Archive for 3月 6th, 2009

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「アロマターゼについて」

金曜日, 3月 6th, 2009

KW:薬名検索・アロマターゼ・aromatase・cytochrome P-450・シトクロムP-450・チトクロムP-450・P-450・pigment

 

Q:アロマターゼについて

 

A:アロマターゼ(aromatase)=estrogen合成酵素。アンドロゲンのC19ステロイドからC18ステロイドのestrogenへの芳香化学反応を触媒する末端酸化酵素。卵巣、胎盤、筋肉、脂肪組織、肝、脳等広範囲に分布し、特に脳内アロマターゼは、脳の性分化、性行動等に関与することが示唆されている。その他シトクロムP-450aromの一つと考えられているとする報告も見られる。aromataseは女性ホルモンであるestrogenの合成を担っているが、それ以外にも脳の性分化や性行動、骨代謝、発癌など重要な生理機能に関わっている。

aromataseは脂肪組織、筋肉、肝臓などに広く分布すると同時に、乳癌組織にも存在し、乳癌細胞へのestrogenの供給に重要な役割を果たす。閉経後女性では卵巣機能の低下により、末梢組織等におけるaromataseの発現が亢進した状態にある。

cytochrome P-450:単にP-450と呼ぶこともある。還元型で一酸化炭素(CO)と結合し、吸収スペクトル上450nm付近に吸収極大を持つヘム蛋白の総称。名称はその分光学的性質に由来し450nmに吸収極大を示す色素(pigment)という意味でP-450と命名された。これらのヘム蛋白質は、全て電子伝達体ではなく、酵素活性を示すので酵素命名法から見てシトクロムと命名するのは、必ずしも正しい命名法ではないとされているが、一般に用いられているという。

機能的には各種のステロイドホルモン、胆汁酸、プロスタノイドの合成・分解反応、脂肪酸のω酸化、vitamin D活性化反応など多岐にわたる生体物質の合成・代謝に関与する他、体内に取り込まれた薬剤等外因性物質や種々の内因性物質を酸化的に代謝する一原子酸素添加酵素である。主に肝臓に存在するほか、各種臓器にも少量ながら分布する。細胞内ではミクロソーム分画やミトコンドリアに存在する。

薬物代謝をはじめ、ステロイドの生合成と代謝、コレステロール代謝、vitamin D活性化、脂肪酸やアラキドン酸代謝等に重要な働きをしている。また飲食物と医薬品の相互作用に関連して重大な影響を与えることも知られている。

 

1)今堀和友・他編:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998
2)渡邉建彦・他:くすりの効き方を科学する-第2版分子を標的とする薬理学;医歯薬出版,2008
3)後藤 稠・代表編:最新医学大辞典 第2版;医歯薬出版株式会社,1996

    [011.1ARM:2009.1.6.古泉秀夫]

「薬物に対する超音波の影響」

金曜日, 3月 6th, 2009

KW:物理化学的性状・超音波・超音波ネブライザー・ultrasound nebulizer・nebulizer・霧・aerosol

 

Q:超音波ネブライザーの場合、吸入薬が超音波によって容易に破壊され、薬効が無くなってしまうということがあるのでしょうか。

 

A:超音波ネブライザーは、超音波振動子によって薬剤を微粒子(ミスト)にし、噴霧するものである。従来から超音波ネブライザーによる薬液の変性問題が指摘されており、洗浄、消毒にも問題があるとされていた。そのため最近ではジェット式ネブライザーが推奨されているとする報告が見られる他、最近になってメッシュ式超音波ネブライザーが登場し、薬液変性と消毒・洗浄の問題はほぼ改善されたとする報告も見られる。

超音波(ultrasound)は、ヒトの耳では聞くことが出来ない2,000Hz以上の高い周波数を持つ音をいうとされている。ヒトの可聴域は約16-2,000Hzである。超音波は高い周波数の指向性が鋭く、超音波束として利用できる。超音波は生体組織を媒体として伝播するが、強度が小さい限り生体に対する障害はない。診断に利用される超音波は2-10MHzの範囲である。

超音波ネブライザー(ultrasound nebulizer)で使用される超音波周波数は約2.4MHz(オムロン超音波ネブライザーNE-U07)あるいは約180kHz(メッシュ式超音波ネブライザーNE-U22)とする報告が見られる。

超音波ネブライザーは、薬剤を微細な霧(aerosol)として吸入させる霧滴吸入法である。噴霧器(nebulizer)と陽圧発生装置からなり、aerosolを作る。霧粒子の大きさは作用させたい部位に応じて、喉頭・気管では直径5-10μL、気管支・肺胞では1-5μL、副鼻腔では3-6μLが適正であるとする報告が見られる。これらの微粒子を得るための超音波としては、比較的低周波数であり、特にメッシュ式超音波ネブライザーは、より低周波数であり薬剤に対する影響が少ないことが予測される。

塩酸プロカテロール(procaterol hydrochloride)を用いたネブライザーによる噴霧性・安定性試験の結果によると、メッシュ式超音波ネブライザーの使用によって薬剤に対する影響は何等なかったとする報告がされている。

なお、ネブライザーとして使用する薬剤は副腎皮質ホルモン、血管収縮剤、蛋白分解酵素(protelytic enzyme:プロテアーゼ)、気道粘液融解剤、抗生物質などであり、用途に応じて選択する。吸入されたaerosolは粘膜より血中に吸収される。副鼻腔炎、呼吸器疾患(急・慢性鼻炎、喉頭炎、アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis:鼻アレルギーなど)が適応である等の報告がされている。

 

1)今堀和友・他編:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998
2)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル 2008;医学書院,2008
3)吉山友二・他:塩酸プロカテロール吸入液ユニットのネブライザーによる噴霧特性及び薬剤安定性;呼吸,22(9):904-912(2003)
4)伊東政男・他総編集:医学書院医学大辞典;医学書院,2003

 

       [014.4.ULT:2008.4.26.古泉秀夫]

「薬用炭と活性炭」

金曜日, 3月 6th, 2009

KW:薬名検索・薬用炭・活性炭・activated charcoal・葯用炭・medicinal carbon

Q:薬用炭と活性炭の関係について

A:薬用炭について次の説明がされている。

性状:本品は黒色の粉末で、臭い及び味はない。

名称:activated charcoal[USP][EP]、葯用炭(yaoyongtan)[中]、活性炭[食添];CAS-16291-96-6。medicinal carbon[英]。

本質:解毒薬

来歴:15世紀頃から脱色に用いられ、その後多くの製法が考えられたが、1900年Ostrejkoが高温で二酸化炭素を用いるガス賦活法、含炭素物質に金属塩類物質を添加してから加熱する薬品賦活法を発見して以来、急速な発展を遂げた。

製法:活性炭の製造には植物質を原料とする。一般には各種木炭、おが屑、石炭、植物繊維質など含炭素物質であればどれでもよいが、原料と製品の吸着力とは密接な関係を有するので秘密な点が多い。木炭の活性化について、賦活機構の理論について、まだ決定的な説はないと報告されている[1。

薬効薬理:薬用炭はその吸着性を利用して、過敏症及び消化管内醗酵による生成ガスの吸収、毒物の吸着に用いる。しかし酵素、vitamin、鉱物質等も吸着するので、消化を妨げることがある。吸着する毒物としては毒性アミン、食品から分解して生成した有機酸、細菌等の産生した代謝物質があり、同様の理由で、解毒薬として塩化水銀(II)、strychnine、phenol、atropine、morphine、phenolphthalein、毒茸中毒等に用いられる。

用法・用量:薬用炭として、通常成人1日2-20gを数回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

JECFAの評価:毒性dataがないので、1日摂取量は確立していない。ろ過剤、除去剤としてGMPに従って使用される時、食品中に残渣は存在しない。

以上、日本薬局方では『薬用炭』と命名されているが、食品添加物公定書では『活性炭』と命名されており、何れも同一のものであるとすることが出来る。

1)第十五改正日本薬局方解説書;廣川書店,2006
2)薬用炭添付文書,2007.8.改訂
3)日本医薬品添加剤協会Saefety data,2008.9.16.

[011.1.ACT:2008.10.15.古泉秀夫]