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「薬科大学6年制」始末

金曜日, 3月 30th, 2012

    魍魎亭主人

驚いたことに『新設薬大9校が定員割れ』だという。文部科学省は、新たに設置を認可してから完成年度を迎えていない大学や学部、大学院などの運営状況を調べた2011年度「設置計画履行状況等調査」の結果を発表したが、中で薬学系では、2006年度以降に設置した大学等が調査の対象になり、9校が0.7倍未満の定員割れを起こしていたとしている。

文科省は教育環境の質を保つため、入学定員を見直すなど、大学側の自主的な改善を求めている。一方、定員超過の是正が指摘されたのは、薬学系で2校だった。 調査は、第1期生が卒業していない学部や学科などを持つ大学・大学院を対象とし、授業科目の開設や教員組織の整備などが当初の申請計画通りに行われているかどうかを把握することを目的とし、大学設置・学校法人審議会大学設置分科会の運営委員会に設置した「設置計画履行状況等調査委員会」が行った。

今回、定員充足率を満たしていないと指摘された薬学系学科は、▽いわき明星大学▽日本薬科大学▽千葉科学大学▽姫路獨協大学▽安田女子大学▽福山大学▽徳島文理大学香川薬学部▽松山大学▽九州保健福祉大学の9校。文科省はこれらの大学に対し、「定員充足率の平均が0.7倍未満となっていることから、学生確保に努めると共に、今後の定員のあり方について検討すること」との留意事項を付した。その一方で定員を超える学生を受け入れていた、▽星薬科大学大学院▽横浜薬科大学の2校については、「入学定員超過の是正に努めること」との留意事項が付けられた。

また、横浜薬科大学に対しては、▽退学者・留年者の人数が多く見られることから、その原因について分析を行い、具体的な対策を講じること。▽学生のニーズを踏まえつつ、実習に係る教員組織の充実および実習先との連携強化等に努め、教育効果が上がる実習指導体制を構築することとする留意事項が付けられたという。文科省は、留意事項が付された大学に対して、留意事項への対応状況について報告を求めると共に、必要に応じて実地調査や面接調査などを行うとしている。

この報道に対して、特に意見を申し述べる気はないが、医学部に比べて安上がりに開設することが出来ると云うことで、薬科大学を開設したとすれば、その責任は重い。学生の応募者が少なかったというのは、まだ容認するとしても、留年者や退学者が多いというのは見過ごしに出来ない。2012年の3月に第1回目の卒業生が卒業するが、果たして入学生と卒業生の差はどの程度出るのか。入学させて卒業させられないと云うことでは、教員の能力の問題が問われるのではないか。

また、別の報道では、文部科学省の『薬学系人材養成の在り方に関する検討会』(座長:永井良三・東京大学院医学系研究科教授)が、平成24年3月19日に開催され、質の高い入学者の確保に向け、薬科大・薬学部を対象に書面調査やヒアリング調査、実施調査を活用してフォローアップを実施することを決めたという。入学定員充足率が低い、5年次進級率が低いなど、薬学生の質の低下を招くことになっている現状に対応する。

調査は検討会の下部機関として設置する『新制度の薬学部及び大学院における研究・教育等の状況に関するフォローアップワーキング・グループ(WG)』が実施する。書面調査は、今後とも優れた入学者の確保が更に困難になることが懸念され、優れた薬剤師を養成する体系的な薬学教育に問題があると懸念される薬科大学・薬学部に絞って実施する。

2012年度は
§2008年度から2011年度の入学定員の充足率平均が60%以下
§同期間の実質競争倍率の平均が1.2以下などの場合
§2010年度と2011年度の5年次進級率の平均が60%以下

の条件に一つでも該当している大学を対象にする。対象になる大学は23校で、6月に実施。定員充足率や進級率、留年者数などを調査する。

書面調査の結果を受け、7月から9月にかけてヒアリング調査を実施する。WGは調査結果をまとめ、検討会に報告する[日刊薬業,2012.03.21.p7]。

今回は、実地調査の予定はないようであるが、次年度からの実地調査の結果について、改善の目途が立たなかった場合どうするのか。廃校の勧告等何等かの行動が取れるのか。可哀想なのはその様な大学に入学させられた学生であり、改善能力のない大学経営者には表舞台から引き下がって貰わざるを得ない。

                 (2012.3.29.)