「アロマターゼについて」

KW:薬名検索・アロマターゼ・aromatase・cytochrome P-450・シトクロムP-450・チトクロムP-450・P-450・pigment

 

Q:アロマターゼについて

 

A:アロマターゼ(aromatase)=estrogen合成酵素。アンドロゲンのC19ステロイドからC18ステロイドのestrogenへの芳香化学反応を触媒する末端酸化酵素。卵巣、胎盤、筋肉、脂肪組織、肝、脳等広範囲に分布し、特に脳内アロマターゼは、脳の性分化、性行動等に関与することが示唆されている。その他シトクロムP-450aromの一つと考えられているとする報告も見られる。aromataseは女性ホルモンであるestrogenの合成を担っているが、それ以外にも脳の性分化や性行動、骨代謝、発癌など重要な生理機能に関わっている。

aromataseは脂肪組織、筋肉、肝臓などに広く分布すると同時に、乳癌組織にも存在し、乳癌細胞へのestrogenの供給に重要な役割を果たす。閉経後女性では卵巣機能の低下により、末梢組織等におけるaromataseの発現が亢進した状態にある。

cytochrome P-450:単にP-450と呼ぶこともある。還元型で一酸化炭素(CO)と結合し、吸収スペクトル上450nm付近に吸収極大を持つヘム蛋白の総称。名称はその分光学的性質に由来し450nmに吸収極大を示す色素(pigment)という意味でP-450と命名された。これらのヘム蛋白質は、全て電子伝達体ではなく、酵素活性を示すので酵素命名法から見てシトクロムと命名するのは、必ずしも正しい命名法ではないとされているが、一般に用いられているという。

機能的には各種のステロイドホルモン、胆汁酸、プロスタノイドの合成・分解反応、脂肪酸のω酸化、vitamin D活性化反応など多岐にわたる生体物質の合成・代謝に関与する他、体内に取り込まれた薬剤等外因性物質や種々の内因性物質を酸化的に代謝する一原子酸素添加酵素である。主に肝臓に存在するほか、各種臓器にも少量ながら分布する。細胞内ではミクロソーム分画やミトコンドリアに存在する。

薬物代謝をはじめ、ステロイドの生合成と代謝、コレステロール代謝、vitamin D活性化、脂肪酸やアラキドン酸代謝等に重要な働きをしている。また飲食物と医薬品の相互作用に関連して重大な影響を与えることも知られている。

 

1)今堀和友・他編:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998
2)渡邉建彦・他:くすりの効き方を科学する-第2版分子を標的とする薬理学;医歯薬出版,2008
3)後藤 稠・代表編:最新医学大辞典 第2版;医歯薬出版株式会社,1996

    [011.1ARM:2009.1.6.古泉秀夫]