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『メタロチオネインについて』

土曜日, 11月 20th, 2010

 

KW:語彙解釈・メタロチオネイン・metallothionein・金属結合性蛋白質・重金属・ホルモン・低分子蛋白質・システイン

Q:メタロチオネインとは何か

A:メタロチオネイン(metallothionein;金属結合性蛋白質)は、金属結合性の蛋白質である。重金属に結合する能力があるシステインの多い低分子量の蛋白質で、動物から植物まで広い範囲に存在する。哺乳動物では10個以上の類似遺伝子が存在し、遺伝子ファミリーを形成している。メタロチオネインの名前の由来は、金属 (metal) と硫黄 (thio) を豊富に含む蛋白質 (nein) から名付けられた。

メタロチオネインは金属と硫黄に富み、金属を除いた部分(チオネイン)の分子量が約6,000の低分子蛋白質で、細胞質に局在する。構成アミノ酸の1/3がシステインで、SH基3個に1個の重金属(Zn2+、Cu+、Cd2+、Hg2+)が最大7分子結合出来る。またその遺伝子には、重金属やglucocorticoid、interferon等の相互に作用する配列が存在し、エンハンサー(enhancer)として働く。この蛋白質の本来の生理的意議は解明されていないが、重金属の毒性を軽減する作用を示す。

重金属(Zn2+、Cu+、Cd2+、Hg2+)、ホルモン(glucocorticoid)等が、その合成を誘導し、細胞質に存在する。61個の構成アミノ酸のうち20個を占めるシステインは特定の一次配列をとり、9個と11個に分かれ、3個と4個のZn又はCdに配位した二つの集団を形成する。生体に必須なZnとCuの恒常性維持に関与すると共に、過剰なこれら重金属や有害重金属を捕捉して毒性から生体を防御する。またラジカルや活性酸素のスカベンジャーとしても作用。通常の細胞にはシステイン以外の構成アミノ酸が異なる2種類のイソ蛋白質が存在する。脳にはさらに7個のアミノ酸が挿入された配列を取る蛋白質(成長阻害因子)が存在し、メタロチオネインIIIと呼ばれているが、金属では誘導されず、分類は確定していない。重金属による制御のしやすさからDNA上の制御配列を遺伝子工学で利用。植物や微生物にはグルタチオンのポリマー構造をとるフィトケラチン、カディスチン、γ-EC(GluCys)ペプチドとも呼ばれる一群のメタロチオネイン類似蛋白質が存在。

1)今堀和友・他編:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998
2)最新医学大辞典 第3版;医歯薬出版株式会社,2005

        [615.8.MET:古泉秀夫,2010.2.17.]