トップページ»

「ジエチレングリコールの毒性について」

金曜日, 1月 1st, 2010

KW:毒性・中毒・ジエチレングリコール・diethylene glycol・CAS No.111-46-6・ジヒドロキシエチルエーテル

Q:ジエチレングリコールの毒性について

A:ジエチレングリコール(diethylene glycol)、CAS No.111-46-6。

別名:ジヒドロキシエチルエーテル(dihydroxydiethyl ether;Bis(2-hydroxyethyl)ether。

概要:2分子のエチレングリコールがエーテル形に脱水縮合したもので、グリセリンと類似の性質を示す。HO(CH2CH2O)2H=106.14。無色、無臭の粘稠な液体で吸湿性である。比重:1.118(20℃)、引火点:152℃(開放式)、沸点:244.3℃。水、アルコール、エーテル、アセトン、エチレングリコールと自由に混和し、水の氷点を低下させる。ベンゼン、トルエン、四塩化炭素、クロロホルムに不溶。

用途:プラスチック用、印刷インキ、ソルブルオイル、繊維用接着剤、ブレーキ油、可塑剤、ユデックス抽出用溶剤、ガス脱水用。

取扱注意:強酸化剤及び塩基と反応する。日向に置かない。火気厳禁。消火上の注意:アルコール泡、水、泡消火による溢出。

毒 性:急性毒性LD50(経口):14.8g/kg(ラット)、RTECS=急性毒性LD50(経口):12.565mg/kg(ラット)。ヒト経口最小致死量:1000mg/kg。致死量は1mL/kgとされているが、成人で20-240mL、小児で5-120mLと幅が広い。蒸気やmist(霧状物)は有毒なので吸入しない。眼や皮膚を侵す。

体内動態

吸収:皮膚からは吸収され難い。

排泄:体内では殆ど分解されず、40-70%は未変化のまま。

ethylene glycol及びdiethylene glycolは、通常は不凍液や防風ガラスの脱水剤に使用されており、様々な代謝産物が中毒の原因となる。

diethylene glycolによる中毒症状(ethylene glycolの症状に類似)

中毒学的薬理作用:肝細胞、腎尿細管上皮、中枢神経系などへの直接的障害。アニオンギャップの増大を伴う代謝性アシドーシス。

初発症状:通常、胸焼け、腹痛、目眩、嘔吐、下痢、続いて腰部・背面痛。

後発症状(24時間程度経過):傾眠昏睡、呼吸抑制、肺水腫、髄膜刺激症状、徐脈が見られる。

ethylene glycol中毒と異なり、肝障害が目立つとされ、黄疸も出現する。腎尿細管上皮の空胞変性の結果、多尿、蛋白尿、乏尿、高窒素血症などの急性腎不全症状。溶血や骨髄抑制が見られることがあるとする報告がされている。

その他、diethylene glycolの中毒症状として、アルコール中毒と類似しており、通常、嘔吐が見られ、中枢神経系の抑制、痙攣、昏睡が認められることもある。うっ血性心不全や肺水腫は摂取後12-36時間後に起こり、重篤な場合はこの時期に死亡する。乏尿性腎不全(シュウ酸結晶の沈着による)は、摂取後24-72時間後に見られ、強い側腹部の痛みを伴う等の報告もされている。

家庭での処置

大量摂取時:可能ならば催吐。

医療機関での処置

早期の胃洗浄、呼吸管理、アシドーシス及び電解質バランスの補正。

代謝性アシドーシスの治療、腎不全の予防が第一である。

1)15308の化学商品;化学工業日報社,2008

2)高久文麿・他監修:ワシントンマニュアル第10版;MEDSi,2005

3)鵜飼  卓・監修:第三版 急性中毒処置の手引き;薬業時報社,1999

4)内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療 改訂第2版;南江堂,2001

[63.099DIE:2009.8.3.古泉秀夫]