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『ジェネリック医薬品緊急調査-医師会報告』

水曜日, 10月 20th, 2010

  魍魎亭主人    

些か旧聞に属するが、2009年11月8日に行った日本医師会の定例記者会見で、「ジェネリック医薬品にかかわる緊急調査」の分析結果が発表された。発表によると、品質・効果・副作用等で「問題あり」と指摘された後発品企業と銘柄があるという。

緊急調査は、日医HPを通じて、平成18年5月26日?7月31日に実施されたもので、577人の医師が回答。9月12日の記者会見で、調査結果の概要が既に報告されているが、品質・効果・副作用等に「問題あり」との指摘を受けたのは、33社・73銘柄、総件数は89件であったとされる。これらの結果を、銘柄数別・会社別に見ると、上位5社で44銘柄、全体の約60%を占めることが明らかとなったとされる。

更に、薬効分類別・先発品目別に見ると、

(1)解熱鎮痛消炎剤で2剤10件、
(2)精神神経用剤で3剤6件、
(3)不整脈用剤・血圧降下剤・血管拡張剤で11剤15件、
(4)高脂血症剤で2剤13件、
(5)消化性潰瘍剤で6剤11件、
(6)その他の泌尿生殖器官および肛門用剤で1剤5件

等の問題が報告されている。

(3)の循環器系の薬剤については、副作用と推測される事例など、多くの問題を指摘する意見が寄せられていることから、特に注目すべきである。また、(1)の解熱鎮痛消炎剤に関しては、長期投与を行うと、薬剤性潰瘍を発症する可能性もあるとして、安全性に危惧を示した。

また、先発品と同様に適切な審査が行われ、薬剤の安全性・有効性などがすべて証明されるならば、ジェネリック医薬品を使用することに問題はないとの認識を示す一方で、特許が切れた後の先発医薬品の価格が、高止まりする傾向にあることに触れ、その価格のあり方についても問題提起した。

この調査結果について、医師会は厚生労働省に提示、具体的な対応を要請するとともに、「問題あり」と指摘された薬剤については、調査で浮かび上がった問題点の原因を探りたいとしている。

厚生労働省は医療費の抑制策の一つとして後発医薬品の使用を推奨している。従って現場で仕事をしている医療関係者の思いを斟酌する余裕はない。例えば先発品と比較して後発品の方が副作用が多いような気がするという、医師の感覚は、同一成分である以上あくまでも感覚の問題であって、科学的な実証はされていないという認識だろう。しかし、実際には患者に直接処方して、服用した結果を見ることができる処方医が、患者に出る結果について危惧しているとすれば、その危惧を取り除く努力をしない限り、医師の納得は得られない。

更に「特許期限終了後の先発医薬品の価格が、高止まりする傾向」にあるのは如何なものかという意見については、誰もが疑問とする課題であり、後発医薬品に市場を荒らされる前に、自動的に後発医薬品と同様の価格に減額するという手立てを導入すべきではないか。
医療費を抑制するという国家財政上の問題であれば、各企業に協力を依頼することで、調整可能であると考えられる。後発品が発売されれば、明らかに価格は下落する。それに伴って先発品も値下げをせざるを得なくなるとすれば、特許期限が切れた時点で、自動的に流通価格の7掛けに引き下げるという方法は、医療政策上の手段として実施可能なのではないか。

我国の医療費は、自由主義経済の中にあって統制経済の枠組みが導入されている。その意味では国が価格の統制を行ったとしても、自由主義経済を破壊することにはならないのではないか。

    (2010.6.8.)