Archive for 1月 30th, 2010

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『桜皮エキスの成分について』

土曜日, 1月 30th, 2010

KW:薬名検索・桜皮・風邪薬・鎮咳去痰薬・ブロチン・brocin・桜皮エキス・十味敗毒湯・十味敗毒散

Q:風邪薬に配合されるブロチンは桜皮エキスであるとされている。桜皮エキスの成分としてどの様なものが含まれているか

A:桜皮(Pruni Jamasakurae Cortex:日本薬局方外生薬規格)。桜皮は日本の民間薬として開発されたもので、江戸時代の民間療法の書物に多く収載されている。華岡青洲の『瘍家方筌』の『十味敗毒湯』に樸樕[ボクソウ・ボクソク](クヌギ、ナラ、カシワなどのQuercus属の樹皮)の代用として桜皮を用いている。食中毒、食傷(急性胃カタル)、痢疾などに多く用いられている。樸樕は『新修本草』に『樸若』の名で収載されており、「皮は味苦く、水で煎じた濃汁は蠱[コ]及び瘻を除くのに世俗で用い、甚だ効がある」と記されている。

桜皮の起源はバラ科(Rosaceae)の中のサクラ属(Prunus)の植物である。但し、Prunus属の植物は、最近は独立したサクラ属(Cerasus)とする分類も使われている。生薬の桜皮は、山桜(Prunus jamasakura SIEB.ex KOIDZ.あるいはその他サクラ属の枝又は樹皮を乾燥したものとされている。

その他、サクラ(山桜)はバラ科サクラ属の落葉高木である。薬用部分は樹脂。生薬名は桜皮[オウヒ]。西洋医学では樹皮又は樹間から染み出しているヤニ(樹脂)に含まれる配糖体(サクラニン)を去痰薬として使用してきたが、漢方では使わない。我国の民間療法では、蝮の粉と黒く蒸し焼きにした桜の皮を糊か油で練り、おできの吸い出しとして利用したとする報告も見られる。

[成分]フラボノイドのサクラネチン[sakuranetin(5,4′-dihydroxy-7-methoxyflavanone)]とその配糖体のsakuranin。genkwaninとその配糖体のglucogenkwanin等を含有する他、一種のステロイドが存在する。また、sakuranetinはフラバノン(flavanone)配糖体に属する物質で、サクラ(Prunus yedoensis)を始め、Prunus属植物に配糖体[サクラニンsakuranin(5-O-β-D-glucoside)]として分布。その他tanninを含有するとする報告も見られる。

[薬理]桜皮より製したエキスはbrocinで、鎮咳去痰薬として用いられてるが、その本質はフラボノイド配糖体と考えられる。ウサギの摘出気管支の緊張を少量で低下させ、大量で上昇させた。

[適用]brocin製剤の原料として用いられる他、十味敗毒散に2.5-3g用いられる。

[処方]十味敗毒湯、治打撲一方。

サクラ葉にはcoumarinが含まれており、サクラ葉を塩漬にすることによってサクラ餅様の芳香が得られる。coumarinは生の葉の中では配糖体の形で含まれており香はないが、塩漬にすることにより葉の中の酵素の働きでcoumarinを生成させる。

但し、coumarinには肝毒性があるとする報告が見られるため、サクラ餅に使用されるサクラ葉の摂取には注意することが必要である。

1)牧野富太郎:原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版I;北隆館,2003

2)伊沢凡人・他:カラー版薬草図鑑;家の光協会,2003

3)田中 治・他編:天然物化学 改訂第6版;南江堂,2002

4)高木敬二郎・他編:和漢薬物学;南山堂,1982

5)指田 豊:サクラ-漢方薬に使われる植物;都薬雑誌,31(4):35-40(2009)

[015.4.PRU:2009.12.1.古泉秀夫]

『ケタミンの麻薬指定について』

土曜日, 1月 30th, 2010

KW:法律・規則・麻薬・ケタミン・ketamine・動物用医薬品

Q:今日ケタミン(ketamine)で逮捕されたというニュースが流れていましたが、ketamineが麻薬に指定されたのは何時のことですか

A:ケタミン(ketamine)は、化学名を『(2RS )-2-(2-Chlorophenyl)-2-(methylamino)cyclohexanone monohydrochloride』といい、我国においては、昭和45(1970)年2月から人を対象とした医薬品として市販され、現在では、動物用医薬品としても市販されている。薬理作用として、麻酔・鎮痛作用の他、血圧降下、頻脈、脳脊髄液圧上昇、脳血流量増加、呼吸抑制などの作用がある。

ketamineは平成18年3月23日に公布された麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令の一部を改正する政令(平成18年政令第50号。以下「ケタミンの麻薬指定政令」という。)により、平成19年1月1日に麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号。以下「麻向法」という。)第2条第1号に規定する麻薬に指定され、輸入、輸出、製造、譲渡、譲受、所持、施用等の取扱等について規制されることになった。

規制された背景については、「K」、「スペシャルK」等と呼ばれて密売されていることによる。密売されているketamineは、主に粉末で、殆ど密輸入品と考えられている。我国では医療用医薬品であるketamineの濫用は報告されていないが、ketamineの濫用が原因となって惹起された精神疾患の症例が学会でも報告され、ketamineの濫用との因果関係が強く疑われる死亡事例も発生している。この他、濫用されているMDMA等錠剤型麻薬にketamineが混合されている事例も数多く報告されている。

なお、ketamineの濫用は国際的にも悪化しており、国連麻薬委員会*は各国において規制することを呼びかけている。世界保健機関(WHO)においても、麻薬を規制するための国際条約の規制対象とするため、国際麻薬委員会に勧告することを検討しているとされる。更に米、仏、中、東南アジア諸国等においては、麻薬等の規制薬物に指定している。香港ではketamineはヘロインに次ぐ第二の濫用薬物として、特に若者の間で流行しており、中国では我国への密輸直前に摘発された事例も報告されている。また韓国では動物用のketamine注射液が加工されて濫用されていることが判明している。

*国連経済社会理事会の下部委員会であり、国際的な薬物問題に関する意思決定の中心機関である。

以上、厚生労働省医薬食品局監視指導課・麻薬対策課の発出したケタミン取扱(質疑応答)を参照した。

1)厚生労働省医薬食品局監視指導課・麻薬対策課:ケタミンの取扱(質疑応答),2006年8月

[615.1KET:2009.12.25.古泉秀夫]