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薬局苦情拾遺[5]

木曜日, 10月 18th, 2007

医薬品情報21

古泉秀夫

9)苦情の種の説明書

今、2カ月に1回医師の診察を受けている。当然、その都度薬が出るが、その薬の説明書なるものは、次の通りである。

*なまえ、効能・効果:ユベラカプセル100mg 血行をよくする薬です。コレステロールを下げる薬。

*用法・用量:朝1・昼1・夕1  毎食後1日3回上記量

*色・型、記号:紅/白色・Cap

*注意事項:

◆発疹・かゆみ等の過敏症が現れた時は服用を中止し、医師か薬剤師に相談して下さい。◆この薬は食後に飲んで下さい。空腹時では吸収がよくありません。また、効果が現れるまである期間を要しますので、根気よく続けて下さい。

◆光の当たらない涼しいところに、湿気を避けて保管して下さい。

*なまえ、効能・効果:ペリシット錠250mg 血行障害を改善する薬です。コレステロールを下げる薬です。

*用法・用量:朝1・昼1・夕1  毎食後1日3回上記量

*色・型、記号:フィルムコート錠、白色 錠剤写真付き 識別器号:Sc 207

*注意事項:

◆飲み合わせに注意が必要な薬があります。他の医療機関で診察を受けたり、薬局で薬を購入する際には、この文書を見せてください。

◆発疹・かゆみ等の過敏症や、気になる症状が現れた時は服用を中止し、医師か薬剤師に相談してください。

◆病状を把握するため、また副作用の有無を知るためにも、決められた検査は必ず受けてください。

これは高脂血症(脂質代謝異常症)の治療目的で出されている薬である。本来はstatin剤の投与が主体となるべきはずであるが、体質的に合わないため、筋肉痛とmyoglobin尿が見られ、statin剤のどれに変えても結果は同じで、やむを得ずユベラニコチネート6Cap.の服用に変更したが、期待したほど数値は下がらず、ペリシット錠を追加投与すると共にユベラニコチネートは3Cap.に減量された。

この組み合わせの処方については、既に2回もらっているが、説明書は2回とも同じである。調剤薬を受け取る度に、お仕着せの同じ文書を提示して『薬剤服用歴管理料』を患者から取るというのでは、薬剤師が批判されても仕方がない。それぞれの薬の添付文書には、上記以外にも多くの情報が記載されている。それらを少しずつ付け加えるか、二回目以降は、少しずつ内容を変える等の工夫をすることが必要ではないか。

更に慢性疾患の場合、患者にすれば何時まで服まなければならないのかという思いが先だって薬を服むのに飽きる。死ぬまで服まなければならないのなら飽きさせないための情報提供が必要ではないか。更に薬と薬の相互作用のみならず『いわゆる健康食品』との相互作用、『明らか食品』との相互作用等、提供する情報はいくらでもあるはずである。

余所で作った文書のソフトを買い取って、CPに登録し、患者名と薬の名前を入力すれば印字されるなどという安易な説明書の出し方をしているうちに、『薬剤服用歴管理料』は廃止するなどということになりかねない。第一薬を調剤するということの意味は、この情報を提供するところまでやるから『調剤料』が付くのであって、むしろ両者は一本化した方がいいような気がするのである。

また、単なる流行りものとは思いたくないが、『顔の見える薬剤師』なる言葉を頻繁に耳にする。従来は医師や看護師の陰に隠れて目立たなかった薬剤師が、表に出ようと決意したということのようであるが、薬に係わる事故が発生した場合、全面的に薬剤師が受けるという決意も合わせて考えているということなのであろうか。もしそうだとすると、この程度の説明書で満足していたのでは、甚だ危ういことになると思うのは思い過ぎであろうか。

最近の薬の副作用に関する裁判で、特に『極く稀な重篤な副作用の発現事例』についての判例では、薬剤師法第25条の2に関係する『投薬時の説明義務の実効性については疑問』があるとされ、『経過観察の予見・回避義務の重視』という判断に重点が置かれているという。つまり予兆の発見(副作用の前駆症状)と早期発見・適切な治療義務(患者自身が前駆症状を理解することの出来る説明と早い段階での医師の受診)が医療側に課されれているということのようである。

つまり現在調剤薬局で患者に渡している文書は、この基準に照らして十分機能しているいえるのかどうかということである。

10)調剤基本料の差

H18.10.17.「調剤基本料の差について」(患者・電話)

コレステロールを下げる薬を4週間毎に薬局でもらっている。薬局によって1680円のところと1770円のところがあった。明細の分かる領収書を出してもらったら、調剤基本料が42点と72点で違っており、3割負担なのでこの差が料金の差であることが解った。薬局で調剤基本料について尋ねたら、有限会社と株式会社で違うとのこと。よく分からないので教えて欲しい。

[事務局対応]調剤基本料について説明。一応ご理解いただくが「患者にとっては関係ない話である」との感想を受ける[薬事新報,No.2490:968(2007Z9]。

1点が10円であるから、42点なら420円、72点なら720円で、1,680円とか1,770円ということであれば、その他の金額が含まれているということである。

有限会社と株式会社の違いという薬剤師の説明は、業界人にしか解らない駄洒落的な回答であり、患者に対する説明としては、面白味のない話ということになる。

調剤基本料(処方せんの受付1回につき)  42点

注1.処方せんの受付回数が1月に4,000回を超える保険薬局(特定の保険医療機関(特定承認保険医療機関を含む。以下この表において同じ。)に係わる処方せんによる調剤の割合が70%を超えるものに限る。)においては所定点数に係わらず処方せん受付1回につき19点を算定する。

2.別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た保険薬局において調剤した場合は、当該基準に係わる区分に従い、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する。

.基準調剤加算1 10点

ロ.基準調剤加算2 30点

3.長期投薬(14日分を超える投薬をいう。以下同じ。)に係わる処方せん受付において、薬剤の保存が困難であること等の理由により分割して調剤を行った場合、当該処方せんに基づく当該保険薬局における2回目以降の調剤については、1分割調剤につき5点を算定する。なお、当該調剤においては第2節薬学管理料は算定できない。

等の規定が定められている。

調剤基本料の違いは、原則的には門前薬局と市中薬局との違いであるといえる。病院の門前に薬局を開設して、その病院の処方せんを専ら調剤する薬局は、調剤基本料として『19点』ということになっている。門前薬局の多くは、幾つもの薬局を各病院の門前に開設し、株式会社として経営されている。一方、市中薬局は、個人経営が多く、株式会社ではなく有限会社という形式が多いということで、患者にはよく分からない説明になったと思われる。また『施設基準』についても、点数の差は、門前薬局と市中薬局の違いとして区分されている。

この仕組みを患者の側から見れば、ますます門前薬局に処方せんが集中する仕組みとしか見えないが、厚生労働省としても、門前薬局の扱いに苦慮していることの発露かもしれない。資本が大きくなって、大量に薬を使用する状況になれば、当然、薬の価格についても注文を付けるようになり、厚生労働省が定める薬価基準が建前の基準になりかねない。何事も規制緩和ばやりで、門前薬局を規制し、市中薬局を拡大する方策はない。

尚、『施設基準』については、次の事項が定められている(一部抜粋)。

*基準調剤とは、医療用医薬品だけでなく、一般用医薬品等についての薬剤服用歴管理も行っている等の厚生労働大臣の定める基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届出を行った薬局で行われる調剤をいう。

基準調剤加算1

(1)保険調剤に係わる医薬品として500品目以上の医薬品を備蓄している。

(2)保険薬剤師は、調剤に係わる医薬品以外の医薬品に関するものを含め、患者毎に薬剤服用歴管理記録を作成し、必要な薬学的管理を行い、調剤の都度必要事項を記入すると共に、当該記録に基づき、当該薬剤の服用及び保管取扱いの注意に関し必要な指導を行っている。

(3)緊急時等の開局時間以外の時間における調剤に対応できる体制が整備されている(以下略)。

(4)基準調剤加算を算定する保険薬局は、時間外、休日、夜間における調剤応需が可能な保険薬局の所在地、名称、及び直接連絡が取れる連絡先電話番号等を記載した文書(これらの事項が薬袋に記載されている場合も含む)を原則として初回の処方せん受付時に患者又はその家族等に交付すると共に、同様の事項を薬局の外側の見えやすい場所に掲示する。

(5)当該保険薬局は、地方社会保険事務局長に対して在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨の届出を行い、在宅患者に対する薬剤管理及び指導が可能な体制を整備している。

(6)

(7)次に掲げる情報(当該保険薬局において処方された医薬品に係わるものに限る。)を随時提供できる体制にある。

ア.一般名

イ.剤型

ウ.規格

エ.内服薬にあっては製剤の特徴(普通製剤、腸溶性製剤、徐放性製剤等)

オ.医薬品緊急安全性情報

カ.医薬品・医療機器等安全性情報

(8)(7)に掲げる情報を入手ための手段(連絡方法及び連絡先等)を当該保険薬局の外側の見えやすい場所に掲示する。

基準調剤加算2

(1)保険調剤に係わる医薬品として700品目以上の医薬品を備蓄している。

(2)処方せんの受付回数が1月に600回を超える保険薬局については、当該保険薬局の調剤に係わる処方せんのうち、特定の保険医療機関(特定承認保険医療機関を含む。以下同じ。)に係わるものの割合が70%以下である。

(3)略

(4)麻薬及び向精神薬取締法第3条の規定による麻薬小売業者の免許を取得し、必要な指導を行うことが出来る。

(5)1の(2)から(8)までの基準を満たしている

1)日本薬剤師会・編:保険薬局業務指針2006年版;薬事日報社,2006

(2007.9.24.)