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『ハナムシロガイについて』

金曜日, 1月 1st, 2010

KW:中毒・毒性・食物連鎖・ハナムシロガイ・Zeuxis castus・Zeuxis caelatus・屍肉食者・スカベンジャー・scavenger・TTX・tetrodotoxin

Q:フグ毒の食物連鎖とハナムシロガイについて

A: バイ目ムシロガイ科ハナムシロ(Zeuxis castus:Zeuxis caelatus)は、いわゆる“海の掃除人”といわれる“屍肉食者(スカベンジャー:scavenger)である。小型巻貝類であるハナムシロガイは、剥き身で5MU/gのTTX(tetrodotoxin:CAS-4368-28-9)関連物質が検出されたとの報告がされており、ハナムシロガイ類縁種は、フグ毒TTXを保有することがあることが解ったとする報告も見られる。

我国ではハナムシロガイを食用にすることはないが、2001年4月に台湾北部で、小巻貝による食中毒事件が発生した。患者数は4名で、症状は手足の麻痺、痙攣、嘔吐、失語症であった。中毒原因食品は、ハナムシロガイ類縁種で、その個体毒性値は345-1,640MUで、中腸腺は1,120±238MU/gであった。更にその毒性物質について分析した結果、TTXであることが確認された。

フグに特徴的な毒と考えられてきたTTXが、他の動物にも存在することから、フグがTTXを作るのではなく、ある種の細菌(Alteromonas、Staphylococcus、Vibrio属菌)がこの毒を産生すること、そしてこれらがプランクトンに取り込まれ、更にこの“毒化プランクトン”を捕食した貝類を更に捕食することにより毒が吸収・蓄積され、有毒になるものと考えられている。いわゆる食物連鎖の結果としてフグの毒化がある。

TTXは化学式C11H17N3O8=319.27で表され、ビブリオ属やシュードモナス属などの一部の真正細菌によって生産されるalkaloidである。1985年にフグ毒を作っている細菌が見つかり、その後、多くの種類が見いだされている。ビブリオ・アルギノリティカス(Vibrio alginolytics)、ビブリオ・ダムセル(Vibrio damsela)、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus )及びビブリオ科フォトバクテリウム属のフォトバクテリウム・フォスフォレウム(Photobacterium phoshoreum)等々、種々の細菌が関係している。これらの細菌は、海洋中でごく普通に存在しており、東京湾等でも1mLの海水を汲み取れば必ず含まれている程であるとする報告も見られる。

1)奥谷喬司:フィールドベスト図鑑-日本の貝1;株式会社学習研究社,2006

2)吉良哲明:原色日本貝類図鑑-増補改訂版;保育社,1965

3)野口玉雄・他:貝毒の謎-食の安全と安心-;成山堂書店,2004

4)本田武司:食中毒学入門-予防のための正しい知識-;大阪大学出版会,1995

5)船山信次:アルカロイド-毒と薬の宝庫-;共立出版株式会社,1998

6)http://www.chem-station.com/yukitopics/hugu.htm,2009.8.14.

[63.099.TTX:2009.8.14.古泉秀夫]