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「ウイルスとは」

木曜日, 9月 4th, 2008

KW:殺菌・消毒・ウイルス・virus・毒・毒性・genome・全遺伝情報・RNA・DNA・外皮膜・envelope・エネルギー代謝系・蛋白合成系・感染因子

Q:『ウイルス』の定義として、どの様な解釈がされているか

A:次の報告が見られる。

?virusは本来は『』を意味する語であるとされる。細菌より小さな、濾過性の病原体をultrafiltrable virusといったが、その後単にvirusと呼ぶようにになったvirusはDNA又はRNAをgenome(全遺伝情報)として持ち、宿主細胞内でのみ複製する。動物、植物、細菌、昆虫、糸状菌、マイコプラズマ、原生動物などのvirusが知られている。

?virusは元々『毒蛇』を意味するラテン語で(virulence=毒性)、これが転じて“病毒を運ぶもの”の意味になり、顕微鏡でも見えず、通常の細菌なら通過できない濾過器を通り抜ける病原体を『filtrable virus 』というようになり、1930年から単にvirusと呼ばれるようになった。なお、ウイルスというのは日本ウイルス学会が提案した日本名で、英語では「バイラス」、ドイツ語では「ビールス」、フランス語は「ビーリュス」と発音する。ウイルスというのはラテン語の発音に近い。結局virusとは『通常の細菌に比べて桁違いに小さな病原微生物』であると定義されたが、その実態が直接見えるようになったのは、電子顕微鏡が完成した1938年以降である。

?W.M.Stanleyは、1935年にタバコモザイク病に侵された煙草葉の絞り汁から病原ウイルスを針状結晶の型で純粋に分離し、その本体が一種の蛋白質であることを示した。+鎖RNAよりなる1本の単鎖RNAを遺伝物質として持っている。virusは結晶形では全く無生物として存在するが、適当に生きている細胞に取り付くと、それ自身がどんどん増加し、同一のvirus分子が無制限に出来る。これは生物の増殖と全く同じ現象である。一般生物と異なるところは、virusは解糖系のような生活に必須な酵素系を持っていないので、単体では独立して増殖できず、増殖のためには必ず他の生きた細胞を必要とする

virusは遺伝情報を担うgenome(DNA又はRNA)と、それを取り囲む蛋白質で、構成される感染性を持つ分子集合体である。virusの中には、更に細胞膜に似た外皮膜(envelope)を持つものがある。genomeについてはDNAであるかRNAであるか、二本鎖であるか一本鎖であるか、又は直鎖状であるか環状であるか、更に分節型か、非分節型であるか等によって分類されている。

virusはエネルギー代謝のための補酵素も、蛋白合成の場のリボソームも持たないため、栄養分を外界から摂取して自力で生活することはできず、virusの増殖は、宿主細胞のエネルギー代謝系と蛋白合成系が全面的に代行している。従ってvirusは、生きた細胞の存在下で初めてその種を保存することができ、細胞外では代謝能力がないため1個の物体に過ぎない。生きた細胞に接触しない限り外界でのvirus粒子は早晩消滅する。
以上の報告から単純明解に集約すると

『virusとは生物と無生物との間にある極小微生物で、エネルギー代謝系も蛋白合成系も持たないため、宿主細胞に完全に依存・寄生することで生活し得る特異な感染因子である。』

ということになるのではないか。

1)今堀和友・他監:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998
2)長谷川栄一:新・医学ユーモア辞典 改訂第二版;エルゼビア・ジャパン,2002
3)大里外誉郎・編:医科ウイルス学改訂第2版;南江堂,2002

                     [615.28.VIR:2008.2.1.古泉秀夫]