に無毒化されると考えられる。

但し、使用に際して次の注意が必要である。

?風向きなどを考え周辺の人家、自動車、壁、洗濯物、ペット、玩具等に散布液がかからないように注意する。

?作業中・散布当日は散布区域に小児やペットが立ち入らないよう配慮する。

1)志田正二・代表編:化学辞典;森北出版株式会社,1999
2)薬科学大辞典編集委員会・編:薬科学大辞典 第2版;廣川書店,1990
3)農薬の手引き 2008年版;化学工業日報社,2008
4)植村振作・他:農薬毒性の事典 第3版;三省堂,2006
5)住友化学園芸製品資料,2008

 

[63.099.SOR:2008.4.10.古泉秀夫]