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気管支喘息に対する金製剤の使用例

月曜日, 12月 31st, 2007

KW:適応外使用・特殊用例・気管支喘息・気道過敏性・金製剤・ sodium aurothiomalate・シオゾール注・auranofin・リドーラ錠

 

Q:気管支喘息に金製剤リドーラが有効と いう話を聞いたが、事実か

 

A:現在、市販されている金製剤は次の2品目である。

一般名 sodium aurothiomalate auranofin
商品名(会社名) シオゾール注
(塩野義)
リドーラ錠(GSK)
適応症 関節リウマチ 関節リウマチ
作用 ラットアジュバント関節炎に対する効果、免疫反応に対する影響、マクロファージや多核白血球の貪 食細胞抑制作用、リソソームに対する作用等が報告されているが、作用機序は明らかでない。

関節リウマチ緩解導入金化合物で、免疫反応系に対しては、異常な免疫反応に選択的に抑制作用を示 した。また、ラットのアジュバント関節炎及び免疫複合体等による急性炎症にも有効で、ラットのアルサス型足浮腫や逆PCA反応に抑制効果を示した。

副作用 重大:気管支炎、気管支喘息発作の増悪(0.1%) ?

管支喘息は可逆性の気流制限により特徴付けられる疾患で、気流制限は気管支平滑筋収縮、気道壁の浮腫、気道の過分泌、気道壁リモデリングにより起きるが、基本的病態は、様々な炎症性細胞や気道構成細胞が関与する慢性の気道炎症である。

炎症により気道過敏性が惹起され、炎症の遷延化により気道壁の線維性変化などの器質的変化(気道壁リモデリング)が生じ、喘息は重症化・難治化していく。

気道過敏性を低下させる目的で、1980年代から1990年代前半にかけて、気管支喘息の非特異的療法の一つとして、金製剤の使用が試みられていた。

また、適応拡大のための臨床試験も行われていたが、承認申請準備段階で、『有効性が明確に証明されなかった』、『投与法が確立できなかった』、『作用機序が明らかにされなかった』等の理由で断念されたとの報告がされている。

auranofinは気管支喘息に対する可能性を示唆する薬理作用として、sodium aurothiomalateに比べて強い抗炎症作用、あるいはモルモットでのでのヒスタミン吸入による気道過敏性の抑制及びオゾン吸入による気道過敏性亢進の抑制と、それに伴うBALF中の好中球の増加抑制作用等が認められており、臨床的にも気道過敏性に対する作用が期待される。更に本剤はヒスタミン、 LTB4、LTC4などの化学伝達物質の遊離、産生の抑制、すなわち抗アレルギー作用も認められており、対症療法と根治療法の双方に相当する気管支喘息治療薬としての可能性が予測される。

auranofin 6mg/day及び3mg/day及びプラセボを対象とした多施設二重盲検比較試験の252 例の結果

 

試験項目 6mg群 3mg群 プラセボ群 判定結果

全般改善度:中等度以上

40.3% 14.9% 20.3% 6mg群有意
概括安全度:副作用無し 74.7% 83.3% 85.2% 有意差無し
副作用発現頻度 25.3% 15.5% 13.6% 有意差無し
消化器症状 17.2% 8.3% ? 中止により軽快・消失
全般有用度:有用以上 37.7% 14.5% 22.5% 6mg有意

 

sodium aurothiomalateは、気管支喘息の非特異的療法の一つとして、気道過敏性を低下させる目的で使用されてきたが、現在、有効で副作用の少ない対症療法が普及するにつれ、使用されなくなった。

使用に際しては1-2週に1回、臀部(又は上腕部)に筋注。投与量は第1回10mg、第2-10回 25mg、第11回以降25-50mgのように行う。気管支喘息の場合、1回100mg程度まで増量してもよい。

投与総量が1000mgを超えても効果が見られない場合には中止する。効果が見られるのは、通常、金総量が200-300mgを超えてからである。確実な効果を認めた場合には、継続する。頻度の高い副作用として皮膚炎、湿疹等の皮膚障害、蛋白尿、血尿等の腎障害、口内炎等である。総じて金療法はリスクに比較してメリットが少なく、現在では特殊な場合を除いて気管支喘息の治療にあえて採用する必然性はないとする報告も見られる。

いずれにしろ金製剤の副作用と気管支喘息に対する効果とを較量し、他の療法を検討すべきである。

[035.4.AUR:2003.12.9. 古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
  2. 山口徹・他総編:今日の治療指針;医学書院,2003
  3. 宮本昭正・他:成人気管支に対するオーラノフィンの臨床評価-多施設二 重盲検比較試験-;薬理と治療,20(4):1249-1278(1992)
  4. 奥平博一:気管支喘息に対する金療法の現代的意義-質疑応答集第20集 p.421;日本医事新報社,1993
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,27 (4):328(2000)