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「屁糞葛の毒性-毒性無」□□□□□□□□□□□□□□□□

木曜日, 10月 5th, 2017

対象物□□□□□□□□□□□□□□□□

ヘクソカズラ(屁糞葛)
分類:あかね科、ヘクソカズラ属。
学名:Paederia scandens Merrili。
屁糞葛-001別名:ヤイトバナ・灸花、サオトメバナ・早乙女花。鶏屎藤(けいしとう:中国)。女青。
白鶏架屎藤(全草)(中国)。斑鳩飯(ハンキュウハン)、主屎藤(シュシトウ)、却節、階治藤、臭藤根、牛皮凍、臭藤、毛葫蘆(モウコロ)、甜藤(テントウ)、五香藤、臭狗藤(シュウクトウ)、香藤、母狗藤、鶏矢藤、清風藤。
*鶏屎藤果:鶏屎藤の果実。
基原:アカネ科の植物、鶏屎藤(和名ヘクソカズラ)の全草及び根。

成 分□□□□□□□□□□□□□□□□

*ペデロシド、スカンドシド、アスペルロシド等のイリドイド化合物及びγ-シトステロールを含む。葉にはアルブチン0.68%及び製油などが含まれる[鶏屎藤]。
*アルブチン0.69%、オレアノール酸1.5%、トリアコンタン、ヒドロキノン、及びフェノール、テルペンアルデヒド、ブチルデヒド、酢酸、プロピオン酸等の揮発成分を含む。種子は約9%の油を含むが、そのうちパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸の含有量が全体の10%を占める。非鹸化部分は約20%のステロールを含む[鶏屎藤果]。
*臭気の成分としてindole、arbutinを含む。全草にはイリドイド化合物のpaederoside( C 13H22O10S:ペデロシド)、scandoside(スカンドシド)、asperuloside(アスペルロシド)等が含まれる。
*全草は、イリノイド化合物のpaederoside、scandoside、asperulosideの他、γ-sitosterol(γ-シトステロール)、arbutin、テンペルアルデヒド、フェノールを含む。果実は、オレアノール酸、arbutin、トリアコンタンを含む。
*悪臭の素:細胞中に硫黄化合物ペテロシドを持ち、昆虫に食害されるなどして細胞が傷つけられると、分解して揮発性のメルカプタンを生じる。 このメルカプタンが特徴ある臭気の素。

屁糞葛-002*臭味のインドールの他、aldehydeやarbutin(アルブチン)などを含み有毒植物である。

*arbutin:α-arbutin、β-arbutinがあり、コケモモ、ウワウルシ、西洋ナシなどツツジ科のハーブに含まれており、歴史的にβ-arbutinのほうが長く使われていることから、一般的にarbutinといえばβ-arbutinを指すとされる。arbutinは天然型フェノール性配糖体である。メラニン合成に関わるチロシナーゼに直接作用し、メラニンの合成を阻害するため、美白効果があるとして、化粧品などに使用されている。また、利尿作用と尿路殺菌作用があり、尿路消毒薬とされる。

*asperuloside:CAS14259-45-1。asperulosideの働きを詳しくまとめると、
1.食べた脂肪のエネルギー変換をスムーズにサポート
2.基礎代謝をサポートし、摂取したエネルギーが消費されやすくする
3.基礎代謝が上がり、溜めにくい体へとサポート
等の効果が期待できる。またアスペルロシドは、古くなった胆汁酸の排泄を促進し、血中の新鮮な胆汁酸を増加させる。その結果、基礎代謝を向上させ、体脂肪を減らして肥満を改善する。ラットを使った試験においては、アスペルロシドの摂取により筋肉量が増加し、内蔵脂肪量が減少している。ヒト試験においては、アスペルロシドを摂取することにより、体重や体脂肪率及びBMIの減少効果があることが明らかになっているとされる。

*indole:別名:ベンゾ[b]ピロール(benzo[b]pyrrole)。C8H7N。コールタール、ジャスミン油中に含まれ、またトリプトファンの代謝生成物として動物の排泄物中に含まれる。無色結晶、融点53℃、沸点254℃、普通の有機溶媒に可溶。弱酸性化合物で、NHの駆は金属と置換する。強酸により樹脂化する。特有の悪臭を持つが、希薄溶液にすると特有の芳香になり、香料調合上に不可欠の成分の一つとして利用される。

*sitosterol: CAS:83-47-6。穀類に多く含まれる植物ステロールの一群で,炭素原子数は 29又は 30。α体が3種,β体,γ体が知られている。

*scandoside:CAS-18842-99-4。

一般的性状□□□□□□□□□□□□□□□□

*つる性草本。基部は木質、高さ2-3m、無毛あるいは僅かに毛がある。葉は対生し、葉柄を持つ。葉身は膜質に近く、卵形、楕円形、短円形ないし披針形を呈し、先端は短く尖るか次第に尖り、基部は円形あるいは楔形、屁糞葛-003両面とも無毛あるいは無毛に近い。円錐花序は腋生及び頂生し、広がり、分枝してサソリの尾状の集散花序となる。花は白紫色、無柄。萼は細い鐘形、長さ約3mm。花冠は鐘形、花筒は長さ7-10mm、上端は5裂し、毛抜き合わせに配列し、内側は紅紫色、粉状の柔毛に覆われている。雄蕊は5本、花糸は極めて短く花冠筒内に着生する[中薬大辞典,1985]。

*全体に悪臭があることから、命名された名前である。日本各地及び朝鮮、中国、フィリピン等温帯から熱帯に分布。草地や藪に多い蔓性の多年生。茎は右巻(左巻)きで、長く伸び他物に絡みつく。葉は幅4cm、長さ7cm程の披針形で対生する。有柄、長さ4~10cm。有毛、托葉あり。花は夏、短い柄を出し、集散花序を付ける。花冠は鐘形で、先は5浅裂し灰褐色、内側は鮮やかな紅紫色で、毛が多く、地味だがよく見ると美しい。長さ1cm位。内側に毛が多く、単柄である。

毒 性□□□□□□□□□□□□□□□□

*果実の誤食で下痢、呼吸麻痺。
*有毒性成分と症状として、臭気の成分としてインドール、アルブチンを含み、果実の誤食で下痢、呼吸麻痺を起こす。
*鶏屎藤の場合、水煎餾液はマウスに対して毒性は示していない。腹腔内注射0.01mL/g体重は特に毒性を示していない。アルコール製剤は麻酔下の動物(ネコ、ウサギ、イヌ)に対して、降圧作用を示したとされるが、特に毒性は報告されていない。内服は煎じるか酒に浸して服用するとする記載も見られる。また内服では顕著な副作用及び毒性反応は見られなかったとする報告も見られる。

*屁糞葛について毒草という表記がされた図書も見られるが、全草について動物実験の結果、鶏屎藤として使用される中薬では、経口投与がされており、毒草という評価は、屁糞葛の持つ特異な臭気に由来する解釈に基づく物ではないかと思われる。但し、実については外用剤としての使用しか報告されておらず、有毒か否かの判断をするデータの入手はされていない。

症 状□□□□□□□□□□□□□□□□

*下痢、血尿、間質性痙攣、呼吸困難、呼吸麻痺。

処 置□□□□□□□□□□□□□□□□

*症状に対応した処置を講ずる。

事 例□□□□□□□□□□□□□□□□

屁糞葛-004*体質改善を目的に煎じて飲んだ人がいるが、飲用は全く不可とする報告がある。
*具体的な誤食例の報告は確認できなかった。

備 考□□□□□□□□□□□□□□□□

*黄褐色に完熟した果実のサラッとした果汁は「ヒビ」によいとされる。冬季に熟し、指で潰しても直ぐ潰れるので利用し易い。
局方アルコール 250mL
潰した果実        適量
約1週間冷暗所保存。時々この液を漉し、
グリセリン 200mL
浄水              適量      
全量              1000mL

*ヘクソカズラの果汁には抗菌性があり、皮膚に潤いを与える作用が強い。野外で毒虫に刺された場合、本品の花でも葉でも、よく揉んで汁液をなすり付けると効果がある。

*中国の鶏屎藤は、凍傷や毒虫に刺されたときに用いる。なお中国では全草を煎じて下痢、腹痛、関節痛、腫れ物に使用する。

*インドネシアでは駆風薬として知られている。

*果実は、抗菌作用が、根には、下痢止め、腎臓脚気の利尿薬の効果がある。全草を、黄疸、下痢、消化不良に用いる。ワセリンなどと練り合わせた実を手荒れに、果汁を霜焼け、ひび、あかぎれにつけ、焙った生葉は腫れ物に貼る他、ねんざ、神経痛、虫くだし、睾丸の腫れに薬効があるとされる。徳之島では、切傷に用いる。

*鶏屎藤果:液汁を塗布すれば毒虫による刺傷を治すことが出来る。また、凍瘡の薬にもなる。

文 献□□□□□□□□□□□□□□□□

1)牧野富太郎: 原色牧野日本植物図鑑 II;北隆館,2000
2)川原勝征:毒毒植物図鑑;南方新社,2017
3)伊沢凡人・他:カラー版薬草図鑑;家の光協会,2003
4)水野瑞夫・他:くらしの薬草と漢方薬-ハーブ・民間薬・生薬-新日本法規,2014
5)鈴木 洋:漢方の薬の事典-生ぐすり・ハーブ・民間薬-第2版:医歯薬出版,2011
6)奄美群島生物資源Wevデータベース; http://www.amami.or.jp/kouiki/seibutsusigen/detail_plant/plant_detail_911.html,2012.8.31.
7)中井将善:気をつけよう毒草100種;金園社,2002
8)http://boo-bee.cool.coocan.jp/plants/lamiids-gentiana-solana/yaitobana.htm
9)上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第一巻;(株)小学館,1985

 

調査者:古泉秀夫 分類:63.099. 期日:2017.10.4